経審のY点(経営状況分析)とは?評価項目と点数アップの秘訣解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

経営事項審査の中で、決算書の内容だけで決まる評点がY点です。工事の実績や技術者の数を変えなくても動く区分でありながら、何を見られているのかを把握している経営者は多くありません。売上を伸ばすことへの意識は高くても、決算の組み立て方が評価されるという発想には至っていないのが実情です。

この記事では、Y点が何を評価する評点なのか、8つの指標がそれぞれ何を見ているのか、そしてどのように算出されるのかを整理します。あわせて、算出を担う登録経営状況分析機関の役割と、点数を動かすうえでの着眼点も確認します。財務の状態がそのまま評価される仕組みを知れば、改善すべき指標が絞り込めます。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • Y点は財務諸表だけで決まる評点であり、算出するのは登録経営状況分析機関であること
  • 4つの観点に分かれた8つの指標が、それぞれ決算書のどこを見ているか
  • 経営状況点数Aから評点Yを求める式と、指標ごとに設けられた上限・下限
  • Y点を動かすときに着目すべき指標と、避けるべき考え方
目次

経審のY点(経営状況分析)とは何を評価する評点か?

Y点は、経営事項審査の5つの評点の中で唯一、審査の窓口が別になっている区分です。まずは位置づけを確認します。

Y点は財務諸表だけで決まる評点

Y点は、決算書に記載された数値だけを用いて算出される評点です。完成工事高や技術職員数のように事業活動の規模を測るのではなく、負債と資本のバランスや利益の出方といった財務の状態を評価します。

工事の受注実績を積み上げなくても、決算の組み立て方によって動く点数だという点がY点の特徴です。総合評定値への配分は0.20で、5区分のうち3番目の大きさになります。

算出するのは登録経営状況分析機関

経営規模等評価は許可行政庁が行いますが、経営状況分析は国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関が行います。申請先が2つに分かれるのはこのためです。

登録経営状況分析機関は、国土交通省が一覧を公表しています。令和7年1月時点では10の機関が登録されており、どの機関に申請するかは建設業者が選べます。

  • 経営状況分析は登録経営状況分析機関に申請する
  • 登録機関は複数あり、どこに申請するかは自社で選べる
  • 分析手数料や結果通知までの日数は機関ごとに異なる
  • どの機関で分析しても、評点の算出方法は同じ基準による

Y点の範囲と結果通知書の位置づけ

Y点の最高点は1,595点、最低点は0点です。算出結果が0を下回る場合は0とみなされるため、マイナスの評点になることはありません。

分析の結果は経営状況分析結果通知書として交付されます。この通知書は、許可行政庁へ総合評定値を請求する際に添付が必要になるため、経営規模等評価の申請より先に取得しておく必要があります。

Y点の8つの評価指標は何を見ているのか?

Y点は8つの指標から算出されます。指標は4つの観点に分類されており、決算書のどこを見ているかがそれぞれ異なります。

4つの観点に分かれた8つの指標

国土交通省の資料では、経営状況の評価項目が負債抵抗力・収益性および効率性・財務健全性・絶対的力量という4つの観点で整理されています。この4つの観点に、次の8つの指標が対応します。

観点指標計算のもとになる数値
負債抵抗力純支払利息比率支払利息から受取利息配当金を控除した額を売上高で除した比率
負債抵抗力負債回転期間流動負債と固定負債の合計を1月当たり売上高で除した期間
収益性・効率性総資本売上総利益率売上総利益を総資本の2期平均で除した比率
収益性・効率性売上高経常利益率経常利益を売上高で除した比率
財務健全性自己資本対固定資産比率自己資本の額を固定資産の額で除した比率
財務健全性自己資本比率自己資本の額を総資本の額で除した比率
絶対的力量営業キャッシュフロー経常利益に減価償却実施額等を加減した額の2期平均
絶対的力量利益剰余金基準決算における利益剰余金合計の額

