特定建設業許可の専任技術者要件とは?必要な資格と実務経験解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

特定建設業許可を取得しようとする際、専任技術者の要件が一般建設業と何が違うのか、どのような資格や経験があれば要件を満たせるのか、整理しきれていない経営者の方もいるのではないでしょうか。専任技術者要件は建設業法に定められており、満たすルートが限定されているため、思わぬところでつまずくケースも見られます。

なお、「専任技術者」は令和6年12月13日施行の改正建設業法で「営業所技術者等」(一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者)に名称が変わりました。この記事では、広く使われている「専任技術者」の呼称で説明します。

この記事では、特定建設業許可における専任技術者要件の全体像から、1級相当の国家資格によるルート、指導監督的実務経験によるルート、指定建設業7業種の特例、そして実務上つまずきやすい注意点までを解説します。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 特定建設業許可の専任技術者は、建設業法第15条第2号が定める国家資格・指導監督的実務経験・大臣特別認定のいずれかに該当する者でなければならない
  • 大臣特別認定のルートは現在実施されていないため、実務上は国家資格または指導監督的実務経験の2択になる
  • 指定建設業7業種では指導監督的実務経験のルートが使えず、実質的に国家資格者であることが要件充足の中心になる
  • 専任技術者要件に関わる金額基準は複数存在し、それぞれ条文も対象も異なるため混同しないよう注意が必要
目次

特定建設業許可の専任技術者要件とは?全体像を整理する

特定建設業許可を受けるための基準の一つに、営業所ごとに専任の技術者を置くことが定められています。建設業法第15条第2号では、この専任技術者について、イ・ロ・ハという3つの区分のいずれかに該当する者でなければならないと規定されています。執筆時点の情報として、この3区分の内容を押さえておくことが、特定建設業許可の専任技術者要件を理解する出発点になります。

イは国土交通大臣が定める1級の技術検定その他の法令の規定による試験に合格した者、ロは一般建設業レベルの技術者要件を満たす者のうち発注者から直接請け負った一定金額以上の工事で指導監督的な実務経験を有する者、ハは大臣特別認定者を指します。この3つのルートのいずれかに該当していなければ、特定建設業許可の専任技術者としては認められない仕組みです。

区分該当する者
イ国土交通大臣が定める1級の技術検定その他の法令の規定による試験に合格した者
ロ一般建設業レベルの技術者要件を満たす者のうち、発注者から直接請け負った一定金額以上の工事で指導監督的な実務経験を有する者
ハ大臣特別認定者

建設業法第15条第2号が定める3つの要件区分

建設業法第15条第2号のイ・ロ・ハは、それぞれ異なる方法で技術力を担保する区分です。イは国家資格による証明、ロは実務経験による証明、ハは大臣による個別の認定という位置づけになります。国土交通省の解説ページでも、特定建設業の専任技術者要件として、国家資格者・指導監督的実務経験を有する者・大臣特別認定者という同様の整理がされています。

一般建設業の専任技術者要件(建設業法第7条第2号)と比べると、特定建設業の専任技術者要件はより厳格な水準が求められる点が特徴です。一般建設業では指定学科修了と実務経験の組み合わせや、10年以上の実務経験でも要件を満たせますが、特定建設業ではこうしたルートは用意されていません。

一般建設業の専任技術者要件との違い

一般建設業の専任技術者は、指定学科を修了したうえでの一定年数の実務経験、許可を受けようとする建設業に関する10年以上の実務経験、国家資格者のいずれかに該当すれば要件を満たせます。これに対し特定建設業では、こうした学歴・実務経験の組み合わせによるルートが認められていません。

特定建設業許可は、発注者から直接請け負った工事について一定金額以上の下請契約を結ぶことを可能にする許可であるため、技術力の担保についても一般建設業より高い水準が求められる制度設計になっていると整理できます。この違いを理解しておくことは、自社がどちらの許可を目指すべきかを判断するうえでの前提になります。

大臣特別認定(ハ)は現在実施されていない点に注意

建設業法第15条第2号ハに定める大臣特別認定者のルートは、法令上は存在するものの、国土交通省の解説ページ上で「現在は実施していない」と明記されています。つまり実務上、特定建設業許可の専任技術者要件を満たす方法は、イの国家資格者かロの指導監督的実務経験を有する者のいずれかに事実上限られています。

