競争入札参加資格の等級(ランク)とは?点数による格付けの仕組み
とは?点数による格付けの仕組み.png)

競争入札参加資格の審査では、事業者は点数によって等級(ランク)に格付けされます。等級が上がれば参加できる工事の規模が広がる一方、その仕組みは発注者によって異なり、経営事項審査(経審)の評点との関係も正確に理解している経営者は多くありません。
本記事では、競争入札参加資格の等級とは何かという基本から、点数による格付けの仕組み、経審の総合評定値との関係、国と地方公共団体の実際の基準、等級を上げる方法まで、執筆時点で確認できた発注者の公表資料をもとに解説します。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 等級は発注者が点数で事業者を格付けし、参加できる工事の規模を決める仕組みであること
- 経審の総合評定値が等級の基礎になるが、発注者ごとに加点や算定方法が異なること
- 国と地方公共団体で等級の名称や基準点数が異なること
- 経審の点数向上や工事成績などが等級アップにつながること
競争入札参加資格の等級とは何か
競争入札参加資格の等級とは、発注者が入札参加資格の審査で付与するランクのことです。事業者は点数によってAやBなどの等級に格付けされ、等級に応じて入札に参加できる工事の規模(予定価格の範囲)が決まります。
等級は、経営事項審査(経審)の結果や工事成績などをもとに、発注者が算定する点数で決まります。同じ会社でも発注者ごとに点数構成が異なるため、国と地方公共団体で別々の等級になることもあります。
- 発注者が点数で事業者を格付けする仕組みである
- 工事の種類ごとに等級が設定される(工種によって等級数も異なる)
- 等級に応じて入札に参加できる工事の規模が決まる
等級は数値で定義されているからこそ、自社の現状を把握し、どの程度の工事を狙えるのかを事前に計算できます。等級の仕組みを理解することは、公共工事を経営戦略として捉えるうえでの土台になります。
公共工事の入札は、データを基に経営戦略を考えるものだという視点が重要です。

公共工事の入札というのは、データを元に経営戦略を考えるものです。だからこそデータがなければ始まりません。落札はその段階ではさほど重要ではなく、まずはデータ収集が先だと考えています。
自社の等級や点数、参加している案件の傾向といったデータを集めることが、等級を上げるための第一歩になります。
等級を決める点数はどのように算定されるのか
等級の基礎になるのは、経審の総合評定値です。経審は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受ける審査で、経営状況・経営規模・技術力・社会性などを点数化します。
総合評定値は、次の5つの要素を加重平均して算出されます(執筆時点の基準)。
- X1(経営規模:完成工事高)/X2(経営規模:自己資本額・利払前税引前償却前利益)
- Y(経営状況:負債抵抗力・収益性・効率性などの財務指標)
- Z(技術力:技術職員数・元請完成工事高)
- W(社会性等:担い手育成・営業年数・防災・法令遵守など)
重要なのは、経審の総合評定値がそのまま等級になるわけではない点です。発注者は総合評定値を基礎にしつつ、工事成績や地域内での実績などの加点を加えた独自の点数で等級を決めます。国と地方公共団体の算定方法の違いを整理すると、次のとおりです。
なお、総合評定値は、最高2,159点・最低163点の範囲で通知されます(執筆時点の基準)。自社の点数は、経審の結果通知書で確認できます。まずは通知書の数字と、各発注者が公表する基準点数を見比べて、現在の等級を把握することから始めるとよいでしょう。
| 発注者 | 等級を決める点数 | 主な構成要素 |
|---|---|---|
| 国の機関(国土交通省地方整備局等) | 等級区分別総合点数 | 経営事項評価点(経審の審査項目を再構成)+技術評価点(直近4年間の工事成績など) |
| 都道府県・政令指定都市(例) | 総合点数・等級区分評点 | 経審の総合評定値+工事成績・地元実績・表彰など自治体独自の加点 |
発注者ごとに何を加点するかが異なるため、同じ会社でも発注者によって等級が変わることがあります。自社の等級を把握する際は、各発注者が公表している基準で確認することが必要です。
