職長教育とは?対象者・カリキュラムと受講方法を解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

職長教育は、現場で作業員を直接指導や監督する立場に新たに就く人へ、事業者が行うことを労働安全衛生法が求めている安全衛生教育です。建設業は対象業種に含まれ、法定の時間は12時間以上とされています。

この記事では、職長教育の法的根拠、対象者、カリキュラムと時間、受講方法と修了証、安全衛生責任者教育との違いまでを、2026年9月執筆時点の公的情報をもとに整理します。あわせて、公共工事の現場運営との関わりにも触れます。

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この記事で分かること
  • 職長教育は労働安全衛生法第60条に基づき、建設業の事業者が新たに職長等につく人へ行う義務のある教育である
  • 対象者は肩書きではなく、作業中の労働者を直接指導や監督する職務で判断され、作業主任者は除かれる
  • 法定の時間は12時間以上で、建設業では安全衛生責任者教育を併せた14時間の講習が実施団体の案内に見られる
  • 修了証は実施団体の全課程を修了した受講者に交付され、再教育は別の位置づけで推進されている
目次

職長教育とは?労働安全衛生法上の位置づけ

職長教育は、労働災害を防ぐために、現場で作業員をまとめる立場の人へ行う法定の安全衛生教育です。根拠は労働安全衛生法第60条で、対象となる業種は施行令で定められています。

労働安全衛生法第60条が事業者に求める教育の内容

職長教育の実施義務を負うのは、職長本人ではなく事業者です。第60条は、政令で定める業種の事業者に対し、新たに職務につくことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者(作業主任者を除く)へ、安全または衛生のための教育を行うよう定めています。

教育すべき事項は、条文で次の3つが挙げられています。

  • 作業方法の決定および労働者の配置に関すること
  • 労働者に対する指導または監督の方法に関すること
  • 上記のほか、労働災害を防止するため必要な事項で厚生労働省令で定めるもの

建設業が職長教育の対象業種に含まれている根拠

第60条でいう政令で定める業種は、労働安全衛生法施行令第19条に列挙されています。建設業は第1号に挙げられており、建設業の事業場であれば業種全体が対象です。

  • 建設業
  • 製造業(たばこ製造業、繊維工業の一部などを除く)
  • 電気業
  • ガス業
  • 自動車整備業
  • 機械修理業

職長教育の目的は現場の労働災害の防止

職長等は、現場で作業員に直接指示を出し、作業の進み具合や安全を見る立場です。そのため教育では、作業方法の決定、労働者の配置、指導や監督の方法、危険性または有害性等の調査、異常時の措置といった内容を扱います。

条文の第3号にも「労働災害を防止するため必要な事項」とあるとおり、目的は現場の労働災害の防止です。資格の取得そのものを目的にした制度ではない点が、技能講習などとの違いです。

職長教育の対象者は誰なのか?

対象者は、肩書きではなく職務の内容で判断されます。あわせて、新たに職務につく人が対象であり、その後の再教育とは位置づけが異なる点も押さえておく必要があります。

作業中の労働者への指導監督という職務の範囲

条文上の対象は、新たに職務につくことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者です。職長という肩書きがなくても、作業中の労働者を直接指導や監督する職務であれば該当し得ます。実施団体は、班長、工長、作業長、世話役などの名称を問わない旨を解説しています。

区分職長教育の対象になるか根拠
職長対象になる労働安全衛生法第60条
班長、工長、作業長、世話役など職務の内容により対象になる条文と実施団体の解説
作業主任者対象から除かれる労働安全衛生法第60条

作業主任者は、条文上、職長教育の対象から除かれています。作業主任者は別の制度に基づく資格であり、職長教育とは枠組みが異なります。

工事の発注者が公共か民間かによる区分はない

職長教育の対象となる業種は、事業場の業種で定められています。条文を読む限り、工事の発注者が公共か民間かによる区分は設けられていません。

そのため、民間工事中心の会社が公共工事に取り組む場合でも、職長等を新たに置くときの教育義務の考え方は変わりません。

新たに職務につく人が対象で再教育は別の位置づけ

第60条の義務は、新たに職務につくことになった人への教育です。これとは別に、厚生労働省は建設業の職長等と安全衛生責任者に対し、職務についた後おおむね5年ごと、および機械設備等に大幅な変更があったときに、能力向上教育に準じた教育を行うよう推進しています(平成29年2月20日付の通達)。

