建築一式工事業で建設業許可を取るには?取得条件と専任技術者資格


建築一式工事業は、建設業法上の29業種のうち「建築一式工事」を担う業種です。同じ一式工事である土木一式工事業とは異なり、軽微な建設工事や特定建設業許可などの金額基準がそれぞれ別の水準に設定されている点が特徴です。
この記事では、建築一式工事業だけ金額基準が異なる理由と具体的な金額、建設業許可の取得要件、営業所技術者(旧・専任技術者)になれる資格の限定について整理し、公共工事参入への接続点にも触れます。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 建築一式工事業は元請として総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事を担う業種である
- 軽微な建設工事・特定建設業の下請代金・監理技術者等の専任は、それぞれ別の条文で建築一式工事だけ高い金額基準が定められている
- 建設業許可には経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性という4つの要件がある
- 建築一式工事業は指定建設業に該当し、特定建設業許可では営業所技術者等が国家資格者等に限定される
建築一式工事業とはどのような工事を行う建設業許可か?
建設業法は建設工事を29業種に区分しており、建築一式工事業はそのうちの「一式工事」2業種の一つです。まず、建築一式工事業がどのような工事を対象にした業種なのかを簡潔に確認します。
建築一式工事の定義はどのように整理されているか
国土交通省の告示では、建築一式工事は「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」と定義されています。土木一式工事と同様、個別の専門工事を単体で行うのではなく、複数の工種を組み合わせて建築物を完成させる、元請的な総合マネジメント業務という位置づけです。
この一式工事という区分の考え方自体は土木一式工事業と共通しますが、建築一式工事業には後述するとおり、軽微な建設工事や特定建設業許可などの金額基準が他の業種とは別の水準で定められているという特徴があります。
建築一式工事業は指定建設業7業種の一つに含まれるか
建築一式工事業は、施工技術の総合性等を考慮して政令で定める「指定建設業」7業種(土木一式工事業・建築一式工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業)の一つに該当します。建設業法施行令上の条文表記は「建築工事業」という略称ですが、実務・許可行政上は「建築一式工事業」として扱われます。
- 建築一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事と定義されている
- 個別の専門工事を単体で行うのではなく、複数の工種を組み合わせて建築物を完成させる元請的な総合マネジメント業務という位置づけである
- 軽微な建設工事や特定建設業許可などの金額基準が、他の業種とは別の水準で定められている
- 指定建設業7業種(土木一式工事業・建築一式工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業)の一つに該当する
- 建設業法施行令上の条文表記は「建築工事業」という略称だが、実務・許可行政上は建築一式工事業として扱われる
この指定建設業への該当が、後述する特定建設業許可における営業所技術者要件の限定につながります。
建築一式工事業だけ金額基準が異なるのはなぜか?
建設業法には、金額を基準にいくつかの規定が置かれています。建築一式工事業では、これらの金額基準のうち複数が他業種より高い水準に設定されている点に注意が必要です。それぞれ別の条文に基づく別の基準であるため、混同しないよう整理します。
軽微な建設工事に該当する金額の基準はどうなっているか
建設業許可が不要な「軽微な建設工事」の基準は、建設業法施行令第1条の2第1項に定められています。建築一式工事の場合、工事一件の請負代金の額が1,500万円に満たない工事、または延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事は、建設業許可がなくても請け負うことができます。建築一式工事以外の業種では、この基準は500万円未満です。
ここでいう「木造」は建築基準法上、主要構造部が木造であるものを指し、「住宅」は住宅・共同住宅・店舗等併用住宅で延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するものを指します。契約を分割している場合は合計額で、注文者が材料を提供する場合はその市場価格等を加えた額で軽微な建設工事に該当するかを判断します。
特定建設業の下請代金の基準はどうなっているか
発注者から直接請け負った工事について、下請契約の総額が一定額以上になる場合は、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要です。この基準は建設業法施行令第2条に定められており、令和7年2月1日施行の現行基準では、建築一式工事以外の業種は5,000万円以上、建築一式工事は8,000万円以上とされています。この金額には、元請負人が提供する材料等の価格は含まれません。
監理技術者等の専任が必要になる金額の基準はどうなっているか
主任技術者または監理技術者の専任配置が必要となる請負代金の基準は、建設業法施行令第27条に定められています。令和7年2月1日施行の現行基準では、建築一式工事以外の業種は4,500万円以上、建築一式工事は9,000万円以上です。
施行令第1条の2(軽微な建設工事)・第2条(特定建設業の下請代金)・第27条(監理技術者等の専任)はそれぞれ別条文であり、金額水準もすべて別基準である点を押さえておく必要があります。
| 金額基準 | 根拠条文 | 建築一式工事 | 建築一式工事以外の業種 |
|---|---|---|---|
