官公需法とは?中小企業の受注機会を広げる仕組みと狙いを解説


官公需法とは、国などが工事や物品、サービスの契約を結ぶ際に、中小企業者の受注の機会を確保するための措置を定めた法律です。正式名称は「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」で、昭和41年法律第97号にあたります。
この記事では、法律の目的と仕組み、中小企業者の範囲、毎年度の基本方針と契約目標、建設工事の発注で講じられる措置、官公需適格組合までを、2026年10月執筆時点の情報をもとに整理します。あわせて、公共工事への参入との関わりにも触れます。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 官公需法は、国などの契約で中小企業者の受注の機会の増大に「努める」ことを求める法律で、受注を約束するものではない
- 建設業の場合は、資本金3億円以下の会社、または従業員300人以下の会社や個人が中小企業者にあたり、設立や開業から10年未満なら新規中小企業者になる
- 国は毎年度、基本方針を閣議決定し、各省庁が契約の方針を公表する。令和8年度の基本方針は、令和8年4月21日に閣議決定された
- 国土交通省の方針には、中小建設業者の受注機会、契約後の価格や支払いへの配慮、発注情報の公表が盛り込まれている
官公需法とは?目的と仕組み
官公需法は、国などの契約で中小企業者に受注の機会が回るよう、国に取り組みを求める法律です。対象は国などが発注者となる契約で、民間工事には適用されません。
官公需法は国等の契約で中小企業者の受注機会を確保する法律
官公需法の目的は、第1条に定められています。国等の契約で、新規中小企業者をはじめとする中小企業者の受注の機会を確保する措置を講じ、中小企業の発展に資することです。
第3条は、国等が契約を結ぶ際に、予算の適正な使用に留意しつつ、中小企業者の受注の機会の増大を図るよう努めなければならないと定めています。新規中小企業者や組合を契約の相手方として活用するよう配慮することも求めています。
官公需法は国等に「努める」ことを求める法律で、中小企業者に受注を保証する法律ではありません。条文は、受注の割り当てではなく、機会の増大を図る努力を定めています。
対象は国と公庫等で、地方公共団体は国の施策に準じて努める
第2条第3項は、「国等」を国と公庫等と定義しています。公庫等とは、沖縄振興開発金融公庫その他の特別の法律によって設立された法人で、政令で定めるものです。
都道府県や市町村などの地方公共団体は、国等には含まれません。第8条は、地方公共団体に対し、国の施策に準じて、中小企業者の受注の機会を確保するために必要な施策を講ずるよう努めることを求めています。
法律の主な条文とその役割
本則は第1条から第9条までの短い構成です。第3条から第9条の役割は、次のとおりです。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 第3条 | 国等が、中小企業者の受注の機会の増大に努める。新規中小企業者と組合を契約の相手方として活用するよう配慮する |
| 第4条 | 国が毎年度、基本方針を作成する。経済産業大臣が案を作成して閣議決定を求め、決定後に公表する |
| 第5条 | 各省各庁の長と公庫等の長が、毎年度、基本方針に即した契約の方針を作成し、公表する |
| 第6条 | 各省各庁の長等が契約の実績の概要を経済産業大臣に通知し、経済産業大臣が公表する |
| 第7条 | 経済産業大臣などが、必要な措置をとるよう各省各庁の長等に要請できる |
| 第8条 | 地方公共団体は、国の施策に準じて、必要な施策を講ずるよう努める |
| 第9条 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構が、情報の提供などの協力業務を行う |
官公需法でいう「中小企業者」と「新規中小企業者」とは
官公需法の対象となる「中小企業者」は、法律で範囲が定められています。建設会社が対象になるかどうかは、資本金や従業員の数で判断されます。
建設業は資本金3億円以下または従業員300人以下
建設業は、第2条第1項第1号に挙げられた業種です。この号は、資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社、あるいは常時使用する従業員の数が300人以下の会社や個人を、中小企業者としています。
