出来形管理とは?管理基準・測定と写真の残し方を公共工事の実務で解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

出来形管理という言葉は知っていても、何を測り、どう記録すればよいのかまで具体的に整理できているとは限りません。土木工事の施工管理は、工程管理・品質管理・出来形管理の3つで構成されており、公共工事に参入したばかりの会社にとっては、何をどこまで記録すればよいかが分かりにくい実務の一つです。

この記事では、出来形管理の位置づけと工事成績評定との関係、管理基準の考え方、測定(測量)の方法、写真の残し方までを、公共工事の実務に沿って整理して解説します。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 出来形管理は工程管理・品質管理と並ぶ施工管理の一つで、工事目的物の形状・寸法を対象にする
  • 出来形の評価は工事成績評定の一部を構成する
  • 出来形管理基準は工種別に測定項目・規格値・測定基準を定めている
  • 出来形管理写真は撮影頻度に基づいて撮影し、一定の条件では省略も認められている
目次

出来形管理とは何か?品質管理とどう違うのか

土木工事の施工管理は、国土交通省の土木工事施工管理基準において「工程管理」「出来形管理(工事写真を含む)」「品質管理」の3要素で構成されると定められています。出来形管理は、このうち工事目的物の形状や寸法を対象とする管理です。

具体的には、出来形管理基準に定められた測定項目・測定基準に従って現場を実測し、設計値と実測値を対比した出来形管理図表を作成して管理する業務を指します。品質管理が材料や強度などを対象とするのに対し、出来形管理は形状・寸法という別の側面を担う点が違いです。

  • 工程管理:工事の進捗状況を管理する
  • 出来形管理:形状・寸法を測定し設計値と対比する(工事写真の管理を含む)
  • 品質管理:材料や強度など品質面を管理する

出来形管理によって測定した実測値は、品質管理基準による測定値と同様に、規格値をすべて満たす必要があるとされています。規格値を満たさない箇所があれば、その時点で対応の検討が必要になります。

測定した実測値は、そのまま記録に残すだけでは足りません。設計値と実測値を対比した出来形管理図表を作成し、どの測点でどの程度の差があったかを一覧で追える状態にしておくことが求められます。

図表として整理しておくと、監督職員への提示や工事完成時の提出にもそのまま対応しやすくなります。この整理を後回しにすると、完成間際にまとめて作業する負担が大きくなります。

3つの管理を並行して進める体制自体は、工事の規模にかかわらず必要になります。出来形管理だけを別工程として後回しにするのではなく、日々の測定と記録を工程管理の進行に合わせて組み込んでおくことが、現場運営の土台になります。

出来形管理は工事成績評定にどうつながるか?

工事が完成すると、発注者による検査を経て工事成績評定が行われます。この評定には出来形・品質・出来ばえの評価が含まれ、評定点のうち一定割合を占める構成になっています(地方整備局の考査項目別運用表による)。

評定点は工事が完成してから初めてつくものではなく、施工中に積み重ねた出来形管理の記録の精度がそのまま反映される仕組みです。工事の途中でどれだけ丁寧に記録を残せたかが、完成後の評価に直結します。

出来形の評価は、測定したばらつきが規格値のおおむね何パーセント以内かによって段階が分かれる仕組みです。出来形管理の項目を設定していない工事は、この段階のうち低い評価になる旨も明記されています。

評価段階内容
aばらつきが規格値のおおむね50%以内
bばらつきが規格値のおおむね80%以内
ca・bに該当しない(ただし規格値は満足。管理項目を設定していない工事もこの段階)
d測定方法または測定値が不適切で、監督職員が文書で改善指示

評定点の低さは、参入したばかりの会社ほど入札への影響が気になるところです。

入札には影響が出ますが、そこまで大きな影響ではないと思います。1年目からそれを気にしなくてよいと考えています。

参入初期の段階では、評定点そのものを追いかけるより、出来形管理の記録を毎回正確に残せる体制を整えることのほうが土台になります。記録の精度が積み重なっていくことで、評定点の対策にも自然につながっていきます。

出来形管理基準は何を定めているか?

