とび土工工事業で建設業許可を取るには?取得要件と専任技術者資格


とび・土工・コンクリート工事業(以下、とび土工工事業)は、足場の組立てやくい打ち、土砂の掘削、コンクリート工作物の築造など幅広い工事を扱う専門工事業種です。請負金額が500万円以上の工事を継続的に受けるには、建設業法に基づく建設業許可の取得が必要になります。
この記事では、とび土工工事業に該当する工事内容から、許可の取得要件、専任技術者になれる資格、他の専門工事業種との境界線までを整理します。許可取得は公共工事という受注機会に参入するための入り口の一つであり、記事の後半ではその接続点にも触れます。
なお、「専任技術者」は令和6年12月13日施行の改正建設業法で「営業所技術者等」(一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者)に名称が変わりました。この記事では、広く使われている「専任技術者」の呼称で説明します。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- とび土工工事業は足場・くい・掘削・コンクリート築造という4系統の工事を含む専門工事業種である
- 建設業許可には経営業務の管理体制・専任技術者・財産的基礎・誠実性という4つの要件がある
- 専任技術者は指定学科修了と実務経験、実務経験10年、または国家資格の保有によって要件を満たせる
- 鉄骨組立てや解体工事など、他業種との境界線を誤解しやすい範囲がある
とび土工工事業とはどのような業務を行う建設業許可なのか?
建設業法では建設工事を29の業種に区分しており、とび土工工事業は専門工事27業種の中でも対象範囲が広い業種の一つです。まず、どのような工事がとび土工工事業に含まれるのかを確認します。
とび・土工・コンクリート工事業の対象工事にはどのような種類があるか
とび土工工事業の対象工事は、大きく4つの系統に分けられます。足場の組立てや重量物の運搬配置、くい打ち・くい抜き、土砂の掘削や盛土、コンクリート工作物の築造という広い範囲が1つの業種に含まれている点が、とび土工工事業の特徴です。
具体的には、とび工事や足場等仮設工事、鉄骨組立て工事、くい工事、場所打ぐい工事、土工事、掘削工事、根切り工事、盛土工事、コンクリート工事などが該当します。
- 足場の組立て・重量物のクレーン等による運搬配置・鉄骨等の組立てを行う工事
- くい打ち・くい抜き及び場所打ぐいを行う工事
- 土砂等の掘削・盛土・締固め等を行う工事
- コンクリートにより工作物を築造する工事
これら4系統のいずれかに該当する工事であれば、請負金額の基準を超えた時点でとび土工工事業の許可が必要になります。次に、範囲が重なりやすい解体工事との関係を確認します。
解体工事はとび土工工事業の許可だけで行えるか
平成28年の建設業法改正以前は、工作物の解体を行う工事もとび土工工事業に含まれていました。しかし法改正により「解体工事業」が独立業種として新設され、解体工事はとび土工工事業から分離しています。当時からとび土工工事業の技術者だった人には、解体工事の技術者資格を取得するための経過措置期間が設けられましたが、令和3年6月末で終了しています。
そのため現在は、解体工事を請け負う場合、原則としてとび土工工事業の許可だけでは対応できず、別途「解体工事業」の許可、またはそれに対応する技術者要件を満たす必要があります。
とび土工工事業の建設業許可を取得するにはどの要件を満たす必要があるか?
建設業許可を受けるには、建設業法第7条に定める4つの要件を満たし、かつ第8条の欠格要件に該当しないことが必要です。これはとび土工工事業に限らず、全業種に共通する枠組みです。
経営業務の管理体制の要件とはどのようなものか
経営業務の管理体制については、法人であれば常勤役員1名、個人事業主であれば本人または支配人1名が、建設業に関し5年以上の経営業務管理責任者としての経験を持つこと、またはこれに準ずる地位での経験を持つことのいずれかに該当する必要があります。令和2年の改正により、複数名の体制で要件を満たすパターンも認められるようになりました。
これに加えて、健康保険・厚生年金・雇用保険といった適正な社会保険への加入も要件の一つとされています。
財産的基礎の要件はどのように判断されるか
財産的基礎の要件は、一般建設業の場合、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、過去5年間の継続営業実績のいずれか1つを満たせば足ります。
誠実性の要件はどのように判断されるか
誠実性の要件は、請負契約の締結や履行において不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないことを求めるもので、法人の役員等にも適用されます。
欠格要件に該当するのはどのような場合か
欠格要件には、破産者で復権を得ていない者、許可取消しから5年を経過していない者、暴力団員またはその離脱後5年を経過していない者などが含まれ、役員や使用人がこれに該当する場合は法人・個人事業主とも許可を受けられません。
一般建設業と特定建設業で要件はどう変わるか
下請契約の総額が一定額以上になる場合は、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要になります。とび土工工事業を含む建築一式工事以外の業種では、発注者から直接請け負った1件の工事について下請契約の総額が5,000万円以上となる場合が特定建設業の対象です(建築一式工事は8,000万円以上・施行令第2条)。
特定建設業では、財産的基礎の要件も一般建設業より厳しく、欠損額が資本金の20%以下であることなど複数の基準をすべて満たす必要があります。
- 経営業務の管理体制は、常勤役員1名または個人事業主本人が建設業に関し5年以上の経営業務管理責任者としての経験を持つことなどで満たす
- 健康保険・厚生年金・雇用保険といった適正な社会保険への加入も要件の一つとされている
- 財産的基礎は、自己資本500万円以上・500万円以上の資金調達能力・過去5年間の継続営業実績のいずれか1つを満たせば足りる
- 誠実性は、請負契約の締結や履行において不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないことを求めるものである
- 欠格要件には、破産者で復権を得ていない者や許可取消しから5年を経過していない者などが含まれる
とび土工工事業の専任技術者になれる資格や実務経験にはどのようなものがあるか?
