安全衛生管理計画書は誰が作る?全建統一様式の記入項目をまとめ

安全衛生管理計画書は誰が作る?全建統一様式の記入項目をまとめ
監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

安全衛生管理計画書は、会社や工事現場の安全衛生に関する基本方針、目標、重点的に取り組む事項などをまとめた書類です。労働安全衛生法には、事業者一般に作成を義務づける規定は確認できず、厚生労働省の指針や元請の運用の中で作成が求められています。

この記事では、安全衛生管理計画書を誰が作るのか、記入項目の考え方、全建統一様式の扱いを、2026年10月執筆時点の法令と指針をもとに整理します。あわせて、公共工事の現場運営との関わりにも触れます。

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この記事で分かること
  • 安全衛生管理計画書は、事業場(店社)単位の年間計画と、工事(現場)単位の計画に分けて考えられる
  • 建設業の特定元方事業者には工程と配置に関する計画の作成義務があり、安全衛生管理計画は指針で元方事業者と関係請負人に作成が示されている
  • 記入項目は基本方針、目標、重点事項が基本で、厚生労働省の指針は安全衛生計画に含める7つの事項を示している
  • 全建統一様式を含め、提出する計画書の様式や記入欄は、提出先の元請が指定する最新のものに従う
目次

安全衛生管理計画書とは?法令上の位置づけ

安全衛生管理計画書は、安全衛生活動の方針と実行計画を文書にしたものです。対象が会社全体なのか個々の現場なのかによって、性格が異なります。

安全衛生管理計画書は事業場単位と工事単位に分けられる

建設業では、計画書は2つの単位で語られます。1つは本店や支店などの事業場(店社)が1年間の活動をまとめる年間計画、もう1つは個々の工事現場の管理をまとめる工事単位の計画です。

単位対象主な内容位置づけ
事業場(店社)単位本店や支店などの1年間の安全衛生活動基本方針、目標、重点事項など元方事業者による建設現場安全管理指針で作成が示されている
工事(現場)単位個々の工事現場の安全衛生管理基本方針、目標、重点事項など同指針で元方事業者の作成が示され、元請が下請に提出を求める運用もある

計画の名称は資料によって異なる

「安全衛生管理計画書」は、法令上の用語ではありません。資料ごとに、次のような名称が使われています。

  • 安全衛生管理計画(元方事業者による建設現場安全管理指針)
  • 安全衛生計画(労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針)
  • 工事安全衛生計画書(民間の解説で、下請が元請に提出する書類として紹介されている名称)
  • 工事安全計画書(国土交通省北陸地方整備局営繕部が公開している参考例の名称)

提出を求められたときは、名称ではなく、元請や発注者が指定する様式と記載内容で確認します。

労働安全衛生法に出てくる別の「計画」との違い

労働安全衛生法には、「計画」という語を含む条文が複数あります。安全衛生管理計画書と混同しやすいため、主なものを整理します。

名称根拠内容
労働災害防止計画第6条厚生労働大臣が、労働災害の防止に関する重要な事項を定めた計画を策定する
安全衛生改善計画第79条総合的な改善措置が必要と認められる事業場の事業者に、都道府県労働局長が作成を指示する
計画の届出第88条一定の機械等の設置や、建設業などの一定の仕事を開始するときに、計画を労働基準監督署長(特に大規模な建設の仕事は厚生労働大臣)へ届け出る

これらは、国や労働局が策定・指示する計画や、一定の工事の届出手続きです。事業者の安全衛生活動をまとめる安全衛生管理計画書とは、位置づけが異なります。

安全衛生管理計画書は誰が作るのか?

作成する人は、法令が定めているものと、指針や元請の運用で求められるものを分けて考える必要があります。

元請は法令上、工程と配置に関する計画を作成する

労働安全衛生法第30条第1項第5号は、建設業などの特定元方事業者に、仕事の工程に関する計画と、作業場所における機械、設備等の配置に関する計画の作成を求めています。建設業が対象であることは労働安全衛生規則第638条の2に、計画の内容は同規則第638条の3に定められています。

特定元方事業者とは、同じ場所で仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者のうち、建設業などを行う者です(法第15条第1項)。仕事の一部を下請に出す元請は、これにあたります。

  • 工程表等の仕事の工程に関する計画
  • 作業場所における主要な機械、設備および作業用の仮設の建設物の配置に関する計画

上の2つが、規則第638条の3で作成を求められている計画です。工程と配置の計画であり、「安全衛生管理計画書」という名称の書類の作成を定めた条文ではない点に注意が必要です。

