監理技術者の専任義務とは?主任技術者との違いや配置要件を解説


公共工事の元請として工事を進める際、「監理技術者」と「専任」という条件がどう関わるのか整理しきれていない、という声を聞くことがあります。主任技術者との違いや専任が必要になる金額の基準は、根拠となる条文がそれぞれ異なるため、混同されやすい部分です。
この記事では、監理技術者と主任技術者の違い、設置・専任それぞれの条件、資格者証や運用ルールを、建設業法・建設業法施行令の条文に沿って整理します。体制整備が公共工事参入のどの段階にあたるかもあわせて確認します。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 監理技術者と主任技術者は、置くべき工事の要件や資格者証の要否が異なる
- 監理技術者の設置義務は、下請代金の総額が施行令第2条の基準額以上になると生じる
- 専任義務は施行令第27条の基準額であり、設置義務の基準額とは別の条文で定められている
- 専任配置には資格者証・講習受講という要件があり、兼任を認める特例も存在する
監理技術者とは何か?主任技術者との違いは?
建設業者は、請け負った建設工事を施工するにあたり、施工の技術上の管理をつかさどる主任技術者を工事現場に置かなければなりません。
これは金額の基準に関わらず、建設業許可を受けたすべての建設業者・すべての工事現場に共通する義務です。一方、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者が、下請契約の請負代金の総額について政令で定める金額以上の工事を施工する場合は、主任技術者に代えて監理技術者を置かなければならないと定められています。
つまり主任技術者は原則としてすべての工事現場に必要な存在であるのに対し、監理技術者は「元請」かつ「下請代金の総額が一定基準以上」という条件を満たす場合に限って必要になるという位置づけの違いがあります。両者を同時に置くという制度ではなく、基準額以上の工事では監理技術者が主任技術者に代わって配置される形になります。
主任技術者と監理技術者は現場の職務内容そのものでは区別されない
主任技術者・監理技術者はいずれも、工事現場における施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理、および施工に従事する者への技術上の指導監督という職務を担うと定められています。現場で行う職務の内容自体に、条文上の違いは設けられていません。両者の違いは、置くべき工事の規模・要件と、資格者証や講習受講義務の有無という部分にあります。
監理技術者だけに課される資格者証・講習受講という条件
監理技術者には、資格者証の交付を受けていること、および国土交通大臣の登録を受けた講習(監理技術者講習)を受講していることが、専任配置の要件として定められています。主任技術者にはこうした資格者証・講習受講義務の規定はなく、この点が制度上の明確な違いです。資格者証・講習の詳細は後述する見出しであらためて整理します。
| 項目 | 主任技術者 | 監理技術者 |
|---|---|---|
| 置くべき工事 | 建設業許可を受けたすべての建設業者のすべての工事現場 | 元請かつ下請契約の請負代金の総額が政令で定める金額以上の工事 |
| 現場での職務内容 | 施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理と技術上の指導監督 | 施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理と技術上の指導監督 |
| 資格者証・講習受講 | 条文上の規定はない | 資格者証の交付と監理技術者講習の受講が専任配置の要件 |
監理技術者が必要になる条件とは?下請代金の総額基準を解説
監理技術者の設置義務は、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、その工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の総額について、政令で定める金額以上になる場合に生じます。この金額基準は建設業法施行令第2条で定められています。
現行の基準は、下請代金の総額が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)です。この基準額は、特定建設業許可が必要になる下請代金の総額基準と同一の条文(施行令第2条)にもとづいています。
監理技術者の設置義務は「特定建設業者が、施行令第2条の金額以上の下請契約を締結する場合」に生じる仕組みのため、結果として特定建設業許可が必要になる基準額と、監理技術者の設置が必要になる基準額は一致します。
下請代金の総額基準は過去に段階的な改正を経ている
この基準額は、令和4年12月31日までは4,000万円(建築一式6,000万円)、令和5年1月1日からは4,500万円(建築一式7,000万円)、令和7年2月1日からは5,000万円(建築一式8,000万円、現行)という形で段階的に引き上げられてきました。過去の資料や説明を参照する際は、どの時点の基準額かを確認したうえで読む必要があります。
| 時期 | 下請代金の総額基準 | 建築一式工事の基準額 |
|---|---|---|
| 令和4年12月31日まで | 4,000万円 | 6,000万円 |
| 令和5年1月1日から | 4,500万円 | 7,000万円 |
| 令和7年2月1日から(現行) | 5,000万円 | 8,000万円 |
専任が必要になる基準額とは別条文である点に注意
後述するとおり、監理技術者の「専任」が必要になる基準額は施行令第27条で定められており、ここで扱った設置義務の基準額(施行令第2条)とは別の条文・別の金額です。
基準額が近い数値であるため混同しやすい部分ですが、「監理技術者を置くかどうか」の基準と「置いた監理技術者を専任にするかどうか」の基準は、根拠となる条文が異なる別のルールとして押さえておく必要があります。
監理技術者の専任が必要になる条件とは?
