指名競争入札とは?一般競争入札との違いや選定基準をわかりやすく

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

指名競争入札とは、発注者があらかじめ選んだ相手だけが参加できる入札方式です。一般競争入札とどう違うのか、分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、指名競争入札の法的根拠と一般競争入札との違い、国と地方での扱いの違いを、法令に沿って整理します。

公共工事の入札制度は、国に適用される会計法系と、地方公共団体に適用される地方自治法系に分かれ、根拠条文や金額基準が異なります。まずこの前提を押さえておくと理解しやすくなります。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 指名競争入札は地方自治法・会計法のいずれでも一般競争入札の例外として位置づけられており、政令で定める場合に限って選択できます。
  • 一般競争入札との本質的な違いは、参加者を発注者が限定するかどうかという点にあります。
  • 指名を受けるには、あらかじめ発注者が定めた資格を満たし、有資格者名簿に登録されていることが前提になります。
  • 金額基準や指名の手続きは国(会計法系)と地方(地方自治法系)で条文が異なるため、どちらの話かを区別して理解する必要があります。
目次

指名競争入札とは地方自治法が定める例外の入札方式なのか?

地方自治法第234条第1項は、普通地方公共団体の契約は一般競争入札・指名競争入札・随意契約・せり売りのいずれかの方法で締結すると定めています。同条第2項は、このうち指名競争入札・随意契約・せり売りについて「政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる」としています。

つまり条文の構造上、一般競争入札が原則であり、指名競争入札は政令が定める場合に限って選べる例外という位置づけです。読者が「指名競争入札とは何か」を理解するうえで、まずこの原則と例外の関係を押さえておく必要があります。

指名競争入札によることができる3つの場合(地方自治法施行令第167条)

地方自治法施行令第167条は、指名競争入札によることができる場合を次の3つに限定しています。

  • 工事又は製造の請負、物件の売買その他の契約で、その性質又は目的が一般競争入札に適しないとき
  • その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が、一般競争入札に付する必要がないと認められる程度に少数である契約をするとき
  • 一般競争入札に付することが不利と認められるとき

この3つのいずれかに該当しない限り、発注者は指名競争入札を選択できません。裏を返せば、公共工事の入札は一般競争入札が基本であり、指名競争入札はあくまで条件付きの例外的な選択肢だということです。

指名競争入札と一般競争入札の違いは何か?

指名競争入札と一般競争入札の違いは、単に手続きの細部ではなく、誰が参加できるかという構造そのものにあります。

参加者を発注者が限定するかどうかという違い

一般競争入札は、公告によって不特定多数の事業者から参加者を募る方式です。これに対して指名競争入札は、発注者があらかじめ選んだ相手だけが参加できる方式であり、公告を通じた自由な参加は前提とされていません。

この「参加者を公告で募るか、発注者が指名するか」という違いは、地方自治法系(地方自治法第234条第1項・第2項)だけでなく、会計法系(会計法第29条の3第1項・第3項)でも共通する構造です。国と地方で条文は異なりますが、一般競争が原則で指名競争が例外という関係は共通しています。

読者にとっては、発注者が国か地方公共団体かにかかわらず、まず一般競争入札への参加を前提に考える方が実務上は理解しやすいはずです。

比較項目一般競争入札指名競争入札
参加者の範囲公告により不特定多数が参加可能発注者が指名した者に限定
制度上の位置づけ原則政令で定める場合に限る例外
参加資格の設定必要があるときに定める(任意)あらかじめ定めなければならない(義務)

参加資格を定める義務の有無という違い

地方自治法施行令上、一般競争入札に参加する者の資格は第167条の5に規定されており、これは「必要があるとき」に定めることができる任意規定です(このほか、第167条の4に参加させることができない者の定めがあります)。一方、指名競争入札の参加資格は第167条の11に規定されており、発注者はあらかじめ工事や契約の種類・金額に応じた資格を定めなければならないという義務規定になっています。

この違いからも、指名競争入札は発注者側の事前準備を前提とした方式であることが分かります。一般競争入札であれば公告を確認した事業者が自ら参加を判断できますが、指名競争入札では発注者があらかじめ定めた資格の枠組みに合致していなければ、参加の機会自体が生まれません。

国の契約方式における指名競争入札の位置づけ

国の契約は地方自治法ではなく会計法が適用されます。ここまで説明した地方自治法系とは別の条文体系である点に注意が必要です。国が発注する工事は、都道府県・市区町村の工事とは異なる法令が根拠になるため、地方自治体向けの情報をそのまま国の案件にあてはめると条文の対応関係を誤るおそれがあります。

会計法第29条の3が定める一般競争の原則と指名競争の要件

会計法第29条の3第1項は、契約担当官等が契約を締結する場合、原則として公告して申込みをさせる一般競争に付さなければならないと定めています。同条第3項は、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合、または一般競争に付することが不利と認められる場合に、政令の定めるところにより指名競争に付するものとすると定めています。

地方自治法系と同様に、国の契約でも一般競争が原則であり、指名競争は要件を満たす場合に限られる例外という構造です。

予算決算及び会計令が定める指名競争に付せる金額基準

会計法第29条の3第5項は、予定価格が少額である場合その他政令で定める場合に、指名競争又は随意契約によることができるとしています。これを受けて予算決算及び会計令第94条第1項は、指名競争に付することができる具体的な金額基準を次のとおり列挙しています。

契約の種類指名競争に付せる基準額
工事又は製造の請負予定価格800万円を超えないとき
財産の買入れ予定価格500万円を超えないとき
物件の借入れ予定賃借料の年額又は総額300万円を超えないとき
財産の売払い予定価格200万円を超えないとき
物件の貸付け予定賃貸料の年額又は総額100万円を超えないとき
上記以外の契約予定価格350万円を超えないとき

この金額基準は国(会計法系)の契約に適用されるものであり、建設業法施行令上の金額基準(軽微な建設工事500万円未満など)や、地方自治体の随意契約基準額とは別の基準です。系統の異なる金額基準を混同しないよう注意してください。

指名競争入札はどのように指名されるのか?

