公共工事の予定価格はどう決まる?公表ルールと入札との関係を解説

公共工事の予定価格はどう決まる?公表ルールと入札との関係を解説
監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

予定価格は、公共工事の発注者が仕様書や設計書などをもとにあらかじめ定める、契約金額の上限となる価格です。競争入札では、予定価格の制限の範囲内で最も安い価格を申し込んだ者が、原則として契約の相手方になります。

この記事では、予定価格の決まり方、公表のルール、入札との関係を、2026年10月執筆時点の法令・指針・公的な調査をもとに整理します。あわせて、公共工事の受注との関わりにも触れます。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 予定価格は発注者が仕様書や設計書をもとに定める契約金額の上限で、その範囲内で最低の価格を申し込んだ者が原則として契約の相手方になる
  • 予定価格は取引の実例価格や履行の難易などを考慮して適正に定めるものとされ、設計書金額の一部を控除する歩切りは行わないものとされている
  • 適正化指針は予定価格を入札前に公表しないものとしているが、地方公共団体には事前公表を禁止する法令の規定はなく、公表の時期は発注者ごとに分かれている
  • 事後公表や積算内訳の公表の有無は発注者によって異なるため、入札前に公告や入札説明書で確認する
目次

予定価格とは?入札で契約金額の上限になる価格

予定価格は、発注者が入札に付する事項の価格をあらかじめ見積もった額です。根拠となる法律は国と地方公共団体で異なりますが、予定価格の制限の範囲内で落札者を決めるという基本は共通しています。

予定価格は仕様書や設計書をもとに発注者が定める

国の場合、予算決算及び会計令(予決令)第79条は、契約担当官等が、入札に付する事項の価格を仕様書、設計書等によって予定するよう定めています。予定価格を記載した書面は、内容が認知できない方法により、開札の際に開札場所に置かれます。

予定価格は、原則として価格の総額について定めるものとされています(予決令第80条第1項)。国と地方公共団体の主な違いは、次のとおりです。

項目国地方公共団体
落札者の原則予定価格の制限の範囲内で最低の価格で申し込んだ者(会計法第29条の6第1項)同じ(地方自治法第234条第3項)
予定価格の定め方予決令第79条・第80条各団体の財務規則等(適正化指針の記述による)
下限の考え方低入札価格調査制度(予決令第85条・第86条)低入札価格調査制度または最低制限価格制度(地方自治法施行令第167条の10)

予定価格を超える入札は落札者になれない

予定価格の制限の範囲内の価格で申し込むことが、落札の前提です。すべての入札が予定価格を超えると、落札者が決まらず入札不落になります。

国の工事では、再度の入札をしても落札者がないときなどに、随意契約によることができます。この場合、契約保証金と履行期限を除き、最初に定めた予定価格その他の条件は変更できません(予決令第99条の2)。

予定価格はどのように決まるのか?

予定価格は、発注者が自由に決められる価格ではありません。条文や指針が、考慮すべき事項と守るべき考え方を示しています。

予決令は取引の実例価格などを考慮して適正に定めるよう求めている

予決令第80条第2項は、予定価格を、契約の目的となる物件や役務について、次の事項を考慮して適正に定めなければならないとしています。

  • 取引の実例価格
  • 需給の状況
  • 履行の難易
  • 数量の多寡
  • 履行期間の長短等

積算の基礎になる単価と歩掛は広く共通の基準が使われている

予定価格の基礎になる積算では、労務の単価、工事ごとの歩掛、材料の単価などが使われます。国土交通省が令和7年12月に公表した「入札契約の適正化の取組状況に関する調査」では、「適正な予定価格の設定」の項目として、これらの適用状況が調べられています(令和7年6月1日現在)。

項目調査の内容令和7年度調査の結果
公共工事設計労務単価最新の単価を適用しているか国19機関、47都道府県、20指定都市はすべて適用。市区町村は1,721団体中1,664団体(96.7%)
標準歩掛国土交通省の標準歩掛または都道府県の歩掛をすべて準用しているか全1,927団体中1,754団体(91.0%)が準用。173団体(9.0%)は一部を発注機関が独自に設定
見積活用方式標準積算と現場の施工実態が乖離しそうな場合に、見積りを活用した積算を採用しているか国は19機関中15機関(78.9%)、全1,927団体中989団体(51.3%)が採用

公共工事設計労務単価は毎年度公表されます。令和8年3月からの適用分は、全国全職種単純平均で前年度比4.5%の引き上げで、14年連続の引き上げと国土交通省が発表しています。

適正な予定価格の設定は発注者の責務とされている

公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)第7条第1項第1号は、発注者に対し、市場における労務や資材などの取引価格、事業主が納付義務を負う保険料、工期などの実態を的確に反映した積算を行い、予定価格を適正に定めることを求めています。

