電気工事業で建設業許可を取るには?必要な要件と専任技術者資格

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

電気工事業は、発電設備や送配電線からビル・工場の構内電気設備まで、電力の供給と利用を支える電気設備の工事を扱う専門工事業種です。請負金額が500万円以上の工事を継続的に受けるには、建設業法に基づく建設業許可の取得が必要になります。

この記事では、電気工事業に該当する工事内容から、電気工事士法との関係、許可の取得要件、専任技術者になれる資格までを整理します。許可取得は公共工事という受注機会に参入するための入り口の一つであり、記事の後半ではその接続点にも触れます。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 電気工事業は発電設備や送配電線、構内電気設備など幅広い電気設備工事を対象とする専門工事業種である
  • 建設業許可とは別に、電気工事士法に基づく作業資格と電気工事業法に基づく登録が関わる
  • 専任技術者は指定学科修了と実務経験、実務経験10年、または国家資格の保有によって要件を満たせる
  • 電気工事業は指定建設業のため、特定建設業の専任技術者は実務経験のみでは要件を満たせない
目次

電気工事業とはどのような工事を行う建設業許可なのか?

建設業法では建設工事を29の業種に区分しており、電気工事業はそのうちの専門工事業種の1つです。まず、どのような工事が電気工事業に含まれるのかを確認します。

電気工事業の対象工事にはどのような種類があるか

電気工事業の対象工事は、発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備などを設置する工事が中心です。発電所や送配電線のような電力供給側の設備から、ビルや工場の受変電設備、照明や電動機などの利用側の設備まで、幅広い範囲が1つの業種に含まれている点が特徴です。

具体的には、発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備工事(非常用電気設備を含む)、照明設備工事、電車線・信号設備工事、ネオン装置工事、太陽光発電設備の設置工事などが該当します。

  • 発電所や送配電線など、電力を発電・送電する設備を設置する工事
  • ビルや工場の受変電設備、構内電気設備、照明設備を設置する工事
  • 電車線や信号設備、ネオン装置など、電気を利用する設備を設置する工事
  • 太陽光発電設備の設置工事

電気工事業の対象は「強電」と呼ばれる電力設備の工事が中心です。通信設備やネットワークの配線工事は電気通信工事業の区分になる一方、通信設備の電源配線のように電気工事に含まれる部分もあるため、請け負う工事の内容ごとに区分を確認する必要があります。

太陽光発電設備はどこまで電気工事業に含まれるか

太陽光発電設備の設置工事は電気工事業に含まれますが、屋根と一体になった太陽光パネルの設置工事は屋根工事業に分類されます。同じ太陽光発電でも、電気設備としての部分と屋根材としての部分で業種が分かれるため、申請前の整理が手戻りを防ぐ助けになります。

電気工事士法と建設業許可はどう関係するのか?

電気工事は、建設業許可に加えて他の制度との関係も確認が必要な業種です。特に混同されやすいのが、作業に従事する人の資格を定める電気工事士法です。

電気工事の作業には電気工事士の免状が必要

電気工事士法は、電気工事の作業に従事する者の資格と義務を定め、電気工事の欠陥による災害の発生の防止を目的とする法律です。一般家庭や小規模な店舗など、一般用電気工作物の電気工事は、第1種または第2種電気工事士の免状を持つ者でなければ作業に従事できません。

ビルや工場などの自家用電気工作物のうち、最大電力500kW未満の需要設備の電気工事には第1種電気工事士が必要です。講習を修了して認定を受けた認定電気工事従事者は、このうち電圧600V以下で使用する設備の電気工事(簡易電気工事)に限って従事できます。ネオン設備と非常用予備発電装置の工事は対象外です。

一方、最大電力500kW以上の需要設備は電気工事士法の適用対象から外れます。資格がなければ従事できないという規制がかからない区分です。

ただし電気事業法に基づく電気主任技術者の選任は、500kW未満の自家用電気工作物を含めて必要です。500kWは電気工事士法の線引きであって、電気主任技術者の要否を分ける基準ではありません。

なお、太陽電池発電設備の出力10kW以上50kW未満や風力発電設備の出力20kW未満は、2023年3月の電気事業法改正で「小規模事業用電気工作物」という区分に整理されました。これらの電気工事には第2種電気工事士が従事できます。

建設業許可が「工事を請け負う事業者」の資格であるのに対し、電気工事士の免状は「工事の作業に従事する人」の資格です。両者は別の制度であり、電気工事を請け負うには事業者側の許可と作業者側の資格の両方が関わってきます。なお、これらの区分は電気事業法の改正に伴い変更された経緯があるため、実際の工事の前に執筆時点の基準を確認することが望ましいです。

電気工事業の登録も必要になる

建設業許可とは別に、電気工事業の業務の適正化に関する法律に基づき、電気工事を営むには登録が必要です。営業所が1つの都道府県内のみにある場合は都道府県知事へ、複数の都道府県にまたがる場合は経済産業大臣へ登録します。登録には営業所ごとの主任電気工事士の配置が要件とされ、登録の有効期間は5年です。