指針は元方事業者と関係請負人に安全衛生管理計画の作成を求めている

旧労働省が平成7年に示した「元方事業者による建設現場安全管理指針」(基発第267号の2)は、安全衛生管理計画の作成を次のように示しています。

作成する人対象内容指針の該当箇所
元方事業者建設現場基本方針、安全衛生の目標、労働災害防止対策の重点事項等第2の1
元方事業者店社の年間同上第3の1
関係請負人店社の年間同上第3の9の(1)

この指針は、元方事業者が実施することが望ましい安全管理の具体的手法を示すものです。関係請負人が実施することが望ましい事項も併せて示されており、法令の義務規定とは性格が異なります。

下請に提出を求めるのは元請の運用による

民間の解説では、工事単位の計画書は、下請が作成して元請に提出するものとして紹介されています。同じ解説は、労働安全衛生法が事業者に計画書の作成を直接義務づけているわけではなく、元請が協力会社へ提出を求めるケースが多い、と説明しています。

労働安全衛生法に、下請が元請へ提出する計画書の作成を一律に義務づける規定は、本記事の調査では確認できていません。提出を求められたときは、元請の指示に従って、様式、記載内容、提出期限を確認します。

安全衛生管理計画書にはどのような項目を記入するのか?

記入項目は、元請や発注者が指定する様式によって異なります。ここでは、公的な資料で確認できた項目を整理します。

元方事業者の指針が示す計画の基本項目は3つ

元方事業者による建設現場安全管理指針は、現場の計画も店社の年間計画も、次の3つを内容とするよう示しています。

  • 安全衛生管理の基本方針
  • 安全衛生の目標
  • 労働災害防止対策の重点事項等

計画書の中心になるのは、方針、目標、重点事項の3つです。様式によっては、ここに組織体制や活動計画などの欄が加わります。

マネジメントシステム指針は安全衛生計画に含める事項を7つ示している

労働安全衛生規則第24条の2に基づき厚生労働大臣が公表している「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」は、事業者が、安全衛生目標を達成するため、危険性または有害性等の調査の結果などに基づき、一定の期間を限って安全衛生計画を作成するものとしています(第12条第1項)。

計画に含める事項は、第12条第2項で次の7つが挙げられています。

  • 危険性または有害性等の調査の結果に基づき決定した措置の内容と実施時期
  • 日常的な安全衛生活動の実施
  • 健康の保持増進のための活動の実施
  • 安全衛生教育および健康教育の内容と実施時期
  • 関係請負人に対する措置の内容と実施時期
  • 安全衛生計画の期間
  • 安全衛生計画の見直し

この指針は、事業者が自主的に行う安全衛生活動を促進するためのものです。機械や化学物質などによる危険を防ぐために事業者が講ずべき具体的な措置を、定めるものではないとも明記されています(第1条、第2条)。

静岡労働局が公開する建設業向けの年間計画様式にも項目の例がある

静岡労働局のウェブサイトでは、建設業向けの「安全衛生管理計画」の様式(Excel)が公開されています。年度ごとに店社などの事業場がまとめる形式で、次のような項目が設けられています。

  • 事業場の概要(事業の種類、名称、所在地、代表者、労働者数)
  • 安全衛生管理体制(総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医、店社安全衛生管理者、安全衛生推進者)
  • 過去3年間の災害発生状況とヒヤリ・ハット報告件数
  • 安全衛生方針と安全衛生目標
  • リスクアセスメント等の実施状況と、本年度の実施計画
  • 店社の安全衛生活動の実施状況と、現場単位の安全衛生点検結果
  • メンタルヘルス対策の実施状況
  • 月別の安全衛生活動計画表

この様式は事業場単位の年度計画のものです。工事単位の計画書とは、対象も記入欄も異なると考えられます。

全建統一様式の記入欄は元請が指定する様式で確認する

全建統一様式は、一般社団法人全国建設業協会(全建)が整えた様式で、建設業で広く使われてきたとされています。民間の解説は、工事単位の安全衛生計画書も、全建統一様式の1つとして紹介しています。

ただし、全建統一様式の様式番号や記入欄は、公的な資料では確認できませんでした。様式の指定は元請によって異なるため、様式の名称、記入欄、添付する資料は、元請から受け取る最新の様式で確認してください。

安全衛生管理計画書の作成はどう進めるのか?

