経営業務管理責任者の要件とは?必要な経営経験年数をわかりやすく

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

建設業許可を取得するには、経営業務管理責任者の要件を満たす必要があります。令和2年10月の建設業法改正により、この要件は「常勤役員等」という表現に改められ、経験年数の数え方にも複数のルートが用意されるようになりました。自社の役員がどのルートに該当するのか、判断に迷う経営者も少なくありません。

本記事では、経営業務管理責任者の要件を満たす複数のルートについて、それぞれ何年の経験が求められるかを整理します。年数の組み合わせを誤解すると許可申請の準備に影響するため、ルートごとの違いを確認していきます。

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この記事で分かること
  • 経営業務管理責任者の要件における令和2年改正の変更点
  • 常勤役員として単独で満たせる経験年数のルート
  • 補佐者体制を組み合わせて満たすルートの年数要件
  • 自社がどのルートに該当するか確認する際の注意点
目次

経営業務管理責任者の要件を満たすには何通りのルートがあるのか?

経営業務管理責任者の要件は、令和2年10月1日施行の建設業法改正によって条文の構造が変わりました。改正前は建設業法第7条第1号に「常勤役員のうち一人が建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること」といった具体的な年数要件が直接書き込まれていました。

改正後の条文は、国土交通省令で定める基準に適合する者であることという委任規定に改められています。具体的な年数要件は、この委任を受けた建設業法施行規則側で定められる形になりました。

この改正の趣旨は、経営能力の判断基準を「特定の個人が長年の経験を積んでいること」だけに限定せず、複数人の体制によって同様の経営能力を担保できる場合にも許可を認める方向へ見直した点にあります。これにより呼び方も「経営業務の管理責任者」から「常勤役員等」に変わり、要件を満たすルートが複数用意される形になりました。

令和2年の建設業法改正で経営業務管理責任者の規定はどう変わったのか

改正前は条文に年数要件が直接規定されていたため、条文を読めばそのまま要件が分かる状態でした。改正後は条文が委任規定になったことで、実際の年数要件を確認するには施行規則側を参照する必要があります。この変更自体は条文構造の見直しであり、要件そのものをただちに緩和・厳格化するものではありません。

ただし、委任先の施行規則では、個人の経験年数に加えて、複数人の体制で要件を満たす道も新設されました。後継者不足など、建設業者の持続可能性に配慮した見直しとされています。

常勤役員等の要件を満たす体制は何パターン用意されているのか

建設業法施行規則で定める基準では、常勤役員のうち1人が単独で一定の経験年数要件を満たす体制が3パターン、常勤役員1人の経験に加えて財務管理・労務管理・業務運営の経験者による補佐体制を組み合わせる体制が2パターン、合わせて5つの体制が示されています。次の章から、それぞれのルートで何年の経験が求められるのかを順に見ていきます。

  • 常勤役員のうち1人が単独で一定の経験年数要件を満たす体制が3パターン
  • 常勤役員1人の経験に財務管理・労務管理・業務運営の経験者による補佐体制を組み合わせる体制が2パターン
  • 合わせて5つの体制が建設業法施行規則で定める基準に示されている

なお、この5パターンの全体像や兼務ルールの詳細は制度全体を扱う別記事で解説しており、本記事では経験年数の数え方に絞って確認します。

常勤役員等として5年以上の経営経験があれば要件を満たせるのか?

5年以上の経営業務管理責任者としての経験とはどのような経験を指すのか

最も基本的なルートは、常勤役員のうち1人が「建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者」であることです。これは改正前から存在する要件で、取締役等として建設業に関する経営業務を管理した経験を5年以上有していることを求めるものです。

ここでいう経営業務の管理責任者としての経験とは、単に役職に就いていた期間ではなく、実際に建設業の経営業務を管理していた実態を指します。取締役として登記されていても、実質的に経営に関与していなければ、この経験としては認められない可能性があります。

  • 常勤役員のうち1人が建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有すること
  • 取締役等として建設業に関する経営業務を管理した経験であること
  • 単に役職に就いていた期間ではなく、実際に経営業務を管理していた実態が求められること

業種ごとの経験区分は撤廃されているのか

このルートの条件は「建設業に関し」の経験であることで、業種ごとの区別は問われません。改正前は業種別に経験を区分して扱う考え方もありましたが、改正後は建設業全体の経験として統一されています。複数の業種を扱ってきた会社であれば、業種をまたいだ経営経験を合算して考えやすくなったといえます。

とはいえ、経験の実態が審査される点は変わらないため、どの期間・どの立場での経験を根拠にするかは、次章以降のルートとあわせて整理しておく必要があります。

経営業務の管理責任者に準ずる地位での経験で要件を満たせるのか?

