建設業許可をとるには?いつ必要になるのか工事区分の基準で判断


建設業を営むうえで、建設業許可が必要になるかどうかは工事の規模によって決まります。「軽微な建設工事」の範囲に収まる工事だけを請け負う場合は許可が不要ですが、その範囲を超えると許可なしでは契約できません。まずはこの判断基準を正しく理解することが出発点になります。
本記事では、許可が必要になる基準、取得のために満たすべき条件、申請の流れや期間・費用の目安、そして取得後に公共工事参入へどうつなげるかを、執筆時点の制度情報に基づいて整理します。数値基準は改正で変わることがあるため、必ず出典を確認しながら読み進めてください。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 建設業許可が必要になるかどうかの判断基準(軽微な建設工事の範囲)
- 建設業許可の取得に必要な5つの要件の全体像
- 申請の流れ・必要書類・期間や費用の目安
- 取得後、経営事項審査を経て公共工事参入につなげる考え方
建設業許可が必要になるのはどんなときか
建設工事の完成を請け負う営業を行う場合、公共工事・民間工事を問わず建設業法第3条に基づき建設業の許可を受ける必要があります。ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合はこの限りではなく、許可がなくても営業ができます。まず自社の請負金額がこの軽微な工事の範囲に収まるかどうかを確認することが、許可取得を検討する最初のステップです。
軽微な建設工事に該当する金額基準はいくらか
軽微な建設工事に該当するのは、建築一式工事以外は1件の請負代金500万円未満(税込)の工事です。建築一式工事の場合は、1件の請負代金1,500万円未満(税込)、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事のいずれかを満たせば該当します。金額は消費税・地方消費税を含めた額で判断する点に注意が必要です。
建築一式工事だけは「金額基準」と「面積基準」のどちらかを満たせば軽微な工事に該当する構成になっており、他の工事種別には面積基準の適用がありません。この違いを取り違えると、必要な許可の判断そのものを誤ることになります。
| 工事の種別 | 軽微な建設工事に該当する基準 |
|---|---|
| 建築一式工事以外 | 1件の請負代金500万円未満(税込) |
| 建築一式工事 | 1件の請負代金1,500万円未満(税込)、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事のいずれか |
分割契約・材料費の扱いで注意すべき点は何か
軽微な工事に該当するかどうかの請負代金の算定では、2以上の契約に分割して請け負うときは各契約の請負金額の合計額で判断し、注文者が材料を提供する場合はその材料費等を含めた額で判断する必要があるとされています。単価契約の場合も、1件の工事に係る全体の額で判断します。
契約を分けることで金額基準を回避できるわけではない、という考え方は複数の実務解説でも共通して説明されていますが、この算定ルールの詳細は申請先行政庁ごとに確認が必要な部分も残ります。判断に迷う場合は、自己判断で進めず申請先の窓口や手引きで確認することをおすすめします。
許可区分「知事許可」「大臣許可」はどう判断するか
許可の区分は営業所の設置範囲によって決まります。2以上の都道府県に営業所を設けて営業する場合は「大臣許可」、1つの都道府県のみに営業所を設ける場合は「知事許可」です。これは営業所の所在地による区分であり、施工できる工事の区域を制限するものではありません。知事許可であっても、他県での施工そのものは可能です。
建設業許可を取得するために満たすべき条件とは?