作成の進め方は、マネジメントシステム指針が示す流れが参考になります。方針の表明から計画の周知までを、順に確認します。

作成の流れは6つの段階

指針が示す流れは、次の6つの段階に整理できます。括弧内は、指針の該当条文です。

  1. 安全衛生方針を表明し、労働者や関係請負人その他の関係者に周知する(第5条)
  2. 危険性または有害性等を調査し、実施する措置を決定する(第10条)
  3. 調査の結果と過去の目標の達成状況を踏まえて、安全衛生目標を設定する(第11条)
  4. 目標を達成するための具体的な実施事項と日程を、安全衛生計画にまとめる(第12条)
  5. 計画を実施し、必要な事項を労働者や関係請負人その他の関係者に周知する(第13条)
  6. 実施状況を日常的に点検・改善し、次回の計画に反映する(第15条)

事業者は、安全衛生方針、安全衛生目標、安全衛生計画などを文書で定めるものとされています(第8条)。方針や目標を文書にしておくと、労働者や関係請負人へ周知しやすくなります。

計画は関係請負人にも周知する

指針は、方針、目標、計画の実施に必要な事項を、労働者だけでなく関係請負人その他の関係者にも周知するよう求めています(第5条、第11条、第13条第2項)。元請が現場の計画を作成する場合は、下請にも共有することが、この考え方に沿った対応と考えられます。

関係請負人が作業の実施に関して計画を作成する場合は、その計画と元請の計画との整合を確保するための調整を、安全衛生責任者が統括安全衛生責任者との間で行います(労働安全衛生規則第19条第4号)。下請の立場でも、元請の目標や重点事項を確認しておくと、計画の整合を取りやすくなります。

提出前に元請へ確認しておきたい点

工事単位の計画書は、元請が様式と提出条件を指定するのが一般的です。作成に入る前に、次の4点を確認しておくと、手戻りを減らせます。

  • 計画書の様式の名称と版
  • 記入する対象の工事と計画の期間
  • 提出期限と提出先
  • 添付する資料の有無

安全衛生管理計画書への対応は公共工事の現場運営にどうつながるのか?

安全衛生管理計画書は、公共工事で元請になる場合も、下請として現場に入る場合も関わってきます。元請になれば、工程と配置の計画を作成し、指針が示す安全衛生管理計画をどう整えるかを考える立場になります。

国土交通省北陸地方整備局営繕部は、営繕工事向けに「工事安全計画書」の参考例を公開しています。この計画書は参考であり、工事の内容や現場の状況に応じて作成するものとされています。参考例の大項目は次のとおりです。

  • 一般事項(総則、工事概要)
  • 安全に関する現場組織体制
  • 工事の安全に関する施工全般にわたる留意点および対策
  • 建設工事公衆災害防止対策要綱の各項目ごとの具体的対策
  • 工事現場の安全衛生管理に関する具体的な対策
  • 関係資料の添付

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

公共工事への参入に向けた全体像は、下記で詳しく確認できます。

よくある質問

安全衛生管理計画書は、毎年作り直す必要があるのか?

マネジメントシステム指針は、安全衛生計画を「一定の期間を限って」作成するものとしています(第12条第1項)。元方事業者による建設現場安全管理指針は、店社については年間の計画、建設現場については現場の計画を作成するよう示しています。

従業員が少ない会社でも、作成が求められるのか?

元方事業者による建設現場安全管理指針の通達は、中小建設業者において中長期的な取組みが必要とされる事項が含まれていることに留意し、関係事業者の自主的な取組みを促すとしています。法令で一律に作成を義務づけたものではありませんが、元請から提出を求められる場合があるため、様式と記載内容を確認しておくと安心です。

全建統一様式を使わず、自社の様式で提出してもよいのか?

本記事で確認した法令や指針は、計画に含める内容を示すもので、様式を指定していません。ただし、提出先の元請が様式を指定している場合は、その指示に従います。

作成した計画書は、労働基準監督署へ提出するのか?

静岡労働局が公開している建設業向けの年間計画の様式には、写しを所轄の労働基準監督署に提出するよう求める注記があります。ただし、提出を義務づける法令上の根拠は、本記事では確認できていません。

一定の工事の計画を届け出る労働安全衛生法第88条の手続きとは別のものです。提出の取り扱いは、所轄の労働基準監督署で確認してください。

まとめ

安全衛生管理計画書は法令上の用語ではなく、事業場単位の年間計画と、工事単位の計画に分けて考えられます。労働安全衛生法に、事業者一般へ作成を義務づける規定は確認できませんでした。

建設業の特定元方事業者には、工程と機械・設備の配置に関する計画の作成義務があります。安全衛生管理計画は、厚生労働省の指針で元方事業者と関係請負人に作成が示されており、下請への提出は元請の指示によります。

記入項目は基本方針、目標、重点事項が基本で、全建統一様式を含め、様式や記入欄は元請が指定する最新のものに従います。本記事の内容は2026年10月執筆時点の情報のため、提出にあたっては元請や発注者の最新の指示を確認してください。

この記事のまとめ
  • 安全衛生管理計画書は法令上の用語ではなく、事業場単位と工事単位の計画に分けて考える
  • 建設業の元請には、工程と配置に関する計画の作成義務がある
  • 記入項目は基本方針、目標、重点事項が基本で、様式は提出先の元請の指定に従う
  • 計画を作る前に、様式の版、対象工事と期間、提出期限と提出先、添付資料を元請に確認する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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