公共工事履行保証証券とは?提出が求められる理由と取得の流れ解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

公共工事の契約では、契約保証金の納付またはこれに代わる保証が求められます。その選択肢の一つが、公共工事履行保証証券です。はじめて公共工事を受注する会社にとって、証券の意味や取得の流れを理解しておくことは、契約手続きを滞りなく進めるために欠かせません。

本記事では、公共工事履行保証証券とは何かを、公共工事標準請負契約約款の規定に沿って整理し、提出が求められる理由と取得の流れを解説します。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 公共工事履行保証証券は契約保証金の納付に代わる保証の一つであること
  • 契約の締結と同時に、5つの保証のいずれかを付すことが約款で定められていること
  • 保証の額は請負代金額の十分の〇以上と定められていること
  • 取得には審査があり、決算書の内容が確認されること
目次

公共工事履行保証証券とは何か

契約保証金の納付に代わる保証の一つ

公共工事履行保証証券とは、公共工事の請負契約を結ぶ際に、契約保証金の納付に代えて付す保証の一種です。公共工事標準請負契約約款は、受注者に対し、契約の締結と同時に、次のいずれかの保証を付すことを求めています。

  • 契約保証金の納付
  • 契約保証金に代わる担保となる有価証券等の提供
  • 債務の不履行により生ずる損害金の支払いを保証する銀行等の保証
  • 債務の履行を保証する公共工事履行保証証券による保証
  • 債務の不履行により生ずる損害をてん補する履行保証保険契約の締結

このうち公共工事履行保証証券による保証は4番目に位置づけられており、契約保証金を現金で納める代わりに、証券によって契約の履行を担保する方法です。

契約保証金とどう違うのか

契約保証金は、請負代金額の一定割合を現金で発注者に納める方法です。約款では、契約保証金の額、保証金額または保険金額は、請負代金額の十分の〇以上とすることが定められています。〇に入る割合は発注者が定めるもので、約款の注記では「たとえば、一と記入する」と示されています。

比較項目 契約保証金 公共工事履行保証証券
保証の方法 現金を発注者に納める 証券を提出して保証する
手元資金の拘束 納付した分が拘束される 現金の拘束はない
発行の条件 特になし 発行機関の審査を受ける

公共工事履行保証証券による保証や履行保証保険契約を付した場合は、契約保証金の納付が免除されます。資金を現金で拘束されない点が、中小建設会社にとっての実務上の利点になります。

なぜ提出が求められるのか

契約の履行を担保する仕組み

公共工事は税金を財源とするため、契約どおりに工事が行われない場合のリスクを発注者がそのまま負うことはできません。契約保証は、受注者が契約を履行できない事態が生じたときに、発注者が被る損害を補うための仕組みです。

  • 受注者が工期内に工事を完成できないとき
  • 契約が解除されたとき
  • 受注者の責めに帰すべき事由で債務の履行が不能になったとき

税金が原資であることの意味

契約不履行のリスクを放置すれば、税金で賄われるはずの公共事業が滞るだけでなく、国民の税金が失われることにもなりかねません。だからこそ公共工事では、契約の履行を担保する仕組みが契約条項として整えられています。

実際に、税金を原資とする工事で工事資金を持ち逃げした事案もあります。

3億円の工事で1億2000万円の前受け金を受け取った上で、それを持ち逃げした会社があります。本当に逃げました。その会社はもうほぼ存在しないような状態です。その1億2000万円は戻ってこないわけです。市の税金、県の税金、国の税金だったりするわけですよ。

このような事態を防ぐため、前払金には保証事業会社の保証が、契約には契約保証がそれぞれ求められる仕組みになっています。

取得の流れと審査のポイント

取得の流れ

公共工事履行保証証券は、発行機関への申込みと審査を経て発行されます。契約の締結までに証券を用意できるよう、受注決定後すぐに手続きを始めることが実務上のポイントです。

  • 発行機関への申込み
  • 審査(決算書や財務状況の確認)
  • 証券の発行
  • 発注者への提出

審査で見られるポイント

証券の発行には、会社の財務状況などについて審査が行われます。決算書の内容、特に現金や借入金、自己資本の状況が確認されます。

審査の中心となるのが、決算書の内容です。

決算書をコントロールしなければなりません。特にバランスシートです。売上や利益の話ではなく、現金がいくらあるのか、借入れがいくらあるのか、自己資本がいくらなのか、流動資産と固定資産がどれぐらいの比率なのか。こうした決算書の1番目に来るページの重要な書類、ここを公共工事に参入するのであればコントロールするということです。

公共工事に継続的に参入するのであれば、保証の審査に耐えられる財務体質を整えることが、受注機会を広げることにつながります。

保証を用意できない場合はどうすればよいのか

審査に通らず保証を用意できない場合、契約を結べず受注機会を失うことになります。まずは決算内容の改善を進めるとともに、発行機関によって審査の基準は異なるため、複数の窓口を確認するという選択肢もあります。

  • 決算内容の改善(自己資本や借入状況の見直し)
  • 発行機関ごとの審査基準の確認
  • 次年度以降の受注計画を見据えた準備

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

よくある質問

公共工事履行保証証券はどこで取得できますか?

保証を発行する機関に申し込み、審査を経て発行されます。発行機関や審査基準、必要書類は機関ごとに異なるため、契約前に複数の窓口で条件を確認することが必要です。

契約保証金を現金で納めることはできますか?

できます。約款では、契約保証金の納付を含む5つの保証のいずれかを選ぶことができます。ただし現金での納付は資金が拘束されるため、多くの会社が証券や保険による保証を選択しています。

保証の額はどのくらいですか?

契約保証金の額、保証金額または保険金額は、請負代金額の十分の〇以上とすることが約款で定められています。具体的な割合は発注者が定めるため、契約書や公告で確認する必要があります。

前払金の保証も同じものですか?

前払金には、前払金保証事業に関する法律に基づく保証事業会社の保証契約が別途必要です。契約保証と前払金保証は別の仕組みのため、それぞれの手続きを確認することが必要です。

まとめ

公共工事履行保証証券は、契約保証金の納付に代わる保証の一つとして、公共工事標準請負契約約款に位置づけられています。契約の締結と同時に5つの保証のいずれかを付すことが求められ、保証の額は請負代金額の十分の〇以上と定められています。

取得には発行機関の審査があり、決算書の内容が確認されます。受注決定後の手続きを滞りなく進められるよう、財務体質の改善と窓口の確認を進めておくことが実務上のポイントです。

この記事のまとめ
  • 公共工事履行保証証券は、契約保証金の納付に代わる5つの保証の一つ
  • 約款により、契約の締結と同時にいずれかの保証を付すことが求められる
  • 証券による保証を付した場合は、契約保証金の納付が免除される
  • 取得には審査があり、決算書の内容を整えておくことが受注機会につながる

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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