建設業許可の許可基準は、(1)経営業務の管理責任者等(常勤役員等)の設置、(2)専任技術者(営業所技術者等)の設置、(3)請負契約に関して誠実性を有すること、(4)財産的基礎・金銭的信用を有すること、(5)欠格要件等に該当しないこと、の5つから構成されています。すべてを同時に満たして初めて許可を受けられる仕組みです。
なお、建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の区分があります。発注者から直接請け負った工事(元請)について一定額以上の下請契約を締結する場合にのみ特定建設業許可が必要になり、この基準額は建設業法施行令第2条により定められています。現行の基準は、建築一式工事以外が5,000万円以上、建築一式工事が8,000万円以上です。下請として工事を施工する場合は、下請金額にかかわらず一般建設業許可で足ります。
経営業務の管理責任者等の要件はどう判断するか
経営業務の管理責任者等の経験年数要件には複数のパターンがあります。
許可を受けようとする建設業に関して5年以上の経営業務管理責任者としての経験がある場合のほか、5年以上の管理責任者に準ずる地位での経営業務管理経験、6年以上の経営業務管理責任者を補佐した経験、2年以上の役員等としての経験に加え5年以上の財務・労務・運営業務の経験(この場合は補佐する者の配置が必要)など、いずれかを満たせば足ります。
令和2年10月の建設業法改正で要件が緩和され、複数の経験パターンが認められるようになりました。「役員として5年以上」という経験でなければ許可が取れない、という理解は正確ではありません。自社の経営体制に当てはめて、どのパターンに該当し得るかを確認することが重要です。
専任技術者の要件はどう満たすか
専任技術者(営業所技術者等)の要件は、一般建設業の場合、指定学科修了で高卒後5年以上または大卒後3年以上の実務経験、実務経験10年以上、国家資格者、のいずれかを満たす者です。特定建設業の場合は、国家資格者、または指定学科修了かつ一定額以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する者等が該当します。
この「指導監督的な実務経験」の対象となる工事の請負代金基準は、建設業法施行令第5条の3により4,500万円と定められています。
この4,500万円は指導監督的実務経験の対象工事の基準であり、前述の特定建設業許可を要する下請代金の基準(施行令第2条・5,000万円/建築一式8,000万円)とは別の条文・別の金額です。記事や資料を読む際は、どの条文・どの基準を指しているのかを必ず確認してください。
財産的基礎の要件はどう判断するか
財産的基礎の要件は、一般建設業と特定建設業で内容が異なります。一般建設業では、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力(預金残高証明書等で判断)、許可申請直前の過去5年間継続して建設業の営業実績があること、のいずれかを満たせば足ります。
| 区分 | 財産的基礎の要件 |
|---|---|
| 一般建設業 | 自己資本500万円以上/500万円以上の資金調達能力/過去5年間継続した営業実績、のいずれか |
| 特定建設業 | 欠損額が資本金の20%以内/流動比率75%以上/資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上、をすべて満たす |
特定建設業では、欠損の額が資本金の20%を超えないこと、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上、という3つの条件をすべて満たす必要があります。一般建設業に比べて財務基盤の要件が明確に厳しくなっている点を押さえておく必要があります。
欠格要件はどう判断するか
欠格要件に該当する主な例として、破産者で復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられ執行終了・執行猶予期間満了から5年を経過しない者、建設業法等の法令違反により罰金刑に処せられ5年を経過しない者、暴力団員等が挙げられます。役員等がこれらに該当しないかどうかは、申請前に必ず確認しておく事項です。
建設業許可取得はどのような流れで進めるか
建設業許可の申請区分には、現在有効な許可を受けていない場合の「新規」、異なる許可行政庁に申請する「許可換え新規」、一般・特定間の切替である「般・特新規」、既存許可への「業種追加」、そして「更新」の区分があります。自社が今どの区分に当てはまるかを最初に整理しておくと、必要書類の準備がしやすくなります。
必要書類にはどのようなものがあるか
主な必要書類(新規申請)には、許可申請書(様式第一号)、役員等一覧表(法人のみ)、営業所一覧表、営業所技術者等一覧表、工事経歴書、直前3年の工事施工金額、使用人数、誓約書、常勤役員等証明書、営業所技術者等証明書、実務経験証明書、財務諸表等の法定様式に加え、登記事項証明書、定款の写し、身分証明書(本籍地の市区町村発行)、登記されていないことの証明書(法務局発行)、納税証明書等の添付書類があります。
- 法定様式(許可申請書・工事経歴書・財務諸表等)
- 登記事項証明書・定款の写しなどの登記関連書類
- 身分証明書・登記されていないことの証明書などの証明書類
- 納税証明書
申請書類の法定様式は国土交通省が全国共通で定めていますが、確認資料・添付書類については都道府県ごとに独自ルールがある場合があります。申請先の都道府県が公開する最新の「建設業許可申請の手引き」で必ず確認したうえで準備を進めることが必要です。
取得までにかかる期間・費用の目安はどれくらいか
許可手数料は、知事許可の新規申請で9万円、大臣許可の新規申請は登録免許税15万円(本店所在地を所管する地方整備局等を管轄する税務署に納付)です。更新や業種追加の場合の手数料については、申請先の都道府県手引き等で改めて確認することをおすすめします。
取得までの期間はどのくらい見ておけばいいか
