公共工事の受注を増やすには?成功した会社が最初にやったこと解説


公共工事の受注を増やしたいと考えていても、何から着手すればよいか分からない中小建設会社は少なくありません。公共工事は民間工事と異なり、発注者・経営事項審査・入札の仕組みが独自のルールで動いているため、民間営業の延長線上で取り組むと成果が出にくい傾向があります。
この記事では、公共工事の受注を増やすために最初に取り組むべきことを整理した上で、経審の評点の活かし方、発注機関・工種の選び方、落札率を高める実務、受注拡大後に必要になる体制整備までを解説します。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 受注を増やすには、案件の金額を読むことより先にライバル企業数を見極めることが優先される
- 経営事項審査の評点は、参加できる工事の規模そのものを左右する仕組みになっている
- 発注機関・工種を分散させることで、競合が集中しやすい案件への偏りを避けられる
- 受注が拡大すると、専任の入札体制や許可・技術者要件への対応が新たに必要になる
公共工事の受注を増やすために、まず何から取り組むべきか?
公共工事で受注を増やす際に、最初につまずきやすいのが「良い案件を見極めてから動こう」という考え方です。実務上は、案件の金額を精緻に読むことよりも、入札の本数を積み重ねながらライバル企業数を見極めていくことが優先されるとされています。
入札本数を増やすことが受注増の起点になる理由
公共工事の入札情報は公開されているため、過去の入札結果を追いかけることで、どの案件にどの程度の企業が参入しているかを後から確認できます。ただし、この傾向をつかむには一定の入札件数をこなす必要があり、最初から少数の案件だけを選んで臨んでも、傾向をつかむための材料が不足しがちです。
受注を増やすことに成功した会社の多くは、最初の時期に落札できるかどうかよりも、入札という行動自体を積み重ねることを優先しています。
案件選びで「ライバル企業数」を優先して見極める考え方
入札額の精度を高めることよりも先に、その案件にどの程度のライバル企業が参入してくるかを見極めることが優先されるという見解があります。案件の規模や金額の大きさに気を取られがちですが、実務上はまず競合の数を確認する視点の方が優先度が高いとされています。
最初の数か月は結果が出なくても入札を継続する重要性
公共工事の入札に取り組み始めた会社の中には、最初の数か月は思うように落札できず、案件選びや積算の精度に苦労するケースがあります。

できない状況でも数をこなしていったというところが、おそらく最も大きなポイントだと考えています。
落札できない期間があることを前提に、入札の本数自体を止めない姿勢が、競合の傾向をつかむ材料を集めることにもつながります。
- 入札情報は公開されているため、一定の入札件数を重ねることで競合の傾向をつかむ材料が集まる
- 案件の規模や金額の大きさよりも先に、その案件に参入するライバル企業数を見極める
- 落札できない期間があることを前提に、入札という行動自体を止めずに継続する
経営事項審査(経審)の評点は、受注増にどうつながるか?
公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、経営事項審査(経審)を原則として受ける必要があります。経審の結果は、単なる資格確認にとどまらず、受注できる案件の規模そのものを左右する仕組みになっています。
経審のP点が入札参加できる工事規模を左右する仕組み
経審は、発注機関が入札参加者の資格を客観的に評価するための審査で、審査結果として算出される総合評定値(P点)がランク(等級)付けの根拠になります。ランクが高いほど、より大規模・高額な案件に参加できる仕組みです。経審の有効期間は審査基準日から1年7か月とされているため、参加したい案件の公告時期から逆算して受審時期を管理する必要があります。
- 審査結果として算出される総合評定値(P点)がランク(等級)付けの根拠になる
- ランクが高いほど、より大規模・高額な案件に参加できる
- 経審の有効期間は審査基準日から1年7か月とされ、参加したい案件の公告時期から逆算して受審時期を管理する
評点を左右する審査項目の捉え方
経審の審査項目は「経営状況」「経営規模」「技術力」「その他の審査項目(社会性等)」の4区分で構成されています。受注を増やす目的で経審に取り組む場合、目先の1回の評点だけでなく、どの項目が自社の弱点になっているかを継続的に把握しておく視点が必要になります。
経審の詳しい評点構造や、評点と落札しやすさの関係についてはより詳細な整理が必要になるため、本記事では受注増との関係の全体像にとどめます。
発注機関・工種はどう選べば自社の強みを活かせるか?
公共工事の発注者は国・都道府県・市区町村・独立行政法人など多岐にわたり、扱う工種も土木・建築・電気・管工事などさまざまです。受注を増やす段階では、どの発注機関・工種を主戦場にするかという土俵選びが実務上の分かれ目になります。
官公需法に基づく中小企業向け受注機会の広がり
国は「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」(官公需法)に基づき、毎年度「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」を閣議決定・公表しています。分割発注や、共同受注体制を持つ事業協同組合等を対象にした官公需適格組合制度など、中小企業が公共工事等を受注しやすくするための施策が制度として定められています。
令和8年度方針(令和8年4月21日閣議決定)では、中小企業・小規模事業者向け契約目標が国等全体で引き続き61%、新規中小企業者向け契約目標が3%以上とされています。
この施策は、公共工事が大企業だけのものではなく、中小企業にも制度上の受注機会が確保されていることを示すものです。ただし、具体的にどの発注機関・工種で自社が参入しやすいかは、次に説明する競合状況の見極めと合わせて判断する必要があります。
- 官公需法に基づき、毎年度「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」が閣議決定・公表されている
- 分割発注や、共同受注体制を持つ事業協同組合等を対象にした官公需適格組合制度が設けられている
- 令和8年度方針では、中小企業・小規模事業者向け契約目標が国等全体で引き続き61%、新規中小企業者向け契約目標が3%以上とされている
競合が集中しやすい発注機関・案件を避ける視点
発注機関の知名度が高いほど入札参加者が集まりやすく、競合が集中する傾向があります。逆に、知名度の低い発注機関や、規模の小さい案件では競合が少なくなりやすいという見方があります。受注を増やす段階では、有名な発注機関だけを追いかけるのではなく、競合が集中しにくい発注機関にも目を向ける視点が重要になります。
専門工種に偏らず入札割合を分散する考え方
自社の専門工種を持つ建設会社ほど、その工種の案件ばかりに入札が偏りやすい傾向があります。専門分野に強みがあること自体は自然なことですが、工種が偏ると、案件が固定化しやすい側面もあります。



