建設業のファクタリングとは?仕組みやメリット・デメリットと注意点

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

元請からの入金が工事の完成後になる建設業では、資材費や人件費の支払いが先行し、手元の資金繰りが厳しくなる場面が少なくありません。売掛債権を早期に資金化する方法として「ファクタリング」という言葉を耳にする機会も増えています。

この記事では、ファクタリングが借入とどう違うのかという基本的な仕組みから、2社間・3社間の違い、メリットとデメリット、そして悪質な業者を見分けるための注意点までをわかりやすく解説します。

2024年問題、人手不足、資金繰り…建設業界が直面する課題は山積みです。こうした環境だからこそ、経営の安定化には新たな収入源の確保が重要。この動画では、民間工事とは異なる公共工事という選択肢の実務的なポイントをおさえています。動画で基礎を理解した上で、記事の詳しい解説をご覧ください。

この記事で分かること
  • ファクタリングは売掛債権の売買契約であり、原則として金銭の貸付けにはあたらない
  • 2社間と3社間では、売掛先への通知の有無や資金化までの速さが異なる
  • 資金化の速さや負債にならない点がメリットである一方、手数料や取引先への影響がデメリットになる
  • 買戻し特約付きなど実質的に貸付けと同視される契約は、貸金業法の規制対象になり得る
目次

建設業のファクタリングとは?仕組みをわかりやすく解説

ファクタリングとは、事業者が保有している売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、支払期日より前に資金化するサービスです。金融庁は、ファクタリングについて「売買契約に基づく債権譲渡であり、金銭の貸し借りではない」と説明しています。

建設業では、元請や発注者に対して有する工事請負代金や資材代金の債権が対象になります。工期が長く入金までのサイトが長期化しやすい建設業の商慣行と、ファクタリングの資金化の速さが結びついて利用が広がってきた経緯があります。

売掛債権の譲渡による資金化の仕組み

ファクタリングは、法的には債権の売買契約にあたります。借入のような金銭消費貸借契約とは性質が異なり、貸借対照表上も負債(借入金)として計上されない取引として整理されるのが一般的です。

ただし、貸金業法上の「貸付け」には「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付」も含まれると定義されています。この文言があるため、形式が債権譲渡であっても、実質的に貸付けと同視される契約は別の規制がかかる可能性がある点は、後述の注意点で押さえておく必要があります。

建設会社が資金を受け取るまでの流れ

基本的な流れは、建設会社が保有する工事請負代金債権や資材代金債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を買取代金として受け取るというものです。支払期日が到来した際に、誰が売掛先から代金を回収するかは、2社間か3社間かによって異なります。

  • ファクタリングは売掛債権の売買契約であり、金銭消費貸借(借入)とは法的性質が異なる
  • 建設業では工事請負代金や資材代金の債権が資金化の対象になりやすい
  • 実質的に貸付けと同視される契約形態は、別の規制がかかり得る点に注意が必要

ファクタリングの契約形態は2社間と3社間でどう違うのか?

ファクタリングには、売掛先を交えずに契約する「2社間ファクタリング」と、売掛先も交えて契約する「3社間ファクタリング」の2つの形態があります。金融庁もこの2形態の存在に言及しており、いずれも売買契約に基づく債権譲渡という法的性質は共通しています。

どちらを選ぶかによって、売掛先への通知の要否や資金化までの速さ、手数料の水準といった実務上の条件が変わってきます。

2社間ファクタリングの特徴

2社間ファクタリングは、利用する建設会社とファクタリング会社の合意のみで契約が成立し、売掛先への債権譲渡通知を行いません。売掛金はいったん建設会社が売掛先から回収し、その後ファクタリング会社へ送金する流れになります。

売掛先に資金繰りの状況を知られずに資金化できる点が実務上のメリットとされていますが、ファクタリング会社にとっては回収リスクが読みにくい分、3社間より手数料が高くなる傾向があるとされています。

3社間ファクタリングの特徴

3社間ファクタリングは、建設会社・ファクタリング会社・売掛先の3社の合意で成立し、売掛先への債権譲渡の通知・承諾を伴います。支払期日には、売掛先からファクタリング会社へ直接代金が支払われる仕組みです。

