経審の点数(総合評定値P点)の計算方法とは?シミュレーション

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

経営事項審査の点数は、決算内容や技術者の数が変われば動きます。ところが計算の仕組みを知らないままだと、どの取り組みが何点につながるのかが分からず、結果通知書が届いてから増減に気づくことになります。

この記事では、総合評定値Pがどのような式で計算されるのか、X1・X2・Y・Z・Wという5つの評点がそれぞれ何をもとに算出されるのかを整理します。あわせて、ウェイトと最高点から見える配点の意味と、自社の点数を事前にシミュレーションする手順も確認します。数字の裏側を知れば、評点アップに向けた取り組みの優先順位が定まります。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 総合評定値Pの計算式と、X1・X2・Y・Z・Wそれぞれのウェイト
  • 5つの評点がそれぞれ何をもとに、どのような手順で算出されるのか
  • ウェイトと最高点の組み合わせから見える、総合評定値への寄与の大きさ
  • 前期の結果通知書を出発点に、翌期の点数をシミュレーションする進め方
目次

総合評定値Pはどのような式で計算されるのか?

経営事項審査の点数の計算は、最終的に1本の式に集約されます。まずはその式と、式に入る5つの評点の関係を確認します。

総合評定値Pの計算式とウェイト

総合評定値Pは、5つの評点にそれぞれ決められた係数を掛けて合計する形で算出されます。式は次のとおりです。

P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W

係数の合計は1.00になります。つまり総合評定値は、5つの評点を配分どおりに混ぜ合わせた加重平均だと考えると理解しやすくなります。

評点評価される内容ウェイト
X1業種別の年間平均完成工事高0.25
X2自己資本額と利払前税引前償却前利益0.15
Y財務諸表から算出される経営状況0.20
Z技術職員数と業種別の年間平均元請完成工事高0.25
W社会性等に関する8項目の取り組み状況0.15

2つの審査結果を合わせて総合評定値になる

5つの評点は、同じ窓口で出るわけではありません。Yは登録経営状況分析機関が行う経営状況分析の結果として算出され、X1・X2・Z・Wは許可行政庁が行う経営規模等評価の結果として算出されます。

総合評定値の計算は許可行政庁が行う事務であり、請求した場合に通知されます。そのため請求時には、経営状況分析の結果通知書を添付する必要があります。

X・Y・Z・Wはそれぞれどのように算出されるのか?

総合評定値の式に入る前に、各評点そのものが個別の計算を経て求められます。区分ごとに算出の考え方を見ていきます。

評点算出の考え方
X1業種別の年間平均完成工事高を区分表に当てはめて点数化する
X2自己資本額の点数と平均利益額の点数を合計し、2で割る
Y8つの指標から経営状況点数Aを求め、167.3×A+583で算出する
Z技術職員数の点数に5分の4、元請完成工事高の点数に5分の1を掛けて合計する
W8項目の合計点数に10を掛け、200分の175を掛ける

経営規模X1とX2の求め方

X1は、業種別の年間平均完成工事高を区分表に当てはめて点数化したものです。直前2年または直前3年の平均を用い、どちらを選ぶかは全業種で統一する必要があります。

X2は、自己資本額の点数と平均利益額の点数をそれぞれ求め、その合計を2で割った数値です。自己資本額は基準決算の純資産合計、または直前2期の平均から選べます。

経営状況Yの求め方

Yは、財務諸表から算出した8つの指標をもとに経営状況点数Aを求め、そのAを次の式に当てはめて算出されます。0を下回る場合は0とみなされます。

経営状況の評点Y=167.3×A+583

8つの指標は、負債抵抗力・収益性および効率性・財務健全性・絶対的力量という4つの観点に分かれています。決算書の作り方がそのまま点数に反映される区分です。

経審の点数を上げたくなると思います。上げたいとなると、決算書、特にバランスシートですね。これをコントロールするようになります。いわゆるY点、P点と言われるものですが、これを上げたいと考えて実際に上げると、帝国データバンクの評点も上がります。銀行の格付けも上がります。

点数の計算方法を知ることは、経営事項審査のためだけの作業ではありません。決算書のどこが評価されているのかを把握する過程は、金融機関や取引先から見た自社の見え方を整理することにもつながります。