| 主たる事業 | 資本金または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
表のほかに、政令で定める業種には別の基準があります。建設業を主たる事業とする会社は、表の1行目が基準です。
官公需法の中小企業者の範囲は、建設業法の許可区分(一般建設業と特定建設業)や、入札参加資格の等級とは別の基準です。同じ会社でも、それぞれの制度で扱いが異なる点に注意が必要です。
新規中小企業者は事業開始や設立から10年未満
第2条第2項は、中小企業者のうち、事業を開始した日以後の期間が10年未満の個人、または設立の日以後の期間が10年未満の会社を、新規中小企業者としています。
新規中小企業者は、第3条で、国等が契約の相手方として活用するよう配慮する対象に挙げられています。創業から日が浅い建設会社にも、制度上の位置づけがあります。
特定の組合も対象に含まれる
第2条第1項第4号は、特別の法律によって設立された組合とその連合会のうち政令で定めるもので、構成員の3分の2以上が中小企業者にあたるものを、組合としています。企業組合と協業組合も組合に含まれます。
組合は、新規中小企業者とあわせて、第3条で活用に配慮する対象とされています。組合を通じた受注の仕組みは、後半の官公需適格組合の項目で確認します。
毎年度の基本方針と契約の方針はどう決まるのか
官公需法は、国が毎年度、方針を定める仕組みを置いています。基本方針で国全体の目標を示し、各省庁がそれに即して自らの契約の方針を作ります。
国は毎年度、基本方針を作成して閣議決定する
第4条は、国が毎年度、中小企業者の受注の機会の増大を図るための基本的な方針を作成すると定めています。経済産業大臣が各省各庁の長等と協議して案を作り、閣議決定を求め、決定後に遅滞なく公表します。
令和8年度の基本方針は、令和8年4月21日に閣議決定されました。中小企業向けの契約目標は前年度と同じ61%、新規中小企業者の契約比率は国等全体として3%以上を目指すとされています。
各省庁は基本方針に即して契約の方針を作成する
第5条は、各省各庁の長と公庫等の長が、毎年度、基本方針に即して契約の方針を作成し、公表すると定めています。方針には、目標、講ずる措置、新規中小企業者と組合の活用などを盛り込みます。
| 区分 | 中小企業・小規模事業者向け契約目標 | 新規中小企業者向け契約目標 |
|---|---|---|
| 国等全体(令和8年4月21日閣議決定の基本方針) | 61% | 3%以上 |
| 国土交通省(令和8年5月26日制定) | 比率63.8%、金額約1兆7,517億円 | 1.7%以上 |
| 財務省(令和8年4月) | 比率67.4%、金額約502億円 | 3%以上 |
省庁ごとの目標は、各省庁の官公需予算総額に占める契約金額の比率で示され、国等全体の数字とは別のものです。国土交通省は、官公需予算総額の約7割を工事が占めることなど、調達分野ごとの特性を考慮するとしています。
これらの目標は「努めるものとする」と書かれた努力目標です。個々の工事で中小企業が受注することを約束する数字ではありません。
契約の実績は経済産業大臣に通知され公表される
第6条は、各省各庁の長等が、会計年度の終了後、中小企業者との国等の契約の実績の概要を経済産業大臣に通知すると定めています。経済産業大臣は、通知を受けたら遅滞なく内容を公表します。
目標を掲げるだけでなく、実績を公表する仕組みがあるため、各省庁が目標に対してどの程度の実績だったかを確認できます。
建設工事の発注では中小建設業者の受注機会をどう広げるのか
国土交通省の令和8年度の方針には、中小建設業者の受注機会を広げるための措置が具体的に書かれています。ここでは、方針の記載にそって、主な措置を整理します。
競争に参加する機会を広げる措置
国土交通省の方針は、一般競争入札や指名競争入札で、極力同一の資格等級区分内の者による競争を確保するとしています。そのうえで、参加の機会を広げるための配慮を挙げています。
- 優良な工事成績を上げた中小建設業者には、施工能力等を勘案し、上位の等級に属する工事の競争に参加できるよう配慮する
- 共同による請負の適切な活用を一層推進し、中小建設業者の受注機会の増大を図る
- 競争入札に必要な資格や公共工事の規模を、地域の実情に配慮して設定する
