最低制限価格とは?計算方法と失格にならないための注意点を解説


最低制限価格は、地方公共団体が工事の入札で、契約の内容に適合した履行を確保するためにあらかじめ設ける下限の価格です。この価格を下回る入札は、予定価格の範囲内で最も安くても、落札者にはなれません。
この記事では、最低制限価格の位置づけ、国のモデルで使われる計算方法、失格にならないための注意点を、2026年10月執筆時点の公的資料をもとに整理します。あわせて、公共工事の受注との関わりにも触れます。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 最低制限価格は地方公共団体が履行の確保のために設ける下限の価格で、下回る入札は落札者になれない
- 最低制限価格制度は地方公共団体のみが使える制度で、総合評価落札方式では活用できない
- 算定式は法令に定めがなく発注者が決める。国のモデルは4つの費目の乗率の合計で、予定価格の75〜92%の範囲で設定される
- 失格を避けるには、入札公告などで設定の有無と、下回った場合の扱いを確認する
最低制限価格とは?低入札価格調査制度との違い
最低制限価格は、安すぎる価格での受注を防ぐために、発注者が入札の前にあらかじめ設ける下限の価格です。同じ目的の制度に低入札価格調査制度があり、使える発注者や、下回ったときの扱いが異なります。
最低制限価格は履行の確保のために地方公共団体が設ける下限の価格
地方公共団体が競争入札で契約を結ぶ場合、原則は、予定価格の制限の範囲内で最も低い価格で申し込んだ者が相手方になります(地方自治法第234条第3項)。この原則の例外として、地方自治法施行令第167条の10第2項は、契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときに、最低制限価格を設けられると定めています。
最低制限価格を設けた場合は、最低制限価格以上の入札者のうち、最も低い価格の者が落札者になります。予定価格の制限の範囲内で最も低い入札であっても、最低制限価格を下回っていれば落札者にはなれません。
施行令第167条の10第2項の条文に「失格」という語はありません。入札心得や入札説明書で、失格や無効として扱う旨が定められている場合があるため、案件ごとに確認が必要です。
最低制限価格制度は地方公共団体のみが使える
国土交通省の資料は、低入札価格調査制度と最低制限価格制度を、最低価格の入札者と契約するという原則の例外として整理しています。このうち、最低制限価格制度は地方公共団体のみが使える制度です。
国の工事では、予算決算及び会計令第85条の基準を下回る入札があったときに、履行できるかどうかを調査する低入札価格調査制度が運用されます。基準を下回った入札者は、最低価格であっても落札者にならない場合があります。
2つの制度の違いは使える発注者と下回ったときの扱い
| 項目 | 低入札価格調査制度 | 最低制限価格制度 |
|---|---|---|
| 根拠 | 国は予算決算及び会計令第85条・第86条。地方は地方自治法施行令第167条の10第1項、第167条の10の2第2項 | 地方自治法施行令第167条の10第2項 |
| 使える発注者 | 国と地方公共団体 | 地方公共団体のみ |
| 基準を下回った場合 | 履行できるかを調査し、おそれがあれば落札者としない | 調査はなく、下回った入札は落札者になれない |
| 総合評価落札方式 | 地方自治法施行令第167条の10の2第2項に定めがある | 活用できない |
総合評価落札方式で最低制限価格制度を活用できないのは、地方自治法施行令第167条の10の2に定めがないためと、国土交通省の資料は説明しています。政府調達に関する協定の対象工事でも、最低制限価格制度は活用できないとされています。
最低制限価格の計算方法は?
