公共工事の瑕疵担保とは?契約不適合責任の期間と請負者の対応を解説


「瑕疵担保」という言葉で検索する方の中には、この責任をまだ「瑕疵担保責任」として理解している方も多いと思われます。しかし現行の民法では、この責任は「契約不適合責任」という名称に改められています。
この記事では、公共工事標準請負契約約款が定める契約不適合責任の期間と、契約不適合が発生した場合に請負者(約款上の「受注者」)がどのように対応するのかを解説します。名称変更の経緯から順に確認していきます。
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- 「瑕疵担保責任」は2020年4月1日施行の改正民法により「契約不適合責任」に改められた名称であること
- 公共工事標準請負契約約款は契約不適合責任を第45条で規定し、履行の追完請求権や代金減額請求権を定めていること
- 契約不適合責任期間は約款上、引渡しの日から原則2年とされていること
- 契約不適合が発生した場合、請負者は履行の追完・代金減額・損害賠償・解除のいずれかの対応を求められる可能性があること
「瑕疵担保責任」という言葉はなぜ「契約不適合責任」に変わったのか?
「瑕疵担保責任」という呼び方は、2020年4月1日施行の改正民法(平成29年法律第44号)によって、法律上の名称ではなくなりました。現行の民法では、この責任は「契約不適合責任」という名称に改められています。
請負契約における請負人の責任は、民法第559条により売買の規定(第562条〜第564条)が準用されるようになりました。あわせて、請負契約に特有の期間制限規定(第636条・第637条)が整理されています。
この整理によって、請負契約の不適合に関する責任も、売買契約と同じ考え方の枠組みで扱われるようになっています。読み手にとっては、この枠組みの変化を理解しておくと以降の条文の位置づけがつかみやすくなります。
| 時期 | 責任の呼び方 | 根拠となる主な規定 |
|---|---|---|
| 2020年3月31日まで | 瑕疵担保責任 | 旧民法第634条・第635条等 |
| 2020年4月1日以降(現行) | 契約不適合責任 | 民法第559条・第562条〜第564条、第636条・第637条 |
「契約不適合」とは、引き渡された工事目的物が契約の内容と一致しない状態を指す用語です。旧制度の「瑕疵」という言葉が、施工の欠陥だけを想起させやすかったのに対し、「契約不適合」は契約書や設計図書に定めた内容との一致・不一致という基準で判断される点が特徴です。読み手にとっては、判断基準が契約書の記載内容に紐づいている、という点を押さえておくと理解しやすくなります。
公共工事の契約でも、この名称変更を踏まえた条文整理が行われています。次に、公共工事標準請負契約約款における契約不適合責任の規定を確認します。
契約不適合責任は公共工事標準請負契約約款のどの条文で規定されているのか?
公共工事標準請負契約約款(中央建設業審議会決定、最終改正令和7年12月2日)は、契約不適合責任の見出しを第45条に置いています。約款には選択式の条文や空欄があり、契約によって条項番号がずれる場合があります。
第45条第1項では、引き渡された工事目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合、発注者は修補または代替物の引渡しによる履行の追完を請求できると定められています。ただし、履行の追完に過分の費用を要するときは、この請求はできません。
この規定は、民法上の契約不適合責任(第562条〜第564条)の考え方を、公共工事の契約関係に落とし込んだものといえます。条文の表記には2つのパターンがありますが、内容の骨格はほぼ同じです。
- 発注者は、修補または代替物の引渡しによる履行の追完を請求できる(第45条第1項)
- 請負者は、発注者に不相当な負担を課さない範囲で、指定と異なる方法により対応できる(第45条第2項)
- 発注者が相当期間を定めて追完を催告しても改善されない場合、代金の減額を請求できる(第45条第3項)
- 履行の追完が不能な場合など一定のケースでは、催告をせずに直ちに代金の減額を請求できる(第45条第3項各号)
- 契約不適合が支給材料の性質や発注者・監督員の指図によるものであれば、発注者はこれを理由に請求できない(第57条第10項)
実際にどの項目が契約不適合に当たるかは、契約書に添付された設計図書や仕様書との整合性で判断されます。発注者との間で見解が分かれる場合は、契約書に定められた協議手順に沿って整理していくことになります。
これらの規定は、発注者・請負者どちらか一方に過大な負担を課さないよう設計されています。次に、契約不適合責任がいつまで問われるのかという期間の規定を確認します。
契約不適合責任期間は引渡しからいつまで続くのか?
公共工事標準請負契約約款は「契約不適合責任期間等」の見出しを第57条に置いています。約款の注記では、引渡しの日から原則として2年が契約不適合責任期間とされています。
ただし約款上は空欄方式になっており、発注者ごとに具体的な年数を契約書へ記入する構成です。個々の契約でこれと異なる年数が定められる可能性は、制度上排除されていません。
| 対象 | 契約不適合責任期間 | 備考 |
|---|---|---|
| 工事目的物(原則) | 引渡しの日から2年 | 約款の注記による原則。契約書の記入値が優先される |
| 設備機器等(通常の注意で発見できない不適合) | 引渡しの日から1年 | 引渡し時の検査で発見できるものは直ちに請求が必要 |
| 住宅新築請負契約に該当する場合 | 引渡しの日から10年 | 構造耐力上主要な部分などに限る特則(第57条第9項) |
住宅新築請負契約に関する10年の特則は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第94条第1項に規定する住宅新築請負契約に該当する場合に適用されるものです。公共工事の対象工事の多くはこの特則の対象外となるため、原則2年という基本の考え方を先に押さえておくことが実務上役立ちます。
発注者が期間内に契約不適合を知り、その旨を請負者に通知した場合は、通知から1年が経過する日まで請求等が可能になります(第57条第4項)。契約不適合が請負者の故意または重過失によるものであれば、この期間制限は適用されず、責任は民法の定めによります(第57条第6項)。
民法第637条第1項は、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ請求できないと定めていますが、約款はこの規定を適用せず、独自の期間規定で規律しています(第57条第7項)。
この約款は令和7年12月2日に最終改正されています。契約不適合責任期間の考え方自体は改正の前後で大きく変わっていませんが、契約書を確認する際は、手元の契約書がどの時点の約款に基づいているかをあわせて確認しておくと安心です。条項番号や規定内容が版によって異なる場合があるため、条文の内容そのものに沿って確認することが実務上のポイントです。
契約不適合が発生した場合、請負者はどのように対応すればよいのか?
