塗装工事業で建設業許可を取るには?取得要件と専任技術者の資格

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

塗装工事業は、塗料や塗材を工作物に吹き付けたり塗り付けたりする工事を扱う専門工事業種です。建物の内外装から橋梁などの鋼構造物まで、塗装の対象は幅広く、請負金額500万円以上の工事を継続的に受けるには建設業許可の取得が必要になります。

この記事では、塗装工事業に該当する工事内容から、防水工事業との境界、許可の取得要件、営業所技術者になれる資格までを整理します。許可取得は公共工事という受注機会に参入するための入り口の一つであり、記事の後半ではその接続点にも触れます。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 塗装工事業は塗料・塗材の吹付け、塗付け、はり付けと、それに伴う下地調整を含む専門工事業種である
  • 防水層を形成する工事は防水工事業に区分され、外壁改修では境界の確認が必要になる
  • 営業所技術者は指定学科修了と実務経験、実務経験10年、または国家資格の保有によって要件を満たせる
  • 塗装工事業は指定建設業ではないため、特定営業所技術者は指導監督的実務経験でも要件を満たせる
目次

塗装工事業とはどのような工事を行う建設業許可なのか?

建設業法では建設工事を29の業種に区分しており、塗装工事業はそのうちの専門工事業種の1つです。まず、どのような工事が塗装工事業に含まれるのかを確認します。

  • 建物の内外装の塗装工事、布張り仕上げ工事
  • 橋梁などの鋼構造物塗装工事、溶射工事、ライニング工事
  • 道路の路面標示工事
  • 塗装の前に行う下地調整工事・ブラスト工事

塗装工事業の対象工事にはどのような種類があるか

塗装工事業の対象工事は、塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、またははり付ける工事です。建物の内外装の塗装に加えて、橋梁などの鋼構造物の塗装や路面標示まで、塗料を使って工作物の表面に塗膜を作る工事が幅広く含まれる点が特徴です。

具体的には、塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上げ工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事などが該当します。また、塗装の前に表面を整える下地調整工事やブラスト工事は、塗装工事の準備作業として塗装工事業に含まれており、別の業種の許可は不要です。

塗装工事に含まれる下地処理はどこまでか

外壁塗装の現場では、高圧洗浄やケレンなど、塗膜の密着を良くするための下地処理が欠かせません。これらの作業は塗装工事の一部として扱われます。

下地処理が塗装工事業に含まれる一方、防水層を形成する工事は別の業種になる点が、実務で混同しやすい部分です。次に防水工事業との境界を確認します。

防水工事業との境界はどう判断するか?

外壁や屋上の改修工事では、塗装と防水がセットで行われることが多く、業種の線引きが分かりにくい場合があります。境界の考え方を整理します。

区分 目的・内容 該当する業種
仕上げとしての塗膜 美観や保護を目的に塗料・塗材を塗付ける 塗装工事業
下地処理(高圧洗浄・ケレン等) 塗膜の密着を良くするための準備作業 塗装工事業
塗膜防水・アスファルト防水等 水の浸入を防ぐ防水層を形成する 防水工事業
シーリング工事 目地に充填して防水性を持たせる 防水工事業

防水層を形成する工事は防水工事業になる

防水工事業の対象は、アスファルト、モルタル、シーリング、塗膜防水などによる防水層の形成を目的とする工事です。塗膜防水は塗料に似た材料を使いますが、水の浸入を防ぐ防水層を作ることが目的であるため、塗装工事業ではなく防水工事業に区分されます。外壁の目地に充填するシーリング工事も、防水性を持たせるための工事として防水工事業の対象になります。

一方、仕上げ材としての塗膜の形成、すなわち美観や保護を目的とする塗装は塗装工事業です。同じ外壁の改修でも、塗装部分と防水部分が混在する場合は、それぞれの工事に対応する業種の許可が必要になるため、見積りや契約の段階で工事内容を切り分けておくことが重要です。

塗装工事業の建設業許可を取得するにはどの要件を満たす必要があるか?