地方公共団体の格付けの実際
地方公共団体の格付けは、経審の総合評定値を基礎に、各自治体が定めた基準点数で決まるのが一般的です。基準点数は自治体ごとに異なり、工事の種類ごとに分かれています。ここでは執筆時点の公表資料から、いくつかの自治体の例を紹介します。
| 発注者 | 格付けの仕組み | 基準点数の例(土木工事) |
|---|---|---|
| 神奈川県(令和9・10年度) | 総合点数=経審の評価結果(客観点数)+工事成績や表彰などの主観点数 | A=930点以上/B=750点以上/C=620点以上/D=620点未満 |
| 大阪府(令和8年度) | 等級区分評点=経審の総合評定値+地元点・福祉点・環境点 | AA=1,410点以上/A=1,150点以上/B=900点以上/C=750点以上/D=749点以下 |
| 札幌市 | 客観的評定点(経審ベース)+主観的評定点(本店所在地・工事成績・表彰など) | A1/A2/B/Cの4区分(工事の種類ごとに設定) |
同じ「A等級」でも、自治体によって必要な点数が異なることが分かります。等級の名称も自治体ごとに違い、大阪府のようにAA〜Dの区分を使うところもあれば、札幌市のようにA1・A2・B・Cと細分化するところもあります。
呼称は「等級」と「格付」など発注者によって異なりますが、本質は同じで、点数に応じて入札に参加できる工事の規模が決まる仕組みです。自社が登録している発注者がどのような呼称と基準を使っているかを確認しましょう。
基準点数は毎年度見直される自治体もあるため、記事で紹介した数値はあくまで執筆時点の例です。実際の申請時には、各発注者が公表する最新の基準を確認してください。
国の発注機関の等級の実際
国の発注機関(国土交通省の地方整備局等)が発注する建設工事では、工事の種類ごとに等級区分が設定され、等級区分別総合点数と予定価格の組み合わせで等級が決まります。関東地方整備局(令和7・8年度)の例は次のとおりです。
| 工種 | 等級 | 総合点数 | 予定価格 |
|---|---|---|---|
| 一般土木 | A | 3,040点以上 | 8億2,000万円以上 |
| 一般土木 | B | 2,630点以上3,040点未満 | 3億4,000万円以上8億2,000万円未満 |
| 一般土木 | C | 1,660点以上2,630点未満 | 7,000万円以上3億4,000万円未満 |
| 一般土木 | D | 1,660点未満 | 7,000万円未満 |
| 建築 | A | 2,950点以上 | 8億2,000万円以上 |
| 建築 | D | 1,550点未満 | 7,000万円未満 |
国の総合点数は、経審の審査項目を発注者側で再構成した経営事項評価点と、直近4年間の工事成績などによる技術評価点の合計です。技術評価点が0点の工種では、区分に関係なく最下位等級で認定される場合もあります。
なお、等級区分がない工種もあります。点数や金額は整備局ごとに公表されているため、申請する発注機関の公示で確認してください。
等級は入札にどう影響するのか
等級は、入札に参加できる工事の規模を決めます。発注者は工事の予定価格に応じて参加資格の等級を設定するため、自社の等級に合わない規模の工事には入札できません。
- 上位等級ほど、予定価格の大きな工事に入札できる
- 下位等級は小規模な工事が中心になり、参加できる案件の幅が限られる
- 等級の金額帯は発注者によって重なりがあり、同じ規模の工事に複数の等級が参加できることもある
等級が決まると、自社が狙える案件の範囲が明確になります。その範囲で入札に継続的に参加し、実績を積んでいくことが、等級アップや受注拡大の基礎になります。自社の等級と、実際に入札している案件の規模が合っているかを点検してみましょう。
例えば、上位等級の会社は大規模な工事にも参加できますが、下位等級の会社は小規模な工事に限られます。逆に、下位等級の会社にとって、参加できる範囲の工事を着実に受注して実績と工事成績を積むことが、次の等級アップにつながります。
どの案件に入札するかの選定も、等級と同じくらい重要な判断です。



