経営事項審査結果通知書(経審)の見方とは?各項目の意味を解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

経営事項審査を申請すると、数字が並んだ通知書が手元に届きます。総合評定値の数値だけを見て終わりにしてしまうと、どの区分が伸びてどの区分が落ちたのかが分からないまま次の期を迎えることになります。

この記事では、経営事項審査結果通知書に記載される項目が何を意味するのかを順に確認します。あわせて、受け取ったあとに何をすべきかと、内容に誤りがあった場合の対応も整理します。通知書の読み方を知れば、翌期の申請に向けた改善点が見えてきます。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 経営事項審査結果通知書の正式名称と、発注者にも通知される仕組み
  • 審査基準日と有効期間の読み方、そして更新時期の考え方
  • 総合評定値Pと5つの評点が、それぞれ何を評価した数値なのか
  • 通知書を前期と比較して増減の原因を特定する手順と、再審査の申立て
目次

経営事項審査結果通知書とはどのような書類か?

日常的には「経審の結果通知書」と呼ばれますが、制度上の位置づけを押さえておくと読み方が変わります。

正式名称と交付の根拠

正式な名称は経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書です。建設業法施行規則の別記様式第25号の15により、許可行政庁から交付されます。

総合評定値の請求をしなかった場合は経営規模等評価の結果のみが通知されます。総合評定値の欄が空欄になっている通知書は、請求そのものを行っていない可能性があります。

発注者にも通知され、写しの交付も請求できる

この通知書は申請者だけに交付されるものではありません。建設工事の発注者に対しても、同じ様式または記載内容を記録した媒体によって通知される仕組みになっています。

また、申請者から通知書の写しの交付を請求することもできます。請求した場合、その写しが適正に交付されたものであることを証明する旨が記載されます。入札参加資格申請などで写しの提出を求められた際に使える仕組みです。

通知書には行政庁の記入欄も設けられています。営業に関する事項や経営状況に関する事項で特記すべきことがあれば、この欄に記載される取り扱いです。数値以外の記載がある場合は、内容を確認しておく必要があります。

経営状況分析結果通知書とは別の書類

経営事項審査では、通知書が2種類届きます。1つは登録経営状況分析機関から届く経営状況分析結果通知書、もう1つが許可行政庁から届く経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書です。

経営状況分析結果通知書にはY点が記載されており、総合評定値を請求する際に許可行政庁へ添付する書類でもあります。入札参加資格の申請などで求められるのは、原則として許可行政庁から届く後者のほうです。

審査基準日と有効期間の読み方

通知書には審査基準日が記載されています。審査基準日は原則として申請日の直前の事業年度終了日、つまり直前の決算日です。

有効期間は審査基準日から1年7か月間です。通知書を受け取った日からではないため、審査に日数がかかった分だけ実際に使える期間は短くなります。

  • 正式名称は経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書
  • 建設業法施行規則の別記様式第25号の15により交付される
  • 発注者に対しても結果が通知される
  • 有効期間は審査基準日から1年7か月で、通知書の受領日が起点ではない

評点欄の各項目は何を意味するのか?

通知書の中心になるのが評点の欄です。並んでいる記号が何を評価した数値なのかを確認します。

総合評定値Pと5つの評点の関係

通知書には、X1・X2・Y・Z・Wという5つの評点と、それらを合成した総合評定値Pが記載されます。Pは5つの評点にそれぞれ定められた係数を掛けて合計した数値です。

記号名称評価している内容
X1完成工事高の評点業種別の年間平均完成工事高
X2自己資本額および平均利益額の評点自己資本額と利払前税引前償却前利益
Y経営状況の評点財務諸表から算出した8つの指標
Z技術力の評点技術職員数と業種別の年間平均元請完成工事高
Wその他の審査項目の評点社会性等に関する8項目の取り組み状況
P総合評定値5つの評点を係数どおりに合計した数値

評点は業種ごとに並ぶ

X1とZは業種ごとに算出されるため、総合評定値も業種ごとに記載されます。土木一式工事と建築一式工事の両方で審査を受けていれば、それぞれの行に別の点数が並びます。

一方で、X2・Y・Wは会社全体の数値から算出されるため、どの業種でも同じ値が入ります。業種によって点数に差が出ている場合、その差はX1とZから生じていることになります。

Wだけがマイナスになることがある

5つの評点のうち、マイナスの値をとりうるのはWだけです。法令遵守の状況や民事再生法・会社更生法の適用の有無が減点項目として設けられているためです。

Yは算出結果が0を下回る場合に0とみなされるため、通知書でマイナスになることはありません。数値の性格が区分ごとに異なる点は、読み解くうえで押さえておきたいところです。

数値の内訳欄はどう読むのか?