出来形管理基準及び規格値は、工種別に「測定項目」「規格値」「測定基準」「摘要」の4つの要素からなる表形式で定められています。単位はミリメートル(mm)表記です。

例えば掘削工では、基準高の規格値が±50mm、測定頻度は施工延長40mごとに1か所という形で定められています(執筆時点の基準による)。

ただし規格値や測定頻度は工種ごとに個別に定められているため、この数値をそのまま他の工種に当てはめることはできません。担当する工事の工種に応じて、該当する基準を都度確認する必要があります。

  • 測定項目:何を測定するかを工種ごとに定めたもの
  • 規格値:実測値が満たすべき許容範囲
  • 測定基準:測定する箇所数や頻度
  • 摘要:測定方法など補足事項

基準どおりに施工管理を行うことが難しい工事の種類・規模・施工条件の場合や、規格値が定められていない工種については、監督職員と協議のうえで施工管理を行う適用除外の規定もあります。ICTを活用し3次元データで出来形管理を行う場合は、別途定められた3次元計測技術を用いた出来形管理要領の規定に従うとされています。

出来形管理基準は、第1編の共通編から各工種の編まで目次に沿って多数の項目が整理されています。工種によっては、近い性質を持つ他工種の基準を準用する形が取られている場合もあります。

準用元の基準を確認する手間はかかりますが、基準の考え方自体は共通しています。担当する工種がどの基準を準用しているかを、契約前の段階で把握しておくと安心です。

基準・規格値は工種別に細かく分かれているため、初めて出来形管理に取り組む場合は、まず自社が担当する工種の該当箇所を管理基準の目次から探し出す作業が最初のステップになります。工種の名称が図面上の表記と一致しないこともあるため、準用関係も含めて確認しておくと、測定段階での手戻りを減らせます。

出来形の測定(測量)はどのように行うか?

出来形の測定方法には、巻尺・レベル・トータルステーション(TS)による従来型の測量に加え、UAVによる空中写真測量や地上型レーザースキャナー(TLS)、RTK-GNSSなどのICT・3次元計測技術を用いる方法があります。3次元データを用いる場合は、別に定められた要領の規定に従うとされています。

  • 巻尺・レベル・トータルステーション(TS)による従来型の測量
  • UAVによる空中写真測量
  • 地上型レーザースキャナー(TLS)
  • RTK-GNSSなどの測位技術

測定(試験)は、工事の施工と並行して速やかに実施することが求められます。測定結果はその都度出来形管理図表などに記録して保管し、監督職員から求められた際に速やかに提示できる状態にしておくとともに、工事完成時にも提出する必要があります。

測定基準のなかで測定箇所数が「○○につき1か所」と定められている項目は、小数点以下を切り上げた箇所数で測定する取り扱いになっています。工種ごとの規定を確認しながら進める必要があります。

測定に使う機材は工事の規模や現場条件によって選び方が変わります。従来型の測量で十分対応できる現場もあれば、広い面積を一度に測定する必要がある現場ではICT・3次元計測技術のほうが適している場合もあります。どちらの方法でも、出来形管理基準に定められた測定項目と測定基準を満たすことが前提です。

出来形管理写真はどう撮影し、どう整理するか?

出来形管理写真を含む工事写真は、着手前・完成写真、施工状況写真、安全管理写真、品質管理写真、出来形管理写真など複数の分類に整理されています。撮影は、撮影箇所一覧表に示された撮影頻度に基づいて行います。

撮影の際は、工事名・工種・測点・設計寸法・実測寸法などを記載した小黒板を、文字が判読できる状態で被写体とともに写し込みます。小黒板の判読が難しい場合は、デジタル写真管理情報基準に規定された写真情報として必要事項を記入する扱いも認められています。

  • 完成後に測定できる部分は、工種ごとに出来形管理状況が分かる写真を1回撮影すれば以降は省略できる
  • 監督職員や現場技術員が臨場して段階確認した箇所は、出来形管理写真の撮影自体を省略できる
  • 撮影はカラーとし、小黒板の文字が判読できる画素数(目安100万〜300万画素程度、執筆時点の基準による)を確保する

