建設業の人手不足の実態とは?データで見る現状と深刻な理由を解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

「建設業は人手不足」という言葉はよく耳にするものの、実際にどの程度深刻なのか、数字で把握できている経営者の方は多くないかもしれません。人手不足は採用の苦労として実感される一方で、その背景には就業者の減少と高齢化という、長い時間をかけて進んだ構造的な変化があります。

この記事では、建設業の人手不足の実態を公的統計などのデータで確認し、なぜここまで深刻になったのかという理由を整理します。あわせて、人手不足が建設会社の経営に及ぼす影響と、受注機会を確保するための考え方についても解説します。

2024年問題、人手不足、資金繰り…建設業界が直面する課題は山積みです。こうした環境だからこそ、経営の安定化には新たな収入源の確保が重要。この動画では、民間工事とは異なる公共工事という選択肢の実務的なポイントをおさえています。動画で基礎を理解した上で、記事の詳しい解説をご覧ください。

この記事で分かること
  • 建設業の就業者数はピーク時から約3割減少している
  • 高齢化と若年層の不足が同時に進んでいる
  • 長時間労働と相対的に低い賃金が人材離れの背景にある
  • 人手不足は工期・受注量・倒産リスクにも影響を及ぼす
目次

建設業の人手不足の実態はどのようなものか?

まず、建設業の就業者数と年齢構成のデータから現状を確認します。人手不足の実感が、どのような数字の裏付けを持つのかが分かります。

就業者数はピークから大きく減少している

建設業の就業者数は、1997年の685万人をピークに減少を続け、2025年には478万人となっています(総務省「労働力調査」に基づく日本建設業連合会の集計)。28年間で約200万人、およそ3割の減少です。

この減少は単なる景気変動によるものではなく、長期的な構造として続いてきました。公共投資の縮小や就業構造の変化が背景にあり、現在の人手不足はその延長線上にあります。

高齢化と若年層の不足が同時に進んでいる

就業者の年齢構成も大きく偏っています。2024年のデータでは、55歳以上の割合が36.7%と全体の3分の1以上を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまります(総務省「労働力調査」)。

全産業平均と比べると、55歳以上の割合は32.4%、29歳以下の割合は16.9%となっており、いずれも建設業の偏りが大きくなっています。高齢層の退職と若手の入職不足が同時に進んでいる点が、人手不足を長期的に深刻化させる要因です。

項目(2024年)建設業全産業平均
就業者に占める55歳以上の割合36.7%32.4%
就業者に占める29歳以下の割合11.7%16.9%

人手不足が深刻化した理由は何か?

人手不足の背景には、労働条件の実態と業界の人気低下という2つの構造的な要因があります。働き手の視点から見た業界の実態を確認します。

長時間労働と相対的に低い賃金が続いてきた

建設業の平均年間労働時間は2023年度で2,018時間であり、他産業と比べて年間62時間長い水準です(国土交通白書)。一方、生産労働者の年間平均賃金は432万円で、全産業平均より76万円低くなっています。

項目建設業の状況
平均年間労働時間(2023年度)2,018時間(他産業より年間62時間長い)
生産労働者の年間平均賃金(2023年)432万円(全産業平均より76万円低い)

労働時間が長く、賃金水準が相対的に低いという構造は、若年層の入職や定着を難しくしてきた要因の一つと考えられます。働き手の確保は、まずこの条件の改善から始まります。

採用市場の変化が業界の人気低下を映してきた

求人市場の縮小も、業界の人気低下を早くから示していました。肉体労働者向けの求人誌が紙面を減らし、やがて廃刊に至ったことは、その象徴的な変化です。

今から18年ぐらい前でしょうか、その頃から状況は感じ取れるようになっています。ガテンの求人(募集)がこれぐらいの厚さの雑誌だったものが、もうこのようにペラペラに薄くなり、ついには廃刊になってしまいました。ガテンというのは肉体労働者向けの求人誌ですから、そこが薄くなるということは人気が落ちているということであり、明らかな傾向としては15年ぐらい前から感じられるものではあります。

人気の低下が15年以上前から続いてきたということは、人手不足が短期の景気変動ではなく、長期の構造として進んでいることを示しています。求人媒体の縮小は、働き手の選択肢が建設業から離れていった過程の表れです。

2024年問題が人手不足に与えた影響

働き方改革関連法による時間外労働の上限規制は、2024年4月から建設業に適用されました(厚生労働省)。残業で工期を吸収してきた従来の工程管理は、法令上維持しにくくなっています。

4週8休(週休2日)以上が確保されている建設技術者・建設技能労働者の割合は、公共工事で約3〜4割、民間工事では約1割強にとどまります(国土交通白書)。休日の確保が進むほど、同じ人員で施工できる工事量は制約を受けます。

人手不足は建設会社の経営にどのような影響を与えているか?