建設業許可を受けるには、建設業法第7条に定める要件を満たし、第8条の欠格要件に該当しないことが必要です。塗装工事業も他の業種と同じ枠組みで、ここでは主要な要件を確認します。

  • 経営業務の管理体制として、常勤役員1名または個人事業主本人が経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すると認められること
  • 各営業所に営業所技術者等を専任で配置すること
  • 財産的基礎として、自己資本500万円以上・500万円以上の資金調達能力・過去5年間の継続営業実績のいずれか1つを満たすこと
  • 請負契約の締結や履行にあたって不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと(誠実性)
  • 法第8条の欠格要件に該当しないこと

経営業務の管理体制と財産的基礎の要件はどうなっているか

経営業務の管理体制については、法人であれば常勤役員1名、個人事業主であれば本人または支配人1名が、建設業に関し5年以上の経営業務管理責任者としての経験を持つこと、またはこれに準ずる地位での経験を持つことのいずれかに該当する必要があります。令和2年の改正により、複数名の体制で要件を満たすパターンも認められています。適正な社会保険への加入も要件の一つです。

財産的基礎の要件は、一般建設業の場合、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、過去5年間の継続営業実績のいずれか1つを満たせば足ります。誠実性の要件は、請負契約の締結や履行において不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないことを求めるもので、法人の役員等にも適用されます。

一般建設業と特定建設業で要件はどう変わるか

下請契約の総額が一定額以上になる場合は、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要になります。塗装工事業を含む建築一式工事以外の業種では、発注者から直接請け負った1件の工事について下請契約の総額が5,000万円以上となる場合が特定建設業の対象です(建築一式工事は8,000万円以上・施行令第2条)。

特定建設業では、財産的基礎の要件も一般建設業より厳しく、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上であることなど複数の基準をすべて満たす必要があります。この金額基準は執筆時点(令和7年2月1日施行の改正後)のものです。

欠格要件に該当するのはどのような場合か

欠格要件には、破産者で復権を得ていない者、許可取消しから5年を経過していない者、暴力団員またはその離脱後5年を経過していない者などが含まれ、役員や使用人がこれに該当する場合は法人・個人事業主とも許可を受けられません。

塗装工事業の営業所技術者になれる資格や実務経験にはどのようなものがあるか?

営業所技術者は各営業所に専任で配置する必要があり、資格・実務経験のいずれかで要件を満たします。塗装工事業で認められる主なルートを確認します。

各営業所に専任で配置する技術者は、令和6年12月13日施行の改正により「専任技術者」から「営業所技術者等」に呼称が変更されました。一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者と呼ばれますが、要件そのものに変更はありません。

  • 指定学科を修了し、高校卒業後5年以上または大学・高専・短大卒業後3年以上の実務経験を積む
  • 指定学科の修了がない場合は、10年以上の実務経験を積む
  • 国土交通大臣が同等以上と認定した者(国家資格者等を含む)に該当する

指定学科と実務経験で営業所技術者になるにはどうすればよいか

一般建設業の営業所技術者は、指定学科を修了した上で一定年数の実務経験を積む方法で要件を満たせます。塗装工事業の指定学科は「土木工学又は建築学に関する学科」で、高校卒業後は5年以上、大学・高専・短大卒業後は3年以上の実務経験が求められます。指定学科の修了がない場合でも、実務経験のみで10年以上積んでいれば要件を満たせます。

国家資格で営業所技術者になるにはどの資格が対象になるか

一定の国家資格を保有していれば、実務経験の年数を積まずに営業所技術者の要件を満たせます。ただし資格によっては、合格後に一定の実務経験が必要です。

塗装工事業では、1級・2級建築施工管理技士(仕上げ)、1級・2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装)などが対象です。技能検定の塗装系の職種や路面標示施工も対象ですが、2級技能士については合格後3年以上の実務経験が別途必要とされています。

特定建設業では指導監督的実務経験でも要件を満たせる

特定営業所技術者は、国家資格の保有、指導監督的実務経験、または国土交通大臣の特別認定のいずれかで要件を満たします。塗装工事業は指定建設業ではないため、指導監督的実務経験のみで要件を満たせる業種です。

具体的には、一般建設業の営業所技術者の要件を満たした上で、請負代金額4,500万円以上の工事(施行令第5条の3)について、元請として2年以上の指導監督的実務経験があることが必要です。

国家資格で要件を満たす場合は、1級建築施工管理技士や1級土木施工管理技士などが対象です。指定建設業ではない業種では、実務経験のルートが特定建設業でも使える点が、電気・管など指定建設業との違いです。

塗装工事業の許可を取得した後、公共工事の入札にどう進むか?

