安全衛生責任者教育とは?受講内容と職長教育との違いを解説

安全衛生責任者教育とは?受講内容と職長教育との違いを解説
監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

安全衛生責任者教育は、建設現場で請負人が選任する安全衛生責任者に向けた教育です。安全衛生責任者の選任は労働安全衛生法第16条に定められていますが、教育そのものは、職長教育のような法定教育とは位置づけが異なります。

この記事では、安全衛生責任者の役割、教育の位置づけ、建設業で行われている受講内容、職長教育との違いを、2026年10月執筆時点の公的情報をもとに整理します。あわせて、公共工事の現場運営との関わりにも触れます。

2024年問題、人手不足、資金繰り…建設業界が直面する課題は山積みです。こうした環境だからこそ、経営の安定化には新たな収入源の確保が重要。この動画では、民間工事とは異なる公共工事という選択肢の実務的なポイントをおさえています。動画で基礎を理解した上で、記事の詳しい解説をご覧ください。

この記事で分かること
  • 安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者を選任すべき現場で、請負人が選任する責任者である(労働安全衛生法第16条)
  • 安全衛生責任者への教育は、職長教育のような法定教育ではなく、通達で事業者が実施すべきものとして推進されている
  • 建設業では、職長教育に安全衛生責任者の職務等を加えた14時間の講習が、実施団体の案内に見られる
  • 職長教育は新たに職長等につく人への法定教育、安全衛生責任者教育は選任された人への推進教育で、再教育はおおむね5年ごとに推進されている
目次

安全衛生責任者とは?選任の根拠と職務

安全衛生責任者は、元請の統括安全衛生責任者との連絡窓口になる人です。教育の内容を理解するために、まず選任の根拠と職務を確認します。

安全衛生責任者は請負人が選任して通報する

労働安全衛生法第16条第1項は、統括安全衛生責任者を選任すべき場合に、その選任義務を負う事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものに、安全衛生責任者の選任を求めています。選任された人は、統括安全衛生責任者との連絡その他の事項を行います。

安全衛生責任者を選任した請負人は、遅滞なく、その旨を統括安全衛生責任者を選任した事業者へ通報します(同条第2項)。

統括安全衛生責任者の選任が必要になる現場の規模

統括安全衛生責任者は、建設業の特定元方事業者が、同じ場所で関係請負人の作業従事者とともに作業を行う場合に、作業従事者の数が政令で定める数以上のときに選任します(第15条第1項)。数は、労働安全衛生法施行令第7条第2項で次のとおり定められています。

仕事の区分作業従事者の数
ずい道等の建設の仕事、橋梁の建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所で行われるものに限る)、圧気工法による作業を行う仕事常時30人
上記以外の仕事常時50人

第16条は、第15条の規定により統括安全衛生責任者を選任すべき場合を前提にしています。元請から安全衛生責任者の選任や教育修了の提示を求められるかどうかは、元請の指定によるため、契約先の安全書類の案内を確認しておきます。

安全衛生責任者の職務は労働安全衛生規則第19条の6つ

安全衛生責任者の職務は、労働安全衛生規則第19条第1項に、次の6つが定められています。

  • 統括安全衛生責任者との連絡
  • 統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の関係者への連絡
  • 連絡を受けた事項のうち、自社に係るものの実施についての管理
  • 自社が作業の計画を作成する場合の、特定元方事業者が作成する計画との整合性を図るための調整
  • 自社の作業と他の作業によって生ずる労働災害に係る危険の有無の確認
  • 仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合の、他の請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡および調整

安全衛生責任者教育は法律で義務づけられているのか?

