公共工事の落札率とは?計算方法や落札率を上げる考え方を徹底解説


公共工事の入札結果を見ると「落札率」という言葉が頻繁に出てきます。ところが、この指標の計算方法や、どのくらいの水準が適正なのかを正しく理解している経営者は多くありません。読み方を間違えると、入札戦略そのものを誤ることになりかねません。
この記事では、落札率の計算方法と実態の水準を整理し、指標を上げるための考え方を競争環境の見極めから入札額の戦略、入札の継続まで順に解説します。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 落札率は落札価格を予定価格で割った割合で、価格ベースの指標である
- 指標の水準は予定価格の公表方式や競争環境によって傾向が変わる
- 指標を上げるには、金額の読みより先に競争環境を見極めることが優先される
- 入札本数を積み重ねて相場観を磨き、固定化を避けることが継続の鍵になる
落札率とは?計算方法と読み方
落札率は、落札された価格が発注者の見積り(予定価格)に対して何%だったかを示す指標です。計算式は次のとおりです。
| 計算式 | 計算例 |
|---|---|
| 落札率=落札価格÷予定価格×100 | 予定価格1億円、落札価格9,500万円の場合 → 95.0% |
予定価格とは、発注者が工事内容を積算して設定する価格です。公共工事ではこの予定価格の範囲内で入札参加者が価格を提示し、原則として最も低い価格を提示した事業者が落札します。落札率が高いほど予定価格に近い金額で受注できたことを意味し、逆に低いほど予定価格から大きく下がった金額で受注したことになります。
「落札率」と「落札確率」は別のもの
公共工事の実務で使われる言葉には、落札率とよく似た「落札確率」があります。落札確率は、入札した件数のうち何件を落札できたかという件数ベースの指標で、価格の比率を示す指標とは全く別の概念です。
同じ言葉でも、価格の比率を指すのか件数の割合を指すのかで意味が変わります。記事や資料を読む際には、どちらの指標かを確認することが必要です。
なお、公共工事の入札結果は発注機関が公表しているため、案件ごとの落札価格や予定価格との比率を後から確認できます。過去の同種案件でどの価格帯で落札が決まっているかを把握することは、自社の入札戦略を考える材料になります。
落札率の実態と水準
落札率がどのくらいの水準に集まるかは、全国一律ではありません。発注機関、工種、地域、その案件の競争状況によって変わります。全国平均を示す公的な統計は公表されていないため、自社が入札する範囲で確かめるのが確実です。
制度が落札率の下限を決めている
落札率には制度上の下限があります。多くの発注者はダンピング対策として最低制限価格または低入札価格調査基準価格を設定しており、国の低入札価格調査基準の範囲は予定価格の75〜92%です。
この範囲を下回る価格で応札すると、最低制限価格制度の案件では失格になり、低入札価格調査制度の案件では価格の妥当性を調べる調査の対象になります。地方公共団体もこの国の基準を参考に設定しているため、落札率が下限を大きく割り込むことは多くありません。
予定価格の公表方式で傾向が変わる
予定価格を入札前に公表するか、開札後に公表するかによって、価格の付き方は変わります。事前公表の案件は予定価格の直下を狙いやすい反面、同額応札によるくじ引きや最低制限価格への張り付きが起きやすくなります。
事後公表の案件は価格が読みにくい分、積算の精度が結果を左右します。失格のリスクはありますが、その分だけ利益を確保できる水準で応札しやすくなります。
なお国は、競争が制限されて落札価格が高止まりすること、見積努力を損なわせること、談合が容易になることなどを理由に、予定価格を入札前に公表しないことを原則としています。
自社の基準は過去の入札結果から作る
