建退共とは?建設業退職金共済の仕組みと加入・掛金の手続きを解説


建退共(建設業退職金共済制度)は、建設現場で働く労働者のために、事業主が掛金を納めて退職金を積み立てる国の制度です。加入の手続きや掛金の納め方は、共済証紙を貼る方式と電子ポイント方式で異なり、初めて手続きをする事業主には分かりにくく感じられます。
この記事では、建退共の仕組みと対象となる事業主や労働者、加入手続き、掛金の納め方、退職金の請求、公共工事との関わりを順に解説します。内容は執筆時点の情報です。
2024年問題、人手不足、資金繰り…建設業界が直面する課題は山積みです。こうした環境だからこそ、経営の安定化には新たな収入源の確保が重要。この動画では、民間工事とは異なる公共工事という選択肢の実務的なポイントをおさえています。動画で基礎を理解した上で、記事の詳しい解説をご覧ください。
- 建退共は国の退職金制度で、掛金は事業主が負担し、退職金は共済から労働者に直接支払われる
- 建設業許可の有無を問わず、建設業を営む事業主なら加入でき、申込みはオンラインか各都道府県支部への書類提出で行う
- 掛金日額は執筆時点で1日320円で、共済証紙を共済手帳に貼る方式と電子ポイント方式のどちらかで納める
- 経営事項審査では加入と履行が加点評価の対象になり、公共工事の元請には証紙やポイントの交付などの事務が生じる
建退共とは?建設業退職金共済制度の仕組みはどうなっているのか
建退共は、中小企業退職金共済法に基づく国の退職金制度です。事業主が現場で働く労働者の就労日数に応じて掛金を負担し、労働者が建設業を離れるときに退職金が支払われます。運営は、独立行政法人勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部が担っています。
建設業では、現場ごとに勤め先が変わる働き方も少なくありません。建退共は、こうした働き方を前提に、会社単位ではなく業界全体で退職金を積み立てる位置づけの制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠となる法律 | 中小企業退職金共済法 |
| 運営する機関 | 独立行政法人勤労者退職金共済機構 建設業退職金共済事業本部 |
| 掛金を負担する人 | 事業主(労働者の自己負担はなし) |
| 退職金を受け取る人 | 建設業で働く労働者本人または遺族 |
建退共は共済から退職金が直接支払われる国の制度
建退共の大きな特徴は、退職金が事業主を経由せず、共済から労働者本人や遺族に直接支払われる点です。掛金納付が12か月以上に達した労働者が建設業界を離れたときに、請求に基づいて支払われます。
公式サイトによると、2025年11月末現在で約17万事業所、211万人が利用しており、284万人の退職者に2兆1,400億円が支払われています。建退共は会社ごとに退職金を用意する制度ではなく、共済が退職金を支払う制度である点が、理解の出発点です。
建退共に加入できる事業主の範囲
建退共に加入できるのは、建設業を営むすべての事業主です。総合工事業か専門工事業か、元請か下請か、建設業許可があるかどうかは問われません。日本法人か外国法人か、専業か兼業かも条件にならないため、許可を取る前の会社でも建設業を営んでいれば対象に含まれます。
- 総合工事業、専門工事業、職別工事業のいずれも対象
- 元請、下請のどちらの立場でも対象
- 建設業許可の有無は問われない
- 専業、兼業のどちらでも対象
建退共の対象となる労働者の範囲
建退共の対象となる労働者は、建設現場で働く人です。大工、左官、とび、土工、電気工、配管工、塗装工、運転工、現場事務員など、ほぼ全職種が含まれ、国籍や月給制か日給制か、職位も問われません。
一方、事業主本人や役員報酬を受ける人、本社の事務専用の社員は対象外です。すでに建退共の被共済者である人や、中退共などほかの共済の被共済者も対象外となります。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 対象になる人 | 大工、左官、とび、土工、電気工、配管工、塗装工、運転工、現場事務員など |
| 対象外の人 | 事業主、役員報酬を受ける人、本社の事務専用の社員 |
| 対象外の人(ほかの共済) | 建退共、中退共、清退共、林退共の被共済者 |
建退共の加入手続きはどのように進めるのか?