指標には上限と下限が設けられている

8つの指標には、それぞれ上限値と下限値が定められています。上限を超えた数値は上限とみなされ、下限を下回った数値は下限とみなされる仕組みです。

営業キャッシュフローと利益剰余金は、金額を1億円で除した数値として扱われます。8つの指標の上限と下限は次のとおりです。

指標上限下限
純支払利息比率5.1%▲0.3%
負債回転期間18.0か月0.9か月
総資本売上総利益率63.6%6.5%
売上高経常利益率5.1%▲8.5%
自己資本対固定資産比率350.0%▲76.5%
自己資本比率68.5%▲68.6%
営業キャッシュフロー15.0▲10.0
利益剰余金100.0▲3.0

上限があるということは、1つの指標を極端に良くしても点数の伸びは頭打ちになるということです。複数の指標をバランスよく改善するほうが結果につながります。

下限にも注目してください。売上高経常利益率はマイナス8.5%より悪化しても、それ以上は下がらない扱いになります。1期の大きな赤字が無制限に響き続けるわけではありません。

Y点はどのように算出されるのか?

8つの指標は、いったん経営状況点数Aという1つの数値にまとめられます。その仕組みを確認します。

経営状況点数Aから評点Yを求める式

8つの指標にそれぞれ係数を掛けて合計し、定数を加えたものが経営状況点数Aです。このAを次の式に当てはめると評点Yが求められます。

経営状況の評点Y=167.3×A+583

Aが0のときYは583点になります。ここを基準として、財務の状態が良ければ上に、悪ければ下に振れると考えると全体像がつかみやすくなります。

指標ごとの重みは同じではない

経営状況点数Aを求める際、8つの指標には異なる係数が掛けられます。係数の絶対値が大きい指標ほど、Aへの影響が大きくなります。

指標係数点数を上げる方向
純支払利息比率-0.4650低いほど有利
負債回転期間-0.0508短いほど有利
総資本売上総利益率0.0264高いほど有利
売上高経常利益率0.0277高いほど有利
自己資本対固定資産比率0.0011高いほど有利
自己資本比率0.0089高いほど有利
営業キャッシュフロー0.0818大きいほど有利
利益剰余金0.0172大きいほど有利

純支払利息比率は係数の絶対値が最も大きく、しかも比率の変動幅が小さい指標です。借入の状況が評点に与える影響が大きいことが、この係数から読み取れます。

貸借対照表は社長1人で作るものですからね。社長の方にはしっかり見ていただきたいと思います。売上や利益は従業員にも共有するケースがあると思いますが、バランスシートを共有することはほとんどありませんので、社長がしっかり見なければいけません。

Y点の8つの指標のうち、6つは貸借対照表の数値が関わります。損益計算書だけを見ていると、点数が動く理由が見えないままになりがちです。

Y点を上げるにはどこから手を付ければよいのか?

係数と上限・下限の構造が分かると、着手すべき順序も見えてきます。ここでは具体的な着眼点を整理します。

  • 借入に伴う支払利息の重さを確認する
  • 負債の総額が売上の何か月分にあたるかを把握する
  • 利益を社内に残し、自己資本と利益剰余金を積み上げる
  • 売掛債権や未成工事支出金を抱え込まない資金繰りを意識する

借入と支払利息の状況を確認する

純支払利息比率は、支払利息から受取利息配当金を控除した額を売上高で割った比率です。借入残高そのものではなく、支払っている利息の重さを見ている点が特徴といえます。

負債回転期間は、流動負債と固定負債の合計が1月当たり売上高の何か月分にあたるかを示します。借入の圧縮と売上の確保の両面から改善できる指標です。

自己資本と利益剰余金の積み上げを意識する

自己資本比率と自己資本対固定資産比率は、財務健全性の観点から自己資本の厚みを評価します。利益を社内に残す方針が、そのまま指標の改善につながります。

利益剰余金と営業キャッシュフローは、比率ではなく金額そのものを見る指標です。会社の規模がそのまま反映されるため、小規模なうちは伸ばしにくい一方、着実に積み上がる区分でもあります。

売掛金と仕入債務の動きも点数に関わる

営業キャッシュフローは、経常利益に減価償却実施額を加え、法人税等を控除したうえで、引当金・売掛債権・仕入債務・棚卸資産・受入金の増減を加減して算出されます。利益が出ていても、売掛債権が大きく増えればこの指標は下がります。

回収の早い工事を選ぶ、未成工事支出金を抱え込まないといった資金繰りの改善が、そのまま指標の改善につながる構造です。Y点は損益だけでなく、資金の回り方を見ている評点でもあります。

