経営業務管理責任者とは?要件や求められる役割・兼務ルールを解説


建設業許可の取得を検討する際、「経営業務管理責任者」という言葉の意味や必要性、誰が担えるのかが分かりにくいと感じる経営者の方もいるのではないでしょうか。この用語は建設業法第7条が定める許可基準の一つに関わり、制度の全体像を押さえることが申請準備の土台になります。
この記事では、経営業務管理責任者とは何かという位置づけから、必要とされる理由、担う役割、他の役職との兼務ルールまでを整理し、確保後に公共工事参入へどうつなげるかという流れにも触れます。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 経営業務管理責任者は、建設業許可の4つの基準のうち「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を担保するための基準である
- この基準は、施工の適正確保と発注者保護という許可制度の目的を支えるために設けられている
- 経営業務管理責任者は財務管理・労務管理・業務運営という経営の根幹に関わる職務を担う
- 専任技術者との兼務は、勤務場所が同一の営業所である場合に限って認められる
経営業務管理責任者とは、建設業許可でどのような位置づけの基準ですか?
建設業許可の基準は、建設業法第7条によって4つに整理されています。経営業務の管理を適正に行うに足りる能力、財産的基礎又は金銭的信用、営業所ごとの専任技術者、誠実性の4つであり、経営業務管理責任者はこのうち最初の基準を満たすための存在です。建設業許可を取得しようとする以上、この4つの基準すべてに対応する必要があります。
建設業法第7条第1号は、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であることを求めています。この省令、つまり建設業法施行規則第7条第1号が定める基準を満たす者を、実務上「経営業務管理責任者」と呼んでいます。
- 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力
- 財産的基礎又は金銭的信用
- 営業所ごとの専任技術者
- 誠実性
執筆時点の情報として、この呼称は法律上の正式名称ではなく、実務上の通称である点も押さえておくとよいでしょう。
経営業務管理責任者は建設業許可に必要な4つの基準の一つである
経営業務管理責任者の基準は、専任技術者や財産的基礎の基準と並ぶ、建設業許可取得のための必須条件の一つです。どれか一つでも欠けていれば許可を受けることはできないため、経営業務管理責任者の要件は他の基準と同様に、避けて通れない準備項目として位置づけられます。
建設業許可を検討する段階では、専任技術者の確保や財産的基礎の証明に意識が向きやすい一方、経営業務管理責任者の要件も同じ重みを持つ基準であることを見落とさないようにする必要があります。
「常勤役員等」「役員」は建設業許可事務ガイドラインで定義されている
建設業許可事務ガイドライン上、「常勤役員等」とは、法人の場合はその役員のうち常勤であるもの、個人の場合はその者又はその支配人をいうと定められています。「役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者を指します。
執行役員などであっても、取締役会決議によって具体的な権限委譲を受けた者は「これらに準ずる者」に含まれ得るとされていますが、この点は組織図や業務分掌規程などによる個別の確認が必要になる部分でもあります。自社の役員体制がこの定義に照らしてどう整理されるかを確認しておくことが、要件充足の判断の出発点になります。
令和2年10月の改正で条文上の要件表現が変わった
令和2年10月1日施行の建設業法改正により、条文上の要件表現は「役員のうち常勤であるものの一人が経営業務の管理責任者としての経験を5年以上有すること」という個人要件から、「国土交通省令で定める基準に適合する体制を有すること」という体制要件に改められました。
この改正によって、許可の可否を判断する視点が、個人の経験年数から会社としての経営体制の有無へと広がったことになります。
具体的にどのような経験年数のルートが用意されているか、体制要件の細かな使い分けについては別の記事で詳しく解説していますので、本記事では制度全体の枠組みを理解する範囲にとどめます。
なぜ経営業務管理責任者が必要とされるのですか?
