給付基礎日額とは?労災給付の計算方法と平均賃金の関係を解説


給付基礎日額は、労災保険の給付額を計算するときの基準になる、1日あたりの金額です。原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額とされ、事故が発生した日以前3か月間の賃金をもとに算定されます。
この記事では、給付基礎日額の意味、平均賃金との関係、計算方法、最低保障額と年齢階層別の限度額、調べ方までを、2026年10月執筆時点の法令と厚生労働省の資料をもとに整理します。あわせて、公共工事の現場運営との関わりにも触れます。
2024年問題、人手不足、資金繰り…建設業界が直面する課題は山積みです。こうした環境だからこそ、経営の安定化には新たな収入源の確保が重要。この動画では、民間工事とは異なる公共工事という選択肢の実務的なポイントをおさえています。動画で基礎を理解した上で、記事の詳しい解説をご覧ください。
- 給付基礎日額は労災保険の給付額を計算する基準で、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額とされる
- 計算の基本は、算定事由発生日以前3か月間の賃金総額を暦日数で割る方法で、賞与などは賃金総額に含めない
- 令和8年8月1日以降の最低保障額は4,350円で、年齢階層別の限度額は休業の療養開始後1年6か月経過後や年金に適用される
- 一人親方などの特別加入者は、実際の賃金ではなく3,500円から25,000円までの16段階から給付基礎日額を定める
給付基礎日額とは?労災保険の給付額を決める基準
労災保険の休業補償給付や障害補償給付などは、給付基礎日額を基準にして額が決まります。まず、給付基礎日額の意味と、どの給付に使われるのかを確認します。
給付基礎日額は平均賃金に相当する額
労働者災害補償保険法第8条第1項は、給付基礎日額を「労働基準法第12条の平均賃金に相当する額」と定めています。平均賃金を算定する日は、負傷や死亡の原因となった事故が発生した日、または診断によって疾病の発生が確定した日で、条文では「算定事由発生日」と呼ばれています。
ただし、平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるときは、厚生労働省令に基づいて政府が算定する額が給付基礎日額になります(同条第2項)。
給付基礎日額を基にして給付の額が決まる
休業補償給付は、賃金を受けない日の第4日目から、1日につき給付基礎日額の60%に相当する額が支給されます(労災保険法第14条第1項)。障害、傷病、遺族、葬祭に関する給付も、給付基礎日額の「何日分」という形で額が決まります。
| 給付 | 額の決まり方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 休業補償給付 | 休業4日目から1日につき給付基礎日額の60% | 労災保険法第14条 |
| 障害補償年金 | 障害等級第1級から第7級に応じて、給付基礎日額の313日分から131日分 | 労災保険法別表第一 |
| 障害補償一時金 | 障害等級第8級から第14級に応じて、給付基礎日額の503日分から56日分 | 労災保険法別表第二 |
| 傷病補償年金 | 傷病等級第1級から第3級に応じて、給付基礎日額の313日分から245日分 | 労災保険法別表第一 |
| 遺族補償年金 | 遺族の人数に応じて、給付基礎日額の153日分から245日分(1人の場合の55歳以上の妻などは175日分) | 労災保険法別表第一 |
| 遺族補償一時金 | 給付基礎日額の1,000日分(遺族補償年金を受けることができる遺族がいない場合。年金の支給後に受給権が消滅した場合は、支給済みの年金額を差し引いた額) | 労災保険法第16条の6、別表第二 |
| 葬祭料 | 33万円に給付基礎日額の30日分を加えた額(給付基礎日額の60日分に満たない場合は60日分) | 労災保険法施行規則第17条 |
休業の場合は、給付基礎日額の20%にあたる休業特別支給金が加わり、休業1日につき給付基礎日額の80%が支給されると厚生労働省は説明しています。
給付基礎日額の計算方法は?平均賃金との関係
給付基礎日額の計算は、労働基準法第12条が定める平均賃金の算定方法に沿って行います。原則の計算式と、賃金総額から除くもの、日給や出来高払の場合の最低保障を順に確認します。
原則は直前3か月間の賃金総額を暦日数で割る
労働基準法第12条第1項は、平均賃金を、算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額と定めています。賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から数えて3か月間をとります(同条第2項)。