評点のほかにも、算出のもとになった数値が記載されています。ここに増減の原因が表れます。

欄読み取れること
技術職員数の内訳資格の区分ごとの人数と、Zが動いた理由
完成工事高業種別の年間平均完成工事高と、2年平均か3年平均かの選択
元請完成工事高発注者から直接請け負った工事の金額とZへの影響
その他の審査項目加点項目ごとの該当の有無と、反映されなかった項目

技術職員数の内訳欄

技術職員数は、一級監理受講者、一級技術者、監理技術者補佐、基幹技能者、二級技術者、その他の技術者という6つの区分ごとに人数が集計されます。区分ごとに1人あたり6点から1点までの点数が割り当てられているため、同じ人数でも区分が違えばZ点は変わります。

この内訳を見ると、Zが動いた理由が人数の増減によるものか、区分の移動によるものかを判断できます。1級資格者が講習を受講した場合、人数は変わらないまま点数が上がることになります。

資格を持っていない社員でも、この欄に載せられる場合があります。

10年以上の実務経験がある人はその他にカウントできるのですが、それを忘れている人は結構います。技術職員の資格分類は1級、2級、その他の3つです。

実務経験によって主任技術者の要件を満たす社員は、その他の技術者として計上できます。通知書のその他の欄が0になっている場合は、計上できる社員がいないかを社内で確認してみる価値があります。

完成工事高と元請完成工事高の欄

完成工事高の欄には、業種別の年間平均完成工事高が記載されます。直前2年の平均と直前3年の平均のどちらを選んだかによって数値が変わるため、選択した区分もあわせて確認します。

元請完成工事高は、発注者から直接請け負った工事に限った金額です。Zの算出に用いられるため、下請中心の年度が続くとこの欄の数値が伸びません。

その他の審査項目の欄

その他の審査項目については、加入や取得の有無が項目ごとに記載されます。加点されているつもりだった項目が反映されていないケースは、この欄を見ることで発見できます。

証明書の有効期限切れや、審査基準日より後に加入したことが原因になっている場合が多く見られます。次の期に向けた確認リストとして使える欄です。

なお、令和8年7月1日施行の改正により、社会保険の加入状況に関する項目は審査の対象から外れました。改正前の通知書と見比べる際は、項目そのものが入れ替わっている点に注意してください。

通知書を受け取ったあとに何をすべきか?

通知書は保管して終わりではありません。受け取った時点でやっておくべきことを整理します。

前期の通知書と並べて増減を確認する

最初にすべきことは、前期の通知書と並べて区分ごとの増減を確認することです。総合評定値だけを比べても、原因までは分かりません。

X1が下がっていれば完成工事高、Yが下がっていれば決算内容、Zが下がっていれば技術職員か元請実績、Wが下がっていれば加点項目の取りこぼしというように、当たりを付けられます。

  • 総合評定値だけでなく、5つの評点それぞれを前期と比較する
  • 技術職員数の内訳を見て、区分の移動と人数の増減を切り分ける
  • その他の審査項目で加点が外れた項目を洗い出す
  • 入札参加資格審査の申請時期と有効期間の関係を確認する

内容に誤りがある場合や基準が改正された場合の再審査

通知された内容に誤りがある場合、建設業法に基づいて経営規模等評価の再審査を申し立てることができます。申立ての手続きは、経営規模等評価申請書と同じ様式を用いて行います。申立ては、建設業法施行規則第20条第1項により通知を受けた日から30日以内に行う必要があります。