売掛先の承諾手続を要する分、2社間より契約成立までに時間がかかる傾向がありますが、回収リスクが明確になるため手数料は相対的に低くなりやすいとされています。建設業や運送業は入金サイトが長期化しやすく回収リスクが高いと判断されやすいため、いずれの形態でも手数料が相対的に高めに設定される傾向がある点は押さえておくとよいでしょう。

比較項目2社間ファクタリング3社間ファクタリング
契約当事者建設会社とファクタリング会社建設会社・ファクタリング会社・売掛先
売掛先への通知行わない通知・承諾を伴う
資金化のスピード比較的速い傾向承諾手続の分、時間を要する傾向
手数料の傾向相対的に高くなりやすいとされる相対的に低くなりやすいとされる

建設業がファクタリングを利用するメリットとは?

ファクタリングを利用する主なメリットは、資金化までの速さと、負債として計上されない点にあります。融資の審査に比べて手続きが短期間で完了しやすく、支払いのタイミングが迫っている場面で活用されることがあります。

また、法的性質が売買契約であるため、借入のように貸借対照表上の負債(借入金)として計上されない取引として整理される点も、資金調達の選択肢として検討される理由の一つです。融資の場合は決算内容や返済実績が審査の中心になりますが、ファクタリングでは売掛先の信用力が重視される傾向があるため、自社の決算状況が芳しくない時期でも選択肢になり得る点も特徴といえます。

ファクタリングの必要性は、入金の遅れが生むリスクにあります。工事が大きくなるほど、入金までの期間は長くなります。

工事が大きくなると入金が遅くなり、その分倒産リスクは高まります。すぐに入ってくる小さな仕事と違って、金の流れを考えないといけません。

  • 融資に比べて審査から資金化までの期間が短くなりやすい
  • 売掛先の信用力が重視されるため、自社の決算状況が厳しい局面でも利用を検討しやすい
  • 売買契約であるため、借入のように負債(借入金)として計上されない
  • 2社間であれば売掛先に資金繰りの状況を知られずに資金化できる

ファクタリングのデメリットとは?

ファクタリングには手数料が発生し、利用のたびにコストがかかります。手数料の具体的な水準は取引条件や業種によって差があるとされ、断定的な相場を示すことは難しい点に注意が必要です。

3社間ファクタリングの場合は、売掛先に債権譲渡の事実を通知する必要があり、取引先との関係に影響し得る点もデメリットとして指摘されています。

  • 利用のたびに手数料が発生し、資金化できる金額が目減りする
  • 手数料の水準は取引条件や業種によって差があり、断定できない
  • 3社間の場合、売掛先への通知が取引関係に影響し得る
  • 継続的に利用すると、資金繰りの根本的な改善にはつながりにくい面がある

悪質な業者を見分けるにはどうすればよいか?

ファクタリングを装いながら、経済的には貸付けと同様の機能を持つ契約を提示する業者も存在します。金融庁は、売主が債権を買い戻すこととされている契約や、売主自身の資金でファクタリング業者に支払わなければならない契約など、売主が実質的なリスクや返済義務を負う形態は、貸付けと判断される傾向にあると注意喚起しています。

契約書の名称が「債権譲渡契約」となっていても、経済的な実態で判断される点が重要です。

買戻し特約付き契約と貸金業法の関係

貸金業を営もうとする者は、貸金業法上、内閣総理大臣または都道府県知事の登録を受けなければなりません。無登録で貸金業にあたる取引を行った場合、10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、またはこれらの併科の対象となる罰則が定められています。

これは、実質的に貸付けと同視される取引を無登録で行った場合の罰則であり、買戻し特約のない通常の債権譲渡型ファクタリングそのものを罰する規定ではありません。だからこそ、契約内容が実質的に貸付けと同視されるものになっていないかを確認する視点が欠かせません。

給与ファクタリングとの違い

個人の給与(賃金債権)を対象とする「給与ファクタリング」は、建設会社が事業者として利用する売掛債権ファクタリングとは別の取引です。最高裁判所第三小法廷は令和5年2月20日、給与ファクタリングと称される取引について、形式上は債権譲渡であっても実質的には貸金業法上の「貸付け」にあたると判断しています。

消費者庁も、無登録業者による給与ファクタリング等での高額な手数料徴収や悪質な取立てに注意を呼びかけており、金融庁・警察・消費生活センターといった相談窓口を案内しています。取引の相手方の実態に不安がある場合は、こうした公的な相談窓口を活用する方法があります。

  • 貸金業登録の有無を確認する
  • 償還請求権(買戻し特約)の有無を契約書で確認する
  • 契約書が金銭消費貸借契約に近い内容になっていないかを確認する
  • 不審な点があれば金融庁や消費生活センターなどの公的な窓口に相談する

資金繰りの改善は公共工事参入とどうつながるか?

