施工体系図とは?施工体制台帳との違いと書き方・掲示方法を解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

公共工事の現場では、工事関係者や地域住民の目に触れる場所に、下請の構成を図示した「施工体系図」が掲示されていることがあります。現場で見かけたことはあっても、作成義務の範囲や施工体制台帳との関係を整理しきれていないという声を聞くことがあります。

この記事では、施工体系図の定義、施工体制台帳との違い、作成義務が生じる工事の範囲、書き方と掲示方法を、建設業法・入札契約適正化法・国土交通省令の条文に沿って整理します。執筆時点で確認できた条文をもとに、受注後の施工体制づくりへの位置づけを確認していきます。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 施工体系図は、各下請負人の施工の分担関係を表示し、工事現場の見やすい場所に掲げる図面である
  • 公共工事では、下請契約を締結すれば金額にかかわらず作成・掲示の義務が生じる
  • 施工体系図は、施工体制台帳の要約版として作成される
  • 掲示は工事の目的物を引き渡すまで続け、完了後も一定期間の保存が必要である
目次

施工体系図とは?施工体制台帳との関係

建設業法第24条の8第4項では、当該建設工事における各下請負人の施工の分担関係を表示した施工体系図を作成し、これを当該工事現場の見やすい場所に掲げなければならないと定められています。施工体系図は、下請負人の商号や工事内容を系統的に示した図面であり、現場で誰がどの工事を担当しているかを一目で確認できるようにするものです。

国土交通省の通達では、施工体系図は作成された施工体制台帳に基づき、施工体制台帳のいわば要約版として、樹状図等の形式で作成するとされています。施工体制台帳と施工体系図は、同じ施工体制の情報を、記録用と掲示用という形で分けた関係にあります。

項目 施工体制台帳 施工体系図
役割 下請構造の記録として作成し、工事現場ごとに備え置く 分担関係の可視化のために作成し、工事現場の見やすい場所に掲げる
根拠 建設業法第24条の8第1項〜第3項 建設業法第24条の8第4項
扱い 発注者の請求があれば閲覧に供する 工事現場の見やすい場所に掲示する
内容 下請負人の商号・工事内容・工期などの詳細な記載 台帳の要約版として、分担関係を系統的に表示

施工体系図の作成義務が生じる工事とは

公共工事(国や地方公共団体が発注する工事)では、入札契約適正化法第15条の読み替えにより、施工体制台帳の作成・備置きと施工体系図の作成・掲示の義務は、下請契約を締結した建設業者に生じます。金額の要件はなく、下請契約を1件でも締結すれば義務の対象になります。

また、公共工事では施工体系図の掲示場所が「工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所」と読み替えられ、施工体制台帳の写しを発注者に提出することも求められます(情報通信技術を利用して施工体制を確認できる措置を講じている場合を除く)。

公共工事以外(民間工事など)では、発注者から直接請け負った特定建設業者が、下請契約の請負代金の総額が政令で定める金額以上になる場合に義務が生じます。現行の金額基準は、5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)です(建設業法施行令第7条の4)。

項目 公共工事 公共工事以外
義務の主体 下請契約を締結した建設業者 特定建設業者(発注者から直接請け負った場合)
金額要件 なし(下請契約を締結すれば発生) 下請代金の総額5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)
掲示場所 工事関係者及び公衆が見やすい場所 工事現場の見やすい場所
台帳の扱い 写しを発注者に提出(ICT措置がある場合を除く) 発注者の請求があれば閲覧に供する

施工体系図の書き方(記載事項と作成のポイント)

施工体系図に記載すべき事項は、建設業法施行規則第14条の6で定められています。作成する建設業者の商号・名称、工事の名称・工期、発注者、主任技術者または監理技術者の氏名に加えて、現に施工している下請負人の商号・名称、代表者の氏名、一般建設業か特定建設業かの別、許可番号、工事内容・工期などを、下請負人ごとに系統的に表示します。

下請負人に関する情報は、建設業法第24条の8第2項の通知義務によって元請に集まる仕組みになっています。下請負人がその請け負った工事をさらに他の建設業者に請け負わせたときは、元請に対してその内容を通知しなければならないため、施工体系図は通知された情報を反映して更新していくことになります。

施工体系図は樹状図の形式で作成されるため、元請を頂点に、下請の階層が続く限り下に連ねて表示するのが基本の構成です。階層ごとに記載する内容を整理すると、次のようになります。

階層該当する例記載する主な情報
元請(作成者)発注者から直接工事を請け負った建設業者商号・名称、工事の名称・工期、発注者、主任技術者または監理技術者の氏名
一次下請元請から工事の一部を請け負う下請負人商号・代表者氏名、一般建設業か特定建設業かの別、許可番号、担当する工事内容・工期
二次下請以下一次下請からさらに請け負う下請負人一次下請と同様の項目を、下請が続く限り系統的に連ねて表示