専任技術者は各営業所に専任で配置する必要があり、資格・実務経験のいずれかで要件を満たします。とび土工工事業で認められる主なルートを確認します。
指定学科と実務経験で専任技術者になるにはどうすればよいか
一般建設業の専任技術者は、指定学科を修了した上で一定年数の実務経験を積む方法で要件を満たせます。とび土工工事業の指定学科は「土木工学又は建築学に関する学科」で、高校卒業後は5年以上、大学・高専・短大卒業後は3年以上の実務経験が求められます。指定学科の修了がない場合でも、実務経験のみで10年以上積んでいれば要件を満たせます。
実務経験なしで専任技術者になれる国家資格にはどのようなものがあるか
一定の国家資格を保有していれば、実務経験なしで専任技術者になれます。とび土工工事業では、1級・2級建設機械施工管理技士、1級・2級土木施工管理技士(土木・薬液注入)、1級・2級建築施工管理技士(躯体)、1級技能士(とび・とび工、型枠施工、ウェルポイント施工、コンクリート圧送施工)などが対象です。なお2級技能士については、合格後3年以上の実務経験が別途必要とされています。
令和5年の施工管理技士補の追加はどう影響するか
令和5年7月から、専任技術者になれる資格に1級・2級土木施工管理技士補や建築施工管理技士補などが加わりました。ただし、これらの資格を用いる場合は資格取得に加えて一定の実務経験(3年程度)が求められる点に注意が必要です。監理技術者補佐制度の拡充に合わせた改正のため、資格の名称だけで判断せず、実務経験の要否まで確認しておくと申請時の手戻りを避けやすくなります。
| 要件を満たすルート | 必要な実務経験など |
|---|---|
| 指定学科(土木工学又は建築学に関する学科)を修了し高校を卒業 | 5年以上の実務経験 |
| 指定学科を修了し大学・高専・短大を卒業 | 3年以上の実務経験 |
| 指定学科の修了がない場合 | 10年以上の実務経験 |
| 国家資格(1級・2級建設機械施工管理技士、1級・2級土木施工管理技士、1級・2級建築施工管理技士、1級技能士など) | 実務経験なしで要件を満たせる(2級技能士は合格後3年以上の実務経験が必要) |
| 令和5年7月に追加された施工管理技士補 | 資格取得に加えて一定の実務経験(3年程度)が必要 |
とび土工工事業と他の専門工事業種の境界線で注意すべき点は何か?
とび土工工事業は対象範囲が広い一方、隣接する専門工事業種との線引きが分かりにくい部分もあります。代表的な2つの注意点を挙げます。
鉄骨組立てと鋼構造物工事業の違いをどう見分けるか
とび土工工事業には鉄骨等の組立てを行う工事が含まれますが、鋼材の製造・加工から組立てまでを一貫して行う工事は「鋼構造物工事業」の対象となる場合があります。「鉄骨工事業」という独立した業種区分は存在しないため、請け負う工事の内容が組立てだけなのか、製造・加工まで含むのかによって、必要な許可業種が変わってくる点に注意が必要です。
解体を伴う工事はどの業種の許可が必要か
前述のとおり、解体工事は現在とび土工工事業から独立した業種です。とび工事や土工事を主とする工事の中に解体作業が含まれる場合、その解体部分の位置づけによって、とび土工工事業の許可だけで足りるか、解体工事業の許可も必要になるかが変わります。工事内容を業種ごとに切り分けて確認する作業は、許可申請の初期段階でつまずきやすい点の一つです。
- 鉄骨等の組立てを行う工事は、とび土工工事業に含まれる
- 鋼材の製造・加工から組立てまでを一貫して行う工事は、鋼構造物工事業の対象となる場合がある
- 「鉄骨工事業」という独立した業種区分は存在しない
- 解体工事はとび土工工事業から独立した業種であり、解体部分の位置づけによって必要な許可業種が変わる
とび土工工事業の許可を取得した後、公共工事の入札にどう進むか?