実態と異なる決算での対応は避ける

Y点は決算書の数値で決まるため、数値を良く見せる方向の操作が思い浮かびやすい区分です。しかし、実態と異なる決算書を作成することは適法ではなく、経営事項審査だけでなく融資や取引の場面でも重大なリスクになります。

取り組むべきは、支払利息の見直しや利益の社内留保といった、実際の財務内容を改善する施策です。決算の締め方や勘定科目の整理については、顧問税理士と相談しながら進めるのが確実といえます。

Y点への理解を公共工事参入にどうつなげるか

ここまで見てきたとおり、Y点は財務諸表だけで決まる評点であり、8つの指標と係数によって算出方法が公開されています。決算内容を把握していれば、点数を事前に見通すことができる区分です。

ただし、Y点が低いことが公共工事に参加できない理由になるわけではありません。入札への参加は経営事項審査を受けて資格審査に進むことで可能になり、点数はその後の受注規模に関わってきます。

  • Y点は決算書の数値だけで決まるため、事前に見通しを立てやすい
  • Y点の高低は入札への参加可否を分けるものではない
  • 点数は、どの規模の工事を狙えるかという受注計画に関わってくる
  • 財務の改善は経営事項審査以外の場面でも自社の評価につながる

Y点が高いか低いかに関係なく、入札もできますし落札もできます。Y点は関係ありません。ただ、Y点が例えば500点台であれば、1年で10億円を元請けとして落札するのは厳しいかもしれません。でも4〜5億円であればいけるのではないか、というくらいのレベルです。

公共工事は財務体質の強い会社だけのもの、と受け止められることがあります。ただ、経営事項審査の評価基準は制度として公開されており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず同じ基準で評価される仕組みです。

よくある質問

登録経営状況分析機関はどのように選べばよいですか?

評点の算出方法はどの機関でも同じ基準によるため、結果の点数が機関によって変わることはありません。選ぶ際は、分析手数料、結果通知までの日数、電子申請への対応状況、申請書作成ソフトの提供有無といった手続き面を比較することになります。

経営状況分析だけを受けることはできますか?

経営状況分析のみを申請することは可能です。ただし公共工事の入札参加を目的とする場合は、分析結果を添えて許可行政庁へ経営規模等評価の申請と総合評定値の請求を行う必要があります。分析結果だけでは入札参加資格審査に進めません。

赤字決算になるとY点はどのくらい下がりますか?

下がり幅は決算の内容によって変わるため一律には示せません。赤字は売上高経常利益率と総資本売上総利益率に影響し、利益剰余金や自己資本比率にも波及します。8つの指標が連動して動くため、1つの数値だけで判断せず結果通知書で区分ごとに確認してください。

建設業以外の売上もY点の計算に入りますか?

純支払利息比率や売上高経常利益率の計算で用いる売上高は、完成工事高と兼業事業売上高の合計とされています。建設業以外の事業を営んでいる場合、その売上も計算に含まれるため、兼業事業の収益状況もY点に影響します。

まとめ

Y点は、経営事項審査の中で財務諸表だけを用いて算出される評点です。算出を行うのは国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関であり、許可行政庁が行う経営規模等評価とは申請先が分かれます。

評価に用いられるのは、負債抵抗力・収益性および効率性・財務健全性・絶対的力量という4つの観点に対応する8つの指標です。指標にはそれぞれ上限と下限が設けられ、係数を掛けて合計した経営状況点数Aから、Y=167.3×A+583の式で評点が求められます。

係数の絶対値が最も大きいのは純支払利息比率で、借入に伴う利息の重さが評点に影響します。実態と異なる決算での対応は避け、財務内容そのものを改善する取り組みを積み上げていくことが結果につながります。

この記事のまとめ
  • Y点は財務諸表だけで決まる評点で、最高1,595点・最低0点の範囲に収まる
  • 算出は登録経営状況分析機関が行い、令和7年1月時点で10機関が登録されている
  • 8つの指標には上限と下限があり、1つを極端に良くしても伸びは頭打ちになる
  • 借入と支払利息の見直し、自己資本と利益剰余金の積み上げから着手する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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