建退共への加入は、事業主が共済契約者になる申込みから始まります。申込みの方法と使う書類は公式サイトで案内されているため、まず様式と提出先を確認します。
建退共の加入申込みはオンラインか支部への書類提出で行う
建退共の申込みの方法は、オンラインの新規共済契約申込サイトを使う方法と、所定の用紙を建退共の各都道府県支部へ提出する方法の2つです。オンラインで申し込むにはメールアドレスが必要になります。
公式サイトではオンライン申込みが案内されています。どちらの方法でも、申込みの前に手元で事業主の情報を整理しておくと、入力や記入がスムーズです。
| 申込みの方法 | 内容 |
|---|---|
| オンライン | 新規共済契約申込サイトから申込み(メールアドレスが必要) |
| 書類の提出 | 所定の用紙を建退共の各都道府県支部へ提出 |
建退共の申込みに使う共済契約申込書などの様式
建退共の申込みに使う書類は、次の3種類です。様式はいずれも建退共の公式サイトで案内されています。
- 共済契約申込書(様式第001号)
- 共済手帳申込書(様式第002号)
- 手帳の申込みをしない理由書(様式第003号、条件付きで必要)
共済手帳は、労働者ごとに就労日数分の証紙を貼る台帳にあたるものです。手帳を申し込まない場合に理由書が必要になるため、自社がどのケースに当たるかは申込み前に公式の案内で確認します。
新規加入の労働者に対する国の掛金補助
新たに建退共へ加入する労働者については、国が初回に交付される共済手帳の50日分の掛金を補助する仕組みがあります。公式案内では、制度の特長の一つとして紹介されています。
補助の対象となる条件や手続きの細部は、申込み時に公式の案内で確認しておくと安心です。
建退共の掛金はいくらで、どのように納めるのか?
建退共の掛金は、労働者が働いた日数に応じて事業主が納めます。掛金の納め方には、共済証紙を共済手帳に貼る証紙貼付方式と、電子ポイント方式の2つがあります。
建退共の掛金日額は1日320円
掛金日額は、執筆時点で1日あたり320円です。掛金日額は改定されることがあるため、実際に納める際は最新の金額を公式サイトで確認します。共済証紙には1日券と10日券があり、中小事業主の労働者向けは赤色、大手事業主の労働者向けは青色です。
| 証紙の種類 | 金額(執筆時点) | 使う対象 |
|---|---|---|
| 1日券 | 320円 | 赤は労働者300人以下または資本金3億円以下の中小事業主の労働者、青は300人超かつ資本金3億円超の事業主の労働者 |
| 10日券 | 3,200円 | 同上 |
共済証紙を共済手帳に貼る証紙貼付方式の流れ
建退共の証紙貼付方式では、金融機関の窓口で共済契約者証の原本を提示して証紙を購入します。購入した証紙を、労働者が働いた日数分だけ共済手帳に貼り、消印する流れです。
- 共済契約者証(または特別共済契約者証)の原本を持って金融機関の窓口へ行き、証紙を購入する
- 賃金を支払うたびに(少なくとも月1回)、労働者が働いた日数分の証紙を共済手帳に貼る
- 貼った証紙に消印する
2冊目以降の手帳は、10日券か1日券のどちらかに統一し、1冊に貼れるのは合計250日分です。証紙は買っただけでは掛金を納めたことにならず、手帳に貼って消印するところまでが事業主の事務です。
電子ポイント方式なら証紙の購入も貼付も不要になる
電子ポイント方式は、証紙の購入や貼付をせずに掛金を納める方式です。共済契約者が退職金ポイントをペイジーまたは口座振替で購入し、月1回、電子申請専用サイトに就労日数を報告します。
報告した就労日数に応じて、購入済みのポイントが掛金に充当される仕組みです。自社の労働者だけでなく、下請の労働者の就労日数も報告の対象になります。
| 比較項目 | 証紙貼付方式 | 電子ポイント方式 |
|---|---|---|
| 掛金の納め方 | 証紙を購入し、手帳に貼って消印 | ポイントを購入し、就労日数を報告して充当 |
| 購入の窓口 | 金融機関の窓口 | ペイジーまたは口座振替 |
| 事務の頻度 | 賃金を支払うたび(少なくとも月1回) | 月1回の就労日数の報告 |
建退共の掛金は事業主が全額負担する
建退共の掛金は、事業主が全額を負担します。労働者が自己負担する仕組みではありません。
労働者にとっては、掛金を払わずに退職金の原資が積み上がる制度ということになります。事業主にとっては、就労日数に応じた掛金が人件費とは別の固定的な負担として生じる点を、あらかじめ見込んでおく必要があります。
建退共の掛金は損金または必要経費として扱われる
建退共の掛金は、法人の場合は損金、個人企業の場合は必要経費として扱われます。根拠は、法人では法人税法施行令第135条第1号、個人では所得税法施行令第64条第2項です。
ただし、退職金ポイントを掛金に充当しない場合や、購入した証紙を共済手帳に貼らない場合、下請に現物で交付しない場合は、損金や必要経費として認められません。購入しただけの証紙やポイントは、前払いの資産として扱われ、使用した時点で掛金となります。個別の処理は、税務の専門家や税務署に確認する事項です。
建退共の退職金はいつ、どのように受け取れるのか?
