土木一式工事業で建設業許可を取るには?取得要件と資格を大公開

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

土木一式工事業は、建設業法上の29業種の中でも「土木一式工事」と「建築一式工事」という2つの一式工事の一方に位置づけられる業種です。道路・河川・上下水道といった公共土木工事の多くが、この土木一式工事として発注されています。

一方で、「一式の許可を取れば専門工事も含めて何でも請け負える」という誤解も少なくありません。この記事では、土木一式工事業の定義から取得要件、営業所技術者(旧・専任技術者)になれる資格までを整理し、公共工事参入への接続点にも触れます。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 土木一式工事業は、元請として総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物を建設する工事を担う業種である
  • 一式工事の許可があっても、附帯工事に該当しない専門工事を500万円以上請け負う場合は別途その業種の許可が必要になる
  • 建設業許可には経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性という4つの要件がある
  • 土木一式工事業は指定建設業に該当し、特定建設業許可では営業所技術者を国家資格者等に限定する規定がある
目次

土木一式工事業とはどのような工事を行う建設業許可か?

建設業法は建設工事を29業種に区分しており、土木一式工事業はそのうちの「一式工事」2業種の一つです。まず、土木一式工事業がどのような工事を対象にした業種なのかを確認します。

土木一式工事の定義はどのように整理されているか

国土交通省の告示では、土木一式工事は「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む)」と定義されています。個別の専門工事を単体で行うのではなく、複数の工種を組み合わせて土木工作物を完成させる、元請的な総合マネジメント業務という位置づけである点が特徴です。

同様に、建築一式工事も「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」と定義されており、2つの一式工事は対象物の違いはあるものの、いずれも総合的なマネジメントを担う業種として位置づけられています。

建設業の29業種の中で一式工事はどのように位置づけられるか

建設業は、土木一式工事・建築一式工事という2つの一式工事と、27の専門工事を合わせた計29業種に分類されています。許可は建設業法第3条第3項により、この29業種ごとに区分して与えられる仕組みです。なお、平成28年6月に解体工事業が専門工事の一つとして新設され、28業種から29業種に拡大した経緯があります。

また、記事タイトルや検索されやすい呼び方としては「土木一式工事業」が広く使われていますが、建設業法施行令の条文上は「土木工事業」という表記が用いられている点にも触れておきます。両者は同じ業種を指す呼び方の違いであり、内容が異なるわけではありません。

  • 土木一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む)と定義されている
  • 建築一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事と定義されている
  • 建設業は2つの一式工事と27の専門工事を合わせた計29業種に分類され、許可は業種ごとに区分して与えられる
  • 平成28年6月に解体工事業が専門工事の一つとして新設され、28業種から29業種に拡大した
  • 建設業法施行令の条文上は「土木工事業」という表記が用いられており、土木一式工事業と同じ業種を指す

「土木一式工事業の許可があれば専門工事も何でも請け負える」は誤解か?

一式工事の許可を持っていれば専門工事も含めて幅広く対応できる、と受け止められることがあります。しかし、この理解には注意が必要な部分があります。

附帯工事の例外はどこまで認められるか

建設業法第4条では、許可を受けた建設業に係る工事を請け負う場合、その工事に「附帯する」他の建設業に係る工事は、別途その業種の許可がなくても請け負えると定めています。これが「附帯工事」の例外です。逆に言えば、附帯工事に該当しない独立した専門工事を軽微な工事の範囲を超えて請け負う場合は、その専門工事業の許可が別途必要になります。

土木一式工事業の許可だけを根拠に、附帯工事の範囲を超えた専門工事まで幅広く請け負えると考えるのは、この条文の趣旨からすると誤解にあたります。

500万円以上の専門工事を請け負う場合の考え方はどうなるか

建築一式工事以外の建設工事では、工事一件の請負代金が500万円未満であれば、そもそも建設業許可自体が不要な「軽微な建設工事」に該当します(建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)。

裏を返せば、土木一式工事業の許可を持っていても、附帯工事に該当しない専門工事、たとえば舗装工事やとび・土工・コンクリート工事などを500万円以上の規模で独立して請け負う場合には、その専門工事業の許可を別途取得する必要があります。

  • 許可を受けた工事に附帯する他業種の工事は、その業種の許可がなくても請け負える
  • 附帯工事に該当しない専門工事は、500万円未満なら軽微な工事として許可不要
  • 附帯工事に該当せず500万円以上となる専門工事は、その業種の許可が別途必要