| 軽微な建設工事(許可が不要な範囲) | 施行令第1条の2第1項 | 1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅を建設する工事 | 500万円未満 |
| 特定建設業の許可が必要になる下請代金の総額 | 施行令第2条 | 8,000万円以上 | 5,000万円以上 |
| 監理技術者等の専任が必要になる請負代金 | 施行令第27条 | 9,000万円以上 | 4,500万円以上 |
これらの金額基準はいつどのように引き上げられてきたか
特定建設業の下請代金や監理技術者等の専任にかかる金額基準は、令和5年1月1日と令和7年2月1日の2段階で引き上げられてきました。
令和4年11月18日付の国土交通省事務連絡によれば、令和5年1月1日施行の改正で、特定建設業許可等の下請代金額の下限は建築一式工事の場合6,000万円から7,000万円へ、監理技術者等の専任を要する請負代金額の下限は建築一式工事の場合7,000万円から8,000万円へ、それぞれ引き上げられています。
なお、令和2年10月1日施行の改正は経営業務管理責任者の要件見直しや監理技術者補佐制度の導入が中心であり、この金額基準自体は変更されていません。金額が変わったのは令和5年1月1日と令和7年2月1日の2回である点を押さえておくと、制度の変遷を誤解しにくくなります。
建築一式工事業で建設業許可を取得するにはどの要件を満たす必要があるか?
建設業許可を受けるには、建設業法第7条に定める4つの要件を満たす必要があります。これは建築一式工事業に限らず、全業種に共通する枠組みです。
一般建設業の許可要件にはどのようなものがあるか
一般建設業の許可要件は、(1)経営業務の管理を適正に行うに足りる体制を有すること、(2)営業所ごとに専任の「営業所技術者」を置くこと、(3)誠実性、(4)財産的基礎又は金銭的信用(自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、または過去5年間の許可を受けた継続営業実績のいずれか)を満たすことの4つです。
かつて個人要件とされていた「経営業務の管理責任者」は廃止され、常勤役員等による適正な経営体制の要件に変わっています。
特定建設業許可が必要になるのはどのような場合か
発注者から直接請け負う建築一式工事について、下請契約の総額が8,000万円以上となる場合は、一般建設業の許可では下請契約を締結できず、特定建設業の許可が必要になります。
特定建設業の許可要件は、(1)経営業務の管理体制、(2)営業所ごとに専任の「特定営業所技術者」を置くこと、(3)誠実性、(4)財産的基礎(欠損の額が資本金の20%を超えない、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上)を満たすことの4つで、財産的基礎の基準は一般建設業より厳格です。
| 要件 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 経営業務の管理 | 経営業務の管理を適正に行うに足りる体制を有すること | 経営業務の管理体制を有すること |
| 営業所の技術者 | 営業所ごとに専任の営業所技術者を置くこと | 営業所ごとに専任の特定営業所技術者を置くこと |
| 誠実性 | 満たすことが必要 | 満たすことが必要 |
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、または過去5年間の許可を受けた継続営業実績のいずれか | 欠損の額が資本金の20%を超えない、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上 |
建築一式工事業の営業所技術者になれる資格にはどのようなものがあるか?
各営業所に専任で配置する技術者の呼称と、特定建設業許可を取る場合の限定について整理します。
「専任技術者」から「営業所技術者等」への呼称変更とは何か
各営業所に専任で配置する技術者は、令和6年12月13日施行の改正により「専任技術者」から「営業所技術者等」という名称に変更されています。一般建設業では営業所技術者、特定建設業では特定営業所技術者と呼ばれますが、要件の内容そのものに変更はなく、呼称の変更にとどまります。
「専任技術者」という言葉で検索する場合でも、現行の法令上の名称は営業所技術者等である点を押さえておく必要があります。
指定建設業として特定建設業許可を取る場合、実務経験ルートは使えるか
建築一式工事業は前述のとおり指定建設業7業種の一つに該当します。
指定建設業について特定建設業の許可を受ける場合、営業所技術者等は国家資格者等または国土交通大臣が同等以上の能力を有すると認定した者に限られ、実務経験による代替は認められません(建設業法第15条第2号ただし書)。これに対し、一般建設業(法第7条第2号)にはこの限定がなく、指定学科修了と実務経験、または実務経験のみ10年以上といったルートも利用できます。
つまり、建築一式工事業で特定建設業許可を取得する場合は、国家資格保有者または大臣認定者でなければ営業所技術者等になれず、実務経験のみでは要件を満たせません。具体的にどの国家資格が建築一式工事業の営業所技術者として認められるかは建設業法施行規則の定める基準によって業種ごとに定められているため、詳細は国土交通省の公表資料で確認することが必要です。この違いは、一般建設業から特定建設業へ許可を切り替える際に見落とされやすい点です。
- 令和6年12月13日施行の改正により、「専任技術者」から「営業所技術者等」に名称が変更された
- 一般建設業では営業所技術者、特定建設業では特定営業所技術者と呼ばれ、要件の内容そのものに変更はない
- 指定建設業について特定建設業の許可を受ける場合、営業所技術者等は国家資格者等または国土交通大臣が同等以上の能力を有すると認定した者に限られる
- 一般建設業にはこの限定がなく、指定学科修了と実務経験、または実務経験のみ10年以上といったルートも利用できる
建築一式工事業の金額基準の高さは公共工事参入にどうつながるか?