制度を調べる際に、ハのルートが存在すること自体は誤りではありませんが、実際にこのルートで認定を受けられる状況にはない点を踏まえておく必要があります。次の章からは、実務上選択肢となるイと口の2つのルートについて、それぞれ具体的に見ていきます。

1級相当の国家資格で専任技術者要件を満たすには?(イのルート)

建設業法第15条第2号イは、許可を受けようとする建設業の種類に応じて、国土交通大臣が定める1級の技術検定その他の法令の規定による試験に合格した者を専任技術者要件の充足者として定めています。国土交通省の解説ページにおいても、特定建設業の専任技術者要件の一つとして「国家資格者」であることが挙げられています。

このルートは、指導監督的実務経験の有無にかかわらず、資格を保有していることそのものが要件充足の根拠になる点が特徴です。次の指導監督的実務経験のルートのように、対象工事の請負金額や経験年数の証明を積み上げる必要がない分、資格取得の見通しが立てば計画を組みやすいルートだといえます。

  • 許可を受けようとする建設業の種類に応じた1級の技術検定その他の試験に合格していることが要件になる
  • 指導監督的実務経験の有無にかかわらず資格の保有そのものが要件充足の根拠になる
  • 業種ごとに該当する資格が異なるため、許可行政庁の窓口や国土交通省の公表資料で個別に確認する
  • 複数業種で許可を取得する場合は業種ごとに要件を満たす人材を確保する必要がある

国家資格による要件充足の基本的な考え方

1級相当の国家資格には、業種に応じて1級の施工管理技士や技術士など複数の資格が想定されます。どの業種でどの資格が該当するかは、国土交通省が公表する建設業許可事務ガイドラインなど個別の資料で定められており、業種ごとに対応する資格が異なる点に注意が必要です。

執筆時点でこの記事では、業種別の具体的な資格名の網羅的な一覧までは扱いません。自社が取得を検討している業種でどの資格が該当するかは、許可行政庁の窓口や国土交通省の公表資料で個別に確認することが望ましいといえます。

業種ごとに必要な資格は個別に確認する

特定建設業許可は業種ごとに取得するものであり、専任技術者要件を満たす国家資格も業種によって異なります。複数業種で特定建設業許可を取得したい場合、業種ごとに専任技術者要件を満たす人材を確保する必要がある点も踏まえておく必要があります。

資格の保有者が社内にいない場合は、資格取得の計画を立てるか、有資格者の採用を検討することになります。いずれの場合も、業種ごとの該当資格を事前に正確に把握しておくことが、計画の精度を左右します。

指導監督的実務経験で専任技術者要件を満たすには?(ロのルート)

建設業法第15条第2号ロは、建設業法第7条第2号イ・ロ・ハのいずれかに該当する者、つまり一般建設業レベルの技術者要件を満たす者のうち、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに関し、2年以上指導監督的な実務の経験を有する者を専任技術者要件の充足者として定めています。

このロのルートは、国家資格を持たない場合でも、一定の条件を満たす実務経験があれば専任技術者要件を満たせるという点で、企業にとって現実的な選択肢の一つになります。ただし、対象となる工事の条件が細かく定められているため、経験の内容が要件に合致するかどうかの確認が欠かせません。

対象となるのは請負代金4,500万円以上の元請工事

指導監督的実務経験として認められる対象工事は、発注者から直接請け負った建設工事のうち、請負代金の額が建設業法施行令第5条の3に定める金額以上のものに限られます。この金額は執筆時点で4,500万円と定められており、令和7年2月1日の施行令改正の対象にはなっておらず、据え置かれています。

下請として請け負った工事や、発注者から直接ではなく間接的に関わった工事は、この指導監督的実務経験の対象にはなりません。発注者から直接請け負った元請工事であることが前提条件になる点を押さえておく必要があります。

2年以上の指導監督的実務経験とは何か

指導監督的実務経験とは、対象となる工事において、単に作業に従事していた経験ではなく、工事の技術面を指導・監督する立場での実務経験を指します。この経験を通算2年以上有していることが要件になります。

実務経験の内容が指導監督的なものと認められるかどうかは、証明書類の記載内容によって判断される部分が大きいため、経験を積む段階から、どのような立場で工事に関わったのかを記録しておくことが後の申請をスムーズにする一助になります。

