建設業の休業補償とは?労災の休業補償給付の条件・期間・金額を解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

建設業の現場で労働災害が発生すると、負傷した労働者は治療のため一定期間働けなくなることがあります。その間の生活を支える仕組みが休業補償ですが、労働基準法上の休業補償と労災保険の休業(補償)給付は別の制度で、条件や期間、金額の考え方も異なります。

この記事では、建設業における休業補償の位置づけを整理したうえで、労災保険の休業(補償)給付を受けられる条件、給付の期間、給付額の算定方法を、一人親方の特別加入の扱いも含めて解説します。

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この記事で分かること
  • 労働基準法の休業補償と労災保険の休業(補償)給付がどう違うのか
  • 休業(補償)給付を受けられる3つの条件
  • 休業(補償)給付を受けられる期間の考え方
  • 休業(補償)給付の金額の算定方法
目次

建設業の休業補償とは?労災保険の休業(補償)給付とどう違うのか

建設業で労働者が業務上のケガや病気により療養のため働けず、賃金を受けられない場合、労働基準法第76条は事業主に平均賃金の60%を休業補償として支払う義務を課しています。ただし労災保険の適用を受ける事業場では、休業第4日目以降は労働者災害補償保険法に基づく休業(補償)給付に切り替わり、事業主の直接補償義務は労働基準法上消滅します。

つまり休業開始から3日間(待期期間)は労働基準法上の休業補償、4日目以降は労災保険の休業(補償)給付という2段階の仕組みになっています。業務災害の場合は「休業補償給付」、通勤災害の場合は「休業給付」という名称が使われ、厚生労働省ではこれらを「休業(補償)等給付」と総称しています。

期間区分制度支払う主体
休業1〜3日目(待期期間)労働基準法の休業補償(業務災害のみ)事業主
休業4日目以降労災保険の休業(補償)等給付労災保険(政府)

労働基準法上の休業補償から労災保険の休業(補償)給付への切り替えの仕組み

労働基準法第76条に基づく休業補償は、業務災害による療養のため労働できず賃金を受けない労働者に対して、事業主が平均賃金の60%を直接支払う義務です。通勤災害はこの労働基準法上の休業補償の対象には含まれません。

この事業主の義務は、労災保険から休業(補償)等給付を受ける労働者については、労働者災害補償保険法によって免除されます。休業4日目以降は保険給付に切り替わるため、事業主が独自に60%を継続して支払う必要はなくなります。

一人親方が特別加入によって休業(補償)給付を受けられる仕組み

労災保険は、本来は雇用されている労働者を対象とする制度です。建設業の一人親方など、労働者に該当しない個人事業主は、労災保険法上の「労働者」にあたらないため、この対象には含まれません。

ただし労災保険法第33条第3号・第4号、第35条に基づく特別加入制度を利用すれば、業務災害・通勤災害について雇用されている労働者と同様に休業(補償)給付等を受けられます。特別加入は義務ではなく、団体を通じた申請と政府の承認による任意の制度です。

建設業で休業(補償)給付を受けられる条件とは?

労災保険の休業(補償)等給付を受けるには、法令が定める3つの要件をすべて満たす必要があります。要件を満たしている間は、休業第4日目からその期間中、給付が継続します。

  • 業務上の事由または通勤による負傷・疾病の療養のためであること
  • その療養のため労働することができないこと
  • 労働することができないために賃金を受けていないこと

会社の所定休日であっても、上記3要件を満たしていれば給付の対象になります。出勤日か休日かではなく、療養のため労働できず賃金を受けていないかどうかで判断される点を押さえておく必要があります。

休業(補償)給付を受けるための3つの支給要件

3要件のうち特に判断が分かれやすいのが「労働することができない」かどうかです。医師の診断に基づき療養が必要とされ、実際に業務を行えない状態であることが前提になります。自己判断だけで「まだ働ける」「もう働けない」と決めるのではなく、主治医の診断内容に沿って労働の可否を確認しておくことが実務上のポイントです。