建設業許可に条件を付す目的は、建設工事の適正な施工の確保及び発注者の保護を図ることにあるとされています。経営能力・財産的基礎・技術力・誠実性という4つの許可基準は、いずれもこの目的を担保するために設けられている基準です。
経営業務管理責任者の要件は、経営破綻や経営判断の未熟さによる工事の中断、下請への支払い遅延などのリスクを防ぎ、発注者が安心して工事を発注できる体制を確認するための仕組みと整理できます。公共工事のように発注者が行政機関である場合、この発注者保護という観点は一層重視される部分だといえます。
- 建設工事の適正な施工の確保と発注者の保護という許可制度の目的を担保する
- 経営破綻や経営判断の未熟さによる工事の中断を防ぐ
- 下請への支払い遅延といったリスクを防ぐ
- 発注者が行政機関である公共工事では発注者保護の観点が一層重視される
工事の途中中断につながるリスクを防ぐ趣旨で設けられている
建設工事は着工から完成まで一定の期間を要し、その間に発注者は施工中の会社の経営状態に依存することになります。経営業務管理責任者の要件は、経営の管理を適正に行える体制があることを事前に確認することで、工事途中での経営破綻や資金繰りの悪化による工事中断といった事態を防ごうとする趣旨に基づいています。
この趣旨を踏まえると、経営業務管理責任者の要件は単なる書類上の手続きではなく、建設業者としての信頼性を裏付ける基準の一つだと理解できます。
令和2年改正により個人要件から体制要件へ転換した
令和2年10月1日施行の建設業法改正では、建設業者の持続可能性の観点から経営能力に関する基準が見直され、経営者一人の経験年数だけでなく、経営を適正に行う体制が整っていれば基準に適合するものとして許可を認めることとされました。
この見直しの詳しい経緯や、体制要件を満たすための具体的なパターンについては別の記事で扱いますが、本記事では「経営を適正に行う体制」という考え方が広がったという要点を押さえておけば十分です。
要件を欠くと許可取消事由に該当する
経営業務管理責任者の要件を満たさなくなった場合、一般建設業者は建設業法第7条第1号・第2号、特定建設業者は同法第7条第1号・第15条第2号の基準を満たさないものとして、許可の取消事由(同法第29条第1項第1号)に該当します。経営業務管理責任者は、許可取得時だけでなく許可を維持し続けるうえでも欠かせない継続的な要件だという点に注意が必要です。
経営業務管理責任者の退任や死亡などによって要件を欠くこととなった場合は、速やかに後任を選任し、変更届出を行う必要があります。この継続性を意識しておくことが、許可を安定的に維持するための前提になります。
経営業務管理責任者はどのような役割を担いますか?
建設業許可事務ガイドラインでは、経営業務の管理責任者としての経験を有する者を、業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等の建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者と定義しています。
単なる現場作業や事務補助ではなく、対外的に責任を有する立場での経営全般の管理経験であることが求められる点が特徴です。この定義を踏まえると、経営業務管理責任者には現場の技術的な知識よりも、会社経営を総合的に管理してきた経験が求められていると理解できます。
経営業務管理責任者が担う3つの職務分野
令和2年10月改正以降の枠組みでは、常勤役員等を直接に補佐する者を置く体制も認められており、その場合の業務内容は財務管理・労務管理・業務運営の3分野に整理されています。財務管理は資金の調達や施工中の資金繰り管理、下請業者への代金支払いなどを指し、労務管理は勤怠管理や社会保険関係の手続きなどを指します。業務運営は経営方針・運営方針の策定と実施を意味します。
| 分野 | 業務内容 |
|---|---|
| 財務管理 | 資金の調達、施工中の資金繰り管理、下請業者への代金支払いなど |
| 労務管理 | 勤怠管理、社会保険関係の手続きなど |
| 業務運営 | 経営方針・運営方針の策定と実施 |
この3分野の整理は、経営業務管理責任者が実際に担う職務内容の具体像としても参考になります。資金繰り・労務・経営方針決定という、会社経営の根幹に関わる業務全体を統括する立場であることが読み取れます。
「常勤」であることの考え方
「役員のうち常勤であるもの」とは、原則として本社・本店等において休日等を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中その職務に従事している者をいい、テレワークを行う場合も含まれます。他の法令で専任を要する者(建築士事務所の管理建築士、宅地建物取引士など)と重複する場合、専任を要する営業体・場所が同一でない限り「常勤」に該当しない点には注意が必要です。
常勤性の確認には、健康保険・厚生年金の標準報酬決定通知書の写しや、住民税特別徴収税額通知書の写しなどの資料提出が求められます。経営業務管理責任者を選任する際には、こうした資料で常勤性を客観的に示せる状態にあるかどうかも確認しておく必要があります。
経営業務管理責任者は他の役職と兼務できますか?