ファクタリングは、支払いサイトの長い工事請負代金を早期に資金化する手段の一つであり、資金繰りの調整弁として活用できる場面があります。一方で、手数料というコストが継続的に発生する取引でもあるため、資金繰りの土台そのものを見直す視点もあわせて持っておくことが望ましいといえます。

資金繰りの土台を見直すうえで、入金サイクルが安定している受注先を持つことは重要です。公共工事には前払金の制度があり、キャッシュが先行する場面があります。

キャッシュが先に入ってくると資金繰りはしやすいです。公共工事は取り崩れがないので、銀行からの借入れも受けやすいと考えています。

単発の資金化にとどめず、どのような受注構成であれば入金サイクル自体を安定させられるかという視点を持つことが、長期的な資金繰りの改善につながります。

単発の資金化にとどめず、どのような受注構成であれば入金サイクル自体を安定させられるかという視点を持つことが、長期的な資金繰りの改善につながります。

公共工事は、民間工事に比べて発注者(国・自治体等)からの支払いが制度的に安定しているとされ、資金繰りの見通しを立てやすい受注先として位置づけられることがあります。公共工事は大手や実績のある会社だけのものと受け止められがちですが、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

  • ファクタリングは資金繰りの調整弁として使える一方、手数料が継続的なコストになる
  • 公共工事は支払いが制度的に安定しているとされる受注先の一つ
  • 入札参加の要件は規模にかかわらず満たせば参加できる仕組みとして定められている

よくある質問

ファクタリングを利用すると決算書上どのように扱われますか?

ファクタリングは売掛債権の売買契約であるため、借入のように貸借対照表上の負債(借入金)として計上されない取引として整理されるのが一般的です。ただし会計処理の詳細は、自社の会計方針にあわせて事前に整理しておく必要があります。

ファクタリングの手数料の相場はどのくらいですか?

手数料の水準は取引条件や業種、2社間か3社間かによって差があるとされており、公的機関による統一的な相場の公表は確認できていません。個別の見積りで示された条件を、複数の業者で比較検討することが実務上の目安になります。

ファクタリングの利用に許認可は必要ですか?

ファクタリングを利用する建設会社側に特別な許認可は必要ありません。一方、ファクタリング会社側が実質的に貸付けと同視される契約を提供する場合は、貸金業法上の登録が必要になる可能性があります。契約内容が譲渡契約の形をとっているかを確認することが重要です。

個人事業主(一人親方)でも建設業のファクタリングを利用できますか?

ファクタリングは法人に限らず、売掛債権を保有する個人事業主も利用対象となり得るサービスです。一人親方として元請や発注者への請負代金債権を持っている場合も相談先になり得ますが、審査基準や取り扱いの可否はファクタリング会社によって異なるため、個別に確認することが必要です。

まとめ

ファクタリングは、売掛債権を売買することで資金化するサービスであり、原則として貸付けにはあたりません。2社間と3社間では、売掛先への通知の有無や資金化のスピード、手数料の傾向が異なります。

資金化の速さや負債にならない点はメリットである一方、手数料や取引先への影響というデメリットもあります。買戻し特約付きなど実質的に貸付けと同視される契約は貸金業法の規制対象になり得るため、契約内容の確認が欠かせません。

この記事のまとめ
  • ファクタリングは売掛債権の売買契約であり、原則として貸付けにはあたらない
  • 2社間と3社間では、売掛先への通知の有無や資金化のスピード、手数料の傾向が異なる
  • 買戻し特約付きなど実質的に貸付けと同視される契約は貸金業法の規制対象になり得るため、契約内容を確認する
  • 不審な点があれば金融庁や消費生活センターなどの公的な相談窓口を活用する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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