厚生労働省は、この計算を「賃金の総額÷暦日数」と説明し、1円未満の端数は1円に切り上げるとしています。同省が示す計算例は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 前提 | 月給20万円、賃金締切日は毎月末日、10月に事故が発生 |
| 算定期間 | 7月、8月、9月(31日+31日+30日=92日) |
| 賃金総額 | 20万円×3か月=60万円 |
| 計算 | 60万円÷92日=6,521円73銭となり、1円未満を切り上げて6,522円 |
同じ例では、休業1日あたりの額は、休業補償給付が3,913円、休業特別支給金が1,304円で、合計5,217円とされています(端数切捨て)。
賃金総額に含めない賃金
賃金総額には、支払われたすべての賃金が入るわけではありません。労働基準法第12条第4項は、次の賃金を算入しないと定めています。
- 臨時に支払われた賃金
- 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 通貨以外のもので支払われた賃金のうち、一定の範囲に属しないもの
算定期間から除かれる期間
算定期間の中に次の期間がある場合は、その日数と期間中の賃金を、期間と賃金総額の両方から除いて計算します(労働基準法第12条第3項)。
- 業務上負傷し、または疾病にかかり、療養のために休業した期間
- 産前産後の女性が休業した期間
- 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
- 育児休業または介護休業をした期間
- 試みの使用期間
雇い入れから3か月に満たない人は、雇い入れ後の期間で算定します(同条第6項)。日日雇い入れられる人の平均賃金は、その従事する事業または職業について厚生労働大臣が定める金額とされています(同条第7項)。
日給や出来高払の場合は最低保障がある
賃金が労働した日や時間によって算定される場合や、出来高払制その他の請負制の場合は、賃金の総額を労働した日数で割った金額の60%を下回ってはならないとされています(労働基準法第12条第1項ただし書)。日給制で稼働日数が少ない期間があると、この最低保障の方が高くなることがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仮定の前提 | 日給12,000円、算定期間は92日、労働日数は50日、賃金総額は60万円 |
| 原則の計算 | 60万円÷92日=6,521円73銭 |
| 最低保障の計算 | 60万円÷50日×60%=7,200円 |
| 平均賃金 | 下回ってはならないため、高い方の7,200円 |
上の表は、仕組みを示すために筆者が仮定した数字による計算例です。実際の算定は、賃金の支払い実績と日数にもとづいて行います。
給付基礎日額の調べ方は?確認できる書類と試算の手順
給付基礎日額は、労災の請求書に添える書類のなかで、賃金の支払い実績から算定されます。確認に使う様式と、試算するときの手順を整理します。
休業補償給付の請求書には平均賃金算定内訳が付いている
休業補償給付の請求書(様式第8号)には、別紙1として「平均賃金算定内訳」が付いています。様式には「労働基準法第12条参照のこと」と記載され、賃金計算期間、総日数、賃金総額を記入して、賃金総額を総日数で割る構成になっています。
- 雇入年月日と、常用か日雇かの別
- 賃金の支給方法(月給、週給、日給、時間給、出来高払制、その他の請負制)と賃金締切日
- 賃金計算期間ごとの総日数と、日給や出来高払の場合の労働日数
- 基本賃金と手当を合わせた賃金総額
同じ様式には、最低保障平均賃金を計算する欄と、日日雇い入れられる人の平均賃金の欄も設けられています。
自社の労働者の給付基礎日額を試算する手順
労災が起きたときに備えて、自社の労働者の給付基礎日額を試算しておく手順は次のとおりです。
- 算定事由発生日(事故が発生した日など)を確認する
- 賃金締切日がある場合は、その直前の締切日から3か月間を算定期間とする
- 算定期間の賃金総額と暦日数を、賃金台帳などで確認する
- 賞与など賃金総額に含めない賃金と、除かれる期間がないかを確認する
- 賃金総額を暦日数で割る。日給や出来高払の場合は最低保障の計算と比べ、高い方をとる
- 1円未満の端数は1円に切り上げる
試算した額は目安です。請求後の実際の額は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