区分対象となる場面時間の目安
職長教育新たに職長等の職務につくとき12時間以上
職長等能力向上教育職務についた後おおむね5年ごと、または機械設備等の大幅な変更時合計310分
職長・安全衛生責任者能力向上教育同上合計340分

再教育は「推進する」とされているもので、第60条が定める義務そのものとは区別されます。

職長教育は何時間?法定のカリキュラムを確認

職長教育の科目と時間は、労働安全衛生規則第40条で定められています。建設業では、安全衛生責任者教育を併せた講習も実施団体によって案内されています。

労働安全衛生規則第40条が定める12時間以上の教育事項

教育事項は5つに分かれ、合計で12時間以上行うこととされています。時間は最低限の数値として示されており、科目名は条文の表記に合わせています(執筆時点)。

教育事項主な科目時間
作業方法の決定および労働者の配置作業手順の定め方、労働者の適正な配置の方法2時間
労働者に対する指導または監督の方法指導および教育の方法、作業中における監督および指示の方法2.5時間
危険性または有害性等の調査等調査の方法、調査結果に基づき講ずる措置、設備や作業等の具体的な改善の方法4時間
異常時等における措置異常時における措置、災害発生時における措置1.5時間
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動設備および作業場所の保守管理の方法、労働災害防止についての関心の保持や創意工夫を引き出す方法2時間

5つの時間を合計すると12時間になります。

建設業で実施される14時間の職長・安全衛生責任者教育

建設業では、職長教育に安全衛生責任者教育を併せた「職長・安全衛生責任者教育」が、実施団体の案内に見られます。科目は上の12時間に、安全衛生責任者の職務等と統括安全衛生管理の進め方を加えた構成です。

区分時間
職長教育の科目(労働安全衛生規則第40条)12時間
安全衛生責任者の職務等1時間
統括安全衛生管理の進め方1時間
合計14時間

14時間という区分は実施団体や東京労働局の案内による記載です。受講を検討する際は、実施団体ごとの最新の科目構成を確認します。

教育事項の省略が認められる場合

労働安全衛生規則第40条第3項は、教育事項の全部または一部について十分な知識と技能があると認められる人には、その事項の教育を省略できると定めています。

省略できるのは、十分な知識と技能があると認められる事項に限られます。全科目が一律に不要になるという意味ではないため、省略を検討する場合は実施団体や所轄の労働基準監督署に運用を確認しておくと安心です。

職長教育の受講方法はどうなっているのか?

職長教育は、技能講習のように修了が資格要件となる制度ではなく、事業者が自ら、または外部団体に委託して実施する教育という位置づけです。受講の流れは、実施団体の案内で確認できます。

事業者が自ら実施するか実施団体に委託する

東京労働局のページでは、企業が行うべき教育の充実のため、安全関係団体等が企業に代わって実施するものと説明されています。複数の団体が講習を開いており、実施団体に受講を申し込む形が一般的です。

自社で実施する場合も、労働安全衛生規則第40条の科目と時間を満たす必要があります。自社実施の講師の要件などは本記事では確認できていないため、所轄の労働基準監督署などの公的窓口で確認してください。

受講料は実施団体ごとに異なる

確認できた実施団体の例では、14時間の職長・安全衛生責任者教育の受講料は21,010円(教材費・消費税込)でした。受講料は実施団体や時期によって異なるため、申し込みの前に最新の案内を確認します。

複数名を受講させる場合は、人数分の費用と日程の調整が必要になります。現場の工程に影響が出にくい日程を選ぶには、早めに実施団体の開催予定を確認することが有効です。

費用負担の扱いは事業者が社内で整理する

職長教育は、事業者に実施義務がある教育です。受講にかかる費用や時間をどう扱うかは、社内で整理しておくほうがよい論点です。

費用の負担や受講時間の賃金の扱いについては、本記事では一次情報を確認できていません。社内規程に定める場合は、社会保険労務士など専門家や労働基準監督署の窓口で取り扱いを確認することをおすすめします。

修了証は全課程を修了した受講者に交付される

実施団体の案内では、2日間の全課程を修了した受講者に修了証が交付されます。1日のみの受講では交付されないとされており、日程の調整が必要です。

  • 全課程を修了した受講者に修了証が交付される
  • 1日のみの受講では修了証は交付されない
  • 有効期限の定めはないと実施団体は案内している
  • 再教育(能力向上教育)では別の修了証が交付される

修了証の様式や交付が法令上の義務かどうかは、本記事では確認できていません。実施団体ごとの案内を前提に、交付の有無と再発行の扱いを受講前に確認しておくと安心です。

職長・安全衛生責任者教育との違いは?