経営業務管理責任者を確保する段階で、社内の限られた人員をどう配置するかという課題に直面する会社は少なくありません。ここで論点になるのが、経営業務管理責任者と専任技術者を同じ人が兼ねられるのか、複数の営業所を兼務できるのかという兼務ルールです。
建設業許可事務ガイドラインでは、この兼務について一定の条件を示しています。順に見ていきます。
専任技術者との兼務は同一営業所内に限り認められる
規則第7条第1号イ・ロ・ハのいずれかに該当する常勤役員等が、同時に営業所技術者等(専任技術者)の要件を備えている場合には、同一営業所内に限って当該営業所技術者等を兼ねることができるとされています。兼務が認められるのは勤務場所が同一の営業所である場合に限られ、経営業務管理責任者が本社に常勤し、別の支店の専任技術者を兼ねることは認められません。
専任技術者は営業所ごとに専任で配置される必要があり、「専任」とは営業所に常勤して専らその職務に従事することを意味します。他の営業所において専任を要する者や、他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者などは、原則として「専任」とはいえないものとして取り扱われます。
経営業務管理責任者と専任技術者では設置単位が異なる
専任技術者が営業所ごとに設置が必要な基準であるのに対し、経営業務管理責任者は法人単位・原則1名(個人の場合はその者又は支配人のうち1人)の要件です。複数の営業所を持つ場合でも、経営業務管理責任者を営業所ごとに置く必要はありません。
- 専任技術者との兼務は同一営業所内に限って認められる
- 本社に常勤する経営業務管理責任者が別の支店の専任技術者を兼ねることは認められない
- 経営業務管理責任者は法人単位で原則1名の要件である
- 専任技術者は営業所ごとに専任で配置する必要がある
この設置単位の違いは、建設業許可の申請書類の構成からも裏付けられます。役員等の一覧表は申請者単位で1つ作成される一方、営業所技術者等一覧表は営業所ごとに作成される構成になっており、経営業務管理責任者と専任技術者が異なる単位で管理される基準であることが分かります。
「営業所」は建設業法第3条に基づき実態を伴う事務所を指す
「営業所」とは、建設業法第3条に規定する本店・支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいいます。本店・支店が常時請負契約を締結する事務所でなくても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行うなど、建設業に係る営業に実質的に関与する場合は営業所に該当するとされています。
兼務ルールを正しく理解するためには、この「営業所」が単なる登記上の本店ではなく、実態を伴う事務所を指すという前提を押さえておく必要があります。自社の本店・支店がこの定義に照らしてどう位置づけられるかを確認したうえで、兼務の可否を検討することになります。
経営業務管理責任者を確保した後、公共工事参入にどうつなげますか?
公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、経営事項審査(経審)を必ず受ける必要があります。経審の申請には、その前提として建設業許可を取得していることが必要であり、経営業務管理責任者の要件充足は許可取得の必須条件です。
つまり、経営業務管理責任者の確保は、建設業許可の取得、そして経審、入札参加資格審査、公共工事入札へと続く一連の手続きの入口に位置づけられます。
経営規模等評価・総合評定値請求(経審)は、経営状況分析とは別に、許可行政庁に対して行うものです。総合評定値等により発注者ごとにランク区分がなされ、参加できる工事の規模・種類が決まります。経営業務管理責任者を確保できていなければ、そもそもこの一連の手続きの起点に立てないことになります。
- 経営業務管理責任者の要件を満たして建設業許可を取得する
- 許可行政庁に対して経営規模等評価・総合評定値請求(経審)を行う
- 総合評定値等により発注者ごとのランク区分がなされる
- 入札参加資格審査を経て公共工事の入札に参加する
経営業務管理責任者の確保は入口であり、継続要件でもある
経営業務管理責任者の要件は許可取得後も継続的な要件であり、退任などにより要件を欠いた場合は速やかに後任の選任・変更届出が必要になります。要件を満たさなくなれば許可取消事由に該当するため、公共工事参入後も、経営業務管理責任者の後継者確保や体制維持が、許可・経審の継続、ひいては公共工事の継続受注に直結する部分だといえます。
制度としては、経営業務管理責任者を確保できる体制が整っていれば、会社の規模にかかわらず建設業許可の取得を進められる仕組みになっています。まずはこの入口となる要件を正確に理解し、自社の体制と照らし合わせて準備を進めることが、公共工事参入に向けた最初の一歩になります。
経営業務管理責任者の整備は、公共工事参入のどの段階に位置づけられますか?