指名競争入札は、発注者が任意の相手を自由に選べる方式ではありません。指名を受ける前提として、制度上定められた条件があります。この条件を知らないまま「指名されるのを待つ」だけでは、参加の機会そのものが生まれない点に注意が必要です。

地方自治体では有資格者名簿からの指名が前提になる

地方自治法施行令第167条の12は、普通地方公共団体の長が指名競争入札により契約を締結しようとするときは、入札に参加する資格を有する者のうちから参加させようとする者を指名しなければならないと定めています。

つまり、資格を有していない事業者はそもそも指名の対象になりません。指名を受けるためには、あらかじめ発注者が定めた資格審査を経て、有資格者として登録されていることが前提になります。発注機関とどう関係を築いていくかという実務的な話は本記事の範囲を超えるため、ここでは制度上の前提条件があるという点にとどめます。

国では指名基準に基づきなるべく10人以上指名する運用になっている

予算決算及び会計令第97条は、契約担当官等が指名競争に付するときは、第95条の資格を有する者のうちから、第96条第1項の基準により、競争に参加する者をなるべく10人以上指名しなければならないと定めています。

「なるべく」という表現のとおり努力目標的な規定であり、10人未満の指名を一律に違法とするものではありません。地方自治法施行令には、これに相当する明文の人数基準は確認できず、この点で国と地方の条文の詳細度は異なります。各省各庁の長は指名基準を定めたときに財務大臣へ通知する仕組みになっており、国側の指名手続きは省庁ごとの基準に沿って運用されています。

ここまでの内容を踏まえると、指名を受ける前提となる制度は地方と国で次のように整理できます。

項目地方公共団体国
指名の前提となる資格有資格者名簿への登録(地方自治法施行令第167条の11)各省各庁の長が定める資格(予算決算及び会計令第95条)
指名の根拠となる規定地方自治法施行令第167条の12予算決算及び会計令第97条
指名人数の基準明文の人数規定なしなるべく10人以上

指名だけに頼らず一般競争入札にも参加できる体制を整える

ここまで見てきたとおり、指名競争入札は発注者があらかじめ指名した相手に限られる方式であり、資格審査を経て有資格者名簿に登録されていることが前提になります。指名を受ける機会がまだ少ない事業者にとっては、参加のハードルが高い方式に見えるかもしれません。

一方で、公共工事の契約方式は一般競争入札が原則です。指名を待つだけでなく、公告によって参加者を募る一般競争入札にも目を向けることで、参入の選択肢は広がります。公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがありますが、入札参加の要件は制度として定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

  • 公共工事の契約は一般競争入札が原則である
  • 指名の有無にかかわらず、要件を満たせば一般競争入札に参加できる
  • 参加資格は会社の規模ではなく、制度上定められた要件で判断される

売上規模が小さい会社ほど、公共工事に向いているという見方もあります。

その中には売上が1億円ない会社も在籍しておられます。でもその会社もしっかり入札をされております。ですから、「自分なんて売上が小さいからまだまだ」なんて思わないでください。むしろ売上が小さいから公共工事に入るべきなんですよ。

指名を受けられるかどうかにかかわらず、まずは一般競争入札への参加を含めた体制づくりから検討する余地があります。制度上の要件を確認し、参加できる案件から着手していくことが、公共工事への参入における現実的な進め方です。

よくある質問

随意契約と指名競争入札はどう違うのですか?

いずれも地方自治法第234条第2項が「政令で定める場合に限り」認める例外的な契約方法である点は共通しています。ただし指名競争入札は複数の指名先による競争を前提とする一方、随意契約は競争によらず特定の相手と契約を締結する方法であり、選べる場合の要件も別の条文(地方自治法施行令第167条と第167条の2)で定められています。

指名競争入札を実施するかどうかは誰が決めるのですか?

国の契約では契約担当官等、地方公共団体の契約では普通地方公共団体の長が、政令で定める要件に該当するかを判断したうえで決定します。要件に該当しないと判断されれば、原則どおり一般競争入札によることになります。事業者の側から指名競争入札を指定することはできません。

指名競争入札の対象になりやすい工事にはどのような特徴がありますか?

地方自治法施行令第167条は、性質や目的が一般競争入札に適さない契約、競争に加わるべき者の数が少数である契約、一般競争入札に付することが不利と認められる契約の3つを挙げています。専門性が高く対応できる事業者が限られる工事などが該当しやすいと考えられますが、実際にどの方式が選ばれるかは発注者の判断によります。

まとめ

指名競争入札とは、発注者があらかじめ指名した相手だけが参加できる入札方式であり、地方自治法・会計法のいずれにおいても一般競争入札の例外という位置づけです。指名を受けるには資格審査を経て有資格者として登録されていることが前提になります。

国と地方では根拠条文も金額基準も異なるため、どちらの制度の話かを区別して理解することが大切です。指名を受ける機会がまだ少ない場合も、一般競争入札という原則の入札方式から参加を検討できます。

この記事のまとめ
  • 指名競争入札は地方自治法・会計法のいずれでも一般競争入札の例外であり、政令で定める場合に限って選択できます。
  • 一般競争入札との違いは、参加者を発注者が限定するかどうかという点にあります。
  • 指名を受けるには、資格審査を経て有資格者名簿に登録されていることが前提になります。
  • 指名を待つだけでなく、原則である一般競争入札への参加も含めて体制づくりを検討してみてください。

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

あわせて読みたい

目次