経審のW点(社会性等)とは?加点される評価項目と対策を徹底解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

経営事項審査のW点は、工事の実績や技術者の数ではなく、会社としての取り組みを評価する区分です。制度への加入や証明書の取得で加点されるため、売上を伸ばさなくても点数を動かせる余地があります。ただし項目が多く、どこで何点取れるのかが分かりにくいのも実情です。

この記事では、W点で加点される8つの項目とそれぞれの配点、令和8年7月1日施行の改正で変わった内容、そして取りこぼしを防ぐための確認の進め方を整理します。評価項目の全体像を把握すれば、どの取り組みから手を付けるべきかが決まります。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • W点はW1からW8までの8項目で構成され、合計点数を8.75倍して評点になること
  • 建退共・退職金制度・法定外労災など、担い手の育成確保に関する項目の配点
  • 令和8年7月1日施行の改正で削除された項目と新設された項目
  • 加点の取りこぼしを防ぐために、決算前から確認しておくべきこと
目次

経審のW点(その他の審査項目)とは何を評価する評点か?

W点は「その他の審査項目(社会性等)」という区分名で呼ばれます。まずは、この区分がほかの評点とどう違うのかを確認します。

W点は会社としての取り組みを評価する区分

X1は完成工事高、X2は自己資本額と利益、Yは財務諸表、Zは技術職員数と元請完成工事高を評価します。これらに対してW点は、退職金制度への加入や防災協定の締結といった、事業活動の内容そのものではない取り組みを評価します。

実績の積み上げを待たずに、制度への加入や証明書の取得によって動かせる項目が多いのがW点の特徴です。

合計点数を8.75倍して評点になる

W点の算出は2段階です。まず8つの項目それぞれの点数を合計し、その合計に10を掛けたうえで200分の175を掛けます。掛け算をまとめると8.75倍になります。

合計点数の満点は237点であり、これを8.75倍した2,073点がW点の最高点です。項目の点数が1点動くと評点では8点以上の差になるため、小さな取りこぼしが結果に響きます。

最低点がマイナスになる唯一の区分

W点の最低点はマイナス788点です。5つの評点のうち、マイナスの値をとるのはW点だけです。

これは、法令遵守の状況や民事再生法・会社更生法の適用の有無が減点項目として設けられているためです。加点を積むことと同じくらい、減点を作らないことが重要になります。

  • W点は事業活動の規模ではなく、会社としての取り組みを評価する
  • 8項目の合計点数を8.75倍したものが評点になる
  • 合計点数の満点は237点、評点の最高点は2,073点
  • 5つの評点のうち、マイナスの値をとるのはW点だけ

W点で加点される評価項目にはどのようなものがあるか?

W点はW1からW8までの8項目で構成されています。項目ごとの上限と下限を確認します。

W1からW8までの構成と配点

令和8年7月1日以降の申請に適用される配点は次のとおりです。

項目評価される内容最高点/最低点
W1建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況77/0
W2建設業の営業継続の状況60/▲60
W3防災活動への貢献の状況20/0
W4法令遵守の状況0/▲30
W5建設業の経理の状況30/0
W6研究開発の状況25/0
W7建設機械の保有状況15/0
W8国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況10/0
合計—237/▲90

配点が最も大きいW1の内訳

W1は8つの小項目に分かれており、合計で77点と最も配点が大きい項目です。中小規模の建設会社にとって、着手しやすい加点が集まっている領域でもあります。

小項目最高点
建設業退職金共済制度への加入状況15
退職一時金もしくは企業年金制度の導入15
法定外労働災害補償制度への加入状況15
若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況2
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況10
ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況5
建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況10
建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無5

建設業退職金共済制度、退職一時金または企業年金制度、法定外労働災害補償制度の3つは、それぞれ15点で並んでいます。3つそろえば45点となり、評点に換算すると390点を超える差になります。

W1に次いで配点が大きいW2とW5

W2の建設業の営業継続の状況は、営業年数によって最高60点が与えられます。年数の積み重ねで自然に上がっていく項目であり、施策で動かせる余地は限られます。

W5の建設業の経理の状況は最高30点で、監査の受審状況に20点、公認会計士等の人数に10点が配分されています。会計参与の設置や、建設業の経理実務の責任者による確認書類の提出などが評価の対象です。経理体制の整備が点数として評価される項目であり、社内の担当者を育てる取り組みが加点につながります。

令和8年7月1日の改正で何が変わったのか?