建設業許可は取得して終わりではなく、公共工事の入札に参加するには、その後の手続きも関わってきます。許可取得後の流れを確認します。

  • 建設業許可を取得する
  • 決算後に経営事項審査(経審)を受審する
  • 参加したい発注機関の入札参加資格審査を申請し、有資格者名簿に登載される
  • 入札公告を確認し、自社の等級で参加できる案件から入札する

許可取得から経営事項審査までどのような流れで進むか

公共工事の入札に参加するには、建設業許可の取得に加えて、経営状況や技術力を点数化する「経営事項審査」(経審)を受ける必要があります。経審は許可取得後の手続きで、受審後は発注機関ごとの入札参加資格審査を経て、名簿に登載されることで入札に参加できます。

標準処理期間は申請先の都道府県・地方整備局によって異なるため、具体的な日数は各窓口の手引きで確認する必要があります。

許可取得前でも参加できる入札はあるか

建設業許可を取得していない、あるいは経審を受けていない段階でも、入札の単価や種別によっては参加できる案件が存在します。請負代金500万円未満の軽微な工事であれば、そもそも許可自体が不要です。

塗装工事業の許可は公共工事参入にどうつながるか?

ここまで見てきた塗装工事業の許可要件や営業所技術者の資格は、単体で完結する手続きではなく、公共工事という受注機会に参入するための土台という位置づけで捉えることができます。学校や庁舎などの公共施設の内外装、橋梁の塗り替えなど、公共の分野にも塗装の需要は継続的に存在しており、許可は公共工事の様々な分野に関わる資格です。

  • 学校・庁舎など公共施設の内外装の塗り替え
  • 橋梁など鋼構造物の塗装・塗り替え
  • 道路の区画線などの路面標示工事

公共工事は、大手や実績のある会社だけが対応できるもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。少人数の会社でも、参入の道は開かれています。

私自身が1人社長ですので、1人や少人数でやっている会社さんにこそおすすめしたいと思います。1人社長でも、もう一つの売上の柱を作れるぞ、ということですね。

よくある質問

塗装工事業の許可なしで請け負える工事の金額上限はどのくらいですか?

建築一式工事以外の建設工事は、請負代金500万円未満(消費税込み)であれば建設業許可なしで請け負えます。塗装工事業もこの「その他工事」の基準が適用されるため、500万円以上を請け負う場合に許可が必要になります。

外壁塗装とシーリング工事をまとめて請け負う場合、許可はどうなりますか?

塗装部分は塗装工事業、防水層やシーリングの部分は防水工事業に区分されます。両方の工事を請け負う場合は、それぞれの業種の許可が必要になるため、工事内容の切り分けを確認しておく必要があります。

下地調整や高圧洗浄だけを請け負う場合も許可が必要ですか?

下地調整工事やブラスト工事は、通常は塗装工事の準備作業として塗装工事業に含まれます。請け負う工事全体が塗装工事の一環であれば、別の業種の許可は不要です。

特定営業所技術者は実務経験のみでも要件を満たせますか?

満たせます。塗装工事業は指定建設業ではないため、一般建設業の営業所技術者の要件を満たした上で、請負代金額4,500万円以上の工事について元請として2年以上の指導監督的実務経験があれば、特定営業所技術者になれます。

「専任技術者」という呼び方は現在も使われていますか?

令和6年12月13日施行の改正により、法令上の名称は「営業所技術者等」に変更されています。一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者と呼ばれますが、これは呼称の変更であり要件自体に変更はありません。

まとめ

塗装工事業は、塗料・塗材の吹付けや塗付けと、それに伴う下地調整を対象とする専門工事業種です。500万円以上の工事を継続的に受けるには、経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性の要件を満たした上で許可を取得する必要があります。

外壁改修などでは防水工事業との境界が混同しやすく、防水層の形成を目的とする工事は別の業種になる点に注意が必要です。営業所技術者は指定学科修了と実務経験、実務経験のみ10年、または国家資格の保有のいずれかで要件を満たせ、特定建設業では指定建設業ではないため指導監督的実務経験のルートも使えます。

許可取得はそれ自体が目的ではなく、経営事項審査を経て公共工事に参入するための土台です。許可要件の整理と並行して、経審や入札参加までの流れを見据えて準備を進めることが、参入後のスケジュールに影響してきます。

この記事のまとめ
  • 塗装工事業は塗料・塗材の吹付け・塗付け・はり付けと下地調整を対象とする
  • 防水層を形成する工事は防水工事業に区分され、外壁改修では切り分けが必要
  • 営業所技術者は指定学科+実務経験、実務経験10年、または国家資格の保有で要件を満たせる
  • 指定建設業ではないため、特定建設業でも指導監督的実務経験のルートで要件を満たせる

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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