安全衛生責任者の選任は法律に定めがありますが、教育の位置づけは異なります。条文と通達を分けて確認します。

条文に教育の受講を選任の要件とする定めは見当たらない

法第16条と労働安全衛生規則第19条は、安全衛生責任者の選任と職務を定めています。本記事で確認した範囲では、この2つの条文に、教育の修了を選任の要件とする定めは見当たりません。

職長教育を定める第60条は、事業者に教育の実施義務を課す規定です。選任を定める第16条とは、規定の仕組みが異なります。

通達では選任時教育と能力向上教育に準じた教育が推進されている

厚生労働省の「安全衛生教育及び研修の推進について」(平成3年1月21日付け基発第39号)の別表は、安全衛生責任者への教育として、次の2つを挙げています。同要綱は、法定教育以外で事業者が実施すべきものの一つとして、安全衛生責任者への選任時教育と能力向上教育に準じた教育を位置づけています。

教育の区分実施時期内容
選任時教育新たに選任されたとき当該業務に関する全般的事項
能力向上教育に準じた教育おおむね5年ごと、機械設備等に大幅な変更があったとき定期・随時に実施

同要綱には、企業内の安全衛生関係者への教育は、企業が自ら、または安全衛生団体等に委託して実施する旨の記載があります。安全衛生団体等が実施した場合に修了者へ修了証を交付する旨も、一般的な記載として見られます。

建設業では職長教育と一体のカリキュラムが公表されている

建設業では、職長教育と安全衛生責任者への教育を一体的に行うカリキュラムが、平成18年基発第0512004号の通達で公表されていると、実施団体は案内しています。通達の本文は、本記事では確認できていません。

安全衛生責任者教育の受講内容は?

建設業では、安全衛生責任者への教育は、職長教育と併せた講習として行われることが一般的です。実施団体の案内をもとに、科目と時間を確認します。

建設業の職長・安全衛生責任者教育は14時間

実施団体の案内では、建設業の「職長・安全衛生責任者教育」は2日間・計14時間で行われます。職長教育の5科目に、安全衛生責任者に関する2科目が加わった構成です。

科目時間
作業方法の決定および労働者の配置2時間
労働者に対する指導または監督の方法2.5時間
危険性または有害性等の調査とその結果に基づく措置4時間
異常時等における措置1.5時間
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動2時間
安全衛生責任者の職務等1時間
統括安全衛生管理の進め方1時間
合計14時間

安全衛生責任者に固有の科目は2つで計2時間

職長教育にない部分は、「安全衛生責任者の職務等」と「統括安全衛生管理の進め方」の各1時間です。科目の詳しい内容は実施団体のカリキュラムによるため、本記事では科目名の紹介にとどめます。

受講料・日程・修了証は実施団体で確認する

確認できた実施団体の例では、14時間の受講料は21,010円(教材費・消費税込)でした。対象は、職長の職務に就いている人または安全衛生責任者に選任されている人で、これからその職務に就く予定の人も含まれます。

日程や修了証の扱い、再交付の方法は、団体ごとに異なります。申し込みの前に、最新の案内を確認します。

単独の安全衛生責任者教育の時間と科目は確認できていない

職長教育を受けずに、安全衛生責任者教育だけを受ける場合の時間や科目は、本記事では一次情報で確認できていません。必要な場合は、実施団体や所轄の労働基準監督署などの公的窓口で確認してください。

職長教育との違いは?

職長教育と安全衛生責任者教育は、根拠も対象も異なります。建設業では併せて受講する講習が多いため、違いを整理しておくと混同を避けられます。

項目職長教育安全衛生責任者教育
根拠労働安全衛生法第60条選任は法第16条、教育は通達(基発第39号など)で推進
対象新たに職務につく職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者請負人が選任する安全衛生責任者
位置づけ事業者に実施義務がある法定教育法定教育以外で事業者が実施すべきものとして推進される教育
時間の目安12時間以上(労働安全衛生規則第40条)職長教育と併せた14時間の講習が案内されている

職長教育は法定教育で安全衛生責任者教育は推進される教育

職長教育は、労働安全衛生法第60条により、事業者が新たに職長等につく人へ行う義務のある教育です。一方、安全衛生責任者への教育は、通達で事業者が実施すべきものとして位置づけられている教育で、条文上の実施義務とは区別されます。