予定価格が事前に公表されている案件には入札しません。他社が多数入札している案件にも入札しません。
競争の程度を見極めて案件を選ぶことで、自社の資源を有効に使えます。案件選定と等級の両方をデータで管理していくことが、公共工事での成果につながります。
等級を上げるにはどうすればよいのか
等級を上げるには、発注者が算定する点数を高めることが必要です。点数を構成する要素を、自社の状況に合わせて改善していきます。
- 経審の点数を上げる:決算内容の改善(自己資本の充実・収益性の向上)、技術職員の確保、社会性の向上など
- 工事成績を上げる:受注した工事の成績が次の等級に反映される。品質・工程・安全管理の徹底が基本
- 自治体ごとの加点を確認する:地元実績・表彰・防災協定・ISO認証など、自治体が加算する項目はそれぞれ公表されている
等級を上げるために何を優先すべきかは、自社の現状によって変わります。



顧客分析、ライバル分析、自社分析。この順番が大事です。顧客が何を求めているかを考えたうえで、そこに力を配分していく。だからこそ、入札公告を見ただけでは分からない部分で、自社が何をしなければならないかが見えてくるのです。
自社の点数構成を分析し、どの項目が等級のボトルネックになっているかを特定してから対策を打つことが重要です。経審の点数は毎年の決算の結果が反映されるため、等級アップは中期的な経営課題として取り組むのが現実的です。
なお、経審の審査項目は制度改正により変更されることがあります。最新の審査項目や算定方法は、国土交通省や各発注機関の公表資料で確認してください。
公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。まずは自社の等級を確認し、狙える案件の範囲から入札を始めてみることが、次の一歩になります。
よくある質問
- 等級はいつ決まるのですか?
-
等級は、発注者の競争入札参加資格審査の際に決まります。定期申請で次年度分の資格が認定されるタイミングが基本で、有効期間中は原則として再格付けが行われない自治体も多いです。経審の結果は決算後に反映されるため、等級アップを目指す場合は決算のタイミングが重要になります。
- 新規参入した会社はどの等級から始まるのですか?
-
会社の状況に応じた点数で等級が決まるため、一律に下位等級から始まるわけではありません。経審の点数が低いうちは下位等級になりますが、工事成績や経営状況の改善によって等級は上がっていきます。まずは自社の等級で参加できる案件に入札し、実績を積むことが等級アップへの近道です。
- 経審の点数が上がれば等級も上がりますか?
-
経審の総合評定値は等級の基礎になるため、点数が上がれば等級も上がりやすくなります。ただし、等級は経審の点数だけではなく、発注者ごとの加点や工事成績も反映されます。自社が登録している発注者の算定方法を確認し、どの要素が足りていないかを把握することが大切です。
- 国と地方公共団体で等級は共通ですか?
-
共通ではありません。国の機関と地方公共団体では、等級を決める点数の算定方法や基準点数が異なるため、同じ会社でも発注者ごとに等級が変わることがあります。各発注者が公表している基準で、自社の等級を確認する必要があります。
まとめ
競争入札参加資格の等級は、発注者が点数で事業者を格付けし、参加できる工事の規模を決める仕組みです。基礎になるのは経審の総合評定値ですが、発注者ごとに工事成績や地元実績などの加点が加わるため、同じ会社でも発注者によって等級が異なります。
等級は数値で定義されているからこそ、自社の現状を把握して対策を打てます。自社の等級と点数構成を確認し、狙える案件から入札を始めて、中期的に等級アップを目指していきましょう。
- 等級は発注者が点数で事業者を格付けし、参加できる工事の規模を決める仕組み
- 経審の総合評定値が基礎になるが、発注者ごとに加点や算定方法が異なる
- 国と地方公共団体で等級の名称・基準点数が異なり、数値は毎年度見直される
- 自社の等級と点数構成を把握し、決算・技術職員・工事成績などの改善に取り組む
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
あわせて読みたい


