写真の信憑性を保つため、写真そのものの編集は認められていません(小黒板情報の電子的な記入はこれに当たりません)。不可視となる出来形部分は、出来形寸法が確認できるよう特に注意して撮影し、分かりにくい場合は見取り図をあわせて作成します。

撮影を終えた写真原本は電子媒体に格納し、監督職員に提出します。ファイルの整理方法や格納方法も、デジタル写真管理情報基準に沿って進めることが求められます。日々の撮影と同時にファイル名や保管場所のルールを決めておくと、提出時の作業が滞りません。

出来形管理や工事写真の整理は、公共工事を受注したあとに継続して発生する実務です。管理基準に沿った記録を毎回残せる体制を整えておくことは、受注後の検査や工事成績評定にそのまま対応できる土台になります。

公共工事は、これまで参入経験のない会社にとって、実績を積んだ会社しか対応できない分野のように見えることがあります。出来形管理や工事写真のような実務についても、最初は書式や手順の多さに戸惑う部分が多いかもしれません。

ただし出来形管理基準や写真管理基準は、会社の規模にかかわらず同じ内容で適用される基準です。基準に沿って記録を積み重ねていくこと自体が、公共工事の受注実績を重ねていく土台になります。

よくある質問

出来形管理基準はすべての公共工事に適用されるのか?

出来形管理基準は、国土交通省地方整備局が発注する土木工事に適用される基準です。発注者によって適用する基準が異なる場合があるため、契約書類や仕様書に示された基準を確認しておくことが実務上大切です。

出来形管理の記録は誰が確認するのか?

測定結果は出来形管理図表などに記録して保管し、監督職員から求められた際に提示するとともに、工事完成時にも提出する必要があります。日々の記録を整理しておくことが、完成時の提出や検査への対応につながります。

出来形管理写真は毎回同じ枚数を撮影する必要があるのか?

撮影箇所一覧表に示された撮影頻度に基づいて撮影しますが、完成後に測定できる部分や監督職員が臨場して段階確認した箇所については、撮影を省略できる規定もあります。工種や施工条件によって扱いが異なるため、個別の規定を確認しながら進める必要があります。

省略の対象になるかどうかは工事ごとに異なるため、着工前に監督職員へ確認しておくと、現場での撮影漏れを防ぎやすくなります。

ICT施工を使わない工事でも出来形管理は必要か?

出来形管理は、ICT施工の有無にかかわらず必要な管理です。従来型の巻尺・レベル・トータルステーションによる測定でも出来形管理基準に沿って実施でき、3次元データを用いる場合は別に定められた要領の規定に従う形になります。測定方法を選ぶ際は、現場の規模や条件に応じてどちらが対応しやすいかを判断することになります。

まとめ

出来形管理は、工程管理・品質管理と並ぶ施工管理の一つで、設計値と実測値を対比して工事目的物の形状・寸法を管理する業務です。工事成績評定にもつながる管理項目のため、記録の残し方を早い段階で整えておくことが実務上の備えになります。

出来形管理基準や写真管理基準は工種ごとに細かく定められており、初めて目にすると分量の多さに戸惑うかもしれません。測定方法や写真の撮影・整理も、それぞれの基準に定められた手順や規格値に沿って進める点は共通しています。

まずは自社が担当する工種の規定を確認するところから始め、記録を毎回丁寧に積み重ねていくことが、検査対応や次の入札に向けた土台づくりにつながります。

この記事のまとめ
  • 出来形管理は工程管理・品質管理と並ぶ施工管理の一要素で、設計値と実測値を対比して形状・寸法を管理する
  • 出来形の評価は工事成績評定の一部を構成し、評定点のうち一定割合を占める
  • 出来形管理基準は工種別に測定項目・規格値・測定基準を定めており、一律の数値ではない
  • 出来形管理写真は撮影頻度に基づいて撮影し、一定の条件下では省略も認められている

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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