「何%が適正か」を一般論で決める必要はありません。公共工事の入札結果は発注機関が公表しているため、自社が狙う発注者と工種に絞って過去の落札価格と予定価格を集めれば、その範囲での実際の水準が分かります。
| 調べる項目 | 読み取れること |
|---|---|
| 同種案件の落札価格÷予定価格 | その発注者・工種で実際に決まっている水準 |
| 入札参加者数 | 競争の激しさ。少ないほど価格を上げやすい |
| 最低制限価格・調査基準価格の設定方式 | 下限がどこに置かれるか |
| 同額応札によるくじ引きの有無 | 予定価格の直下への張り付きが常態化しているか |
この作業を数十件分積み上げると、自社にとっての「高い・低い」の基準ができます。一般論の数値より、自社が実際に入札する範囲の数値の方が判断材料になります。
落札率を上げるには競争環境を見極める
指標を上げる(予定価格に近い水準で受注する)取り組みは、入札額の精度を磨くことより先に、どの案件に入札するかという競争環境の見極めから始まります。
金額の読みより先にライバル企業数を見極める
金額の読みより先にライバル企業数を見極めることが優先されるという見解があります。
「数字(金額)が重要だ」という話を大前提として申し上げましたが、その前に、ライバルが多いのか少ないのかをきちんと見極めた上で臨むよう伝えています。
公共工事の入札結果は発注機関が公表しているため、過去の同種案件で何社が参加してきたかを確認できます。参加社数が少ない案件ほど、価格競争に巻き込まれにくく、予定価格に近い水準を維持できる傾向があります。
参加社数と予定価格の公表方式を確認する
公共工事では、参加社数が4社以下の案件を狙うのが基本的な考え方とされ、10社以上が参加するような競争の激しい案件は避ける傾向があります。案件を選ぶ際は、参加社数の傾向に加えて、予定価格が事前公表か事後公表かを確認しておくことが重要です。
- 過去の入札結果から参加社数の傾向を確認する
- 参加社数が4社以下の案件を優先的に検討する
- 予定価格の公表方式(事前・事後)を案件ごとに確認する
落札率を上げるには入札額の戦略を立てる
競争環境を見極めた上で、入札額をどう設定するかが次の段階です。予定価格の公表方式によって、戦略の立て方が変わります。
予定価格が公表されている案件の戦略
予定価格が公表されている案件は、入札戦略が立てやすいという特徴があります。予定価格との差をどの程度つけるかを、数値ベースで判断できます。
予定価格が公表されている案件の方が、入札戦略が立てやすいという考え方です。
ただし、予定価格が公表されている案件は他社も同じように直下を狙うため、同額応札によるくじ引きが起きやすいという面もあります。数字だけを追求して予定価格の直下に張り付くのではなく、過去の入札結果から同額応札の頻度を確認した上で判断することが現実的です。
予定価格が非公表の案件の戦略
予定価格が非公表の案件は、読みづらさから他社が入札を避ける傾向があり、競争が緩やかになりやすいという見解があります。自社の積算した工事費を基準に、必要な利益を確保した上で入札額を設定することで、予定価格に近い水準で受注できる余地が生まれます。
一方で、過度に低い価格で応札した場合は、低入札価格調査制度の対象となり、調査に応じられない場合は失格となる場合があります。赤字を前提とした価格設定は、制度面でもリスクが大きい点に注意が必要です。
| 公表方式 | 戦略のポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 予定価格公表 | 予定価格の直下を狙った入札額を設定できる | 同額応札によるくじ引きが起きやすい |
| 予定価格非公表 | 自社の積算を基準に利益を確保した入札額を設定する | 価格の読みが難しく、他社が敬遠しやすい分競争は緩やかになる |
落札率は高ければ高いほどよいのか?