給付基礎日額には最低保障額と年齢階層別の限度額がある
平均賃金から算定した額が、そのまま給付基礎日額になるとは限りません。最低保障額と年齢階層別の限度額があり、いずれも8月1日を適用開始日として見直されています。
最低保障額は令和8年8月1日以降4,350円
厚生労働省は、被災時の事情により給付基礎日額が極端に低い場合を是正し、補償の実効性を確保するため、最低保障額である自動変更対象額を定めています。令和8年8月1日以降に適用される額は4,350円で、改定前の4,250円から100円引き上げられました。
平均賃金に相当する額が自動変更対象額に満たない場合は、自動変更対象額が用いられます(労災保険法施行規則第9条第1項第5号)。スライド制が適用される場合は、同号ただし書の扱いになります。
年齢階層別の最低・最高限度額は一定の場合に適用される
年齢階層別の最低限度額と最高限度額は、休業補償給付等では、支給すべき事由が生じた日が療養を開始した日から1年6か月を経過した日以後の場合に適用されます(労災保険法第8条の2第2項)。年金たる保険給付にも同じ仕組みが準用されます(第8条の3第2項)。
令和8年8月1日から令和9年7月31日までに適用される限度額は、次のとおりです。どの年齢階層に当たるかは、基準日における年齢で判断されます。
| 年齢階層 | 最低限度額 | 最高限度額 |
|---|---|---|
| 19歳以下 | 5,682円 | 14,450円 |
| 20〜24歳 | 6,221円 | 14,450円 |
| 25〜29歳 | 6,852円 | 16,486円 |
| 30〜34歳 | 7,146円 | 20,499円 |
| 35〜39歳 | 7,420円 | 22,399円 |
| 40〜44歳 | 7,727円 | 24,827円 |
| 45〜49歳 | 7,833円 | 25,746円 |
| 50〜54歳 | 7,778円 | 26,264円 |
| 55〜59歳 | 7,467円 | 27,053円 |
| 60〜64歳 | 6,509円 | 23,364円 |
| 65〜69歳 | 4,350円 | 17,709円 |
| 70歳以上 | 4,350円 | 14,450円 |
休業給付と年金給付では改定の仕組みが異なる
休業補償給付等の給付基礎日額は、毎月勤労統計の平均給与額が、算定事由発生日の属する四半期と比べて110%を超えたり90%を下回ったりした場合に、その翌々四半期から改定率を乗じて見直されます(労災保険法第8条の2第1項第2号)。
年金の給付基礎日額は、算定事由発生日の属する年度の翌々年度の8月以後の分から、平均給与額の変動に応じた率を乗じて算定されます(第8条の3第1項第2号)。個別のスライド率は、算定事由発生日によって異なります。
特別加入者や複数の事業で働く人の給付基礎日額はどう決まるのか?
労働者ではない一人親方などの特別加入者と、複数の事業主のもとで働く人では、給付基礎日額の決まり方が異なります。建設業では、一人親方や掛け持ちで働く人が現場に入ることもあるため、整理しておきます。
特別加入者は3,500円から25,000円までの16段階から定める
建設業の一人親方は、土木、建築その他の工作物の建設などの事業を労働者を使用しないで行う者として、任意の特別加入制度の対象になります(労災保険法第33条第3号、施行規則第46条の17第2号)。特別加入者の給付基礎日額は、賃金から算定するのではなく、施行規則が定める次の16段階から定めます(施行規則第46条の20第1項、第46条の24)。
- 3,500円、4,000円、5,000円、6,000円
- 7,000円、8,000円、9,000円、10,000円
- 12,000円、14,000円、16,000円、18,000円
- 20,000円、22,000円、24,000円、25,000円
所轄都道府県労働局長は、額を定めるにあたり特に必要があると認めるときは、所得を証明できる書類などを提出させるものとされています(施行規則第46条の20第9項)。定めた額は、承認を受けた事業主に通知されます(同条第10項)。
複数事業労働者は各事業の給付基礎日額を合算する
複数の事業主のもとで働く複数事業労働者に保険給付を行う場合は、事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額を基礎として、政府が算定します(労災保険法第8条第3項)。副業や掛け持ちで働く人がいる場合は、この点も踏まえて賃金の記録を整えておく必要があります。
給付基礎日額の理解は公共工事の現場運営にどうつながるのか?
