大工工事業で建設業許可を取るには?必要な取得要件と資格を解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

大工工事業で建設業許可を取得したいものの、自社が請け負っている工事が本当に大工工事に当たるのか、判断に迷う経営者の方もいるのではないでしょうか。木造建築物の躯体を担う業種でありながら、隣接する業種との線引きが分かりにくい点が大工工事業の特徴です。

この記事では、大工工事業の定義と例示から、建築一式工事や内装仕上工事との境界、建設業許可の取得要件、営業所技術者(旧・専任技術者)になれる資格までを整理し、公共工事参入への接続点にも触れます。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 大工工事業は、木材の加工または取付けにより工作物を築造し、工作物に木製設備を取付ける工事を担う業種である
  • 型枠工事と造作工事は大工工事の例示に含まれており、建築一式工事や内装仕上工事とは区分の考え方が異なる
  • 建設業許可には経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性という4つの要件がある
  • 大工工事業は指定建設業に該当しないため、特定建設業許可でも指導監督的実務経験によるルートを使える
目次

大工工事業とはどのような工事を行う建設業許可か?

建設業許可は建設業法別表第一に掲げられた29種類の業種ごとに区分されており、大工工事業もそのうちの一つです。まず、大工工事業がどのような工事を対象にした業種なのかを確認します。

大工工事の定義にはどのような工事内容が含まれるか

国土交通省が公表している業種区分の資料では、大工工事は「木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事」と定義されています。この定義は昭和47年建設省告示第350号に基づくものです。

建設業許可事務ガイドラインの別表では、大工工事の例示として「大工工事、型枠工事、造作工事」の3つが挙げられています。木造建築物の柱や梁といった躯体の加工・組立てだけでなく、コンクリートを打設するための型枠を組む工事や、内部の造作を行う工事までが同じ業種に含まれる点が特徴です。

  • 大工工事は「木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事」と定義されている
  • ガイドラインの例示は「大工工事、型枠工事、造作工事」の3つである
  • 木造建築物の躯体の加工・組立てが中心となる業種である
  • コンクリート打設のための型枠工事も、大工工事業の許可で対応する工事として例示されている

型枠工事が大工工事に区分されるのはなぜか

型枠工事はコンクリート構造物の施工に伴う工事であるため、とび・土工・コンクリート工事に含まれると受け止められることがあります。しかし業種区分の上では、型枠工事は大工工事の例示として明記されています。

木材を加工して型枠を組み立てる作業が、大工工事の定義である「木材の加工又は取付け」に当たると整理されているためです。一方で、資格の面では技能検定の「型枠施工」が大工工事業ととび・土工工事業の双方で認められており、業種区分と資格要件は別の枠組みで定められている点に注意が必要です。

大工工事業と隣接する業種の境界はどこで分かれるか?

大工工事業は、建築物の工事全体を請け負う一式工事や、仕上げを担う業種と作業内容が重なりやすい業種です。ここでは、実務で判断に迷いやすい3つの境界を確認します。

建築一式工事との違いはどこにあるか

建築一式工事は「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」と定義されています。工事の対象物ではなく、総合的なマネジメントを担うかどうかで大工工事と分かれる仕組みです。

木造住宅の新築を元請として一括で請け負い、複数の工種を組み合わせて建物を完成させる場合は建築一式工事に当たります。これに対し、躯体の加工・組立てなど木工事の部分を請け負う場合が大工工事です。

造作工事と内装仕上工事はどのように区分されるか

造作工事は大工工事の例示に含まれますが、内装仕上工事は「木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事」と定義されています。

内装仕上工事の例示には、インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、床仕上工事などが挙げられています。木材を加工・取付けして造作を行う工事か、仕上材を用いて内装を仕上げる工事かという観点で整理されていると考えられます。

木製建具の取付けはどの業種に該当するか

大工工事の定義には「工作物に木製設備を取付ける工事」が含まれています。一方で、建具工事の例示には「木製建具取付け工事」が明記されており、木製のものであれば必ず大工工事になるわけではありません。

業種建設工事の内容例示の一部
大工工事業木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事大工工事、型枠工事、造作工事
建築一式工事業総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事例示は定められていない
内装仕上工事業木材、石膏ボード、壁紙、たたみ等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事天井仕上工事、壁張り工事、床仕上工事
建具工事業工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事木製建具取付け工事、サッシ取付け工事

どの業種に該当するかの判断は、実際の工事内容と契約の範囲によって変わります。判断に迷う場合は、申請先の許可行政庁に工事の内容を示して確認することをおすすめします。

大工工事業で建設業許可を取得するにはどの要件を満たす必要があるか?