建設業許可は取得して終わりではなく、公共工事の入札に参加するには、その後の手続きも関わってきます。ここでは許可取得後の流れを確認します。
許可取得から経営事項審査までどのような流れで進むか
公共工事の入札に参加するには、建設業許可の取得に加えて、経営状況や技術力を点数化する「経営事項審査」(経審)を受ける必要があります。
建設業許可の取得から経審の完了までにかかる期間は、対応の進め方によって差が出やすい部分です。標準処理期間は申請先の都道府県・地方整備局によって異なるため、具体的な日数は各窓口の手引きで確認する必要があります。
許可取得前でも参加できる入札はあるか
建設業許可を取得していない、あるいは経審を受けていない段階でも、入札の単価や種別によっては参加できる案件が存在します。請負代金500万円未満の軽微な工事であれば、そもそも許可自体が不要です。

建設業許可や経審がないと公共工事には入れない、と思われがちですが、そんなことはありません。
- 公共工事の入札に参加するには、建設業許可の取得に加えて経営事項審査(経審)を受ける必要がある
- 経営事項審査は、経営状況や技術力を点数化する手続きである
- 標準処理期間は申請先の都道府県・地方整備局によって異なるため、具体的な日数は各窓口の手引きで確認する
- 許可や経審がない段階でも、入札の単価や種別によっては参加できる案件が存在する
- 請負代金500万円未満の軽微な工事であれば、そもそも許可自体が不要である
とび土工工事業の許可は公共工事参入にどうつながるか?
ここまで見てきたとび土工工事業の許可要件や専任技術者の資格は、単体で完結する手続きではなく、公共工事という受注機会に参入するための土台という位置づけで捉えることができます。許可取得と並行して経審の準備を進めておくことが、参入後のスケジュールに影響してきます。
公共工事は、大手や実績のある会社だけが対応できるもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。資格や許可がまだ整っていない段階でも、案件の種別や単価によっては参加できる入札が存在する点は、制度上の事実として押さえておく価値があります。



資格がなくても入札できる案件は必ず存在しますので、そういった案件を積極的に探していくべきだと考えます。
- とび土工工事業の許可要件や専任技術者の資格は、公共工事に参入するための土台という位置づけになる
- 許可取得と並行して経審の準備を進めておくことが、参入後のスケジュールに影響する
- 入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる
- 資格や許可がまだ整っていない段階でも、案件の種別や単価によっては参加できる入札が存在する
よくある質問
- とび土工工事業の許可なしで請け負える工事の金額上限はどのくらいですか?
-
建築一式工事以外の建設工事は、請負代金500万円未満(消費税込み)であれば建設業許可なしで請け負えます。とび土工工事業もこの「その他工事」の基準が適用されるため、500万円以上を請け負う場合に許可が必要になります。
- とび土工工事業の専任技術者に実務経験のみで就くことはできますか?
-
指定学科修了がなくても、実務経験のみで10年以上積んでいれば専任技術者の要件を満たせます。指定学科修了者であれば、高卒後5年以上、大卒・高専・短大卒後3年以上の実務経験で足ります。
- 解体工事を含む工事はとび土工工事業の許可だけで受けられますか?
-
原則として受けられません。解体工事は、平成26年6月4日公布・平成28年6月1日施行の改正建設業法でとび土工工事業から独立した業種となっており、解体工事を請け負う場合は別途「解体工事業」の許可、またはそれに対応する技術者要件を満たす必要があります。
- とび土工工事業の許可取得と経営事項審査は同時に進められますか?
-
経営事項審査は建設業許可を取得した後に受ける手続きのため、完全に同時には進められませんが、許可申請の準備段階から経審に必要な書類の整備を並行して進めておくことで、参入までの期間を短縮しやすくなります。
まとめ
とび土工工事業は、足場・くい・掘削・コンクリート築造という4系統の工事を含む対象範囲の広い専門工事業種です。500万円以上の工事を継続的に受けるには、経営業務の管理体制・専任技術者・財産的基礎・誠実性という4つの要件を満たした上で許可を取得する必要があります。
専任技術者は指定学科修了と実務経験、実務経験のみ10年、または国家資格の保有のいずれかで要件を満たせます。あわせて、鉄骨組立てや解体工事のように隣接業種との境界線が分かりにくい範囲もあるため、請け負う工事内容を業種ごとに整理しておくことが申請の手戻りを防ぐ助けになります。
許可取得はそれ自体が目的ではなく、経営事項審査を経て公共工事に参入するための土台です。許可要件の整理と並行して、経審や入札参加までの流れを見据えて準備を進めることが、参入後のスケジュールに影響してきます。
- とび土工工事業は足場・くい・掘削・コンクリート築造の4系統を含む対象範囲の広い業種である
- 許可には経営業務の管理体制・専任技術者・財産的基礎・誠実性の4要件を満たす必要がある
- 専任技術者は指定学科+実務経験、実務経験10年、または国家資格の保有で要件を満たせる
- 鉄骨組立てや解体工事など隣接業種との境界線を工事内容ごとに確認しておく必要がある
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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