下請との間で、施工範囲をめぐる食い違いが生じることがあります。

協力会社が『できる』と言っていたのにできないとか、この金額だとあの業務は含まれていないとか、途端に言い出すケースがあります。

誰がどの工事を担当するかを施工体系図で共有しておくことは、こうした食い違いを防ぐうえでも役立ちます。

施工体系図の掲示方法と現場での運用

施工体系図は、工事現場の見やすい場所に掲げます。公共工事では工事関係者だけでなく公衆が見やすい場所への掲示が求められるため、現場の出入口や仮囲いなど、外部からも確認できる場所に掲示されるのが一般的です。

掲示は工事の目的物を引き渡すまで続けます(建設業法施行規則第14条の7)。工事が完了したあとも、施工体系図は施行規則上の図書として10年間の保存が求められるという整理になっています(第26条第5項・第28条第2項)。

  • 掲示場所は工事現場の見やすい場所(公共工事は工事関係者・公衆が見やすい場所)
  • 下請負人を表示する必要が生じたときまでに遅滞なく掲示し、変更時は迅速に修正する
  • 掲示は工事の目的物の引渡しまで継続する
  • 完成後も一定期間の保存が必要(施工体系図は図書として10年間の整理)

施工体系図の整備は、受注後の施工体制づくりの基本

施工体系図は、下請の分担関係を現場で可視化する書類であり、施工体制台帳とセットで整備します。公共工事では金額にかかわらず作成義務が生じるため、受注したら最初に準備する書類の一つといえます。

記載事項の多くは、下請負人から集まる通知や契約情報から作成できます。自社の施工体制をどのように組み立てるかを整理する作業として、入札前から下請候補との関係づくりと合わせて考えておくと、受注後の準備がスムーズになります。

  • 施工体系図は施工体制台帳とセットで整備する書類である
  • 公共工事では金額にかかわらず、作成・掲示の義務が生じる
  • 記載情報は下請負人からの通知によって集まる仕組みである
  • 入札前からの下請関係づくりが、受注後の書類整備の土台になる

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。受注後の施工体制も、制度上の要件を一つずつ確認しながら整えることができます。

よくある質問

施工体系図と施工体制台帳は何が違いますか?

施工体制台帳は下請構造の詳細な記録で、工事現場ごとに備え置き、発注者の請求があれば閲覧に供します。施工体系図は台帳の要約版として、各下請負人の施工の分担関係を工事現場の見やすい場所に掲げるものです。

施工体系図はすべての工事で必要ですか?

公共工事では、下請契約を締結した建設業者に、金額にかかわらず作成・掲示の義務が生じます。公共工事以外では、特定建設業者が下請代金の総額5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)の工事を施工する場合に義務が生じます。

施工体系図に書くべき項目は何ですか?

建設業法施行規則第14条の6で、作成する建設業者の商号・名称、工事の名称・工期、発注者、主任技術者または監理技術者の氏名、現に施工している下請負人の商号・代表者氏名・許可の別・許可番号、工事内容・工期などが定められています。

施工体系図の掲示はいつまで続けますか?

工事の目的物を引き渡すまで、工事現場の見やすい場所に掲示します(公共工事では工事関係者及び公衆が見やすい場所)。完成後も、施工体系図は図書として10年間の保存が求められるという整理になっています。

まとめ

施工体系図は、各下請負人の施工の分担関係を表示した図面であり、建設業法第24条の8第4項により、工事現場の見やすい場所に掲げることが義務づけられています。施工体制台帳の要約版として作成され、記録用の台帳と掲示用の体系図がセットで整備されます。

義務が生じる範囲は、公共工事と公共工事以外で異なります。公共工事では下請契約を締結すれば金額にかかわらず義務が生じ、公共工事以外では特定建設業者が下請代金の総額5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)の工事を施工する場合に義務が生じます。

掲示は工事の目的物を引き渡すまで続け、下請負人の変更があれば迅速に修正します。記載事項の多くは下請負人からの通知で集まるため、日頃から下請との関係を整理しておくことが、受注後の書類整備の負担を軽くする実務的な備えになります。

この記事のまとめ
  • 施工体系図は、各下請負人の施工の分担関係を表示し、工事現場の見やすい場所に掲げる書類である
  • 公共工事では下請契約を締結すれば金額にかかわらず、作成・掲示の義務が生じる
  • 施工体制台帳の要約版として作成し、記載事項は施行規則第14条の6で定められている
  • 掲示は引渡しまで続け、下請の変更があれば迅速に修正し、完成後も一定期間の保存が必要である

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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