建設業許可(一般建設業)を受けるには、建設業法第7条に定める4つの要件をすべて満たし、かつ第8条の欠格要件に該当しないことが必要です。これは大工工事業に限らず、全業種に共通する枠組みです。

経営業務の管理体制の要件とはどのようなものか

経営業務の管理体制については、法人であれば常勤役員1名、個人事業主であれば本人または支配人1名が、建設業に関し経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すると認められる必要があります。

典型的なルートは、建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する場合です。これに加えて、健康保険・厚生年金・雇用保険といった適正な社会保険への加入も要件の一つとされています。

財産的基礎の要件はどのように判断されるか

財産的基礎の要件は、一般建設業の場合、次のいずれか1つを満たせば足ります。自己資本の額が500万円以上であること、500万円以上の資金を調達する能力を有すると認められること、許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有することのいずれかです。

誠実性と欠格要件はどのように判断されるか

誠実性の要件は、請負契約の締結や履行に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことを求めるもので、法人の役員等にも適用されます。

欠格要件(法第8条)には、破産者で復権を得ていない者、拘禁刑以上の刑に処せられその執行を終わった日から5年を経過しない者などが列挙されています。役員や使用人がこれに該当する場合、法人・個人事業主とも許可を受けられません。

  • 経営業務の管理体制として、常勤役員1名または個人事業主本人が経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すると認められること
  • 各営業所に営業所技術者等を専任で配置すること
  • 財産的基礎として、自己資本500万円以上・500万円以上の資金調達能力・過去5年間の継続営業実績のいずれか1つを満たすこと
  • 誠実性として、請負契約の締結や履行に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと
  • 健康保険・厚生年金・雇用保険といった適正な社会保険に加入し、法第8条の欠格要件に該当しないこと

特定建設業許可が必要になるのはどのような場合か

下請契約の総額が一定額以上になる場合は、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要です。大工工事業を含む建築一式工事以外の業種では、発注者から直接請け負った1件の工事について下請代金の総額が5,000万円以上となる場合が特定建設業の対象です(建築一式工事は8,000万円以上・建設業法施行令第2条)。

特定建設業では財産的基礎の要件も厳しくなり、欠損の額が資本金の20%を超えていないこと、流動比率が75%以上であること、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上であることをすべて満たす必要があります。

大工工事業の営業所技術者になれる資格にはどのようなものがあるか?

各営業所に専任で配置する技術者は、令和6年12月13日施行の改正により「専任技術者」から「営業所技術者等」に呼称が変更されました。一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者と呼ばれますが、要件そのものに変更はありません。

一般建設業の営業所技術者になれるルートにはどのようなものがあるか

一般建設業の営業所技術者等(法第7条第2号)は、次のいずれかに該当する者とされています。指定学科を修了し高校卒業後5年以上または大学・高等専門学校卒業後3年以上の実務経験を有する者、10年以上の実務経験を有する者、国土交通大臣が同等以上と認定した者(国家資格者等を含む)のいずれかです。

大工工事業の指定学科は「建築学又は都市工学に関する学科」とされています。この学科を修了していれば、実務経験の必要年数が短縮される仕組みです。

実務経験がなくても営業所技術者になれる資格にはどのようなものがあるか

建設業法施行規則第7条の3第2号の表では、大工工事業について次の資格が挙げられています。国家資格を保有していれば、実務経験の年数を積まずに要件を満たせるルートもあります。

  • 建築施工管理の1級または2級の第二次検定合格者(2級は検定種別を「躯体」または「仕上げ」とするものに限る)
  • 一級建築士、二級建築士または木造建築士の免許を受けた者
  • 技能検定のうち一級の建築大工または型枠施工の合格者
  • 技能検定のうち二級の建築大工または型枠施工の合格者で、合格後に大工工事に関し3年以上の実務経験を有する者
  • 建築施工管理の1級の第一次検定合格後に大工工事に関し3年以上、または2級の第一次検定・第二次検定(2級第二次検定は検定種別を「建築」とするものに限る)の合格後に5年以上の実務経験を有する者