この500万円・1,500万円という軽微な工事の基準は、特定建設業の下請代金基準(5,000万円以上等)や監理技術者の専任基準(4,500万円以上等)とは別の条文に基づく別の基準です。混同しないよう、どの基準について述べているかを意識しておく必要があります。

一式工事と専門工事のどちらが公共工事に向いているかは、見方が分かれるところです。

専門工事業の方が一式工事業よりも公共工事での成長効果が大きいため、向いていると考えます。

土木一式工事業の許可だけに頼らず、自社の得意な工種について専門工事業の許可も併せて検討することが、公共工事での事業機会を広げる選択肢の一つになり得ます。

土木一式工事業の建設業許可を取得するにはどの要件を満たす必要があるか?

建設業許可を受けるには、建設業法第7条に定める4つの要件を満たし、かつ第8条の欠格要件に該当しないことが必要です。これは土木一式工事業に限らず、全業種に共通する枠組みです。

経営業務の管理体制の要件とはどのようなものか

経営業務の管理体制については、法人であれば常勤役員1名、個人事業主であれば本人または支配人1名が、建設業に関し5年以上の経営業務管理責任者としての経験を持つこと、またはこれに準ずる地位での経験を持つことのいずれかに該当する必要があります。令和2年の改正により、複数名の体制で要件を満たすパターンも認められるようになりました。

これに加えて、健康保険・厚生年金・雇用保険といった適正な社会保険への加入も要件の一つです。

財産的基礎の要件はどのように判断されるか

財産的基礎の要件は、一般建設業の場合、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、過去5年間の継続営業実績のいずれか1つを満たせば足ります。

誠実性の要件はどのように判断されるか

誠実性の要件は、請負契約の締結や履行において不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないことを求めるもので、法人の役員等にも適用されます。

欠格要件に該当するのはどのような場合か

欠格要件には、破産者で復権を得ていない者、許可取消しから5年を経過していない者、暴力団員またはその離脱後5年を経過していない者などが含まれ、役員や使用人がこれに該当する場合は法人・個人事業主とも許可を受けられません。

  • 経営業務の管理体制として、常勤役員1名または個人事業主本人が建設業に関し5年以上の経営業務管理責任者としての経験を持つことなどに該当すること
  • 令和2年の改正により、複数名の体制で要件を満たすパターンも認められている
  • 健康保険・厚生年金・雇用保険といった適正な社会保険に加入していること
  • 財産的基礎として、自己資本500万円以上・500万円以上の資金調達能力・過去5年間の継続営業実績のいずれか1つを満たすこと
  • 誠実性として、請負契約の締結や履行において不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと
  • 破産者で復権を得ていない者などの欠格要件に該当しないこと

特定建設業許可が必要になるのはどのような場合か

下請契約の総額が一定額以上になる場合は、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要です。土木一式工事業を含む建築一式工事以外の業種では、発注者から直接請け負った1件の工事について下請契約の総額が5,000万円以上となる場合が特定建設業の対象です(建築一式工事は8,000万円以上・施行令第2条)。

特定建設業では、財産的基礎の要件も一般建設業より厳格な複数の基準を満たす必要があるとされています。

土木一式工事業の営業所技術者になれる資格にはどのようなものがあるか?

各営業所に専任で配置する技術者は、令和6年12月13日施行の改正により「専任技術者」から「営業所技術者等」という名称に変更されています。一般建設業では営業所技術者、特定建設業では特定営業所技術者と呼ばれますが、要件の内容自体に変更はありません。ここでは、土木一式工事業で認められる主なルートを確認します。

国家資格の保有で営業所技術者になるにはどのような資格が認められるか

建設業法施行規則が定める資格基準の表では、土木一式工事業(土木工事業)の欄に、1級・2級の建設機械施工管理または土木施工管理の第二次検定合格者(2級土木施工管理の場合は検定種別を「土木」とするものに限る)が挙げられています。

また、技術士法による第二次試験のうち、建設部門、農業部門(選択科目「農業農村工学」)、森林部門(選択科目「森林土木」)、水産部門(選択科目「水産土木」)、総合技術監理部門の合格者も対象です。

  • 1級・2級の建設機械施工管理の第二次検定合格者
  • 1級・2級の土木施工管理の第二次検定合格者(2級は検定種別を「土木」とするものに限る)
  • 技術士法による第二次試験のうち建設部門の合格者
  • 技術士法による第二次試験のうち農業部門(選択科目「農業農村工学」)、森林部門(選択科目「森林土木」)、水産部門(選択科目「水産土木」)の合格者
  • 技術士法による第二次試験のうち総合技術監理部門の合格者