技術力Zの求め方

Zは、技術職員数の点数と、業種別の年間平均元請完成工事高の点数を組み合わせて算出されます。技術職員数の点数に5分の4を掛け、元請完成工事高の点数に5分の1を掛けて足し合わせる形です。

技術職員数の点数は、単純な人数ではなく資格の区分ごとに重みを付けた「技術職員数値」から求められます。1人の職員が技術職員として申請できる業種の数は2つまでという制限があります。

その他の審査項目Wの求め方

Wは、社会性等に関する8つの項目の点数を合計し、その合計に10を掛けたうえで200分の175を掛けて算出されます。合計点数がそのままWになるわけではなく、約8.75倍に換算される仕組みです。

1点の積み上げが評点としては8点以上の差になるため、加入証明書の取得漏れなど小さな取りこぼしが結果に響きます。

計算式から何が分かるのか?

式とウェイトが分かると、どの区分に力を入れるべきかを数字で比較できるようになります。ここでは配点の意味を読み解きます。

ウェイトだけでは区分の重みは測れない

ウェイトはX1とZが0.25で最も大きく、X2とWが0.15で最も小さい配分です。ただし、これは各評点を同じ土俵で比べたときの話であり、実際に総合評定値へ与える影響はもう一段の計算が必要です。

各評点には制度上の上限と下限があります。上限にウェイトを掛けると、その区分が総合評定値へ寄与できる最大値が分かります。

評点最高点ウェイト総合評定値への寄与の上限
X12,309点0.25約577点
X22,280点0.15342点
Y1,595点0.20319点
Z2,441点0.25約610点
W2,073点0.15約311点

総合評定値の上限と下限は積み上げで決まる

上の表の寄与の上限をすべて足し合わせると、総合評定値Pの最高点である2,159点になります。同じように各評点の最低点にウェイトを掛けて合計すると、最低点の163点になります。

この構造から読み取れるのは、寄与の上限が最も大きいのは技術力Zであり、次いで完成工事高X1だという点です。一方で、経営状況Yとその他の審査項目Wは上限が300点台にとどまります。

  • 寄与の上限が大きいのはZとX1で、いずれも実績と人材の積み上げが必要になる
  • YとWは上限が小さいが、決算内容や書類の整備で比較的短い期間でも動かせる
  • Wは最低点がマイナスであり、法令遵守や営業継続の状況によっては減点される
  • 上限が小さい区分でも、等級の境目にいる場合は数十点の差が結果を分ける

1点の積み上げが総合評定値をどれだけ動かすか

実際にどれくらい動くのかを、その他の審査項目Wで確かめてみます。Wは項目の合計点数を8.75倍して評点になるため、合計点数が5点増えると評点は約44点上がる計算です。

この約44点に総合評定値のウェイト0.15を掛けると、総合評定値は6点から7点ほど上がることになります。加点項目を1つ増やす取り組みは、総合評定値では数点の動きにとどまるということです。

数点では意味がないと感じるかもしれませんが、等級の境目にいる場合は話が変わります。まず自社が境目からどれだけ離れているかを知ることが、施策の大きさを決める前提になります。

自社の点数をシミュレーションするにはどう進めるのか?

計算式が分かれば、申請前におおよその点数を見積もることができます。ここでは実際の進め方を手順として整理します。

前期の結果通知書を出発点にする

ゼロから計算するのではなく、前期の経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書に記載された各評点を出発点にするのが現実的です。通知書には区分ごとの評点が記載されているため、変化する部分だけを置き換えれば済みます。

置き換える対象は、完成工事高、自己資本額と利益、技術職員の増減、社会性等の加点項目の増減です。決算がまだ確定していない段階でも、見込みの数字で試算できます。

試算は業種ごとに行う必要があります。X1とZは業種別に算出されるため、複数業種で審査を受けている場合は、伸ばしたい業種を決めてから数字を置き換えるほうが検討が進みます。

シミュレーションの手順

手順を整理すると、次の流れになります。

  • 前期の結果通知書からX1・X2・Y・Z・Wの評点を書き出す
  • 翌期の完成工事高・元請完成工事高・自己資本額・利益の見込みを置く
  • 技術職員の資格取得予定と退職予定を反映させる
  • 社会性等の加点項目のうち、翌期に増減するものを洗い出す
  • 計算式に当てはめて総合評定値を試算し、狙う等級との差を確認する

