指名停止とは?措置の種類と処分の仕組みを解説


公共工事の入札に参加していると、「指名停止」という言葉を目にすることがあります。ニュースで聞いたことはあっても、どのような行為が対象になり、どのくらいの期間続くのかまで把握していない経営者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、指名停止の仕組みと措置の対象となる事象、期間の決まり方、通知や公表の手続きについて整理します。公共工事を受注した後のリスク管理に役立ててください。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 指名停止がどのような措置で、入札や契約にどのような影響を与えるのか
- 措置の対象となる事象の種類(事故・法令違反・不正行為など)
- 指名停止期間の決まり方と、短縮・延長の仕組み
- 通知・公表の手続きと、下請負人や共同企業体への波及
指名停止とは何か?公共工事における位置づけを確認する
指名停止とは、発注者が、工事の請負契約の相手方として不適当と認められる建設業者を、一定期間、指名の対象から除外する措置です。各発注機関が定める指名停止措置要領に基づいて運用されます。
建設業法に基づく許可の取り消しや営業停止などの監督処分とは別に、発注者が入札・契約の運用として行う点が特徴です。措置の目的は、工事等の契約の円滑かつ適正な履行を確保することとされています。
- 指名停止の期間中は、指名してはならない(現に指名している場合は指名を取り消す)
- 期間中は随意契約の相手方とすることもできない
- 期間中は、その発注者の工事を下請として請け負うことも認められない
つまり、指名停止は期間中にその発注者から仕事を得る道をすべて断つ措置です。元請としての入札参加だけでなく、下請や随意契約での受注機会にも影響します。
なお、指名停止は一つの発注者の措置であり、他の発注者には直接影響しません。ただし、措置の情報は発注者間で共有される仕組みがあるため、実務上は他の発注者との取引にも影響し得ます。
措置には、辞退の要請や違約金の請求など、段階に応じたものがあります。それぞれの位置づけを把握しておくと、指名停止の重みが理解しやすくなります。

罰則は辞退要請、違約金、指名停止の順に重くなり、指名停止は段階の最後に位置する措置です。
指名停止の対象となる事象はどのようなものか
指名停止の対象となる事象は、措置要領の別表に定められています。直轄工事の措置要領では、事故等に基づく基準(別表第1)と、贈賄及び不正行為等に基づく基準(別表第2)の2つに分かれています。
| 区分 | 措置要件の例 |
|---|---|
| 別表第1(事故等) | 入札前の調査資料への虚偽の記載 |
| 別表第1(事故等) | 過失による粗雑工事、契約違反 |
| 別表第1(事故等) | 安全管理の不適切による公衆・工事関係者の死傷事故 |
| 別表第2(贈賄・不正行為等) | 職員に対する贈賄(容疑による逮捕・公訴) |
| 別表第2(贈賄・不正行為等) | 独占禁止法違反、公契約関係競売等妨害・談合 |
| 別表第2(贈賄・不正行為等) | 建設業法違反、その他の不正又は不誠実な行為 |
このうち、贈賄や談合など独占禁止法違反にかかわる事案は、措置要件ごとに定められた期間の短期が2倍になるなど、特に厳しく扱われます。
一方で、必ずしも段階を踏むとは限らない点も押さえておく必要があります。違反の内容によっては、初回から重い措置が課されることがあります。



案件によっては、初回から指名停止になることもあると考えています。
下請負人や共同企業体にも波及する
指名停止は、元請会社だけでなく、周辺の事業者にも波及します。措置について責を負うべき下請負人が明らかになった場合は、その下請負人にも指名停止が併せて行われます。
共同企業体(JV)の場合は、指名停止を受けた構成員を含むJVへの指名停止に加えて、責を負う構成員にも指名停止が行われます。JVの構成員であること自体がリスクの波及経路になる点は押さえておく必要があります。
指名停止の期間はどのように決まるのか
指名停止の期間は、措置要件ごとに短期と長期が定められており、発注者が情状に応じてその範囲内で決定します。直轄工事の措置要領では、2週間以上36ヶ月以内の範囲で定められています。
期間は固定ではなく、事案の内容や情状によって短縮・延長される仕組みです。再発した場合や極めて悪質な事案では期間が長くなる一方、情状酌量すべき特別の事由があれば短縮されます。
- 一つの事案で複数の措置要件に該当した場合は、最も長い短期・長期が適用される
- 期間満了後1年以内に再び措置要件に該当した場合は、短期が2倍になる(1ヶ月未満なら1.5倍)
- 情状酌量すべき特別の事由がある場合は、短期の2分の1まで短縮できる
- 極めて悪質な事由・重大な結果がある場合は、長期の2倍(36ヶ月が上限)まで延長できる
再発した場合は期間が倍になるため、一度指名停止を受けた会社は、その後の対応が特に重要になります。措置の対象となった事象の再発防止策を、会社として講じることが求められます。
指名停止を受けた場合、影響の範囲は発注者ごとに異なります。どの発注者の措置か、どこまで影響が及ぶか、期間がどれくらいかを確認することが、対応の前提になります。