人手不足の影響は、採用コストの上昇にとどまりません。工期の維持や受注量、果ては会社の存続にまで及ぶ問題です。

  • 人員確保の困難による採用コストの上昇と受注量の制約
  • 人件費上昇や工期延長による原価の増加
  • 資金繰り悪化による倒産リスクの高まり

人手不足が倒産の要因にもなっている

2025年に倒産した建設業者は2,021件で、うち人手不足を主因とするものは113件にのぼります(帝国データバンク)。人手不足に伴う人件費の上昇や工期の延長が、資金繰りを圧迫するケースが増えています。

同年の全産業の倒産は1万261件で、建設業はその約2割を占めます。人手不足は経営課題であると同時に、会社の存続に関わるリスクでもあります。

省人化は進むが、絶対的な人手不足は残る

2007年から2023年にかけて、建設業の労働投入量は約20%減少した一方、労働生産性は約40%上昇しました(国土交通白書)。ICT施工など省人化の取り組みは一定の成果を上げています。

ただし、生産性の向上だけでは、退職する高齢層を補うだけの人手を確保できていません。人員の絶対量が減り続ける中で、どう経営を回すかという視点が必要になります。

職人が集まらないことは、事業を諦める理由にはなりません。

職人を確保しようという発想になるのが通常ですが、小規模な会社に優秀な職人が集まることはありません。むしろ職人が不足している場合には、職人でない人材を活用して売上を上げることで対応できます。

職人以外の働き手で業務を構成する方法は、小規模な会社ほど現実的な選択肢になります。事務作業の担い手や業務委託など、職人の確保にこだわらない体制づくりが有効です。

人手不足の中でも受注機会を確保するにはどうすればよいか?

人手不足への対応は、働き方の改善と人材の確保という2つの方向から進める必要があります。あわせて、限られた人員でも受注につなげられる市場を選ぶことも重要です。

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

  • 週休2日工事の受注やICT活用による省人化を進める
  • パートや在宅ワーカーなど、職人以外の働き手を業務設計に組み込む
  • 代金回収の仕組みが整った公共工事に受注の軸足を置く

人手不足への対応と受注機会の確保は、別々の課題ではありません。働き方の改善や人材活用の工夫を進める過程で、公共工事への参入という選択肢も検討してみてください。

よくある質問

建設業の就業者数はどのくらい減っていますか?

1997年の685万人をピークに減少を続け、2025年には478万人まで減っています。約200万人、およそ3割の減少です(総務省「労働力調査」に基づく集計)。

人手不足は今後も続くのでしょうか?

55歳以上が全体の3分の1以上を占める一方、29歳以下は1割強にとどまっており、高齢層の退職が進む間は人手不足の傾向が続くと見られます。週休2日の定着や省人化の進展によって、業界全体の状況は変わり得ます。

人手不足でも公共工事に参入できますか?

入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できます。職人以外の働き手で業務を構成する方法もあり、人手不足を参入の障壁としてそのまま受け入れる必要はありません。

人手不足対策で最初にすべきことは何ですか?

自社の労働時間や賃金、採用状況をデータで把握することから始めるとよいでしょう。現状の把握なしに対策を打っても、効果の検証が難しくなります。

まとめ

建設業の人手不足は、就業者数の長期的な減少と高齢化、そして長時間労働と相対的に低い賃金という構造が重なって生じています。2024年4月からの時間外労働の上限規制適用は、この構造にさらなる制約を加えました。

人手不足は採用の困難さだけでなく、工期の維持や受注量、倒産リスクにも影響を及ぼします。一方で、生産性向上や職人以外の働き手の活用など、対応の方向性は複数あります。

自社の現状をデータで把握し、働き方と人材活用を見直すことが第一歩です。あわせて、制度整備が進む公共工事という選択肢も、経営判断の視野に入れてみてください。

この記事のまとめ
  • 就業者数は1997年の685万人から2025年に478万人まで減少している
  • 55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまる
  • 人手不足は工期・受注量・倒産リスクにまで影響が及ぶ
  • 働き方の改善と人材活用の工夫が、対応の出発点になる

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

あわせて読みたい

コメント

目次