電気工事業の企業が電気工事ばかり入札してしまう傾向は避けられないものですが、意識的に他工種にも入札割合を確保している企業は、優れた経営判断をしていると思います。
このように、自社の得意な工種を軸に据えつつ、他工種にも一定割合の入札を確保しておくことが、発注機関・工種選びにおける現実的なバランスの取り方といえます。
落札率を高めるための実務上のポイントとは?
受注を増やす段階では、入札件数だけでなく、1件あたりの落札しやすさをどう高めるかという実務上の工夫も必要になります。
予定価格の公表・非公表による戦略の違い
公共工事の入札では、発注者があらかじめ予定価格を公表している案件と、公表していない案件があります。予定価格の公表・非公表は、入札の進め方を左右します。



予定価格が読めるかどうかで、入札戦略の幅は変わってきます。予定価格が1億円であれば、9,999万円で入札するのか、それとも安全を取るのか、といった具体的な判断が可能になります。
一方、予定価格が非公表の案件は金額の読みが難しくなる分、他社が入札を避ける傾向があり、競争が緩やかになりやすいという見方もあります。どちらの方式にも一長一短があるため、案件ごとの公表方式を確認した上で戦略を切り替えることが実務上のポイントになります。
入札参加社数が少ない案件を狙う考え方
公共工事では、参加社数が4社以下程度の案件を狙うのが基本的な考え方とされ、10社以上が参加するような競争の激しい案件は避ける傾向があるとされています。過去の入札結果を確認すれば、案件ごとにどの程度の企業が参加してきたかをある程度把握できます。
| 入札参加社数の目安 | 競争環境の傾向 | 実務上の位置づけ |
|---|---|---|
| 4社以下 | 競争が緩やかになりやすい | 優先的に検討したい案件 |
| 5〜9社程度 | 案件により競争度合いにばらつきがある | 過去の入札結果を確認して判断 |
| 10社以上 | 競争が激しくなりやすい | 避ける傾向があるとされる案件 |
公式統計の「落札率」と現場でいう「落札確率」の違い
公共工事に関する数値を調べると「落札率」という言葉が出てきますが、意味の異なる2つの使われ方がある点に注意が必要です。一般に公表される落札率は「落札価格÷予定価格×100」で算出される価格ベースの指標で、発注機関や工種、その案件の競争状況によって水準が変わります。
予定価格を入札前に公表する案件では、参加者が予定価格の直下を狙いやすいため価格が高い水準に集まりやすく、事後公表の案件では積算の精度がそのまま価格差になって現れます。
一方、公共工事の実務でしばしば語られる「落札確率」は、入札した件数のうち何件を落札できたかという件数ベースの指標であり、価格ベースの落札率とは全く別の概念です。この件数ベースの指標について、ライバル数を意識せずに入札する会社は10%を下回りやすい一方、ライバル数を意識して定期的に入札する会社は平均25%程度に達するという見解が紹介されています。
同じ「落札率」という言葉でも、価格の比率を指すのか件数の割合を指すのかによって全く意味が異なるため、記事や資料を読む際にはどちらの指標かを確認する必要があります。
受注拡大後に必要になる施工体制の整備とは?
入札本数を増やし落札が続くようになると、今度は受注した工事を実際にこなすための体制が課題になります。ここでは、受注が拡大した段階で必要になる整備のポイントを整理します。
受注規模の拡大に伴い必要になる許可・技術者要件
受注する工事の請負代金が一定額を超えると、下請契約の総額に応じて特定建設業許可が必要になったり、主任技術者・監理技術者の専任配置が求められたりします。施行令第2条に基づく特定建設業許可が必要な下請代金の総額は、令和7年2月1日以降は5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)です。
また、施行令第27条に基づく主任技術者・監理技術者の専任が必要な請負代金は、同じく令和7年2月1日以降は4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)とされています。これらは別の条文に基づく別の基準額であるため、どちらの基準を指しているかを確認しながら整理する必要があります。
| 区分 | 根拠 | 基準額(令和7年2月1日以降) |
|---|---|---|
| 特定建設業許可が必要な下請契約の総額 | 施行令第2条 | 5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上) |
| 主任技術者・監理技術者の専任が必要な請負代金 | 施行令第27条 | 4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上) |
入札業務を専任チームとして体制化する考え方
月10〜20本といった水準で入札を継続するには、経営者が空いた時間に対応するだけでは体制として不十分になりやすいという見方があります。受注を増やし続けるには、入札業務を経営者の片手間の作業ではなく、専任の担当業務として位置づけることが前提になります。
建設業界全体では就業者の高齢化と減少が進んでおり、こうした人手不足の状況を踏まえると、必ずしも建設業経験者にこだわらず、案件探索や積算補助といった業務から専任担当を育成していく発想も選択肢になります。
落札後トラブルに備えた協力会社との関係構築
受注が拡大する過程では、施工を担う協力会社との関係も重要な体制の一部になります。協力会社側の事情で施工内容や条件が変わるリスクに備え、日頃からの関係構築が必要です。