建退共の退職金は、掛金の納付月数と、建設業で働かなくなったかどうかで受け取れるかが決まります。請求は、退職した労働者本人または遺族が行います。
建退共の退職金を受け取れる支給要件
退職金は、掛金納付日数の合計が12か月以上あり、建設業で働かなくなった時点で受け取れます。納付日数は、21日分を1か月として換算します。
2009年3月31日以前に加入した人は、24か月以上が要件となっています。退職金の具体的な金額は、納付月数などによって決まるため、試算は公式サイトの案内で確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 納付の要件 | 掛金納付日数の合計が12か月以上(21日分を1か月と換算) |
| 受け取れる時期 | 建設業で働かなくなったとき |
| 2009年3月31日以前の加入者 | 24か月以上が要件 |
複数の事業主の下での掛金納付が通算される仕組み
建退共では、複数の事業主の下で納めた掛金の納付が通算されます。転職して別の会社で働くことになっても、建設業を続けている限り、それまでの掛金納付は退職金の計算に引き継がれます。
この通算の仕組みがあるため、共済手帳は労働者が現場や会社を移っても使い続けるものとして扱われます。労働者にとっては、勤め先が変わっても退職金の積み立てが途切れない点が、建退共の大きな利点です。
建退共の退職金を請求する手順の確認
退職金の請求先は、建退共の各支部です。必要になる書類は次のとおりです。
- 退職金請求書
- 退職所得の受給に関する申告書兼退職所得申告書
- 住民票
- 振込先口座の確認書類
支部が書類を受け付けてから支払いまで、1か月ほどかかります。書類に不備があると、さらに遅れることがあります。請求は本人のほか、配偶者などの遺族も行えます。
公共工事では建退共がどのように扱われるのか?