どの発注者の指名停止か、影響がどこまで及ぶか、期間がどれくらいかは、必ず確認すべきだと考えています。
指名停止の手続きと公表はどのように行われるか
通知と改善措置の報告
指名停止を行ったときは、発注者は遅滞なく、その内容を当該業者に通知します。措置の事由がその発注者の工事に関するものである場合は、必要に応じて改善措置の報告を求めることもあります。
指名停止に至らない場合でも、必要があると認められるときは、書面または口頭で警告や注意の喚起が行われます。注意の段階で原因を把握し、改善することが大切です。
公表と発注者間の情報共有
指名停止の情報は、公表される仕組みがあります。千葉県は、指名停止の措置を行ったときは業者名等を公表するものと定めており、九州地方整備局も指名停止一覧を年度ごとに公表しています。
直轄工事では、指名停止の内容が国土交通大臣に報告され、他の地方整備局に関連する事案は、その整備局にも通知されます。指名停止の情報は、発注者間で共有されやすくなっている点を意識しておく必要があります。
- 指名停止の内容は業者に通知され、必要に応じて改善措置の報告が求められる
- 自治体や地方整備局は、指名停止の情報を公表している
- 直轄工事では国土交通大臣への報告と、関連する整備局への通知が行われる
- 指名停止に至らない場合も、警告・注意の喚起が行われることがある
指名停止は、受注した後の施工管理や法令遵守のあり方に起因するものが少なくありません。制度を理解し、日頃の現場管理に活かすことが、措置を受けないための基本になります。
指名停止の理解は、公共工事の受注を継続するうえでのリスク管理の一つです。措置の対象となる事象を把握し、現場の体制づくりに活かすことが、受注を安定させる土台になります。
公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札や受注後の実務も制度として明確に定められており、要件を満たせば、会社の規模にかかわらず受注を継続できる仕組みです。
よくある質問
- 指名停止はどのくらいの期間続きますか?
-
措置要件ごとに短期と長期が定められており、発注者が情状に応じてその範囲内で決定します。直轄工事の措置要領では、2週間以上36ヶ月以内の範囲で運用されています。
- 指名停止は下請負人にも影響しますか?
-
措置について責を負うべき下請負人が明らかになった場合は、その下請負人にも指名停止が併せて行われます。また、指名停止の期間中は、その発注者の工事を下請として請け負うことも認められません。
- 指名停止の情報はどこで確認できますか?
-
自治体や地方整備局が指名停止の一覧を公表しています。九州地方整備局は指名停止一覧を年度ごとに公表し、千葉県も指名停止の措置を行ったときは業者名等を公表するものと定めています。
まとめ
指名停止とは、発注者が、工事の請負契約の相手方として不適当と認められる建設業者を、一定期間、指名の対象から除外する措置です。建設業法の監督処分とは別に、各発注機関の措置要領に基づいて運用されます。
対象となる事象は、虚偽記載・粗雑工事・安全管理の不適切による事故などのほか、贈賄・独占禁止法違反・談合などの不正行為に及びます。下請負人や共同企業体の構成員にも波及する点が特徴です。
期間は措置要件ごとに定められた短期・長期の範囲内で情状に応じて決まり、再発時は2倍、極めて悪質な事案では36ヶ月を上限に延長されます。措置の内容は業者に通知され、公表される仕組みです。
指名停止は、受注後の施工管理や法令遵守のあり方に起因するものが少なくありません。措置の対象となる事象を理解し、日頃の現場管理に活かすことが、受注を継続するための基本になります。
- 指名停止は発注者が契約相手として不適当な業者を一定期間、指名の対象から除外する措置
- 対象は虚偽記載・事故・契約違反などのほか、贈賄・談合・独占禁止法違反などの不正行為に及ぶ
- 期間は措置要件ごとの短期・長期の範囲で情状に応じて決まり、再発時は2倍になる
- 措置は通知・公表され、下請負人やJV構成員にも波及するため、現場管理と法令遵守が基本
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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