取得までの期間の目安として、知事許可で申請準備を含め1〜2ヶ月程度、大臣許可で3〜4ヶ月程度とする実務上の目安が複数の解説で紹介されています。これは行政の標準処理期間に書類準備期間を加えた実務上の感覚であり、断定的な期間として保証されているものではない点に留意してください。
| 許可区分 | 新規申請の手数料 | 取得までの期間の目安 |
|---|---|---|
| 知事許可 | 9万円 | 申請準備を含め1〜2ヶ月程度 |
| 大臣許可 | 登録免許税15万円 | 3〜4ヶ月程度 |

許可取得には時間がかかる、と思われがちですが、知事許可であれば自分で手続きを進めて2ヶ月程度で取得できます。大臣許可や書類の状況によって期間は変わりますが、申請自体は自分で進められる手続きです。
自社で手続きを進める場合と行政書士等に依頼する場合とでは、準備にかかる負担や進め方が変わってきます。いずれの場合も、申請先行政庁の標準処理期間そのものは短縮できないため、逆算したスケジュールで早めに準備に着手することが大切です。
建設業許可取得後、公共工事参入にどうつなげるか
建設業許可を取得しただけでは、公共工事を直接請け負うことはできません。国・地方公共団体等が発注する公共工事を直接請け負おうとする建設業許可業者は、経営事項審査(経審)を原則として受ける必要があります。民間工事のみを行う業者には経審は不要です。
対象となる工事は請負代金1件500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)とされています。
- 公共工事を直接請け負おうとする建設業許可業者は経営事項審査(経審)を原則として受ける必要がある
- 民間工事のみを行う業者には経審は不要
- 経審の対象となる工事は請負代金1件500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)
- 経営事項審査は入札参加資格審査の基礎データとなる客観的事項の審査にあたる
経営事項審査(経審)とはどのような審査か
公共工事の発注機関は、競争入札参加希望者について資格審査を行い、欠格要件の有無を確認したうえで、客観的事項(経営事項審査の結果)と発注者別評価(主観的事項)を点数化し、順位付け・格付けを行います。経営事項審査はこの「客観的事項」の審査にあたり、入札参加資格審査の基礎データとなるものです。経営状況分析については、国土交通大臣に登録された分析機関が担当します。
経審から入札参加資格審査までの流れはどうなるか
経営事項審査の有効期間は、審査基準日から1年7ヶ月です。継続して公共工事を受注するには、毎年決算終了後4ヶ月以内を目安に次回申請を行うことが推奨されています。この期限管理を誤ると、経審の有効期間が切れて入札参加資格を失う空白期間が生じかねません。
建設業許可の取得から経審の完了までを一連のスケジュールとして見通しておくと、決算日から逆算した準備がしやすくなります。許可取得はゴールではなく、経審・入札参加資格審査へとつながる一連のプロセスの入口として位置づけて計画を立てることが実務上のポイントです。
ここまで、許可取得の判断基準や条件・流れを整理してきました。許可はあくまで公共工事参入の前提条件であり、実際にどの段階まで進められるかは、経審の点数や入札参加資格審査の結果によって変わってきます。
公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。建設業許可・経審・入札参加資格という一連の制度上の手続きを順にクリアしていくことが、参入への現実的な道筋になります。
よくある質問
- 個人事業主でも建設業許可は取れますか?
-
建設業許可は法人・個人事業主のどちらでも取得できます。経営業務の管理責任者等や専任技術者、財産的基礎などの要件は法人・個人ともに同様に求められるため、事業形態にかかわらず要件を満たしているかどうかを確認することが必要です。
- 建設業許可の有効期間はどれくらいですか?
-
建設業許可の有効期間は5年間です。引き続き建設業を営む場合は、有効期間内に更新の手続きを行う必要があり、更新を行わなければ許可は失効します。更新に必要な書類や時期の案内は申請先行政庁によって異なる場合があるため、最新の手引きで確認することをおすすめします。
- 許可取得の途中で工事区分の判断に迷ったらどうすればいいですか?
-
軽微な建設工事の金額基準や分割契約の扱いなど、判断に迷う点がある場合は、自己判断で進めず申請先行政庁が公開する最新の手引きや窓口で確認することが確実です。制度や基準額は改正で変わることがあるため、執筆時点の情報であることを踏まえて確認してください。
まとめ
建設業許可が必要になるかどうかは、軽微な建設工事(建築一式工事以外は500万円未満、建築一式工事は1,500万円未満または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅)の範囲に収まるかどうかで判断します。この範囲を超える工事を請け負う場合は、経営業務の管理責任者等・専任技術者・財産的基礎など5つの要件をすべて満たしたうえで許可を取得する必要があります。
申請区分や必要書類は都道府県ごとに細部が異なるため、最新の手引きでの確認が欠かせません。許可手数料や取得までの期間は目安として押さえつつ、取得後は経営事項審査、そして入札参加資格審査へと段階を踏んで公共工事参入につなげていく流れになります。
- 許可が必要かどうかは軽微な建設工事(金額・面積基準)に該当するかで判断する
- 取得には経営業務の管理責任者等・専任技術者・財産的基礎など5つの要件をすべて満たす必要がある
- 必要書類・手数料・期間の目安を踏まえ、都道府県の最新の手引きで細部を確認する
- 取得後は経営事項審査・入札参加資格審査を経て公共工事参入につながる
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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