準ずる地位で5年以上の経験を積んだ場合はどうか

常勤役員のうち1人が「建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者としての5年以上経営業務を管理した経験を有する者」であることも、単独で満たせるルートの一つです。ここでいう「準ずる地位」とは、経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限られます。

つまり、役職名が「取締役」でなくても、経営の意思決定権限を実質的に委任されていた実態があれば、このルートに該当する可能性があります。執行役員などの立場が想定されますが、権限委任の実態そのものが審査対象になる点には注意が必要です。

準ずる地位で6年以上補助業務に従事した経験でも要件を満たせるのか

もう一つの単独ルートとして、常勤役員のうち1人が「建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者としての6年以上経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者」であることが認められています。こちらは経営の意思決定権限の委任までは求められず、管理責任者を補助する業務に従事していた経験で足りる代わりに、必要年数が6年以上に延びる形です。

5年ルートと6年ルートは、年数の違いだけでなく「経営の意思決定権限を委任されていたかどうか」で区別される別のルートです。権限委任のあった5年の経験なのか、補助業務としての6年の経験なのかによって、どちらのルートで申請するかが変わるため、経験の実態を確認しておく必要があります。

ルート必要年数経験の性質
準ずる地位にある者としての経営業務の管理5年以上経営業務を執行する権限の委任を受けていること
準ずる地位にある者としての補助業務6年以上経営業務の管理責任者を補助する業務に従事していたこと

役員等の経験に補佐体制を組み合わせて要件を満たすルートとは?

常勤役員側に求められる2つの年数パターンとはどのようなものか

常勤役員1人に加えて補佐体制を敷くルートでは、常勤役員側の年数要件として2つのパターンが用意されています。1つ目は、建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ財務管理・労務管理・業務運営のいずれかを担当する役員等またはこれに次ぐ職制上の地位に5年以上あった者という組み合わせです。

2つ目は、業種を問わず5年以上役員等としての経験を有し、かつ建設業に関し2年以上役員等としての経験を有する者という組み合わせです。

いずれのパターンも「建設業2年以上」と「役員等5年以上(うち一定の職務・分野の要件を含む)」の組み合わせであり、単独ルートの「5年以上」「6年以上」とは年数の考え方そのものが異なります。数値だけを切り取って比較すると混同しやすいため、どちらのルートを検討しているのかを明確にしたうえで年数を数える必要があります。

補佐者として財務・労務・業務運営の経験者を置く体制とはどのような体制か

このルートでは、常勤役員本人の年数要件に加えて、常勤役員を直接補佐する者として、財務管理の経験者・労務管理の経験者・業務運営の経験者を置く必要があります。それぞれの分野で、建設業者等における5年以上の経験を有することが求められます。

  • 財務管理の経験者:建設業者等における5年以上の財務管理の経験を有する者
  • 労務管理の経験者:建設業者等における5年以上の労務管理の経験を有する者
  • 業務運営の経験者:建設業者等における5年以上の業務運営の経験を有する者

1人が複数分野の経験を兼ねることも認められているため、必ずしも3人体制を組む必要はありません。ただし、常勤役員側の年数と補佐者側の年数は別の人物・別の要件であるため、誰の経験が何年分必要なのかを記事内でも意識して整理することが大切です。

自社がどのルートに該当するか確認する際に注意すべき点は?

「準ずる地位」に該当するかどうかはどのように判断されるのか

国土交通省の建設業許可要件の説明ページでは、常勤役員等の要件として単独3ルート・補佐者体制2ルートの合計5パターンが整理されていますが、「経営業務の管理責任者に準ずる地位」に該当するかどうかの具体的な線引きは、そのページ上に明確な定義として示されているわけではありません。

該当するかどうかは、役職名だけでなく個別の職務内容や権限委任の実態に基づいて判断される事項とされています。実務上は、許可行政庁への確認・相談を前提に考えておく必要があります。

経験年数の証明はどのような資料で審査されるのか

経験年数の証明は、建設業許可の申請・更新や経営事項審査の場面で、登記簿謄本・確定申告書・工事請負契約書・社会保険の加入状況といった資料に基づき、許可行政庁が個別に審査する運用となっています。どの経験がどのルートの何年分に該当するのかは、これらの資料を通じて確認される事項です。

具体的な必要書類の一覧や記載方法は許可行政庁ごとの案内に従う個別性の高い事項のため、本記事では「証明資料に基づき個別審査される」という事実の確認にとどめます。

常勤役員等が不在になった場合にどのようなリスクがあるのか

常勤役員等が退職などにより不在となり、後任が要件を満たさないまま空白期間が生じると、建設業許可の取消し事由になり得るとされています。そのため、後任候補となる役員・幹部が5年ルート・6年ルート・補佐者体制のどれに該当し得るのかを、平時から整理しておくことが望ましいといえます。