W点は令和8年2月6日に公布された告示により改正され、令和8年7月1日以降の申請から新しい基準が適用されています。変更点を確認します。

社会保険加入に関する評価項目が削除された

改正前のW1には、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入の有無を確認する項目があり、未加入の場合はそれぞれマイナス40点が科されていました。この3項目が審査対象から削除されています。

削除の理由は、令和2年10月1日以降の建設業許可の要件に社会保険への加入が追加されたことにあります。許可の更新期間が5年であるため、令和7年10月1日以降に許可を保有する建設業者は社会保険加入を満たしていることになり、経営事項審査の段階で改めて確認する必要が乏しくなったという整理です。

メリットは関係ありません。公共事業で税金をいただくわけです。その要件として社会保険というものがあります。そもそも社会保険には加入すべきものです。今は30年前の建設業の話をしているわけではありません。しかも公共工事です。だから社会保険に入る。これが普通です

社会保険が経営事項審査の審査項目から外れたのは、加入が不要になったからではありません。許可の要件として当然に満たしているという前提に変わったという意味であり、位置づけはむしろ重くなったと考えるべき変更です。

自主宣言制度の宣言が新設され、就業履歴の配点が見直された

新たに加わったのは、国土交通省が実施する「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無です。配点は5点で、審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されている場合に加点されます。

あわせて、就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況の配点が見直されました。民間工事を含むすべての建設工事で実施した場合は15点から10点へ、すべての公共工事で実施した場合は10点から5点へと変更されています。

建設機械の加点対象が拡大された

W7の建設機械の保有状況では、加点対象となる機械に不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャが追加されました。令和6年能登半島地震での活用実績が確認されたことなどが理由として示されています。

変更の種類内容
削除雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入の有無(各▲40点)
新設建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無(5点)
見直し就業履歴蓄積措置の配点(全建設工事15点→10点、全公共工事10点→5点)
拡大建設機械の加点対象に不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャを追加

なお、改正前の基準で経営規模等評価の結果通知を受けている場合、建設業法施行規則第20条第2項に基づき、改正に係る事項について再審査を申し立てられる取り扱いが設けられています。

申立ての期限は同項により改正の日から120日以内とされていますが、実際の受付期間は許可行政庁ごとに定めて案内されています。該当しそうな場合は、締切を過ぎないよう早めに申請先へ確認してください。

W点を上げるにはどこから手を付ければよいのか?

W点は項目が多く、確認漏れが起きやすい区分です。優先順位の付け方と、押さえておきたい注意点を整理します。

証明書の取得が必要な項目から確認する

W点の加点は、制度に加入しているだけでは足りず、審査基準日の時点でその状態を証明する書類が必要になる項目が多くあります。建設業退職金共済制度であれば加入・履行証明書、法定外労働災害補償制度であれば加入を確認できる書類が求められます。

証明書の発行には日数がかかることがあり、審査基準日を過ぎてから慌てても間に合いません。決算日の前に、加入している制度と手元にある証明書を突き合わせておくことが有効です。

  • 審査基準日は決算日であり、その時点の状態が評価される
  • 加入していても証明書がなければ加点されない項目がある
  • 証明書の発行には日数がかかるため、決算前の確認が必要になる
  • 自主宣言制度は宣言日が審査基準日以前であることが加点の条件になる

