公共工事の設計変更とは?手続きの流れと協議の進め方を解説


公共工事の入札に参加している事業者にとって、施工中に発生する「設計変更」は避けて通れないテーマです。当初の設計図書のとおりに工事が進まない場面は珍しくなく、その都度どのような手続きを踏むべきかを理解しておく必要があります。手続きを知らないまま現場で対応してしまうと、必要な協議の機会を逃してしまうこともあります。
この記事では、公共工事における設計変更の基本的な考え方と、発注者との協議を含めた手続きの流れ、工期や請負代金額の扱いまでを整理して解説します。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 設計変更は契約変更の前段階として行われる、変更内容の事前提示である
- 設計変更の手続きは、受注者の発見・通知から発注者の調査・通知という流れで進む
- 発注者との協議は対等な立場で行うものであり、条件変更等の交渉は制度上認められている
- 工期・請負代金額の変更は、発注者と受注者の協議によって定められる
公共工事の設計変更とは何か?
契約変更に先立つ手続きとして設計変更を理解する
「設計変更」とは、契約変更(工期や請負代金額の確定)の手続きに入る前段階として、変更する内容をあらかじめ受注者に示すことを指します。設計変更が先に行われ、その内容を踏まえて契約変更で工期や金額が確定するという順序になります。
この2つを同じ意味で捉えてしまうと、発注者からの指示があった時点で契約内容が確定したと誤解してしまう可能性があります。まず設計変更の内容が示され、その後に契約変更の手続きが進むという順序を押さえておくことが大切です。
この設計変更に関する対応は、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)においても、発注者の責務として位置づけられています。施工条件が実際の現場と一致しない場合や、予期できない事情が生じた場合に、必要な設計図書の変更とこれに伴う請負代金額または工期の変更を行うことが求められています。
設計変更が生じる代表的な場面を確認する
公共工事標準請負契約約款(中央建設業審議会決定)では、受注者が工事の施工中に一定の事実を発見した場合、直ちに監督職員へ通知し確認を求めることが定められています。対象となるのは、設計図書間の不一致や誤り、施工条件が現場の実際と異なる場合など複数のケースです。
- 現場の地質や地下水位などが、想定していた条件と異なることが確認された場合
- 発注者との協議を経て、発注者から施工内容の変更が指示された場合
- 受注者の責任によらない事情で、工事の着手時期を変更せざるを得ない場合
- 設計図書に明示されていない条件について、予期できない特別な事情が生じた場合
ここまでは受注者が事実を発見するケースを見てきましたが、発注者側の判断で変更が行われる場合もあります。契約書上、発注者が必要と認めるときは、設計図書の変更内容を受注者に通知して変更できると定められており、この場合も必要に応じて工期や請負代金額の変更、受注者に生じた損害の費用負担があわせて行われます。
受注者が行う「設計図書の照査」は、契約書上定められた事実の有無を、自らの負担で確認する作業です。照査の結果、計画の見直しや再計算など、照査の範囲を超える対応が必要になった場合は、発注者の指示に基づく費用として契約変更の対象になります。
こうした場面に該当するかどうかは、受注者が独自に判断するのではなく、発注者との協議を通じて確認することが前提になります。次の章で、その手続きの流れを確認します。
公共工事の設計変更はどのような手続きで進むのか?