  • 「準ずる地位」への該当性は役職名だけでなく個別の職務内容や権限委任の実態にもとづいて判断される
  • 経験年数は登記簿謄本・確定申告書・工事請負契約書・社会保険の加入状況といった資料により個別に審査される
  • 必要書類の一覧や記載方法は許可行政庁ごとの案内に従う個別性の高い事項である
  • 常勤役員等が不在となり後任が要件を満たさない空白期間が生じると建設業許可の取消し事由になり得る

自社の役員構成をルートごとに棚卸ししておけば、代替わりのタイミングでも許可維持の見通しを立てやすくなります。

経営業務管理責任者の要件確認は公共工事参入のどの段階に位置づけられるのか?

経営業務管理責任者(常勤役員等)の要件を満たすことは、建設業許可を取得するための土台にあたります。建設業許可は、経営事項審査を経て公共工事の入札参加資格を得るための出発点であり、どのルートで要件を満たすかを早い段階で確認しておくことは、その後の許可取得・経審・入札参加までの段取りにも関わってきます。

自社の役員構成が5年ルートに該当するのか、6年ルートや補佐者体制のルートに該当するのかを整理しておくことは、単に許可要件を満たすためだけでなく、公共工事参入までのスケジュールを見通すための材料にもなります。

  • 経営業務管理責任者(常勤役員等)の要件を満たすことが建設業許可を取得するための土台になる
  • 建設業許可は経営事項審査を経て公共工事の入札参加資格を得るための出発点である
  • どのルートで要件を満たすかを早い段階で確認しておくと、許可取得から入札参加までの段取りを見通しやすくなる

「経営業務管理責任者の要件を満たせるか分からないから、公共工事への参入は難しい」と考える経営者も少なくありません。しかし、制度上は単独での経験年数だけでなく、補佐者体制によって要件を満たす道も用意されており、経営者本人の経験年数だけで参入の可否が一律に決まるわけではないという点は、制度の建て付けとして確認しておく価値があります。

よくある質問

経営業務管理責任者と常勤役員等は同じものですか?

令和2年の建設業法改正により、条文上の呼び方が「経営業務の管理責任者」から「常勤役員等」に改められました。要件を満たす体制の一つとして、従来型の個人の経験年数によるルートも残っていますが、複数人による補佐者体制のルートも新たに加わっています。

5年ルートと6年ルートはどちらを選べばよいですか?

どちらを選べるかは経験の実態によって決まります。経営の意思決定権限を委任されていた経験であれば5年ルート、権限委任までは無く管理責任者を補助する業務に従事していた経験であれば6年ルートに該当し得ます。年数の長さだけで選べるものではなく、経験の性質そのものが判断材料になります。

補佐者体制のルートで求められる年数は何年ですか?

常勤役員側は「建設業2年以上+財務・労務・業務運営いずれかの役員等相当5年以上」、または「役員等5年以上(業種不問)+建設業2年以上」のいずれかです。加えて、財務管理・労務管理・業務運営それぞれの経験者(建設業者等における5年以上の経験、1人が複数分野兼務可)を補佐者として置く必要があります。

自社がどのルートに該当するか、何から確認を始めればよいですか?

まずは常勤役員のうち1人が単独で5年以上または6年以上の経験を満たせるかを確認し、満たせない場合に2年以上の役員等経験と財務・労務・業務運営の補佐者体制を組み合わせられるかを検討する、という順序で整理すると自社に合ったルートを把握しやすくなります。最終的な該当性は、許可行政庁への確認を前提に進めることになります。

まとめ

経営業務管理責任者の要件は、令和2年の建設業法改正によって「常勤役員等」という表現に改められ、条文の年数要件も国土交通省令側で定める形に変わりました。単独で満たせるルートとして5年以上の経験、5年以上の準ずる地位での経験、6年以上の補助業務経験の3パターンがあり、常勤役員の経験に補佐者体制を組み合わせて満たすルートも2パターン用意されています。

年数の組み合わせは似た数値が並ぶため混同しやすく、誰の経験が何年分必要なのかを分けて整理しておくことが大切です。自社の役員構成がどのルートに該当し得るかをあらかじめ確認しておくと、建設業許可の取得や更新、その先の公共工事参入に向けた段取りも立てやすくなります。

この記事のまとめ
  • 経営業務管理責任者の要件は令和2年改正で「常勤役員等」の要件に改められた
  • 単独で満たせるルートには5年・5年・6年の3パターンがある
  • 補佐者体制を組み合わせるルートは常勤役員の年数パターンが2通りある
  • 自社の役員構成がどのルートに該当するかは資料と実態に基づき個別に判断される

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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