労災保険料の計算方法は?建設業の保険料率と対象賃金をわかりやすく

労災保険料の計算方法は?建設業の保険料率と対象賃金をわかりやすく
監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

労災保険料は、賃金総額に労災保険率を乗じて計算します。建設業では、請負による工事の賃金総額を正確に算定することが難しいため、請負金額に労務費率を乗じた額を賃金総額とする特例があります。

この記事では、計算式、建設事業の事業の種類ごとの労災保険率と労務費率、計算例、申告・納付の時期を、2026年10月執筆時点の令和8年度の内容をもとに整理します。あわせて、公共工事を元請として請け負う場合との関わりにも触れます。

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この記事で分かること
  • 労災保険料は賃金総額に労災保険率を乗じて求め、率は事業の種類ごとに定められている
  • 令和8年度の建設事業の労災保険率は、建築事業(既設建築物設備工事業を除く)が1,000分の9.5など、事業の種類によって異なる
  • 請負による建設の事業では、請負金額(消費税等相当額を除く)に労務費率を乗じた額を賃金総額とする
  • 規模の小さい工事は年度更新で一括して報告し、規模の大きい工事は工事ごとに申告・納付する
目次

労災保険料の計算式とは?賃金総額に保険料率を乗じて求める

労災保険料は、賃金総額と保険料率の2つで決まります。まず、法律が定める基本の計算式を確認します。

労災保険料は賃金総額に労災保険率を乗じて求める

労災保険料は、賃金総額に労災保険率を乗じて求めます。労働保険徴収法第11条第1項は、一般保険料の額を、賃金総額に保険料率を乗じて得た額と定めています。

項目内容
計算式(労災保険のみの場合)賃金総額に労災保険率を乗じた額
賃金総額事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額(同条第2項)。請負による建設の事業は、省令の特例で算定する(同条第3項)
労災保険率事業の種類ごとに定められた率。厚生労働大臣が定める(第12条第2項)

労災保険率は、将来にわたって労災保険の財政の均衡を保てるよう、過去3年間の災害率などを考慮して定められるとされています。事業主が率を選ぶことはできず、事業の種類によって決まります。

雇用保険料は労災保険とは別の率で計算する

労災保険と雇用保険の両方の保険関係が成立している事業の一般保険料率は、労災保険率と雇用保険率を加えた率です(徴収法第12条第1項第1号)。年度更新では、労災保険と雇用保険をまとめて労働保険として申告・納付します。

雇用保険率は年度ごとに定められます。令和8年度(令和8年4月1日から令和9年3月31日まで)は、建設の事業で労働者負担が1,000分の6、事業主負担が1,000分の10.5、合計1,000分の16.5です。一般の事業は合計1,000分の13.5です。

建設業の労災保険率は事業の種類ごとにいくつか?

建設事業の労災保険率は、工事の内容に応じた8つの事業の種類ごとに定められています。令和8年度の率は、令和6年4月1日に改定された率と同じです。

建設事業の8つの事業の種類と令和8年度の労災保険率

次の表は、厚生労働省のリーフレットと労働保険徴収法施行規則の別表第一で確認できる、建設事業の労災保険率です。令和6年4月1日以降に保険関係が成立した工事に使う率にあたります。

番号事業の種類労災保険率
31水力発電施設、ずい道等新設事業1,000分の34
32道路新設事業1,000分の11
33舗装工事業1,000分の9
34鉄道又は軌道新設事業1,000分の9
35建築事業(既設建築物設備工事業を除く)1,000分の9.5
38既設建築物設備工事業1,000分の12
36機械装置の組立て又は据付けの事業1,000分の6
37その他の建設事業1,000分の15

厚生労働省は、令和8年度の労災保険率と労務費率が令和7年度と同率であると案内しています。労災保険率は令和6年4月1日に改定されており、令和8年度に変更はありません。

事業の種類は工事の内容で判断される

事業の種類の細目は、厚生労働大臣が告示で定めています(施行規則第16条第1項)。労働局の年度更新の案内では、工事の種類ごとに、できる限り詳しく記入するよう示されています。工事の内容により保険料率が異なるためです。

