公共工事の諸経費率は何パーセントが妥当?計算方法と目安を解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

公共工事の見積もりを初めて作るとき、諸経費を何パーセント計上すればよいのか迷うことは少なくありません。民間工事では自社の経営判断で設定できる諸経費も、公共工事では積算基準に基づく算定の仕組みがあります。

本記事では、公共工事の諸経費がどのように区分され、諸経費率がどのように算定されるのかを解説します。あわせて、目安を考えるうえでのポイントも整理します。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 諸経費は共通仮設費・現場管理費・一般管理費等に区分されること
  • 諸経費率は発注者の積算基準の算定式で決まること
  • 一般管理費等率は工事原価が大きいほど低くなる傾向があること
  • 発注者によって基準が異なり、一律の「妥当な率」は存在しないこと
目次

公共工事の諸経費とは何か

共通費の3つの区分

公共工事の積算では、直接工事費以外の費用をまとめて共通費と呼びます。共通費は、共通仮設費、現場管理費、一般管理費等の3つに区分され、それぞれ率の基準となる金額も異なります。

区分 内容 率の基準となる額
共通仮設費 各工事種目に共通の仮設(仮囲い・現場事務所・安全設備など) 直接工事費
現場管理費 現場の管理運営(現場従業員の給与・労務管理・保険料など) 純工事費
一般管理費等 受注者の継続運営に必要な費用と付加利益等 工事原価

いわゆる「諸経費」という言葉は、このうち現場管理費と一般管理費等をまとめて指すことが一般的です。記事や発注者によって共通仮設費を含める場合もあるため、どの区分を指しているかを確認しながら読むことが大切です。

民間工事との考え方の違い

民間工事では、諸経費の率を自社の経営判断で設定できます。公共工事では、率の算定方法が発注者の積算基準で定められているため、積算にあたっては基準の確認が先になります。

諸経費率はどのように算定されるのか

率は積算基準の算定式で決まる

公共建築工事の積算では、共通仮設費率、現場管理費率、一般管理費等率が、公共建築工事共通費積算基準に定められています。率は、工事の規模と工期を変数とする算定式で求められ、工事が大きくなるほど率は低くなる傾向があります。

積み上げによる算定と比率による算定のどちらを使うかも基準で定められています。共通仮設費や現場管理費は、積み上げで算定するか、過去の実績等に基づく比率で算定するかを選択できます。

一般管理費等率の算定例

例えば官庁営繕部の共通費積算基準では、工事原価が3百万円を超え30億円以下の工事の一般管理費等率は、工事原価を変数とする算定式で求められます。

この算定式を工事原価5,000万円の工事に当てはめると約15.7%、1億円の工事では約14.6%となります。あくまで執筆時点の官庁営繕部の共通費積算基準による算定式を用いた一例であり、基準は改定される場合があるほか、発注者や工事種別によって率は異なります。

工事原価 一般管理費等率
3百万円以下 20.11%(基準で定められた率)
5,000万円 約15.7%(算定式による計算例)
1億円 約14.6%(算定式による計算例)
30億円を超える 9.34%(基準で定められた率)

このように、公共工事の諸経費率は「何パーセントが妥当」と一律に決まるものではなく、基準の算定式に基づいて決まります。検索や書籍で目にする率は、特定の基準での例である点に注意が必要です。

発注者によって基準は異なる

積算基準は、発注者ごとに定められています。官庁営繕部の共通費積算基準、土木工事の積算基準、地方公共団体の独自基準では、区分や率の算定方法が異なる場合があります。

  • 国土交通省官庁営繕部の公共建築工事共通費積算基準
  • 国土交通省の土木工事積算基準
  • 各地方公共団体の積算基準

また、一般管理費等の実態は毎年調査され、その結果を基に基準の改定が行われています。率は調査と改定のサイクルの中で見直されるため、参加する発注者の最新の基準を確認することが重要です。

諸経費率をどう読み解くか

諸経費率は、あくまで積算上の標準的な率です。実際の自社の諸経費が基準の率より高いか低いかは、自社の経営構造によって変わります。率だけを追うより、自社の原価構造と照らして入札価格を組み立てることが重要です。

  • 発注者の積算基準の最新版を確認する
  • 自社の実績諸経費率と比較する
  • 工事種別・規模による率の違いを理解する

積算の数字の読み方については、次のような考え方もあります。

工事内容を理解していい値段で落札しようと、積算の精度を上げる思考自体が無駄だと私は思います。

積算の仕組みを理解したうえで、自社の戦い方を設計することが受注につながります。

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

よくある質問

公共工事の諸経費率は何パーセントくらいが目安ですか?

一律の目安はなく、発注者の積算基準の算定式で決まります。官庁営繕部の基準を例にとると、一般管理費等率は工事原価5,000万円で約15.7%、1億円で約14.6%ですが、発注者や工事種別によって異なります。

諸経費率が高いほど利益が出ますか?

諸経費率は積算上の率であり、そのまま利益になるわけではありません。現場管理費や一般管理費等の実費と率との関係を、自社の決算で把握しておくことが必要です。

民間工事と同じ諸経費率を使ってよいですか?

公共工事の積算は、発注者の基準に基づいて行うことが基本です。民間工事の率をそのまま使うと、内訳書の整合性が取れない場合があります。

諸経費率は毎年変わりますか?

一般管理費等の実態調査の結果を基に基準が改定されるため、率が見直されることがあります。参加する発注者の最新の積算基準を確認することが重要です。

まとめ

公共工事の諸経費は、共通仮設費・現場管理費・一般管理費等の3つに区分され、それぞれの率が発注者の積算基準で定められています。率は工事の規模と工期を変数とする算定式で決まり、工事が大きくなるほど低くなる傾向があります。

「何パーセントが妥当」という問いに対する答えは、基準の算定式にあります。発注者ごとに基準が異なり、実態調査を基に改定も行われるため、最新の基準を確認して積算に臨むことが実務上のポイントです。

この記事のまとめ
  • 諸経費は共通仮設費・現場管理費・一般管理費等に区分され、率の基準となる額が異なる
  • 諸経費率は発注者の積算基準の算定式で決まり、工事が大きいほど低くなる傾向がある
  • 官庁営繕部の基準では、一般管理費等率は工事原価5,000万円で約15.7%、1億円で約14.6%
  • 発注者の最新の積算基準を確認し、自社の原価構造と照らして入札価格を組み立てる

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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