ここまで見てきたとおり、建築一式工事業では軽微な建設工事・特定建設業の下請代金・監理技術者等の専任という3つの金額基準がいずれも他業種より高く設定されています。これは、建築一式工事が扱う建築物の工事規模が大きくなりやすいことを制度上反映したものであり、建築一式工事業という業種そのものの位置づけを踏まえて設けられた基準と捉えることができます。
こうした金額基準の高さや要件の細かさから、「建築一式工事業で公共工事に参入するのは自社には無理だ」と感じることもあるかもしれません。ただ、これらの基準はいずれも制度上明確に定められた条件であり、要件を満たせば会社の規模にかかわらず入札に参加できる仕組みです。自社の状況がどの基準に該当するかを一つずつ整理していくことが、参入検討の出発点になります。
- 軽微な建設工事・特定建設業の下請代金・監理技術者等の専任という3つの金額基準が、いずれも他業種より高く設定されている
- これは、建築一式工事が扱う建築物の工事規模が大きくなりやすいことを制度上反映したものである
- これらの基準はいずれも制度上明確に定められた条件であり、要件を満たせば会社の規模にかかわらず入札に参加できる
- 自社の状況がどの基準に該当するかを一つずつ整理していくことが、参入検討の出発点になる
よくある質問
- 建築一式工事業の軽微な建設工事の基準は、他の業種と同じですか?
-
同じではありません。建築一式工事以外の業種は請負代金500万円未満が軽微な建設工事の基準ですが、建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅を建設する工事が対象となり、他業種より高い基準が設定されています。
- 特定建設業許可が必要になる下請代金の基準は、建築一式工事だといくらですか?
-
令和7年2月1日施行の現行基準では、建築一式工事は8,000万円以上です。建築一式工事以外の業種は5,000万円以上であり、建設業法施行令第2条にそれぞれの基準が定められています。
- 建築一式工事業で特定建設業許可を取る場合、実務経験だけで営業所技術者になれますか?
-
なれません。建築一式工事業は指定建設業に該当するため、特定建設業許可では営業所技術者等が国家資格者等または国土交通大臣認定者に限定され、実務経験による代替は認められていません。一般建設業であれば実務経験ルートも利用できます。
- 「専任技術者」という呼び方は現在も使われていますか?
-
令和6年12月13日施行の改正により、法令上の名称は「営業所技術者等」に変更されています。一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者と呼ばれますが、これは呼称の変更であり、要件自体に変更はありません。
まとめ
建築一式工事業は、元請として総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事を担う業種です。軽微な建設工事(1,500万円未満・木造住宅150㎡未満)、特定建設業の下請代金(8,000万円以上)、監理技術者等の専任(9,000万円以上)という3つの金額基準が、いずれも他業種より高い水準に設定されている点が特徴です。
建設業許可の取得には、経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性という4つの要件を満たす必要があります。建築一式工事業は指定建設業に該当するため、特定建設業許可を取る場合は営業所技術者等が国家資格者等に限定され、実務経験による代替は認められません。
これらの金額基準や要件は、建築一式工事の業種特性を踏まえた制度上の基準であり、要件を満たせば規模にかかわらず参入を検討できる仕組みです。自社がどの基準に該当するかを確認することが、公共工事参入への第一歩になります。
- 建築一式工事業は元請として総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する業種である
- 軽微な建設工事・特定建設業の下請代金・監理技術者等の専任は、それぞれ別条文で建築一式工事だけ高い金額基準が定められている
- 許可には経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性の4要件を満たす必要がある
- 指定建設業に該当するため、特定建設業許可では営業所技術者等が国家資格者等に限定される
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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