職長と安全衛生責任者は、根拠となる条文も義務の主体も異なります。建設業では両方の教育が併せて行われることが多いため、混同しやすい部分です。

項目職長教育安全衛生責任者
根拠労働安全衛生法第60条労働安全衛生法第16条
内容新たに職長等につく人への教育請負人が選任し、連絡調整などを行わせる職務
時間の目安12時間以上職長教育と併せた14時間の講習が案内されている

安全衛生責任者は労働安全衛生法第16条で選任される

安全衛生責任者は、教育の名称ではなく、選任される職務の名称です。第16条は、統括安全衛生責任者を選任すべき特定元方事業者以外の請負人で、その仕事を自ら行うものに、安全衛生責任者を選任させています。

選任した請負人は、遅滞なく特定元方事業者へその旨を通報します。労働安全衛生規則第19条には、安全衛生責任者の職務として次のような事項が定められています。

  • 統括安全衛生責任者との連絡
  • 連絡を受けた事項の関係者への連絡
  • 連絡を受けた事項の実施についての管理
  • 他の請負人の安全衛生責任者との連絡および調整

職長による安全衛生責任者の兼務は実務上の運用

建設業では、職長が安全衛生責任者を兼ねる運用が多く見られるため、両教育を併せた講習が案内されています。ただし、安全衛生責任者は職長と同じ意味ではなく、選任は請負人の義務として条文に定められたものです。

職長として教育を受けたことと、安全衛生責任者として選任されることは、制度上は別々の事柄です。自社の現場で誰がどちらを担うかは、工事ごとの体制に合わせて整理する必要があります。

職長教育への対応は公共工事の現場運営にどうつながるのか?

職長教育は、工事の発注者が公共か民間かにかかわらず、建設業の事業者に課される教育です。公共工事に取り組む会社にとっても、現場を任せる人を育て、安全衛生管理の体制を整えることは、現場運営の土台になります。

  • 職長教育の対象は、事業場の業種で定められている
  • 職長等の教育内容は、作業方法、配置、指導監督、異常時の措置など現場運営の基本にあたる
  • 公共工事でも、現場の安全衛生管理は発注者を問わず求められる

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

公共工事への参入に向けた全体像は、下記で詳しく確認できます。

よくある質問

職長教育を受けていないと、現場の職長になれないのか?

第60条は事業者に教育を行う義務を課す規定で、個人に資格の取得を求める形にはなっていません。ただし、個別の現場でどのような確認が行われるかは元請などの運用によるため、契約先の安全書類の指定を確認しておくとよいでしょう。

職長教育を実施しない場合の罰則はあるのか?

本記事では、罰則の有無について断定しません。第60条は事業者に実施を求める義務規定であり、罰則の有無にかかわらず実施が必要です。未実施の場合の取り扱いは、所轄の労働基準監督署などの公的窓口で確認してください。

職長教育の修了証に有効期限はあるのか?

実施団体は、修了証に有効期限の定めはないと案内しています。一方、職務についた後おおむね5年ごとの能力向上教育に準じた教育は、通達で推進されています。

職長教育は実技や試験のある講習なのか?

東京労働局のページでは、職長教育は学科による教育として案内されています。ただし、修了の確認方法や演習の有無は実施団体ごとに異なる可能性があるため、申し込み前に講習案内で確認してください。

まとめ

職長教育は、労働安全衛生法第60条に基づき、建設業を含む対象業種の事業者が、新たに職長等につく人へ行う安全衛生教育です。対象者は肩書きではなく職務で判断され、作業主任者は除かれます。

法定の時間は労働安全衛生規則第40条で12時間以上とされ、建設業では安全衛生責任者教育を併せた14時間の講習も案内されています。受講は実施団体に依頼する形が一般的で、修了証は全課程を修了した受講者に交付されます。

職長として現場を任せる人を育てることは、公共工事に取り組むうえでも現場運営の土台になります。本記事の内容は2026年9月執筆時点の情報のため、受講前には実施団体や公的窓口で最新の内容を確認してください。

この記事のまとめ
  • 職長教育は労働安全衛生法第60条に基づく事業者の義務で、建設業は対象業種に含まれる
  • 対象者は職務で判断され、時間は労働安全衛生規則第40条で12時間以上と定められている
  • 受講は実施団体に依頼するのが一般的で、費用や日程は申し込み前に最新の案内で確認する
  • 職長と安全衛生責任者は別の制度のため、自社の現場でどちらを誰が担うかを整理しておく

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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