建設業許可・電気工事士の免状・電気工事業の登録という3つの制度が並んでいるのが、電気工事業ならではの特徴です。それぞれの役割を整理しておくと、申請や手続きの漏れを防ぎやすくなります。

制度何を規制するか電気工事業での位置づけ
建設業法(建設業許可)工事を請け負う事業者請負金額500万円以上の工事を継続的に受ける場合に必要
電気工事士法(電気工事士の免状)工事の作業に従事する人一般用電気工作物と、500kW未満の自家用電気工作物の電気工事が対象
電気工事業法(電気工事業の登録)電気工事業を営むこと営業所ごとに主任電気工事士を配置。有効期間は5年

電気工事業の建設業許可を取得するにはどの要件を満たす必要があるか?

建設業許可を受けるには、建設業法第7条に定める要件を満たし、第8条の欠格要件に該当しないことが必要です。電気工事業も他の業種と同じ枠組みで、ここでは主要な要件を確認します。

経営業務の管理体制と財産的基礎の要件はどうなっているか

経営業務の管理体制については、法人であれば常勤役員1名、個人事業主であれば本人または支配人1名が、建設業に関し5年以上の経営業務管理責任者としての経験を持つこと、またはこれに準ずる地位での経験を持つことのいずれかに該当する必要があります。令和2年の改正により、複数名の体制で要件を満たすパターンも認められています。適正な社会保険への加入も要件の一つです。

財産的基礎の要件は、一般建設業の場合、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、過去5年間の継続営業実績のいずれか1つを満たせば足ります。誠実性の要件は、請負契約の締結や履行において不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないことを求めるもので、法人の役員等にも適用されます。

一般建設業と特定建設業で要件はどう変わるか

下請契約の総額が一定額以上になる場合は、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要になります。電気工事業を含む建築一式工事以外の業種では、発注者から直接請け負った1件の工事について下請契約の総額が5,000万円以上となる場合が特定建設業の対象です(建築一式工事は8,000万円以上・施行令第2条)。

特定建設業では、財産的基礎の要件も一般建設業より厳しく、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上であることなど複数の基準をすべて満たす必要があります。なお、令和7年2月1日施行の改正で見直されたのは下請代金の基準額であり、財産的基礎の金額は変更されていません。

欠格要件に該当するのはどのような場合か

欠格要件には、破産者で復権を得ていない者、許可取消しから5年を経過していない者、暴力団員またはその離脱後5年を経過していない者などが含まれ、役員や使用人がこれに該当する場合は法人・個人事業主とも許可を受けられません。

  • 経営業務の管理体制(常勤役員等1名が建設業に関し5年以上の経営経験、または複数名の体制)
  • 各営業所に専任技術者(営業所技術者等)を配置していること
  • 財産的基礎(一般建設業は自己資本500万円以上、資金調達能力、5年間の継続営業実績のいずれか)
  • 誠実性(請負契約の締結や履行で不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと)
  • 適正な社会保険への加入
  • 役員・使用人が欠格要件に該当しないこと

電気工事業の専任技術者になれる資格や実務経験にはどのようなものがあるか?

専任技術者は各営業所に専任で配置する必要があり、資格・実務経験のいずれかで要件を満たします。電気工事業で認められる主なルートを確認します。

なお、令和6年12月13日施行の改正により、法令上の名称は「営業所技術者等」(特定建設業では「特定営業所技術者」)に変更されています。呼称の変更であり、求められる要件そのものに変更はありません。

指定学科と実務経験で専任技術者になるにはどうすればよいか

一般建設業の専任技術者は、指定学科を修了した上で一定年数の実務経験を積む方法で要件を満たせます。電気工事業の指定学科は「電気工学に関する学科」などで、高校卒業後は5年以上、大学・高専・短大卒業後は3年以上の実務経験が求められます。指定学科の修了がない場合でも、実務経験のみで10年以上積んでいれば要件を満たせます。

実務経験なしで専任技術者になれる国家資格にはどのようなものがあるか

一定の国家資格を保有していれば、実務経験なしで専任技術者になれます。電気工事業では、1級・2級電気工事施工管理技士、第1種電気工事士、技術士(電気電子部門・総合技術監理部門)などが対象です。

  • 1級・2級電気工事施工管理技士、第1種電気工事士、技術士は実務経験なしで要件を満たせる
  • 第2種電気工事士は免許交付後3年以上の実務経験が必要
  • 電気主任技術者は免許交付後5年以上の実務経験が必要

特定建設業では国家資格が必須になる

特定建設業の専任技術者は、一般建設業より要件が厳しくなります。国家資格の保有、請負代金額4,500万円以上の工事(施行令第5条の3)についての指導監督的実務経験、または国土交通大臣の特別認定のいずれかで要件を満たすのが基本です。

ただし、電気工事業は「指定建設業」に該当するため、指導監督的実務経験のみで特定建設業の専任技術者になることはできません。指定建設業は土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種で、この区分では1級の国家資格(電気工事業では1級電気工事施工管理技士や技術士など)の保有が必要です。

電気工事業は指定建設業7業種の1つです。特定建設業の許可を取得する場合は、実務経験の年数ではなく、1級の国家資格の有無が要件の分かれ目になります。

電気工事業の許可を取得した後、公共工事の入札にどう進むか?