混同しやすい他の金額基準との違い

専任技術者要件を調べる過程では、建設業に関わる複数の金額基準に出会うことになりますが、これらは条文も趣旨も異なる別の制度であるため、明確に区別して理解しておく必要があります。

金額基準根拠条文対象・趣旨
4,500万円以上建設業法施行令第5条の3指導監督的実務経験の対象となる工事の請負代金基準
5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)建設業法施行令第2条特定建設業許可そのものが必要になる下請代金の総額基準
4,500万円以上(建築一式は9,000万円以上)建設業法施行令第27条主任技術者・監理技術者の専任配置が必要になる請負代金基準

指導監督的実務経験の対象工事基準(4,500万円)と、監理技術者等の専任配置基準(4,500万円・建築一式9,000万円)は、数字としては近い、あるいは一部一致していますが、根拠条文も適用される場面もまったく異なる別の基準です。記事や資料を読む際は、どの基準についての金額なのかを条文単位で確認する習慣をつけておくと、思わぬ読み違いを防げます。

指定建設業7業種における専任技術者要件の特例とは?

建設業法施行令が定める指定建設業7業種については、特定建設業許可の専任技術者要件のうち、指導監督的実務経験によるロのルートが使えないという特例が設けられています。この業種に該当する場合、要件充足のルートが実質的に絞られる点を理解しておく必要があります。

指定建設業に該当するかどうかは、自社が特定建設業許可を取得しようとする業種によって決まるため、該当業種であれば早い段階でこの特例を踏まえた計画を立てておくことが望ましいといえます。

指定建設業7業種の対象工種

指定建設業として定められているのは、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種です。これらの業種で特定建設業許可を取得しようとする場合、専任技術者要件の充足ルートが他の業種とは異なります。

  • 土木工事業
  • 建築工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • 鋼構造物工事業
  • 舗装工事業
  • 造園工事業

この7業種は、国土交通省の解説ページでも「国家資格または大臣特別認定要件が必須」とされている業種として整理されています。自社が取得を目指す業種がこの7業種に含まれるかどうかを、まず確認しておく必要があります。

指定建設業では実質的に国家資格者ルートのみになる

指定建設業7業種においては、専任技術者として置くべき者は建設業法第15条第2号のイまたはハに該当する者に限定され、ロの指導監督的実務経験によるルートは使えません。前述の通りハの大臣特別認定は現在実施されていないため、指定建設業7業種における専任技術者要件を満たす実質的な方法は、イの国家資格を保有することがほぼ唯一の道になります。

指定建設業に該当する業種で特定建設業許可を目指す場合、指導監督的実務経験を積んでいたとしても、それだけでは要件を満たせない点に注意が必要です。該当する国家資格の保有者を社内で確保するか、資格取得を計画的に進めることが、この特例に対応する現実的な方策になります。

専任技術者要件を満たす上での実務上の注意点

ここまで見てきた3つのルートの整理を踏まえると、特定建設業許可の専任技術者要件は、法令上は3通り存在するものの、実務上はイの国家資格者かロの指導監督的実務経験者のいずれかに絞られ、指定建設業7業種ではさらにイに限定される、という構造になっています。この構造を理解しておくことが、要件充足の見通しを立てるうえでの前提になります。

あわせて、専任技術者は営業所ごとに専任で配置される必要があるため、他の営業所や工事現場に配置されている技術者との兼務には制限があります。専任性の確認や実務経験の証明書類の準備には一定の時間がかかることも想定し、早い段階から準備を進めておくことが望ましいといえます。

  • 法令上は3ルートあるが、実務上はイの国家資格者かロの指導監督的実務経験者のいずれかに絞られる
  • 指定建設業7業種ではさらにイの国家資格者ルートに限定される
  • 専任技術者は営業所ごとに専任で配置する必要があり、他の営業所や工事現場との兼務には制限がある
  • 専任性の確認や実務経験の証明書類の準備には時間がかかるため早い段階から着手する

3つの金額基準を条文単位で区別して理解する

前述の通り、特定建設業許可に関連する金額基準には、指導監督的実務経験の対象工事基準(施行令第5条の3・4,500万円)、特定建設業許可そのものが必要になる下請代金基準(施行令第2条・5,000万円、建築一式8,000万円)、監理技術者等の専任配置基準(施行令第27条・4,500万円、建築一式9,000万円)の3種類があります。

専任技術者要件を検討する場面で必要になるのは、このうち施行令第5条の3の基準です。他の2つの基準と混同したまま社内の計画を進めてしまうと、必要な実務経験の内容を誤って把握してしまう可能性があるため、どの場面でどの基準を参照しているのかを都度確認する姿勢が求められます。

専任技術者要件の理解は、公共工事参入のどの段階に位置づけられるか?