- 新規中小企業者の受注機会のため、一般競争入札で評価項目を設定する際は、契約の履行に支障がない限り、過去の実績を過度に求めないよう配慮する
- 物件等の発注では、分離・分割して発注することが履行に資するかを検討し、資すると認められた場合は実施する
方針の表現は「配慮する」「検討する」といったものが多く、個別の入札での参加や落札を約束するものではありません。
契約後の価格や支払いに関する措置
方針は、契約を結んだあとの価格や支払いについても、発注者として講ずる措置を挙げています。工事の発注に関する主な内容は、次のとおりです。
- 労務費、原材料費、エネルギーコスト等が上昇したときの請負代金額の変更について、あらかじめ契約に条項を設定する
- 資材価格の高騰などで受注者から契約変更の協議の申出があったときは、誠実に応じる。予算の不足や入札による契約であることを理由に協議に応じないことはしない
- 基準価格を下回る入札があったときは、低入札価格調査制度を活用し、ダンピング受注の防止を図る
- 受注者の資金繰りがしやすいよう、部分払に努める
- 国等に対する債権の譲渡が必要と認められる場合は、対応する
公共工事の価格や支払いの実務は、契約書や発注者の約款で定まります。方針は、発注者側の姿勢を示すものとして読むとよいでしょう。
発注情報の公表と相談窓口
国土交通省の方針は、一般競争入札による発注の情報と落札の情報、発注計画の情報を、ホームページへの掲載で提供するとしています。大臣官房会計課等の「官公需相談窓口」では、中小企業・小規模事業者からの官公需の相談に応じ、入札に関する参加資格登録などの情報を提供するとされています。
地方公共団体の発注は各団体の運用による
国土交通省の方針は、国土交通省の全ての部局に適用されるものです。市町村や都道府県の発注には直接適用されず、第8条にもとづいて、各団体が国の施策に準じて施策を講ずるよう努める立場にあります。
国土交通省は、官公需確保対策地方推進協議会や、地域発注者協議会などを通じて、地方公共団体と情報を共有するとしています。実際の発注方法は、各団体の入札公告や要綱で確認します。
官公需適格組合とは?組合を通じた受注の仕組み
官公需法は、組合の活用にも配慮するよう国等に求めています。組合のうち、中小企業庁の証明を受けた官公需適格組合には、入札の資格審査で特例を設けている自治体があります。
官公需適格組合は中小企業庁の証明を受けた組合
札幌市は、中小企業庁の官公需適格組合の証明を受けた組合について、競争入札参加資格審査を申請する際の特例措置を設けています。国土交通省の方針も、官公需適格組合を含む中小企業・小規模事業者の受注機会の増大を図るとしています。
証明の要件や手続きは、中小企業庁が定める事務処理要領などによります。本記事では要件の詳細を確認できていないため、組合の設立や証明を検討する場合は、中小企業庁や所管の窓口で最新の内容を確認してください。
札幌市の例では組合員の数値と合わせて等級が評価される
札幌市の資料では、官公需適格組合の特例の内容として、次の点が示されています。
- 事前の申し出により、申請の受付方法と、等級区分の格付けの方法で特例を受けられる
- 特例は組合として申請する場合に限られ、組合員が単独で申請する場合は適用されない
- 資格審査の申請は随時でき、申請書類は窓口へ持参する方法になる
- 等級区分の格付けでは、実績などの審査項目を、組合と、組合が指定した10者までの組合員の合算数値や平均数値で申請できる
- 組合の実績のみによる通常の申請と、特例による申請を選択できる
この内容は札幌市の令和8年度の取扱いで、ほかの自治体や発注機関では異なる場合があります。
国の物件の買入れでは事業協同組合等と随意契約できる場合がある
予算決算及び会計令第99条第18号は、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、商工組合、商工組合連合会の保護育成のために、これらの者から直接に物件を買い入れるときを、随意契約によることができる場合として挙げています。
国土交通省の方針も、事業協同組合等との随意契約を締結できるとされていることから、その可能性を排除しないよう留意するとしています。第99条第18号は物件の買入れの規定で、工事の請負にも同じ扱いが及ぶかは、本記事では確認できていません。
官公需法は公共工事への参入にどうつながるのか?