建設現場の技能者が軽作業への切り替えなどで一部就労できる状態であっても、賃金の一部を受けていれば、その分は給付額の調整対象になります。現場を離れて事務作業に切り替える場合など、就労形態が変わる場面ほど、賃金の支払い状況を記録しておく必要性が高くなります。

休業開始から3日間の待期期間に生じる事業主の休業補償義務

休業開始から3日間は「待期期間」とされ、労災保険からの給付は行われません。業務災害の場合に限り、この3日間は事業主が労働基準法第76条に基づく休業補償(平均賃金の60%)を支払う義務を負います。

通勤災害の場合は、そもそも労働基準法上の休業補償義務の対象ではないため、待期期間中の事業主による直接補償は生じません。4日目以降は、業務災害・通勤災害のいずれも労災保険の休業(補償)等給付に切り替わります。

建設業の休業(補償)給付はいつまで受けられるのか?

休業(補償)等給付には、法令上あらかじめ定められた給付日数の上限がありません。前述の3要件を満たしている限り、休業第4日目から給付が継続します。

ただし療養が長期化した場合には、休業(補償)等給付から別の制度への切り替えが生じることがあります。切り替えの分岐点になるのが、療養開始から1年6か月という期間です。

状態受けられる給付
療養1年6か月以内、または1年6か月超で傷病等級に該当しない休業(補償)等給付を継続
療養1年6か月超で傷病等級表(第1級〜第3級)に該当する障害が残る傷病(補償)等年金に切り替え

休業(補償)給付に法令上の給付日数の上限がない理由

休業(補償)等給付は、療養のため労働できず賃金を受けない状態が続く限り支給される仕組みです。傷病が治癒(症状固定)するか、後述の年金給付への切り替えが生じるまで、給付日数そのものに一律の上限は設けられていません。

療養1年6か月を超えた場合の傷病(補償)等年金への切り替え

療養開始から1年6か月を経過してもなお傷病が治っておらず、傷病等級表の第1級から第3級に該当する程度の障害が残っている場合は、休業(補償)等給付に代えて傷病(補償)等年金が支給されます。

この切り替えは労働基準監督署長の職権による決定であり、労働者側から新たに請求手続きを行う必要はありません。傷病等級に該当しない場合は、そのまま休業(補償)等給付を受け続けることになります。

建設業では、療養が長期化する労働災害が全くないとは言えません。療養が1年6か月を超えるような重い災害が発生した場合に、どの制度がどの時点で適用されるのかをあらかじめ把握しておくと、労働者本人や家族への説明もしやすくなります。

建設業の休業(補償)給付はいくら受け取れるのか?

休業(補償)等給付の額は、1日につき給付基礎日額の60%です。これに加えて、休業特別支給金として給付基礎日額の20%が上乗せされ、合計で給付基礎日額の80%相当を受け取れる仕組みになっています(執筆時点の制度による)。

対象者区分給付基礎日額の決め方
雇用されている労働者災害発生前3か月の賃金総額を暦日数で割った1日あたりの賃金額(労働基準法上の平均賃金に相当)
一人親方等の特別加入者実際の賃金ではなく、加入時に本人が16段階(3,500円〜25,000円、執筆時点)の中から選択して設定

給付基礎日額の80%という休業(補償)給付の算定方法

雇用されている労働者の場合、給付基礎日額は原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額です。事故発生日(または疾病発生が確定した日)の直前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割って算定します。ボーナスなど臨時に支払われる賃金は含まれません。

給付基礎日額の算定を誤ると休業(補償)給付の金額全体が変わるため、賃金台帳などの記録を正確に整えておくことが実務上重要です。

一人親方の特別加入者における給付基礎日額の決め方

一人親方等の特別加入者は、実際の売上や収入から給付基礎日額を算定するのではなく、加入時に本人が16段階(3,500円〜25,000円)の中から選択して設定します。選択した金額に応じて、保険料と給付基礎日額の両方が決まる仕組みです。