条件変更等の発見から通知までの流れを確認する
契約書上の「条件変更等」に関する規定では、受注者が該当する事実を発見した場合、直ちに監督職員へ通知し、確認を求める必要があります。通知を受けた発注者は、受注者の立会いのもとで調査を実施し、調査終了後は一定期間内に結果を受注者へ通知するという流れになります。
この結果、条件変更等の事実が確認されれば、必要に応じて設計図書の訂正または変更が行われます。あわせて、工期や請負代金額の変更が必要と認められる場合には、その変更もあわせて行われます。
- 受注者が該当する事実を発見し、直ちに監督職員へ通知して確認を求める
- 発注者(監督職員)が受注者の立会いのもとで調査を実施する
- 発注者が調査結果を一定期間内に受注者へ通知する
- 事実が確認された場合、必要に応じて設計図書の訂正・変更が行われる
- 必要があると認められる場合、工期または請負代金額の変更が行われる
調査結果の通知までの期間は、公共工事標準請負契約約款で調査の終了後14日以内と定められています(執筆時点の約款による)。関東地方整備局の設計変更ガイドラインも同じ日数で運用されていますが、実際の契約書の記載をあわせて確認しておくことをおすすめします。
発注者が期間内に結果を通知できないやむを得ない理由がある場合は、あらかじめ受注者の意見を聴いたうえで、通知までの期間を延長することも認められています。通知が遅れているように感じても、こうした運用が背景にある場合があります。
変更見込金額が請負代金額の30%を超える場合の扱いを確認する
設計変更に伴う契約変更は、その必要が生じるたびに遅滞なく行うことが原則です。ただし軽微な変更については、工期の末にまとめて契約変更を行うことも認められています。
変更見込金額が請負代金額の30%を超えたことだけを理由に、発注者が設計変更や工期・請負代金額の変更を拒むことは認められません。一体施工の必要から工事を分離できない場合は、30%を超えていても適切に変更を行うこととされています(執筆時点の情報)。
ここでの「変更見込金額」は、これまでに生じた変更を積み上げた累計額として運用されます。1回あたりの変更額だけを見て30%を下回っていると判断するのではなく、累計でどの程度まで積み上がっているかを把握しておくことが実務上のポイントになります。
設計変更の協議はどう進めればよいのか?
契約書に出てくる3つの用語の違いを理解する
契約書や仕様書で使われる「協議」「指示」「承諾」は、それぞれ意味が異なります。協議は発注者と受注者が対等な立場で合議し結論を得ること、指示は発注者側が必要事項を書面で示すこと、承諾は明示された事項について書面で同意することを指します。
このうち、設計図書の変更に該当するのは協議と指示であり、承諾のみでは設計図書の変更として扱われません。受注者としては、疑義が生じた場合にどの手続きを踏んでいるかを意識しておく必要があります。
| 用語 | 意味 | 設計図書の変更への該当 |
|---|---|---|
| 協議 | 発注者(監督職員)と受注者が対等な立場で合議し、結論を得ること | 該当する |
| 指示 | 監督職員が受注者に対し、必要な事項を書面で示すこと | 該当する |
| 承諾 | 契約図書で明示した事項について、書面により同意すること | 該当しない |
設計変更が認められないケースに注意する
発注者との協議を経ずに受注者が独自の判断で施工した場合や、協議中で回答(指示)がない段階で施工を進めた場合は、原則として設計変更が認められません。承諾のみで施工した場合や、口頭のみの指示・協議によるものも同様です。
ただし、災害の発生防止など緊急の必要がある場合に受注者が行う「臨機の措置」は、これらとは別に考慮される取扱いです。通常の協議手続きと緊急時の対応とを、切り分けて理解しておくとよいでしょう。
発注者が言うことをそのまま受け止めて、交渉や意見を控えてしまう事業者も見られます。しかし契約書上、協議は対等な立場で行うものと位置づけられており、疑問があれば意見を伝えることが前提とされています。
発注者との交渉に踏み込めるかどうかは、実際の現場でも意見が分かれるところです。

発注者に意見を言ってはいけない、発注者の言うことが絶対だと思い込んでいる企業が多いのですが、それは根拠のない考えです。
そのうえで、疑問点があれば発注者に確認し、協議の記録を残しておくことが実務上の備えになります。
設計変更に伴う契約内容の変更はどう扱われるのか?