審査基準の改正があった場合にも、再審査の仕組みが用いられることがあります。令和8年7月1日施行の改正では、改正前の評価方法で通知を受けた業者が、改正に係る事項について再審査を申し立てられる取り扱いが設けられました。申立ての期限は同条第2項により改正の日から120日以内とされていますが、実際の受付期間は許可行政庁ごとに定めて案内されています。該当する場合は申請先に確認してください。

入札参加資格審査へ進む

通知書が届いたら、次は入札参加資格審査の申請です。発注機関は通知書に記載された総合評定値を客観点数として扱い、独自の主観点数を加えて等級を決定します。

発注機関ごとに申請の受付時期が定められているため、通知書の有効期間と受付時期がかみ合っているかを早めに確認しておくことが有効です。

通知書の理解を公共工事の受注にどうつなげるか

ここまで見てきたとおり、経営事項審査結果通知書は点数を伝えるだけの書類ではありません。どの区分がどう評価されたかが数値で残るため、翌期の経営判断に使える資料になります。

毎年届く通知書を並べていくと、自社の推移が一目で分かるようになります。この積み重ねが、狙う等級から逆算して計画を立てるための土台になります。

  • 通知書は点数の記録であると同時に、翌期の判断材料になる
  • 区分ごとの増減を追うことで、施策の効果を確認できる
  • 記載された総合評定値は入札参加資格審査の客観点数として扱われる
  • 毎年の通知書を並べれば、自社の推移が一目で分かるようになる

ランクだけではありません。帝国データバンクから協力会社を紹介される。銀行からM&A案件を紹介される。仕事をいただける。こうした流れを生み出すきっかけづくりこそが、経営事項審査の作成です。

公共工事の評価は入札の場面だけのもの、と受け止められることがあります。ただ、経営事項審査は決算内容や体制を数値化した結果であり、要件を満たせば会社の規模にかかわらず同じ基準で評価が積み上がる仕組みです。

よくある質問

結果通知書を紛失した場合はどうすればよいですか?

申請者は許可行政庁に対して通知書の写しの交付を請求できます。交付された写しには、適正に交付されたものであることを証明する旨が記載されます。入札参加資格の申請などで原本または写しの提出を求められた場合に利用できる仕組みです。

総合評定値の欄が空欄になっているのはなぜですか?

総合評定値の請求は任意であり、請求しなかった場合は経営規模等評価の結果のみが通知されます。また、請求には経営状況分析結果通知書の添付が必要です。入札参加を予定しているのであれば、経営規模等評価の申請とあわせて請求しておく必要があります。

同じ会社なのに業種によって点数が違うのはなぜですか?

完成工事高を評価するX1と技術力を評価するZが業種ごとに算出されるためです。自己資本額や経営状況、その他の審査項目は会社全体の数値から算出されるため業種による差はありません。業種間の点数差は、工事実績と技術職員の配分から生じています。

結果通知書は誰でも見られるのですか?

経営事項審査の結果は発注者にも通知されるほか、閲覧に供される取り扱いが定められています。公共工事の発注における企業評価の基準となる制度であるため、内容が公開される前提で運用されている点は理解しておく必要があります。

まとめ

経営事項審査結果通知書の正式名称は経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書であり、建設業法施行規則の別記様式第25号の15により交付されます。申請者だけでなく発注者にも通知され、申請者は写しの交付を請求することもできます。

記載されるのは、審査基準日、有効期間、X1・X2・Y・Z・Wの5つの評点、総合評定値P、そして算出のもとになった完成工事高や技術職員数の内訳です。X1とZは業種ごとに算出されるため、業種間の点数差はこの2つから生じます。

受け取ったら、まず前期の通知書と並べて区分ごとの増減を確認します。内容に誤りがある場合や審査基準の改正があった場合には、再審査を申し立てられる仕組みも用意されています。

この記事のまとめ
  • 正式名称は経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書で、発注者にも通知される
  • 有効期間は審査基準日から1年7か月で、通知書の受領日が起点ではない
  • X1とZは業種ごと、X2・Y・Wは会社全体の数値から算出される
  • 前期の通知書と並べて増減を確認し、必要に応じて再審査の申立てを検討する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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