協力会社が『できる』と言っていたのにできないとか、この金額だとあの業務は含まれていないとか、途端に言い出すケースがあります。
このようなケースは、受注が増えて取引する協力会社の数が増えるほど起こりうるものです。特定の協力会社に依存しすぎず、複数の協力会社とのネットワークを日頃から広げておくことが、受注拡大後のトラブルに備える上で現実的な対応になります。
公共工事への参入は何から検討すればよいか?
ここまで見てきたように、公共工事の受注を増やすためには、入札本数を積み重ねながらライバル企業数を見極める視点、経営事項審査の評点を継続的に管理する視点、発注機関・工種を分散させる視点、そして受注拡大後の許可・体制整備までを段階的に押さえていく必要があります。
いずれも一度の取り組みで完結するものではなく、案件を重ねながら自社の状況に合わせて調整し続けることが前提になります。
- 入札本数を積み重ねながらライバル企業数を見極める
- 経営事項審査の評点を継続的に管理する
- 発注機関・工種を分散させる
- 受注拡大後の許可・技術者要件や体制整備まで段階的に押さえる
公共工事は大手企業や実績のある会社でなければ参入できない事業だと受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みになっています。
どの段階から着手すべきかを整理する際には、経審の評点や発注機関の入札公告といった制度上の情報を確認しながら、自社に合った進め方を検討することが出発点になります。
よくある質問
- 公共工事の受注を増やすには、まず何件くらい入札すればよいか?
-
具体的な件数は工種や地域、目標とする売上規模によって異なりますが、月10〜20本程度を継続的に入札する体制を前提とする見解が紹介されています。まずは自社の目標売上規模から逆算し、週あたりどの程度の入札本数が必要かを整理することが出発点になります。
- 経営事項審査を受けていない会社は、受注を増やす取り組みをどこから始めればよいか?
-
公共工事を発注者から直接請け負うには経審の受審が前提になるため、未受審の場合はまず受審に向けた準備を整えることが出発点になります。経審は「経営状況」「経営規模」「技術力」「その他の審査項目(社会性等)」の区分で評価されるため、自社の決算内容や技術者の配置状況を事前に確認しておくと受審の準備が進めやすくなります。
- 競合が少ない案件かどうかは、どのように確認できるか?
-
公共工事の入札結果は発注機関が公表しているため、過去の同種案件における入札参加社数を確認することで、競合の傾向をある程度把握できます。一定数の入札を継続しながら、発注機関・工種ごとの傾向を蓄積していくことが実務上の方法になります。
- 受注が急に増えた場合、どんな許可・体制の見直しが必要になるか?
-
下請契約の総額や請負代金の規模によっては、特定建設業許可の取得や、主任技術者・監理技術者の専任配置が必要になる場合があります。それぞれ判断基準となる金額が異なるため、自社が現在どの基準に近づいているかを事前に確認しておくことが重要です。
まとめ
公共工事の受注を増やすには、案件の金額を精緻に読むことよりも、入札本数を積み重ねながらライバル企業数を見極める姿勢が出発点になります。その上で、経営事項審査の評点を継続的に管理し、発注機関・工種を一つに偏らせず分散させることが、受注の土台を安定させることにつながります。
落札率を高める実務では、予定価格の公表・非公表による戦略の違いや、参加社数の少ない案件を見極める視点が重要です。そして受注が拡大した後は、許可・技術者要件への対応や、専任の入札体制、協力会社とのネットワークづくりといった新たな課題が生じます。これらを段階的に押さえていくことが、公共工事での受注拡大を継続させる考え方になります。
- 受注を増やすには、案件の金額を読むことより先にライバル企業数を見極める
- 経営事項審査の評点を継続的に管理し、参加できる案件規模を把握する
- 発注機関・工種を分散させ、競合が集中しやすい案件への偏りを避ける
- 受注拡大後は許可・技術者要件と専任体制への対応が新たな課題になる
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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