試算の結果が狙う等級に届かない場合は、どの区分をどれだけ動かせば届くのかを逆算します。ここで初めて、資格取得や決算の組み立てが具体的な数値目標になります。

シミュレーションしてみたらいいのではないでしょうか。1年後の経審は何点になるのか、2年後の経審は何点になるのか。シミュレーションをすれば、財務がこのままだったとしても上のランクに行けるのです。

売上を大きく伸ばさなくても、加点項目の取りこぼしをなくすだけで点数が変わる場合があります。まず現状の延長線上で何点になるのかを把握することが、目標設定の第一歩になります。

点数の計算を理解することが公共工事参入にどうつながるか

ここまで見てきたとおり、総合評定値は5つの評点を重み付けして合計した数値であり、それぞれの評点にも決められた算出方法があります。仕組みを把握すれば、点数は結果ではなく設計できる対象になります。

点数を設計できるようになると、狙う発注機関の等級から逆算して、いつまでに何をするかという計画が立てられます。これは公共工事の受注を安定させるうえでの土台になる考え方です。

  • 総合評定値は5つの評点の加重平均であり、計算方法は公開されている
  • 前期の結果通知書があれば、翌期の点数はおおよそ試算できる
  • 試算と狙う等級との差が、そのまま取り組むべき施策の大きさになる
  • 点数は結果ではなく、計画によって設計できる対象になる

公共工事は実績のある大手企業のもの、と受け止められることがあります。ただ、経営事項審査の評点は算出方法が制度として公開されており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず同じ基準で評価される仕組みです。

よくある質問

総合評定値は業種ごとに計算されるのですか?

完成工事高を評価するX1と技術力を評価するZは業種ごとに算出されるため、総合評定値も審査を申し出た業種ごとに算出されます。1社に1つの点数がつくのではなく、土木一式工事と建築一式工事で別々の点数が通知されることになります。

総合評定値の請求はしなくてもよいのですか?

総合評定値の請求は任意とされています。ただし、多くの発注機関が入札参加資格審査で総合評定値を用いるため、公共工事の入札に参加する目的であれば経営規模等評価の申請とあわせて請求するのが一般的です。請求時には経営状況分析の結果通知書の添付が必要です。

計算式は毎年変わるのですか?

総合評定値の計算式そのものは頻繁には変わりませんが、審査項目や配点は改正されることがあります。令和8年7月1日施行の改正では、その他の審査項目に新しい加点項目が追加され、社会保険加入に関する項目が削除されました。申請前に最新の基準を確認してください。

シミュレーションの数値と実際の結果がずれることはありますか?

ずれることはあります。完成工事高の計上区分や技術職員の要件の判定など、審査の過程で取り扱いが変わる項目があるためです。判断に迷う項目は、申請先の許可行政庁の担当窓口に事前に確認しておくと、想定との差を小さくできます。

まとめ

総合評定値Pは、X1・X2・Y・Z・Wの5つの評点にそれぞれ0.25・0.15・0.20・0.25・0.15を掛けて合計した数値です。係数の合計は1.00であり、加重平均の形になっています。

各評点にも個別の算出方法があります。X2は自己資本額と平均利益額の点数の平均、Yは経営状況点数Aから167.3×A+583で算出、Zは技術職員数の点数に5分の4を掛けたものと元請完成工事高の点数に5分の1を掛けたものの合計、Wは合計点数の約8.75倍です。

最高点にウェイトを掛けると、総合評定値への寄与の上限が区分ごとに見えてきます。この構造を踏まえたうえで前期の結果通知書を出発点に試算すれば、翌期の点数をあらかじめ把握できます。

この記事のまとめ
  • 総合評定値PはP=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×Wで算出される
  • Yは経営状況分析機関、X1・X2・Z・Wは許可行政庁が算出し、総合評定値は請求により通知される
  • 最高点にウェイトを掛けると寄与の上限が分かり、ZとX1が大きくYとWは300点台にとどまる
  • 前期の結果通知書を出発点に変化する項目だけを置き換えれば、翌期の点数を試算できる

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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