最低制限価格の算定式は、法令では定められていません。発注者が要領などで定めており、国のモデルを基にする団体が多くなっています。
条文に算定式や率はなく発注者が定める
地方自治法施行令第167条の10第2項は、最低制限価格を「あらかじめ設ける」と定めるだけで、算定式や、予定価格に対する割合は条文にありません。実際の価格は、各発注者が要領などで定めた算定式に、案件の積算内訳を当てはめて決まります。
算定の目安として広く参照されているのが、国が使う低入札価格調査基準の計算式である「中央公契連モデル」です。国土交通省の資料は、地方公共団体の最低制限価格や調査基準価格の設定水準を、このモデルと比べて整理しています。
国のモデルは4つの費目の乗率の合計で求める
令和4年4月1日以降に入札公告を行う工事を対象とする国のモデルでは、次の4つの費目に乗率をかけて合計し、消費税を加えます。
| 費目 | 乗率 |
|---|---|
| 直接工事費 | 0.97 |
| 共通仮設費 | 0.90 |
| 現場管理費 | 0.90 |
| 一般管理費等 | 0.68 |
算出した額を予定価格で割った割合は、予定価格の10分の7.5から10分の9.2(75〜92%)の範囲内で設定されます。計算結果がこの範囲を上回った場合は上限、下回った場合は下限の値になります。
モデルは改定されており適用の時期と水準は発注者ごとに異なる
国のモデルは、設定範囲と乗率が過去に見直されています。国土交通省の資料が示す改定の内容は次のとおりです。
| 適用開始 | 設定範囲 | 直接工事費 | 共通仮設費 | 現場管理費 | 一般管理費等 |
|---|---|---|---|---|---|
| 平成28年4月1日 | 10分の7.0〜10分の9.0 | 0.95 | 0.90 | 0.90 | 0.55 |
| 平成29年4月1日 | 10分の7.0〜10分の9.0 | 0.97 | 0.90 | 0.90 | 0.55 |
| 平成31年4月1日 | 10分の7.5〜10分の9.2 | 0.97 | 0.90 | 0.90 | 0.55 |
| 令和4年4月1日 | 10分の7.5〜10分の9.2 | 0.97 | 0.90 | 0.90 | 0.68 |
地方公共団体が、いつ、どの水準のモデルを使うかは、団体ごとに決まります。国土交通省の令和8年3月の資料によると、令和7年6月1日時点で、都道府県はほぼ全ての団体が、最低制限価格も調査基準価格も令和4年モデル相当以上の水準で運用しています。
市区町村では、算定式の水準が確認できる団体のうち、8割近くが最新の中央公契連モデルを採用しています。団体によって水準が異なるため、自社が入札する発注者の最新の要領を確認することが前提になります。
国のモデルの式を使った計算例
国のモデルの式を使う発注者を想定し、仮の数字で計算してみます。次の数字は筆者が仮定したもので、実際の算定は各発注者の要領によります。
| 費目 | 積算額(仮定) | 乗率 | 乗率をかけた額 |
|---|---|---|---|
| 直接工事費 | 5,500万円 | 0.97 | 5,335万円 |
| 共通仮設費 | 600万円 | 0.90 | 540万円 |
| 現場管理費 | 1,200万円 | 0.90 | 1,080万円 |
| 一般管理費等 | 1,200万円 | 0.68 | 816万円 |
| 合計(税抜) | 8,500万円 | ― | 7,771万円 |
予定価格の積算額(税抜)を8,500万円と仮定すると、7,771万円を8,500万円で割った割合は約91.4%です。75〜92%の範囲に収まるため、この例では約7,771万円(税抜)が最低制限価格の目安になります。
割合は、税抜同士で比べても、税込同士で比べても変わりません。ただし、費目の区分や端数の処理は発注者によって異なる場合があります。
失格にならないための注意点は?