官公需法は、国などの契約で中小企業者の受注機会を広げる方向を定めた法律です。ただし、受注を約束する法律ではなく、実際に入札へ参加するには、発注機関ごとの入札参加資格の審査を受ける必要があります。
- 国等の契約では、中小企業者の受注機会の増大が、法律上の努力目標になっている
- 毎年度の基本方針と各省庁の契約の方針で、目標と措置が公表されている
- 実際の発注は、入札公告や入札参加資格などの個別の条件に従う
公共工事に参入する理由は、売上だけではありません。

別に公共工事でなくてもいいのですが、公共工事であれば元請けのポジションをすぐに取れるので、それはいいかなと思います。
公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。
公共工事への参入に向けた全体像は、下記で詳しく確認できます。
よくある質問
- 官公需法に違反した場合の罰則はあるのか?
-
法律の本則(第1条から第9条)には、罰則の規定が見当たりません。国等に「努める」ことや「配慮する」ことを求める内容が中心で、受注者に義務を課す規定ではありません。
- 中小企業向け契約目標の61%に、市町村の工事は含まれるのか?
-
基本方針の対象は、国と公庫等を指す国等です。市町村などの地方公共団体は国等に含まれないため、地方公共団体の契約は、この目標の対象ではありません。地方公共団体は、第8条にもとづき、国の施策に準じて努める立場です。
- 61%という目標は、工事の6割を中小企業が受注するという意味なのか?
-
目標は、官公需予算の総額に占める中小企業・小規模事業者向けの契約金額の比率で示される数字です。工事の件数や、個々の工事での受注を約束するものではありません。
- 資本金が3億円を超える会社は、公共工事の入札に参加できないのか?
-
官公需法の中小企業者は、受注の機会を確保する対象の範囲を示すものです。入札に参加できるかどうかは、発注機関が定める入札参加資格の審査で決まります。建設業を主たる事業とする会社は、資本金が3億円を超えても、従業員が300人以下であれば、第2条第1項第1号の中小企業者にあたります。
まとめ
官公需法は、国などの契約で、新規中小企業者をはじめとする中小企業者の受注の機会の増大に努めることを求める法律です。建設業は、資本金3億円以下の会社、または従業員300人以下の会社や個人が中小企業者にあたり、設立や開業から10年未満なら新規中小企業者になります。
国は毎年度、基本方針を閣議決定し、各省庁が契約の方針を公表します。国土交通省の令和8年度の方針には、中小建設業者の受注機会、契約後の価格や支払い、発注情報の公表に関する措置が盛り込まれています。
目標や措置は努力目標で、個々の入札での受注を約束するものではありません。本記事の内容は2026年10月執筆時点の情報のため、実際の発注では、発注機関の入札公告や最新の方針を確認してください。
- 官公需法は国等に受注機会の増大を求める努力義務の法律で、受注を約束するものではない
- 建設業の中小企業者は、資本金3億円以下の会社、または従業員300人以下の会社や個人
- 毎年度の基本方針と各省庁の契約の方針で、目標と措置が公表される
- 実際に入札へ参加するには、発注機関の入札参加資格と入札公告の条件を確認する
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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