契約不適合が発生した場合、発注者が請負者に求めることができる対応は、大きく4種類に整理できます。
- 修補または代替物の引渡しによる履行の追完
- 履行の追完が催告後もされない場合の、請負代金の減額
- 損害賠償の請求
- 契約の解除
請負者は、発注者に不相当な負担を課すものでない限り、発注者が指定した方法とは異なる方法(修補と代替物引渡しの選択など)で対応することが認められています。目的物を除却して再度建設しなければ契約の目的を達成できないほど重大な不適合であれば、発注者による解除の対象にもなります。
履行の追完請求や代金減額請求ができる場面であっても、それによって損害賠償の請求や契約の解除ができなくなるわけではありません。発注者は、状況に応じてこれらの対応を組み合わせて求めることができます。契約不適合の内容によって求められる対応が変わるため、請負者としては個々の事案ごとに条文の要件と照らし合わせて確認していく姿勢が求められます。
契約不適合の指摘を受けた際は、発注者からの通知内容(不適合の内容や請求する損害額の算定根拠など)を確認し、契約書に記載された協議手順に沿って対応を進めることになります。指摘の内容が早い段階で明確になるほど、対応方法の検討にかけられる時間も確保しやすくなります。あわせて、契約不適合責任期間内の出来事であるかどうかも、対応方針を決める際の確認事項になります。
契約不適合への対応は、工事を受注した後に発生する実務のひとつです。公共工事への参入を検討する段階では、こうした受注後の対応まで含めて制度の全体像を把握しておくことが役に立ちます。
公共工事は、実績のある大手企業だけが対応できるものと受け止められることがあります。ただし契約不適合責任のような制度は、会社の規模にかかわらず同じ内容で適用されるものです。受注後の実務を一つずつ理解していくことが、公共工事への参入を具体的に検討する際の土台になります。
よくある質問
- 契約不適合の通知には、どのようなタイミングの制約があるか?
-
発注者が工事目的物の引渡しの際に契約不適合があることを知っていた場合は、原則としてその旨を直ちに請負者へ通知しなければ、後から請求等をすることができません(約款第57条第8項)。ただし請負者がその契約不適合をあらかじめ知っていた場合は、この制約は適用されません。引渡し時の検査記録を双方で残しておくと、後日の食い違いを防ぎやすくなります。
- 契約不適合責任期間を過ぎると、契約不適合について一切請求できなくなるのか?
-
原則として、契約不適合責任期間を過ぎた契約不適合については請求等ができなくなります。ただし契約不適合が請負者の故意または重過失によるものであった場合は、この期間制限は適用されず、責任は民法の定めによることになります。契約不適合責任期間内であっても、発注者が期間内に契約不適合を知って通知していない場合は、請求等の対象にならない可能性があります。
- 契約書に「瑕疵担保責任」という言葉がまだ残っている場合、古い制度がそのまま適用されるのか?
-
契約書上の表記が「瑕疵担保責任」のままであっても、2020年4月1日以降に締結された契約には現行の契約不適合責任の規定が適用されます。名称の表記と、適用される制度の内容は分けて考える必要があります。表記の古さを理由に、現行制度の適用を免れられるわけではありません。
- 契約不適合の原因が下請け(協力会社)の施工にある場合も、元請けが対応する必要があるか?
-
公共工事標準請負契約約款上、契約不適合責任を負うのは発注者と契約を締結した請負者(元請け)です。下請けの施工が原因であっても、発注者との関係では元請けが履行の追完などの対応を求められる立場になります。下請けとの費用分担は、元請けと下請けの間で締結した下請契約の内容に基づいて別途整理することになります。
まとめ
「瑕疵担保責任」は、2020年4月1日施行の改正民法により「契約不適合責任」という名称に改められています。公共工事標準請負契約約款も、この名称変更を踏まえた条文整理を行っています。契約書の表記が古いままでも、適用される制度自体は現行の内容になっている点を押さえておくと安心です。
契約不適合責任期間は、約款上引渡しの日から原則2年とされていますが、契約書に記入された年数や、設備機器等・住宅新築請負契約に該当する場合の特則によって異なる場合があります。契約不適合が請負者の故意または重過失によるものであれば、この期間制限自体が適用されなくなる点も確認しておきたいポイントです。
契約不適合が発生した場合、請負者は履行の追完・代金減額・損害賠償・解除のいずれかの対応を求められる可能性があります。どの対応になるかは契約不適合の内容や重大性によって変わるため、発注者からの通知内容を丁寧に確認することが対応の出発点になります。契約書に記載された契約不適合責任期間の年数を、契約締結時に確認しておくとよいでしょう。
- 「瑕疵担保責任」は現行制度では「契約不適合責任」と呼ばれる(2020年4月1日施行の改正民法)
- 契約不適合責任期間は公共工事標準請負契約約款上、引渡しの日から原則2年とされている
- 契約不適合が発生した場合、履行の追完・代金減額・損害賠償・解除のいずれかで対応することになる
- 契約書に記載された契約不適合責任期間の年数を、契約締結時に確認しておく
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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