どの事業の種類に当たるか迷う場合は、所轄の労働基準監督署や都道府県労働局で確認します。事業の種類を誤ると、保険料率も誤ることになります。

賃金総額はどう算定するのか?請負金額に労務費率を乗じる方法

建設の工事では、現場で働く人の賃金を工事ごとに正確に集計することが難しい場合があります。そのため、請負による建設の事業には、請負金額から賃金総額を算定する特例があります。

請負金額に労務費率を乗じた額が賃金総額になる

請負による建設の事業では、請負金額に労務費率を乗じた額を賃金総額とします。施行規則第12条は、賃金総額を正確に算定することが困難な請負による建設の事業などについて、賃金総額の特例を設けています。第13条第1項が、事業の種類に応じた率を請負金額に乗じるよう定めています。

番号事業の種類請負金額に乗ずる率(労務費率)
31水力発電施設、ずい道等新設事業19%
32道路新設事業19%
33舗装工事業17%
34鉄道又は軌道新設事業19%
35建築事業(既設建築物設備工事業を除く)23%
38既設建築物設備工事業23%
36機械装置の組立て又は据付けの事業組立て又は取付けに関するものは38%、その他のものは21%
37その他の建設事業23%

令和8年度の労務費率は、令和7年度と同率です。表の率は、令和6年4月1日以降に保険関係が成立した工事に使う率にあたります。

請負金額は消費税等相当額を除いて計算する

労務費率を乗じる請負金額は、消費税及び地方消費税に相当する額(消費税等相当額)を除いた額です(施行規則第4条第6号)。契約書の金額が消費税込みの場合は、消費税等相当額を除いた額を使います。

注文者から工事に使う物の支給を受けた場合や、機械器具等の貸与を受けた場合は、次の額を請負代金に加算します(施行規則第13条第2項第1号)。

  • 支給された物の価額に相当する額(消費税等相当額を除く)
  • 貸与された機械器具等の損料に相当する額(消費税等相当額を除く)

機械装置の組立て又は据付けの事業は例外で、請負代金に機械装置の価額が含まれている場合は、その価額を請負代金から控除します(同項第2号、兵庫労働局の案内)。

請負金額1億円の建築事業を例にした計算

建築事業(既設建築物設備工事業を除く)の元請工事で、請負金額が1億円(消費税等相当額を除く)、支給材や貸与物がない場合の試算です。

手順計算金額
賃金総額を出す請負金額1億円に労務費率23%を乗じる2,300万円
労災保険料を出す賃金総額2,300万円に労災保険率1,000分の9.5を乗じる21万8,500円

この例は、令和6年4月1日以降に始まった工事を想定した試算です。実際の保険料は、工事ごとの事業の種類や請負金額の内訳によって変わるため、申告の前に所轄の労働局で確認します。

労災保険料の申告・納付の時期はいつか?

建設の工事は、期間があらかじめ決まっている有期事業として扱われます。工事の規模によって申告の方法が分かれ、時期も異なります。

区分申告・納付の時期根拠
単独有期事業(規模の大きい工事)概算保険料は保険関係が成立した日から20日以内。確定保険料は保険関係が消滅した日から50日以内徴収法第15条第2項、第19条第2項・第3項
一括有期事業(規模の小さい工事)年度更新の期間に、前年度に終了した元請工事を報告する徴収法第7条、厚生労働省・兵庫労働局の案内
有期事業以外の事業(継続事業)保険年度の6月1日から40日以内に概算保険料を納付し、翌保険年度の同じ期間に確定保険料を申告する徴収法第15条第1項、第19条第1項

一括有期事業は年度更新で報告する

規模の小さい工事は、工事ごとではなく年度単位でまとめて処理する一括有期事業の対象になります。要件は、事業主が同一人であることなどに加え、概算保険料に相当する額が160万円未満で、請負金額が1億8千万円未満であることです(徴収法第7条、施行規則第6条)。

令和8年度の年度更新の期間は、令和8年6月1日から7月10日まででした。兵庫労働局の案内では、令和7年度中に終了した元請工事を事業の種類ごとに記入し、下請工事は申告不要とされています。

確定保険年度中に終了した元請工事がない場合は、報告書の提出は不要とされています。

規模の大きい工事は単独有期事業として申告する

一括有期事業の要件を満たさない工事は、単独有期事業として、工事ごとに申告・納付します。概算保険料は保険関係が成立した日から20日以内、確定保険料は保険関係が消滅した日から50日以内に申告します。

納付した概算保険料に過不足があれば精算される

納付した労働保険料が確定保険料の額に足りないときは、不足額を申告書に添えて納付します(徴収法第19条第3項)。納付額が確定保険料を超える場合は、超える額が次の保険年度の労働保険料などに充当されるか、還付されます(同条第6項)。

労災保険料の計算は公共工事の受注にどうつながるのか?