指定建設業として特定建設業許可を取る場合、実務経験ルートは使えるか

土木一式工事業は、施工技術の総合性等を考慮して政令で定める「指定建設業」7業種(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業)の一つに該当します。

指定建設業について特定建設業の許可を受ける場合、営業所技術者等は国家資格者等または国土交通大臣が同等以上の能力を有すると認定した者に限られ、実務経験による代替は認められません(建設業法第15条第2号ただし書)。

つまり、土木一式工事業で特定建設業許可を取得する場合は、前述の技術検定(1級)または技術士の国家資格保有者(または大臣認定者)でなければ営業所技術者等になれず、実務経験のみでは要件を満たせません。これに対し、一般建設業(法第7条第2号)にはこの限定がなく、指定学科修了と実務経験、または実務経験のみ10年以上といったルートも利用できます。この違いは、一般建設業から特定建設業へ許可を切り替える際に見落とされやすい点です。

土木一式工事業の許可は公共工事参入にどうつながるか?

ここまで見てきた土木一式工事業の定義や取得要件は、単体で完結する手続きではなく、公共工事という受注機会に参入するための土台という位置づけで捉えることができます。道路・河川・上下水道など、公共土木工事の多くは土木一式工事として発注されており、この許可の取得は元請として入札に参加するための制度的な入口の一つです。

公共工事は、大手や実績のある会社だけが対応できるもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。専門工事に強みを持つ会社が、土木一式工事業とあわせて専門工事業の許可を取得し、公共工事での事業機会を広げていく進め方も選択肢の一つになります。

  • 道路・河川・上下水道など、公共土木工事の多くは土木一式工事として発注されている
  • 土木一式工事業の許可の取得は、元請として入札に参加するための制度的な入口の一つである
  • 入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる
  • 自社の得意な工種について専門工事業の許可も併せて取得し、公共工事での事業機会を広げる進め方も選択肢になる

よくある質問

土木一式工事業の許可があれば、専門工事も金額を問わず請け負えますか?

請け負えません。附帯工事に該当しない専門工事を500万円以上の規模で独立して請け負う場合は、その専門工事業の許可を別途取得する必要があります。土木一式工事業の許可は、あくまでその業種の工事範囲を対象としたものです。

土木一式工事業と土木工事業は違う業種ですか?

同じ業種を指す呼び方の違いです。建設業法別表第一の建設工事の種類としては「土木一式工事」、建設業法施行令の指定建設業の列挙では「土木工事業」という表記が使われていますが、対象となる業種は同一です。

土木一式工事業で特定建設業許可を取る場合、実務経験だけで営業所技術者になれますか?

なれません。土木一式工事業は指定建設業に該当するため、特定建設業許可では営業所技術者等が国家資格者等または国土交通大臣認定者に限定され、実務経験による代替は認められていません。一般建設業であれば実務経験ルートも利用できます。

「専任技術者」という呼び方は現在も使われていますか?

令和6年12月13日施行の改正により、法令上の名称は「営業所技術者等」に変更されています。一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者と呼ばれますが、これは呼称の変更であり、要件自体に変更はありません。

まとめ

土木一式工事業は、元請として総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物を建設する工事を担う業種であり、道路・河川・上下水道など公共土木工事の多くがこの業種として発注されています。一式工事の許可があっても、附帯工事に該当しない専門工事を500万円以上請け負う場合は、その業種の許可が別途必要になる点に注意が必要です。

建設業許可の取得には、経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性という4つの要件を満たす必要があります。土木一式工事業は指定建設業に該当するため、特定建設業許可を取る場合は営業所技術者等が国家資格者等に限定され、実務経験による代替は認められません。

これらの許可要件の整理は、公共工事という受注機会に参入するための土台です。自社の得意な工種に応じて専門工事業の許可も併せて検討することが、参入後の事業機会を広げる選択肢になります。

この記事のまとめ
  • 土木一式工事業は元請として総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物を建設する業種である
  • 一式工事の許可があっても、附帯工事に該当しない専門工事は500万円以上なら別途その業種の許可が必要である
  • 許可には経営業務の管理体制・営業所技術者・財産的基礎・誠実性の4要件を満たす必要がある
  • 指定建設業に該当するため、特定建設業許可では営業所技術者等が国家資格者等に限定される

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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