雇用されている労働者と一人親方とで給付基礎日額の決め方が異なる点は、休業補償の金額を見積もる際に混同しやすい部分です。自社に雇用労働者と一人親方が混在する場合は、どちらの決め方が適用されるかを個別に確認しておく必要があります。

特別加入者が給付基礎日額を選択する際は、実際の収入水準とかけ離れた金額を選ぶと、保険料の負担と給付を受けられる金額のバランスが見合わなくなることがあります。加入時点で、自身の収入や生活費の見込みに応じた金額を選んでおくことが大切です。

建設業の休業(補償)給付の仕組みを正確に理解しておくことは、公共工事の受注を目指す会社にとっても実務上の土台になります。公共工事は元請・下請を含めて配置技術者や技能者を抱えて工事を進める場面が多く、労働災害が発生した際に休業補償・休業(補償)給付がどう機能するかを把握していることが、労務管理の前提として求められます。

公共工事の入札に参加するうえでは、社会保険への加入をはじめとした労務管理の体制が問われる場面も出てきます。一人親方が特別加入によって労災保険の対象になれる仕組みを含め、労務面の備えを一つずつ整えていくことが、公共工事参入の準備の一部になります。

公共工事は実績のある大手企業だけが対応できるものと受け止められることがあります。ただし公共工事への参加は、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みとして制度上定められているものであり、御社の現在の体制から検討を始めることができます。

よくある質問

休業(補償)等給付と休業特別支給金は、別々に請求する必要があるのか?

休業(補償)等給付(給付基礎日額の60%)と休業特別支給金(20%)は別建ての制度ですが、実務上は同一の請求書によって同時に請求・受給する扱いになっています。個別の請求書を用意する必要はありません。

一人親方が労災保険の特別加入をする場合、誰を通じて申請するのか?

一人親方等の特別加入は、個人が単独で労災保険に直接加入するのではなく、団体を通じた申請と政府の承認によって成立する任意の制度です。加入を検討する場合は、対象となる団体の窓口を確認することになります。

休業(補償)給付を受けている間、会社は賃金の一部を支払ってもよいのか?

休業日に部分的に就労し賃金の一部を受け取った場合、給付基礎日額から実際に支払われた賃金額を差し引いた額の80%相当が支給される仕組みになっています。会社側が一部賃金を支払うこと自体は制度上禁止されていません。

建設現場の技能者以外の事務職員も、休業(補償)給付の対象になるのか?

労働者災害補償保険法上の「労働者」に該当していれば、現場の技能者に限らず事務職員なども対象になります。一人親方など個人事業主は「労働者」に該当しないため、特別加入を利用しない限り対象になりません。

まとめ

建設業の休業補償は、労働基準法上の事業主による休業補償と、労災保険の休業(補償)等給付という2段階の仕組みで構成されています。休業4日目以降は労災保険からの給付に切り替わり、給付基礎日額の80%相当を受け取れる点が基本の考え方です。

給付を受けられる期間には法令上の一律の上限はありませんが、療養1年6か月を超えて傷病等級に該当する場合は傷病(補償)等年金への切り替えが生じます。一人親方は特別加入を利用することで、雇用されている労働者と同様の給付を受けられる仕組みになっています。

こうした制度を正しく理解しておくことは、公共工事の受注拡大を目指す会社の労務管理体制を整えるうえでも役立ちます。

この記事のまとめ
  • 建設業の休業補償は労働基準法の休業補償(3日間)と労災保険の休業(補償)給付(4日目以降)の2段階で構成される
  • 休業(補償)給付を受けるには3要件を満たす必要があり、給付基礎日額の80%相当(60%+特別支給金20%)が支給される
  • 給付日数に法令上の上限はないが、療養1年6か月超で傷病等級に該当すると傷病(補償)等年金に切り替わる
  • 一人親方は特別加入により雇用労働者と同様の休業(補償)給付を受けられる

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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