特定建設業許可の専任技術者要件は、国家資格または指導監督的実務経験によって満たすべき技術力の水準を定めたものであり、この要件を満たす人材を確保できるかどうかは、特定建設業許可を取得できるかどうかを左右する要素の一つです。

この要件を正しく理解し、自社の状況と照らし合わせて準備を進めることは、公共工事参入に向けた許可取得の準備段階における重要な作業の一つに位置づけられます。

  • 専任技術者要件は国家資格または指導監督的実務経験によって満たすべき技術力の水準を定めたものである
  • 要件を満たす人材を確保できるかどうかが特定建設業許可を取得できるかどうかを左右する
  • 要件の理解と自社の状況の照合は、公共工事参入に向けた許可取得の準備段階に位置づけられる

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加や特定建設業許可の取得に関わる要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず進めていける仕組みです。専任技術者要件という一つの論点を正確に把握しておくことも、そうした制度上の要件を一つずつ満たしていく作業の積み重ねの一部だといえます。

よくある質問

特定建設業許可の専任技術者は一般建設業の専任技術者と兼任できますか?

専任技術者は営業所ごとに専任で配置される必要があるため、他の営業所や工事現場に配置されている技術者との兼務には制限があります。具体的な兼務の可否は個別の状況によって判断が分かれるため、許可行政庁への確認をおすすめします。

大臣特別認定者のルートは今後利用できるようになりますか?

大臣特別認定者のルートは、執筆時点で国土交通省の解説ページ上に「現在は実施していない」と明記されています。今後の運用変更については一次資料での明記が確認できていないため、最新の情報は国土交通省の公表資料で確認することをおすすめします。

指導監督的実務経験の対象工事に、下請として関わった工事は含まれますか?

含まれません。指導監督的実務経験の対象となるのは、発注者から直接請け負った元請工事のうち、請負代金の額が建設業法施行令第5条の3に定める金額以上のものに限られます。下請として関わった工事は対象外です。

複数業種で特定建設業許可を取得する場合、専任技術者は業種ごとに必要ですか?

特定建設業許可は業種ごとに取得するものであり、専任技術者要件を満たす人材も業種ごとに確保する必要があります。複数業種での取得を検討する場合は、業種ごとの該当資格や実務経験の内容を個別に確認しておく必要があります。

まとめ

特定建設業許可の専任技術者要件は、建設業法第15条第2号が定める国家資格者・指導監督的実務経験を有する者・大臣特別認定者の3区分のいずれかに該当することが求められます。大臣特別認定者のルートは現在実施されていないため、実務上は国家資格者か指導監督的実務経験者のいずれかで要件を満たすことになります。

指定建設業7業種に該当する場合は指導監督的実務経験のルートが使えず、実質的に国家資格者であることが要件充足の中心になります。

あわせて、専任技術者要件に関連する複数の金額基準は条文も対象も異なるため、指導監督的実務経験の基準(施行令第5条の3)、特定建設業許可そのものの下請代金基準(施行令第2条)、監理技術者等の専任配置基準(施行令第27条)を混同しないよう区別して理解しておくことが大切です。

この記事のまとめ
  • 専任技術者要件は建設業法第15条第2号のイ(国家資格者)・ロ(指導監督的実務経験)・ハ(大臣特別認定者)のいずれかで満たす
  • ハの大臣特別認定は現在実施されていないため、実務上はイかロの2択になる
  • 指定建設業7業種ではロが使えず、実質的にイの国家資格者ルートに限られる
  • 指導監督的実務経験の基準(4,500万円・施行令第5条の3)は、特定建設業許可の下請代金基準(施行令第2条)や監理技術者等の専任配置基準(施行令第27条)とは別の制度である

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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