給付基礎日額は、労災が起きたときに、従業員や一人親方に支給される給付の額を決める基準です。賃金の支払い実績から算定されるため、日頃の賃金の記録が、給付の算定にも関わってきます。
- 事業主は、労災の請求書の平均賃金算定内訳を、賃金の支払い実績から記入する
- 一人親方などの特別加入者は、承認された給付基礎日額が給付額を左右する
- 元請として現場を動かす立場では、労災が起きたときの給付の仕組みを理解しておく
労災が起きたときの給付の仕組みを理解しておくことは、公共工事で元請として現場を動かす場面に備えるうえでも役立ちます。
公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。
公共工事への参入に向けた全体像は、下記で詳しく確認できます。
よくある質問
- 給付基礎日額は、事故が起きてから決まるのか?加入時に決めるのか?
-
労働者の場合は、事故が発生した日などの算定事由発生日を基準に、平均賃金に相当する額として算定されます。一方、特別加入者は、実際の賃金ではなく、16段階の額のなかから所轄都道府県労働局長が定めた額が給付基礎日額になります。
- 休業中に賃金の一部が支払われた場合、給付はどうなるのか?
-
厚生労働省は、所定労働時間の一部だけ働いた日は、給付基礎日額から、実際の労働に対して支払われた賃金の額を差し引いた額の80%が支給されると説明しています。内訳は、休業補償給付が60%、休業特別支給金が20%です。
- 最低保障額は毎年変わるのか?
-
最低保障額は、毎月勤労統計の平均給与額が基準の年度から上昇または低下した場合に、その比率に応じて、翌年度の8月1日以後に変更されます(労災保険法施行規則第9条第2項)。変更するときは、厚生労働大臣が、その年度の7月31日までに告示することとされています。
- 給付基礎日額と平均賃金は、いつも同じ金額になるのか?
-
原則は平均賃金に相当する額ですが、いつも同じとは限りません。最低保障額に満たない場合や、年齢階層別の限度額、スライド制が適用される場合には、平均賃金と異なる額になることがあります。
まとめ
給付基礎日額は、労災保険の給付額を計算する基準となる1日あたりの金額で、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額です。算定事由発生日以前3か月間の賃金総額を暦日数で割って算定し、賞与などは賃金総額に含めません。
平均賃金から算定した額には、最低保障額と年齢階層別の限度額が関わります。特別加入者は、実際の賃金ではなく、3,500円から25,000円までの16段階から給付基礎日額を定めます。
本記事の金額は令和8年8月1日から令和9年7月31日までに適用される額で、2026年10月執筆時点の情報です。実際の手続きでは、所轄の労働基準監督署や厚生労働省の最新の資料で確認してください。
- 給付基礎日額は、原則として算定事由発生日以前3か月間の賃金総額を暦日数で割って求める
- 日給や出来高払の場合は、労働日数で割った額の60%を下回らないよう最低保障の計算と比べる
- 最低保障額と年齢階層別の限度額は毎年見直されるため、最新の額を厚生労働省の資料で確認する
- 自社の労働者の賃金の記録を整え、一人親方などの特別加入者がいる場合は承認された給付基礎日額も把握しておく
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
あわせて読みたい

とは?加点される評価項目と対策を徹底解説_with-title_1787204936241.png)