減点項目を作らないことを優先する

W4の法令遵守の状況は、建設業法に基づく指示処分や営業停止処分を受けた場合に減点される項目です。最高点は0点であり、加点されることはありません。

W2の建設業の営業継続の状況も、営業年数による加点がある一方、民事再生法または会社更生法の適用を受けた場合はマイナス60点となります。加点を積み上げる施策よりも、減点を回避する管理が先に来ます。

シミュレーションをして計画通りに進めていないからこそ、そうした事故のような予期しない点数の急落が起きてしまうのです

W点は項目が多いぶん、前年に加点されていた項目が今年は外れているという事態が起こりやすい区分です。前期の結果通知書と申請内容を並べて確認する習慣が、急な点数の下落を防ぎます。

W点への理解を公共工事参入にどうつなげるか

ここまで見てきたとおり、W点は8つの項目で構成され、合計点数を8.75倍した数値が評点になります。実績の積み上げを待たずに動かせる項目が多く、参入初期の会社でも取り組みやすい区分です。

退職金制度への加入や労働災害への備えは、点数のためだけの施策ではありません。人材を確保して工事を続けるための体制づくりが、そのまま公共工事の評価につながる構造になっています。

  • W点は実績の積み上げを待たずに動かせる項目が多い
  • 加点には審査基準日時点の状態を示す証明書類が必要になる
  • 制度への加入は人材確保の取り組みとしても意味を持つ
  • 審査基準は改正されるため、申請年度の基準を確認する

公共工事は体制の整った大きな会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、W点の評価項目は制度として公開されており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず同じように加点される仕組みです。

よくある質問

社会保険に未加入でもW点が下がらなくなったのですか?

令和8年7月1日以降の申請では、社会保険加入の有無はW点の審査項目から削除されています。ただし社会保険への加入は建設業許可の要件であり、未加入であれば許可自体が維持できません。経営事項審査の減点がなくなったことと、加入しなくてよいことは別の話です。

建設機械はリースでも加点の対象になりますか?

W7は自ら所有している機械のほか、一定の要件を満たすリース契約による機械も台数に含める取り扱いです。ただし契約期間や検査記録などの確認資料が必要になります。台数の数え方や対象機種の判定は申請先の許可行政庁の記載要領で確認してください。

自主宣言制度の宣言は決算後でも間に合いますか?

加点の要件は、審査基準日が宣言日以降であることとされています。審査基準日は直前の決算日にあたるため、決算日より後に宣言しても、その期の審査では加点されません。次の決算日までに宣言と誓約書の準備を済ませておく必要があります。

W点だけを上げても総合評定値は変わりますか?

総合評定値へのW点の配分は0.15です。W点が100点上がれば総合評定値は15点上がる計算になります。単独では大きな変化になりにくい一方、等級の境目にいる場合は数十点の差が結果を分けることもあるため、取りこぼしをなくす意味は小さくありません。

まとめ

W点は、担い手の育成確保、営業継続の状況、防災活動への貢献、法令遵守、経理の状況、研究開発、建設機械の保有、規格による認証という8つの項目で構成されます。8項目の合計点数を8.75倍した数値が評点になり、最高2,073点、最低マイナス788点の範囲に収まります。

令和8年7月1日施行の改正では、社会保険加入に関する3つの減点項目が削除され、建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無が5点の加点項目として新設されました。就業履歴の蓄積措置は配点が引き下げられ、建設機械は加点対象が拡大しています。

加点を取りこぼさないためには、審査基準日の時点で必要な証明書がそろっているかを決算前に確認することが欠かせません。あわせて、減点項目を作らない管理を優先することが結果につながります。

この記事のまとめ
  • W点は8項目の合計点数を8.75倍した評点で、最高2,073点・最低▲788点の範囲になる
  • 建退共・退職一時金または企業年金・法定外労災はそれぞれ15点で配点が大きい
  • 令和8年7月1日施行の改正で社会保険の項目が削除され、自主宣言制度が新設された
  • 決算日の前に加入状況と証明書を突き合わせ、減点項目を作らない管理を優先する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

あわせて読みたい

目次