最低制限価格を下回る入札は落札者になれないため、価格を決める前に、確認しておくべきことがあります。ここでは、入札公告での確認、事前公表の扱い、積算との照合の3点を整理します。
入札公告や入札説明書で最低制限価格の設定の有無を確認する
最低制限価格を設けるかどうかは、発注者が案件ごとに判断します。設定の有無や、下回った場合の扱いは、入札公告、入札説明書、入札心得で定められるため、価格を考える前にここを読みます。
国土交通省の資料では、令和6年度の実績で、都道府県と指定都市はほぼ全ての団体で、最低制限価格または低入札価格調査基準の設定割合が0.9以上でした。市区では8割以上の団体が0.9以上ですが、町村では0.5を下回る団体が約4分の1を占めます。
経験を積んだ会社ほど、公告の確認を省いてしまうことがあります。

建設業の経験者は、役所が出した公告を見て、『そういうことか』と確認もせずに業務をどんどん前へ進めてしまいがちですが、未経験者はそんなことをしません。とても丁寧に仕事をします。
事前公表の有無で入札の組み立てが変わる
公共工事の入札契約適正化指針は、低入札価格調査の基準価格と最低制限価格を、入札の前には公表しないものとしています。入札前に公表すると、価格の近くに入札が誘導され、同額の入札者の間でくじ引きによる落札が増えるなど、適切な積算をしない建設業者が受注する弊害が生じうるためです。
予定価格の公表の有無は、入札の組み立て方に影響します。
積算を積み上げた価格と発注者の算定の考え方を照らし合わせる
最低制限価格は、発注者が積算した内訳をもとに算定されます。自社が積み上げた価格が、発注者の算定式から想定される水準を大きく下回っていないかを、入札の前に確認しておくと、金額の読み違いに気づきやすくなります。
入札前に確認しておきたい項目は、次のとおりです。
- 入札公告で、最低制限価格を設ける案件かどうか
- 最低制限価格を下回った場合の扱い(失格、無効など)
- 算定式や設定の目安が公表されているかどうか
- 入札金額の内訳書の様式と提出の期限
最低制限価格の理解は公共工事の受注にどうつながるのか?
最低制限価格制度は、極端な低価格での受注競争を防ぎ、契約の内容に適合した履行を確保するための仕組みです。国土交通省の資料も、この制度をダンピング受注の排除を図るための制度として位置づけています。
- 最低制限価格が設けられた案件では、下限を下回る入札は落札者になれない
- 入札の価格は、自社の積算の根拠を前提に組み立てる必要がある
- 設定の有無や算定式の扱いは、発注者ごとに入札公告などで確認する
発注者ごとの制度の違いを把握しながら入札を重ねていくことは、公共工事の受注を増やすうえでの土台になります。
公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。
公共工事への参入に向けた全体像は、下記で詳しく確認できます。
よくある質問
- 最低制限価格ちょうどで、同額の入札が複数あった場合はどうなるのか?
-
一般競争入札では、落札となるべき同価の入札をした者が2人以上あるときは、直ちに、入札者にくじを引かせて落札者を定めるとされています(地方自治法施行令第167条の9)。くじを引かない者がいるときは、入札事務に関係のない職員が代わりに引きます。
- 指名競争入札や随意契約にも最低制限価格はあるのか?
-
地方自治法施行令第167条の13は、指名競争入札について、第167条の10などの規定を準用すると定めています。随意契約に最低制限価格を設けるかどうかは、本記事では条文を確認できていないため、発注者の規則や要領で確認してください。
- 入札金額の内訳書は、何のために提出するのか?
-
建設業者は、公共工事の入札に係る申込みの際に、材料費、労務費などの内訳を記載した書類を提出しなければならないとされています(入札契約適正化法第12条)。国の指針は、基準価格を下回った入札者への調査で、この内訳書を活用するよう求めています。
- 国の工事で、基準を下回る入札があったらどうなるのか?
-
財務省所管の運用方針では、基準を下回る入札があった場合は落札者の決定を保留し、事情聴取などの調査を行います。工事請負の基準は、予定価格の10分の7.5から10分の9.2の範囲で契約担当官等が定める割合とされています(令和8年3月31日改正)。
まとめ
最低制限価格は、地方公共団体が契約の内容に適合した履行を確保するためにあらかじめ設ける下限の価格です。下回る入札は落札者になれず、この制度は地方公共団体のみが使えます。
算定式は法令に定めがなく発注者が決めます。国のモデルは、直接工事費、共通仮設費、現場管理費、一般管理費等の乗率の合計で、予定価格の75〜92%の範囲で設定されます。
本記事の内容は2026年10月執筆時点の情報のため、実際の入札では、発注者の入札公告や最新の要領で確認してください。
- 最低制限価格を下回る入札は、予定価格の範囲内で最も安くても落札者になれない
- 最低制限価格制度は地方公共団体のみが使え、国の工事では低入札価格調査制度が運用される
- 国のモデルの式は参考になるが、実際の算定式は発注者の最新の要領で確認する
- 入札前に、設定の有無、下回った場合の扱い、内訳書の様式と期限を確認する
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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