職長と安全衛生責任者を同じ人が兼ねる現場では、14時間の講習で両方を受講する形が実務上は多く見られます。ただし、兼務は運用であり、制度上は別々の事柄です。

おおむね5年ごとの再教育は340分

平成29年2月20日付けの基発0220第3号は、建設業の職長等と安全衛生責任者に対し、職務についた後おおむね5年ごと、および機械設備等に大幅な変更があったときに、能力向上教育に準じた教育を行うよう推進しています。職長と安全衛生責任者を兼ねる人向けの教育は、次の4科目で合計340分です。

科目時間
職長等および安全衛生責任者として行うべき労働災害防止120分
労働者への指導または監督の方法60分
危険性または有害性等の調査等30分
グループ演習130分

職長等のみを対象とした職長等能力向上教育は合計310分で、こちらとは別のカリキュラムです。

安全衛生責任者への対応は公共工事の現場運営にどうつながるのか?

安全衛生責任者の選任は、統括安全衛生責任者を選任すべき現場かどうかで決まります。条文を読む限り、発注者が公共か民間かによる区分は設けられていません。

  • 安全衛生責任者の選任は、統括安全衛生責任者を選任すべき現場かどうかで決まり、発注者が公共か民間かでは区別されない
  • 下請として入る場合は、元請の統括安全衛生責任者との連絡や作業間の調整が職務になる
  • 安全書類の指定や教育修了の提示は元請ごとに異なるため、契約先ごとに確認する

民間工事を中心にしてきた会社が公共工事に取り組む場合も、現場で連絡窓口になる人を決め、必要な教育を受けさせておくことは、現場運営の土台になります。

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

公共工事への参入に向けた全体像は、下記で詳しく確認できます。

よくある質問

安全衛生責任者になるために、資格は必要なのか?

本記事で確認した範囲では、法第16条と労働安全衛生規則第19条に、資格や教育の修了を要件とする定めは見当たりません。ただし、元請の安全書類で教育修了の提示を求められることがあるため、契約先の案内を確認してください。

安全衛生責任者は、現場ごとに選任するのか?

統括安全衛生責任者の選任は、「一の場所において行う事業の仕事」を単位に定められています(第15条第1項)。安全衛生責任者もその場合に請負人が選任するため、現場ごとに選任を考えるのが基本です。同じ人を複数の現場で選任できるかは、個別の運用を元請などに確認してください。

選任した安全衛生責任者は、誰に通報するのか?

第16条第2項は、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者に対し、遅滞なくその旨を通報するよう求めています。建設現場では、一般に元請(特定元方事業者)がこれにあたります。通報の様式や提出方法は、元請の指示を確認してください。

元請の立場でも、安全衛生責任者を選任するのか?

元請にあたる特定元方事業者が選任するのは、統括安全衛生責任者です(第15条第1項)。安全衛生責任者を選任するのは、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものです(第16条第1項)。

まとめ

安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者を選任すべき現場で、請負人が選任する責任者です。職務は労働安全衛生規則第19条に6つ定められており、選任したときは遅滞なく通報します。

安全衛生責任者への教育は、職長教育と違い、通達で事業者が実施すべきものとして推進されている教育です。建設業では、職長教育と併せた14時間の講習が実施団体の案内に見られ、再教育はおおむね5年ごとに推進されています。

本記事の内容は2026年10月執筆時点の情報のため、受講前には実施団体や公的窓口で最新の内容を確認してください。

この記事のまとめ
  • 安全衛生責任者は労働安全衛生法第16条に基づき、請負人が選任し、元請へ遅滞なく通報する
  • 安全衛生責任者教育は法定教育ではなく、通達で推進される教育で、職長教育とは根拠と対象が異なる
  • 建設業では職長教育と併せた14時間の講習が案内されており、費用や日程は申し込み前に最新の案内で確認する
  • 自社の現場で誰が安全衛生責任者を担うかを決め、元請の安全書類の指定を契約先ごとに確認する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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