公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(適正化指針、令和6年12月13日閣議決定)も、予定価格が適正に設定される必要があるとしています。最新の実勢価格の反映に加え、法定福利費、安全衛生を確保するために必要な経費、建設業退職金共済制度の掛金など、実際の施工に要する通常妥当な経費の積算を求めています。

設計書金額の一部を控除する歩切りは行わないものとされている

適切な積算に基づく設計書金額の一部を控除する、いわゆる歩切りについて、適正化指針は「行わないものとする」としています。理由として、次の3点が挙げられています。

  • 品確法第7条第1項第1号の規定に違反すること
  • 予定価格は、予決令や財務規則等により、取引の実例価格等を考慮して定められるべきものとされていること
  • 公共工事の品質や工事の安全の確保に支障を来し、建設業の健全な発達を阻害するおそれがあること

予定価格の公表ルールはどうなっているのか?

予定価格の公表には、入札前に公表する事前公表、入札後に公表する事後公表、公表しない非公表があります。適正化指針は、発注者に対して公表の時期の考え方を示しています。

適正化指針は予定価格を入札前に公表しないものとしている

適正化指針は、予定価格を入札前に公表すると次のような問題があるとして、入札の前には公表しないものとしています。

  • 予定価格が目安となって競争が制限され、落札価格が高止まりになること
  • 建設業者の見積努力を損なわせること
  • 入札談合が容易に行われる可能性があること
  • 低入札価格調査の基準価格や最低制限価格を強く類推させ、これらを入札前に公表した場合と同様の弊害が生じかねないこと

低入札価格調査の基準価格と最低制限価格についても、入札前に公表すると、価格の近くへ入札が誘導され、同額の入札者間のくじ引きによる落札が増えるなどの弊害が生じうるとして、入札の前には公表しないものとしています。

地方公共団体では事前公表を禁止する法令の規定はない

同じ指針は、地方公共団体について、予定価格の事前公表を禁止する法令の規定はないとしています。そのうえで、事前公表の実施の適否を十分に検討し、上記の弊害が生じないよう取り扱うことを求めています。

弊害が生じた場合は、速やかに事前公表の取りやめを含む適切な対応を行うものとされています。

令和7年度調査では公表の時期は発注者によって分かれている

前述の国土交通省の調査では、予定価格の公表時期が発注者別に集計されています。国と地方公共団体の結果は、次のとおりです(団体数と、各区分に占める割合)。

区分団体数全案件事後公表全案件事前公表事後公表と事前公表の併用
国1917(89.5%)0(0.0%)0(0.0%)
都道府県4718(38.3%)13(27.7%)16(34.0%)
指定都市207(35.0%)4(20.0%)9(45.0%)
市区町村1,721656(38.1%)656(38.1%)301(17.5%)

このほか、全案件非公表または原則非公表とする団体が、国に2機関、市区町村に108団体あります。都道府県と指定都市にはありません。

集計は団体ごとの運用を分類したもので、案件数の割合ではありません。国は19機関中17機関が全案件事後公表である一方、市区町村では全案件事前公表も38.1%を占めています。

予定価格の積算内訳の公表も発注者によって差がある

適正化指針は、予定価格とその積算内訳について、事後の契約で予定価格を類推させるおそれがないと認められる場合などに、公表の対象としています。公表の時期は、個別の入札や契約に関する事項を契約締結後に遅滞なく公表することを原則として、適切に行うこととされています。

区分団体数積算内訳を公表積算内訳を非公表
国197(36.8%)12(63.2%)
都道府県4738(80.9%)9(19.1%)
指定都市2017(85.0%)3(15.0%)
市区町村1,721232(13.5%)1,489(86.5%)

予定価格の公表の違いは入札の進め方にどう関わるのか?

予定価格をいつ公表するかは、入札者の価格の付け方や、落札者の決まり方に関わります。あわせて、予定価格と並んで登場する他の価格との違いも押さえておく必要があります。

予定価格と基準価格・最低制限価格は役割と公表の扱いが異なる

予定価格は契約金額の上限です。これに対し、低入札価格調査の基準価格と最低制限価格は、極端な低価格での受注を防ぐための下限側の仕組みです。

価格役割根拠入札前の公表
予定価格契約金額の上限。この範囲内で最低の価格を申し込んだ者が落札者になる会計法第29条の6、地方自治法第234条第3項適正化指針は入札前に公表しないものとしている
低入札価格調査の基準価格下回った場合に、契約の内容に適合した履行がされるかを調査する基準予決令第85条・第86条、地方自治法施行令第167条の10第1項適正化指針は入札前に公表しないものとしている
最低制限価格下回る入札は落札者としない下限。地方公共団体のみが設けられる地方自治法施行令第167条の10第2項適正化指針は入札前に公表しないものとしている