実務経験だけで要件を満たす場合の年数はどうなるか

資格を保有していない場合でも、大工工事に関し10年以上の実務経験があれば一般建設業の営業所技術者になれます。加えて大工工事業には、複数業種の経験を合算できる緩和規定が設けられています。

建築一式工事および大工工事に関し12年以上の実務経験があり、そのうち大工工事に関し8年を超える経験を有する場合、または大工工事および内装仕上工事に関し12年以上の実務経験があり、そのうち大工工事に関し8年を超える経験を有する場合も対象になります。

特定建設業許可を取る場合、実務経験ルートは使えるか

大工工事業は、施工技術の総合性等を考慮して政令で定める指定建設業7業種(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業)には含まれていません。

そのため、特定建設業の特定営業所技術者について国家資格者等に限定する規定(法第15条第2号ただし書)は適用されません。一般建設業の要件を満たす者のうち、発注者から直接請け負った請負代金4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者であれば要件を満たせます。

大工工事業の許可は公共工事参入にどうつながるか?

ここまで見てきた大工工事業の区分や取得要件は、単体で完結する手続きではなく、公共工事という受注機会に参入するための土台という位置づけで捉えることができます。学校や庁舎の木造化・木質化、公営住宅の改修など、木工事が関わる公共の工事は各地で発注されています。

大工工事業は一式工事ではなく専門工事業の一つです。専門工事業だからこそ公共工事には入りにくいのではないか、という受け止め方をされることがありますが、業種の位置づけについては別の見方もあります。

専門工事業の方が一式工事業よりも公共工事での成長効果が大きいため、向いていると考えます。

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

  • 大工工事業の区分や取得要件は、公共工事という受注機会に参入するための土台という位置づけになる
  • 公共建築物の木造化・木質化や公営住宅の改修など、木工事が関わる公共の工事は各地で発注されている
  • 大工工事業は一式工事ではなく専門工事業の一つである
  • 入札参加の要件は制度として定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる

よくある質問

大工工事業では、どのくらいの金額の工事から建設業許可が必要になりますか?

大工工事は建築一式工事に該当しないため、1件あたりの請負代金が500万円未満の工事(軽微な建設工事)であれば、建設業許可がなくても施工できます(建設業法施行令第1条の2)。500万円以上の工事を請け負う場合は、建設業許可の取得が必要になります。

木造住宅の新築を請け負う場合、大工工事業の許可だけで対応できますか?

工事の内容によります。元請として総合的な企画・指導・調整のもとに建物全体を建設する場合は建築一式工事に該当し、その業種の許可が必要になります。軽微な建設工事の基準も、建築一式工事は請負代金1,500万円未満または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅と定められており、大工工事とは異なります。

型枠工事だけを請け負う場合、どの業種の許可を取ればよいですか?

型枠工事は大工工事の例示に挙げられているため、大工工事業の許可が基本になります。ただし請け負う工事の実態によって判断が変わる場合があるため、契約の範囲を整理したうえで許可行政庁に確認することをおすすめします。

「専任技術者」という呼び方は現在も使われていますか?

令和6年12月13日施行の改正により、法令上の名称は「営業所技術者等」に変更されています。一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者と呼ばれますが、これは呼称の変更であり要件自体に変更はありません。

まとめ

大工工事業は、木材の加工または取付けにより工作物を築造し、工作物に木製設備を取付ける工事を担う業種です。例示として大工工事・型枠工事・造作工事の3つが挙げられており、型枠工事もこの業種に含まれる点が実務では見落とされやすいところです。

建築一式工事とは総合的な企画・指導・調整を担うかどうかで分かれ、内装仕上工事や建具工事とも定義と例示によって区分されています。許可の取得には、経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性という4つの要件を満たす必要があります。

大工工事業は指定建設業に含まれないため、特定建設業許可を目指す場合でも指導監督的実務経験によるルートを使えます。こうした要件の整理は、専門工事業として公共工事という事業機会に参入していくための土台になります。

この記事のまとめ
  • 大工工事業は木材の加工・取付けにより工作物を築造し、木製設備を取付ける工事を担う業種である
  • 型枠工事と造作工事は大工工事の例示に含まれ、建築一式工事や内装仕上工事とは区分される
  • 許可には経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性の4要件を満たす必要がある
  • 指定建設業ではないため、特定建設業許可でも指導監督的実務経験によるルートを使える

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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