建設業許可は取得して終わりではなく、公共工事の入札に参加するには、その後の手続きも関わってきます。許可取得後の流れを確認します。

許可取得から経営事項審査までどのような流れで進むか

公共工事の入札に参加するには、建設業許可の取得に加えて、経営状況や技術力を点数化する「経営事項審査」(経審)を受ける必要があります。経審は許可取得後の手続きで、受審後は発注機関ごとの入札参加資格審査を経て、名簿に登載されることで入札に参加できます。

標準処理期間は申請先の都道府県・地方整備局によって異なるため、具体的な日数は各窓口の手引きで確認する必要があります。

許可取得前でも参加できる入札はあるか

建設業許可を取得していない、あるいは経審を受けていない段階でも、入札の単価や種別によっては参加できる案件が存在します。請負代金500万円未満の軽微な工事であれば、そもそも許可自体が不要です。

  • 建設業許可を取得する
  • 経営事項審査(経審)を受審し、経営状況と技術力を点数化する
  • 発注機関ごとの入札参加資格審査を受ける
  • 名簿に登載され、入札に参加できるようになる

電気工事業の許可は公共工事参入にどうつながるか?

ここまで見てきた電気工事業の許可要件や専任技術者の資格は、単体で完結する手続きではなく、公共工事という受注機会に参入するための土台という位置づけで捉えることができます。庁舎や学校などの公共施設や、道路照明などの公共空間の設備にも電気設備は幅広く使われており、電気工事業の許可は公共工事の様々な分野に関わる資格です。

  • 庁舎や学校などの公共施設の受変電設備・構内電気設備
  • 道路照明やトンネル照明などの公共空間の電気設備
  • 上下水道施設や処理場のポンプ・制御設備に関わる電気工事
  • 公共施設への太陽光発電設備の設置工事

公共工事は、大手や実績のある会社だけが対応できるもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

許可の取得と実績づくりのどちらを先にするかは、判断が分かれるところです。

いきなり許可を取って大きな公共工事に入るというよりも、まずは許可がなくてもできる小規模な工事で2〜3ヶ月売上を立てながら、段階的に入っていく方が私はいいと思います。そういう仕組みです。

よくある質問

電気工事業の許可なしで請け負える工事の金額上限はどのくらいですか?

建築一式工事以外の建設工事は、請負代金500万円未満(消費税込み)であれば建設業許可なしで請け負えます。電気工事業もこの「その他工事」の基準が適用されます。ただし、電気工事士法や電気工事業法に基づく作業者資格・登録の要件は別途確認が必要です。

電気工事士を持っていれば専任技術者になれますか?

第1種電気工事士は実務経験なしで専任技術者になれます。第2種電気工事士は免許交付後3年以上の実務経験が必要です。特定建設業の場合は指定建設業のため、1級の国家資格(1級電気工事施工管理技士など)が求められ、電気工事士の免状だけでは要件を満たせません。

電気工事業の許可を取れば太陽光発電設備の工事も請け負えますか?

太陽光発電設備の設置工事は電気工事業に含まれます。ただし、屋根一体型の太陽光パネルの設置は屋根工事業に分類される場合があるため、請け負う工事の内容を確認しておく必要があります。

特定建設業の専任技術者は実務経験10年では要件を満たせませんか?

満たせません。電気工事業は指定建設業7業種の1つで、特定建設業の専任技術者は指導監督的実務経験のみでは認められず、1級の国家資格の保有が必要です。実務経験で要件を満たせるのは一般建設業の場合です。

まとめ

電気工事業は、発電設備や送配電線、構内電気設備など幅広い電気設備工事を対象とする専門工事業種です。500万円以上の工事を継続的に受けるには、経営業務の管理体制・専任技術者・財産的基礎・誠実性の要件を満たした上で許可を取得する必要があります。

電気工事業では、建設業許可に加えて電気工事士法に基づく作業資格、電気工事業法に基づく登録という複数の制度が関わります。専任技術者は指定学科修了と実務経験、実務経験のみ10年、または国家資格の保有のいずれかで要件を満たせますが、特定建設業では指定建設業として1級の国家資格が必要になります。

許可取得はそれ自体が目的ではなく、経営事項審査を経て公共工事に参入するための土台です。許可要件の整理と並行して、経審や入札参加までの流れを見据えて準備を進めることが、参入後のスケジュールに影響してきます。

この記事のまとめ
  • 電気工事業は発電・送配電設備から構内電気設備まで幅広い電気設備工事を対象とする
  • 建設業許可・電気工事士の免状・電気工事業の登録という複数の制度が関わる
  • 専任技術者は指定学科+実務経験、実務経験10年、または国家資格の保有で要件を満たせる
  • 特定建設業では指定建設業のため実務経験のみでは専任技術者になれず、1級の国家資格が必要

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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