事後に公表された入札結果は過去の案件を調べる材料になる

入札者の商号と入札金額、落札者の商号と落札金額は、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入札契約適正化法)と同法施行令で公表事項とされています。施行令は、契約金額も公表事項に挙げています(予定価格が400万円を超えないものなどを除く)。

予定価格と積算内訳は、適正化指針が公表の対象に挙げており、公表するかどうかは発注者によって異なります。同じ発注者の過去の案件の結果を調べると、その発注者の入札の傾向をつかむ材料になります。

競合他社の落札実績は、公表された入札結果から調べられます。

伸びている会社は、競合他社の落札実績まですべて把握しています。

予定価格が非公表の案件は公表の方針を入札前に確認する

予定価格が非公表の案件では、金額そのものは分かりません。発注者によって公表の有無や時期が異なるため、入札公告、入札説明書、発注者のホームページなどで、公表の方針と積算内訳の公表の有無を確認します。

  • 予定価格を事前公表、事後公表、非公表のどれとしているか
  • 予定価格の積算内訳を公表しているか
  • 低入札価格調査の基準価格や最低制限価格を設けているか
  • 過去の同種の案件の入札結果が公表されているか

予定価格の仕組みの理解は公共工事の受注にどうつながるのか?

予定価格は、公共工事の入札で、価格の上限と落札の前提を決める価格です。決まり方や公表のルールを理解しておくことは、入札する案件を選び、価格を検討するうえでの前提になります。

  • 予定価格の制限の範囲内で最低の価格を申し込むことが、落札の前提になる
  • 公表の時期や積算内訳の公表の有無は、発注者ごとに確認する
  • 公表された過去の入札結果は、同じ発注者の案件の水準を調べる材料になる

発注者ごとの制度の違いを把握しながら入札を重ねていくことは、公共工事の受注を増やすうえでの土台になります。

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

公共工事への参入に向けた全体像は、下記で詳しく確認できます。

よくある質問

予定価格と落札価格(契約金額)は同じ金額なのか?

同じとは限りません。予定価格は、発注者が仕様書や設計書などをもとに予定する上限の価格です。契約金額は落札者の入札金額をもとに定まり、予定価格の制限の範囲内の金額になります。

入札前に発注者の担当者へ予定価格を尋ねてもよいのか?

適正化指針は、入札前に入札関係職員から予定価格などを聞き出して入札の公正を害そうとする不正行為を抑止するため、発注者の関与の排除措置を徹底するとしています。公表されていない予定価格を探ることは避け、公告、入札説明書、過去の入札結果などの公表情報で検討します。

予定価格は入札の前に作られているのか?

国の予決令第79条は、予定価格を記載した書面を、開札の際に開札場所に置くよう定めています。作成の時期は定めていません。適正化指針は、不正行為が発生しにくい環境の整備の例として、予定価格の作成時期を入札書の提出後とすることを挙げています。

予定価格が実勢価格と合わないと、発注者は見直すのか?

品確法第7条第1項第3号は、予定価格に起因して入札者や落札者がなかったと認める場合に更に入札に付するときなどは、入札に参加する者から見積書を徴することなどにより積算を行い、適正な予定価格を定めるよう努めることを求めています。個別の案件で見直しが行われるかどうかは、発注者の判断によります。

まとめ

予定価格は、発注者が仕様書や設計書などをもとに定める契約金額の上限です。予定価格の制限の範囲内で最低の価格を申し込んだ者が、原則として契約の相手方になります。

予定価格は、取引の実例価格や履行の難易などを考慮して適正に定めるものとされ、歩切りは行わないものとされています。適正化指針は入札前に公表しないものとしていますが、令和7年度調査では、公表の時期や積算内訳の公表の有無は発注者によって分かれています。

本記事の内容は2026年10月執筆時点の情報のため、実際の入札では、発注者の入札公告や入札説明書で最新の内容を確認してください。

この記事のまとめ
  • 予定価格は契約金額の上限で、その制限の範囲内で最低の価格を申し込むことが落札の前提になる
  • 予定価格は適正に定めるものとされ、設計書金額の一部を控除する歩切りは行わないものとされている
  • 適正化指針は予定価格を入札前に公表しないものとしているが、地方公共団体の運用は発注者ごとに分かれている
  • 入札前に、公表の方針、積算内訳の公表の有無、過去の入札結果を公告や入札説明書などで確認する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

あわせて読みたい

目次