公共工事を発注者から直接請け負った場合、その工事は元請工事にあたります。元請工事の請負金額は、民間工事と同じく労務費率を乗じた賃金総額の計算に入り、一括有期事業の報告の対象になります。

  • 元請工事の請負金額(消費税等相当額を除く)に労務費率を乗じて、賃金総額を出す
  • 賃金総額に事業の種類ごとの労災保険率を乗じて、労災保険料を出す
  • 規模の小さい工事は年度更新で、規模の大きい工事は工事ごとに申告・納付する

請負金額が大きくなれば、賃金総額も労災保険料も増えます。受注の前に、事業の種類ごとの労災保険率と労務費率で保険料を見積もり、実行予算に反映しておくと、工事の原価を見通しやすくなります。

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

公共工事への参入に向けた全体像は、下記で詳しく確認できます。

よくある質問

令和6年4月より前に始めた工事にも、令和8年度の率を使うのか?

令和6年厚生労働省令第21号の附則は、施行日である令和6年4月1日より前に保険関係が成立している有期事業について、労災保険率と労務費率を従前の例によると定めています。兵庫労働局の案内でも、一括有期事業報告書は工事の開始時期ごとに分類して記入するよう示されています。

賃金総額は、労務費率ではなく実際の賃金で算定してもよいのか?

施行規則第12条は、賃金総額を正確に算定することが困難な請負による建設の事業について、労務費率で算定すると定めています。兵庫労働局の記入例には、賃金で算定する工事について、請負金額と賃金総額をカッコ書きで記載する方法が示されています。

どのような場合に賃金で算定できるかは、所轄の労働局で確認してください。

下請として入った工事の労災保険料は、自社で計算するのか?

兵庫労働局の令和8年度の案内では、一括有期事業の報告の対象は元請工事で、下請工事は申告不要とされています。徴収法第8条第1項も、建設の事業が数次の請負で行われる場合は、元請負人のみを事業主と定めています。

自社の事務所などで使用する労働者の保険料は別の論点のため、迷う場合は労働基準監督署で確認してください。

申告を誤った場合は、どうなるのか?

申告書を提出しないとき、または記載に誤りがあると認めるときは、政府が労働保険料の額を決定して通知します。不足額は、通知を受けた日から15日以内に納付します(徴収法第15条第3項・第4項、第19条第4項・第5項)。

兵庫労働局の案内では、申告誤りにより保険料の不足が確認された場合に、追加納付や追徴金(保険料の10%)の手続きが必要になるとされています。

まとめ

労災保険料は、賃金総額に労災保険率を乗じて計算します。建設事業の労災保険率は事業の種類ごとに定められ、令和8年度は建築事業(既設建築物設備工事業を除く)で1,000分の9.5など、令和7年度と同率です。

請負による建設の事業では、請負金額(消費税等相当額を除く)に労務費率を乗じた額を賃金総額とします。申告は、規模の小さい工事は年度更新で一括有期事業として、規模の大きい工事は単独有期事業として工事ごとに行います。

本記事の内容は2026年10月執筆時点の令和8年度の情報です。率や期間は改定されることがあるため、申告の際は、厚生労働省や所轄の労働局の最新の案内を確認してください。

この記事のまとめ
  • 労災保険料は賃金総額に労災保険率を乗じて求め、建設業の率は事業の種類ごとに異なる
  • 請負による建設の事業は、請負金額(消費税等相当額を除く)に労務費率を乗じて賃金総額を出す
  • 令和6年4月1日より前に始まった工事には従前の率が適用されるため、工事の開始時期を確認する
  • 規模の小さい工事は年度更新で、規模の大きい工事は工事ごとに申告・納付する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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