経営業務管理責任者の確保は、これまで見てきた建設業許可の基準の一つであり、その先には経営事項審査、入札参加資格審査、そして実際の公共工事入札という一連の流れが続きます。自社の体制がこの基準に照らしてどう整理されるかを確認する作業は、公共工事参入を検討するうえでの実務的な取り組みの一つに位置づけられます。
- 経営業務管理責任者の確保は建設業許可の基準の一つである
- その先には経営事項審査、入札参加資格審査、公共工事入札という流れが続く
- 自社の体制をこの基準に照らして整理する作業が参入検討の実務的な出発点になる
公共工事というと、実績豊富な大手企業でなければ参入できないというイメージを持たれる方も少なくありません。しかし、経営業務管理責任者をはじめとする建設業許可の基準は制度として明文化されており、これを満たす体制を整えられるかどうかが参入の可否を左右します。
経営業務管理責任者という論点を正確に理解しておくことは、そうした制度上の要件を一つずつ確認していく作業の入り口として位置づけられます。
よくある質問
- 経営業務管理責任者は必ず代表取締役でなければなりませんか?
-
代表取締役である必要はありません。常勤役員等とは、法人の場合はその役員のうち常勤であるものを指し、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者が対象になります。具体的な該当性は個別の状況によって判断が分かれるため、許可行政庁への確認をおすすめします。
- 個人事業主でも経営業務管理責任者の要件を満たせますか?
-
満たせます。個人の場合は事業主本人またはその支配人が対象となり、法人の役員と同様に、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力の基準を満たしているかどうかで判断されます。支配人として選任する場合は登記等の手続きが必要になるため、詳細は許可行政庁への確認をおすすめします。
- 経営業務管理責任者が退任した場合、すぐに許可が取り消されますか?
-
退任などによって要件を欠いた場合は、速やかに後任を選任し変更届出を行う必要があります。要件を満たさない状態が続けば許可取消事由に該当するため、後任の選任と届出をできるだけ早く進めることが求められます。
- 登記上の本店を移転していなくても、実質的に営業を行っている支店は「営業所」に該当しますか?
-
該当する可能性があります。「営業所」の判断基準は建設業法第3条に基づき、本店・支店としての登記の有無だけでなく、実際にその拠点が請負契約の締結や指導監督など建設業の営業に実質的に関わっているかどうかで判断されます。単に登記されているだけで実態を伴わない事務所は、営業所として扱われません。
まとめ
経営業務管理責任者とは、建設業許可の4つの基準のうち「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を担保するための存在であり、建設業法第7条第1号・建設業法施行規則第7条第1号に基準が定められています。
この基準は、施工の適正確保と発注者保護という許可制度の目的を支えるために設けられており、財務管理・労務管理・業務運営という経営の根幹に関わる職務を担う立場として位置づけられています。
専任技術者との兼務は、勤務場所が同一の営業所である場合に限って認められる一方、経営業務管理責任者そのものは法人単位・原則1名の要件であり、専任技術者のように営業所ごとに設置する必要はありません。
経営業務管理責任者の確保は建設業許可取得の入口であると同時に、許可取得後も継続して維持すべき要件であり、公共工事参入・受注を目指すうえでの最初の準備段階に位置づけられます。
- 経営業務管理責任者は、建設業許可の4基準のうち「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を担保する存在である
- この基準は施工の適正確保と発注者保護という許可制度の目的を支えるために設けられている
- 職務内容は財務管理・労務管理・業務運営の3分野に整理され、会社経営の根幹に関わる業務を担う
- 専任技術者との兼務は同一営業所内に限られ、設置単位も経営業務管理責任者(法人単位)と専任技術者(営業所ごと)で異なる
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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