工期の変更方法を確認する
工期の変更については、発注者と受注者が協議して定めることが基本です。協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合は、発注者が工期を定めて受注者に通知します(執筆時点の約款による)。
天候不良など受注者の責任によらない事由で工期内に工事を完成できない場合、受注者は理由を明示した書面で工期の延長を発注者に請求できます。延長の原因が発注者側にある場合は、必要に応じて請負代金額の変更や費用負担もあわせて行われます。
請負代金額の変更方法を確認する
請負代金額の変更についても、発注者と受注者が協議して定めるのが基本です。協議が一定期間内に整わない場合は、発注者が金額を定めて受注者に通知するという扱いになります。
工事を一時中止した場合の増加費用についても、中止期間が3か月以内であれば標準積算による算定、3か月を超える場合は受注者からの見積りをもとに発注者と協議して算定するとされています(執筆時点の情報)。
なお、工事の全部を一時中止している期間は、主任技術者・監理技術者の専任を要しない期間として扱われます。工事の一部だけを中止する場合は、施工を継続する部分について専任が必要になる点に注意が必要です。
受注者の責任によらない事情で工期が大幅に延期された場合は、配置している技術者を途中で交代させることが認められる運用もあります。工期に関わる変更が生じた際は、技術者の配置計画への影響もあわせて確認しておくと安心です。
| 項目 | 定め方 | 協議が整わない場合など |
|---|---|---|
| 工期の変更 | 発注者と受注者が協議して定める | 発注者が期間を定めて受注者に通知する |
| 請負代金額の変更 | 発注者と受注者が協議して定める | 発注者が金額を定めて受注者に通知する |
| 工事一時中止の増加費用 | 中止期間3か月以内は標準積算で算定する | 3か月を超える場合は見積りをもとに協議して算定する |
ここまで見てきたように、公共工事における設計変更や工期・請負代金額の扱いは、発注者との協議を前提とした制度として整理されています。受注後にどのような手続きが待っているかをあらかじめ知っておくことは、公共工事に参入する段階から意識しておきたい点の一つです。
公共工事は実績のある大手企業だけが対応できるものと受け止められることがあります。ただし、設計変更や工期・請負代金額の協議に関する規定は、会社の規模にかかわらず同じ内容で適用されるものです。
よくある質問
- 設計変更の協議に応じてもらえない場合、どうすればよいか?
-
契約書上、条件変更等に該当する事実がある場合、発注者には調査を実施し結果を通知する義務があります。協議の申出に応じてもらえない場合は、まず契約書の規定に基づいて改めて確認を求め、通知や協議の経緯を日付とともに記録に残しておくことが実務上の備えになります。
- 設計変更の協議内容は書面で残す必要があるか?
-
契約書上、正式な指示や協議は書面によることが前提とされており、口頭のみの指示・協議では設計変更として扱われない場合があります。やり取りの経緯を書面や記録で残しておくと、その後の契約変更の手続きも進めやすくなります。
- 設計変更に伴う概算額はどのように示されるのか?
-
発注者が設計変更を指示する際、指示書などに変更に伴う増減額の概算額を記載する運用があります。この概算額はあくまで参考値であり、実際の契約変更額を拘束するものではないとされています。緊急を要する場合や算定に時間を要する場合は、概算額を後日通知する形が取られることもあります。
まとめ
公共工事における設計変更は、契約変更に先立って変更内容を示す手続きであり、受注者からの通知や発注者との協議を通じて進められます。工期や請負代金額の扱いについても、協議を前提とした規定が整備されています。
発注者との協議は、制度上対等な立場で行うことができるものです。疑問点があれば率直に確認し、通知や協議の経緯を記録として残しておくことが、その後の契約変更をスムーズに進めるための備えになります。
- 設計変更は契約変更に先立って変更内容を示す手続きであり、受注者の通知や発注者との協議を通じて進められる
- 工期・請負代金額の変更も、発注者と受注者の協議によって定められる
- 発注者との協議は制度上対等な立場で行えるため、疑問点があれば率直に確認する
- 通知や協議の経緯は書面や記録として残し、次の契約変更の手続きに備えておく
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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