建退共は、公共工事の受注を目指す事業主にとっても無関係ではありません。経営事項審査での評価と、公共工事を元請として受注した場合の事務の2つの場面で関わります。
経営事項審査で建退共への加入が加点評価される
経営事項審査では、建退共に加入し、適正に履行している事業主が加点評価されます。建退共は独立した加点項目のため、ほかの退職金制度に加入していなくても評価の対象になります。
加点の評価には、建設業退職金共済事業加入・履行証明書が必要です。この証明書は加入しているだけでは足りず、共済証紙の購入実績がないなど、適切に履行されていないと認められる場合は発行されません。配点の具体的な数値は制度の改正で変わることがあるため、申請の前に最新の審査基準を確認する必要があります。
証明書が発行される基準は、次の4点です。
- 共済手帳が適正に更新されていること
- 退職給付の拠出額が就労日数に見合っていること
- 証紙貼付方式の場合、工事別の共済証紙受払簿を備え置いていること(工事完成後1年間)
- 下請に証紙やポイントが適正に交付されていること
公共工事の元請が行う建退共の事務
公共工事を元請として受注した場合、元請は下請の労働者の分を含めて、退職金ポイントまたは共済証紙を購入します。購入額は、工事費の総額と工事の種別ごとの標準的な率から算出されます。
公式案内による元請の主な事務は、次のとおりです。提出期限は発注者の運用によって異なる場合があるため、契約時に確認することが欠かせません。
| 場面 | 元請の主な事務 |
|---|---|
| 契約後 | 掛金収納書を発注者へ提出(電子ポイント方式は契約締結から40日以内、証紙貼付方式は契約締結から1か月以内が公式案内の目安) |
| 施工中 | 下請から加入労働者数の報告書を受け、毎月の就労状況から就労日数を把握し、証紙またはポイントを下請に交付する |
| 現場 | 工事現場の見やすい場所に現場標識を掲示する |
| 工事完成後 | 掛金充当実績総括表を作成し、発注者に提示する |
下請は、関係書類を工事完成後1年間保管します。これらは公共工事を受注した場合の取扱いであり、民間工事に同じ義務が生じるわけではありません。
発注者が求める建退共の取扱い
建退共は、発注者である行政機関に対しても、いくつかの取扱いをお願いしています。入札参加資格の審査で加入・履行証明書や経営事項審査の通知書により加入状況を確認すること、掛金収納書の提出を求めること、完成時に掛金充当の総括資料を求めることなどです。
入札公告などで、元請に下請の加入促進や就労実績に応じた納付を指導することも含まれます。これは「お願い」であり、すべての発注者で入札参加の必須条件になっているわけではありません。発注者ごとに扱いが異なるため、入札を検討する発注者の案内で確認します。
建退共への加入と履行は、経営事項審査での評価や元請の事務を通じて、公共工事の受注に向けた準備の一部になります。加入の手続きや証紙の管理を整えておくことは、公共工事に参入する際の土台の一つです。
公共工事は、大手や実績のある会社のものと受け止められることがあります。ただし入札参加の要件は制度として定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。詳しくは下記をご確認ください。
よくある質問
- 建設業許可を持っていなくても建退共に加入できるのか?
-
加入できます。建退共の加入は、建設業を営む事業主であれば建設業許可の有無を問いません。元請か下請か、専業か兼業かも条件になっていません。
- 本社で働く事務員は建退共の対象になるのか?
-
本社の事務専用の社員は対象外です。一方、建設現場で働く現場事務員は対象に含まれます。勤務先が本社か現場かで判断が分かれるため、実際の働き方に照らして確認します。
- 中退共に加入している従業員は建退共の対象になるのか?
-
中退共、清退共、林退共の被共済者は、建退共の被共済者にはなれません。これらの制度との間には掛金の引継ぎ制度が設けられているため、詳しい取扱いは建退共の公式サイトで確認します。
- 購入した共済証紙を貼らずに保管しておくとどうなるのか?
-
購入した証紙を共済手帳に貼らない場合、その掛金は損金や必要経費として認められません。また、共済証紙の購入実績がないなど適切に履行されていないと認められる場合は、経営事項審査の加点に必要な加入・履行証明書が発行されません。
まとめ
建退共は、中小企業退職金共済法に基づく国の退職金制度です。事業主が就労日数に応じて掛金を全額負担し、退職金は共済から労働者本人や遺族に直接支払われます。建設業許可の有無を問わず、建設業を営む事業主であれば加入できます。
掛金日額は執筆時点で320円で、共済証紙を手帳に貼る方式か、電子ポイント方式で納めます。経営事項審査では加入と履行が加点評価の対象となり、公共工事を元請として受注すると証紙やポイントの交付などの事務が生じます。申込み前に、最新の様式と掛金日額を公式サイトで確認することが大切です。
- 建退共は国の退職金制度で、掛金は事業主が全額負担し、退職金は共済から直接支払われる
- 加入申込みは、オンラインか各都道府県支部への書類提出で行い、申込み前に最新の様式を公式サイトで確認する
- 掛金は証紙貼付方式か電子ポイント方式で納め、購入した証紙は貼って消印するところまで行う
- 公共工事の受注を目指す場合は、経営事項審査の加点と元請の事務を見据えて、加入と履行の体制を整える
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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