落札率が高いほど利益幅が大きくなるため、高ければ良いと考えられがちです。ただし、落札率が極端に高い案件には、最低制限価格への張り付きや同額応札によるくじ引きが伴うことがあり、落札そのものが運に左右されます。
この高さは、その案件の競争が機能していないことの裏返しである場合があります。くじ引きで落札が決まる案件は、入札参加者の積算力ではなく運が勝敗を分けるため、再現性のある受注拡大にはつながりにくいという指摘があります。
指標を上げる取り組みと並行して、落札確率(入札した件数に対する落札件数の割合)を高める視点も必要です。予定価格の直下を狙うあまり落札できなければ、受注そのものが生まれません。適正な競争環境の案件で、利益を確保できる水準の価格を提示し続けることが、両者のバランスを取る考え方になります。
- 落札率が高い案件は、張り付き・くじ引きの可能性を過去の入札結果で確認する
- 最低制限価格に近い価格帯は、失格と赤字の両面から警戒する
- 落札率と落札確率のバランスを、自社の目標に合わせて設計する
落札率を上げるには入札を継続する
指標の向上は、単発の戦略ではなく、入札を継続することで培われるものです。入札本数を積み重ねると、ライバル企業と自社の価格感覚(相場観)が合致する場面に遭遇しやすくなるとされています。
本数を積み重ねると何が変わるのか
入札を続けていると、当初は大きな差で落ちていた案件が、やがて数万円単位の差で落ちるようになります。これは、相場観と価格の精度が合ってきたサインとされています。
次に、本当に数万円とか10万円とかの差で落ちたり、ちょっとした差で落ちたりすることが次の段階として訪れます。もうそうなったら、ほぼ確実です。ピントが合ってきて、値段が合ってきているということですね。
数万円差まで迫れているなら、入札額の設定そのものはほぼ正しく、あとは本数を重ねて当たりを引く確率を高める段階にあると理解できます。
固定化を避けて入札を多角化する
入札に成功した経験があると、その成功体験の金額帯や工種、発注者に偏っていきやすいという指摘があります。同じ案件ばかりを狙うと、相場観がその領域でしか磨かれず、受注機会そのものが狭まります。工種や発注者を分散させながら入札を継続することが、指標を安定的に高める土台になります。
- 入札本数を積み重ね、数万円差の段階まで相場観を磨く
- 金額帯・工種・発注者を分散させて固定化を避ける
- 入札本数と金額帯の偏りを定期的に確認して軌道修正する
公共工事の受注拡大につなげるには
落札率は、落札価格を予定価格で割った価格ベースの指標であり、競争環境と入札戦略によって変動します。指標を上げるには、ライバル企業数の見極め、予定価格の公表方式に応じた入札額の設定、入札を継続して相場観を磨くことの積み重ねが必要です。
公共工事は大手企業や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、経営事項審査の結果や参加資格を満たせば、会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。
落札率と落札確率のバランスを取りながら、自社に合った案件から入札を継続していくことが、公共工事での受注拡大の出発点になります。
- 過去の入札結果から、競争の少ない案件の傾向を把握する
- 予定価格の公表方式に応じた入札額の戦略を立てる
- 入札を継続して相場観を磨き、固定化を避ける
よくある質問
- 落札率は何%くらいが適正なのか?
-
適正水準は全国一律ではなく、発注機関・工種・地域・競争状況で変わります。ただし下限は制度で決まっており、国の低入札価格調査基準の範囲は予定価格の75〜92%です。自社の基準は、狙う発注者の過去の入札結果から落札価格÷予定価格を集めて作るのが確実です。
- 落札率と落札確率の違いは何か?
-
落札率は落札価格を予定価格で割った価格ベースの指標です。落札確率は、入札した件数のうち何件を落札できたかという件数ベースの指標です。価格の比率と件数の割合で意味が異なるため、資料を読む際はどちらの指標かを確認する必要があります。
- 落札率が高いとくじ引きになることがあると聞いたが、本当か?
-
予定価格を事前に公表する案件では、多くの入札参加者が予定価格の直下を狙うため、同額応札が発生してくじ引きで落札者が決まることがあります。最低制限価格への張り付きが起きる案件も同様です。過去の入札結果で同額応札の頻度を確認しておくことが有効です。
- 予定価格が非公表の案件では、落札率を上げられるのか?
-
予定価格が非公表の案件は、金額の読みづらさから他社が入札を敬遠しやすく、競争が緩やかになりやすいという見解があります。自社の積算した工事費を基準に利益を確保した上で入札額を設定すれば、予定価格に近い水準で受注できる余地があります。
まとめ
落札率は、落札価格を予定価格で割った価格ベースの指標であり、予定価格の公表方式や競争環境によって水準が変わります。
指標を上げるには、入札額の精度を磨くことより先に、ライバル企業数の見極めから始めることが重要です。その上で、予定価格の公表方式に応じた入札額の戦略を立て、入札本数を積み重ねて相場観を磨きます。数字だけを追ってくじ引きに頼るのではなく、利益を確保できる水準で入札を継続することが、公共工事での受注拡大につながります。
- 落札率は落札価格÷予定価格×100で算出され、価格ベースの指標である
- 指標の水準は予定価格の公表方式と競争環境で傾向が変わる
- 競争環境の見極めと入札額の戦略で指標を高める
- 入札を継続して相場観を磨き、固定化を避けることが安定した受注につながる