建設業法第26条第3項では、公共性のある施設もしくは工作物、または多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事について、主任技術者または監理技術者を工事現場ごとに専任の者としなければならないと定められています。
この「重要な建設工事」に該当する請負代金の基準は、建設業法施行令第27条第1項により、工事一件の請負代金の額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は9,000万円以上)と定められています。これは前段で扱った監理技術者の設置義務の基準額(施行令第2条・5,000万円以上、建築一式8,000万円以上)とは別の条文・別の基準であるため、記事や資料を読む際にはどちらの基準について書かれているかを区別する必要があります。
専任義務の対象となる施設・工作物の範囲
施行令第27条第1項の対象施設には、国や地方公共団体が注文者となる施設のほか、学校・図書館・美術館・博物館・展示場、社会福祉施設・病院・診療所、集会場・公会堂・市場・百貨店・事務所、ホテル・旅館・共同住宅、工場・倉庫など、多岐にわたる施設・工作物が列挙されています。
個人住宅(戸建て)単体は列挙対象に明示的には含まれていませんが、条文上「対象外」と明記された文言までは確認できていないため、個別の工事内容については発注者や専門家に確認しながら判断することが望まれます。
専任義務には兼任を認める特例がある
建設業法第26条第3項ただし書きにより、請負代金が政令で定める金額未満で、工事現場間の往来・連絡体制など国土交通省令の基準を満たし、情報通信技術を用いて現場確認等の職務を行える体制が整備されている場合、または工事現場に監理技術者を補佐する者(施行令第29条の要件を満たす者)を専任で配置した場合には、監理技術者が専任でなくてよい取り扱いが認められています。
ただし、この特例が適用される工事現場の数には上限があり、建設業法施行令第30条により、同一の主任技術者または監理技術者を置くことができる工事現場の数の上限は2と定められています。
- 請負代金が政令で定める金額未満であること
- 工事現場間の往来・連絡体制など国土交通省令の基準を満たしていること
- 情報通信技術を用いて現場確認等の職務を行える体制が整備されていること、または監理技術者を補佐する者を工事現場に専任で配置していること
- 特例を適用できる工事現場の数は施行令第30条により2が上限であること
なお「令和2年10月1日の改正で専任の金額基準が3,500万円から変わった」という理解は誤りです。令和2年10月1日施行の改正建設業法は、この監理技術者補佐制度の導入が中心であり、金額基準そのものは変更していません。3,500万円から4,000万円への変更は令和5年1月1日施行によるものであるため、混同しないよう注意が必要です。
監理技術者資格者証・専任配置の運用ルールは?
国土交通大臣は、監理技術者資格を有する者の申請にもとづき、監理技術者資格者証を交付します。資格者証の有効期間は5年であり、申請により更新することができます。国土交通大臣は指定資格者証交付機関を指定し、交付・更新に関する事務を行わせることができるとされており、実務上の交付事務はこうした指定機関を通じて行われる運用になっています。
専任で配置する監理技術者は、資格者証の交付を受けている者であって、国土交通大臣の登録を受けた講習(監理技術者講習)を受講した者でなければなりません。実務では「講習受講後5年以内であること」といった期限が語られることもありますが、この記事で参照した条文本文の範囲では、そうした期限の明記までは確認できていません。運用の細目については、申請先や指定機関の最新の案内で個別に確認することが前提になります。
- 監理技術者資格者証は国土交通大臣が申請にもとづき交付する
- 資格者証の有効期間は5年であり、申請により更新することができる
- 交付・更新の事務は指定資格者証交付機関を通じて行われる運用になっている
- 専任で配置する監理技術者は資格者証の交付を受け、監理技術者講習を受講した者でなければならない
専任配置の要件を満たすための体制整備で押さえておきたいこと
専任配置が必要な工事を元請として受注する場合、資格者証の交付・講習受講という要件を満たした技術者を、その工事現場に専任で配置できる体制を整えておく必要があります。技術者の人数や配置の見通しが立たないまま入札に臨むと、落札後の体制整備で行き詰まる可能性もあるため、保有している技術者の資格状況を早い段階で棚卸ししておくことが実務上の備えになります。
監理技術者の専任要件は、公共工事参入のどの段階に位置づけられるか?
ここまで見てきたように、監理技術者の設置義務は下請代金の総額基準(施行令第2条)、専任義務は請負代金の基準(施行令第27条)というそれぞれ別の条文で定められています。
公共工事の元請として受注する場合、施行令第27条の基準額に該当する重要な工事であれば専任配置が、施行令第2条の基準額に該当する下請契約であれば監理技術者の設置そのものが、法律上の要件として関わってきます。
こうした基準は、入札に参加する段階よりも前、どのような体制で工事を受注していくかを検討する段階から関わってくるものです。基準額に該当する工事を想定するのであれば、資格者証・講習受講済みの技術者をどう確保していくかという体制整備の検討も、参入準備の一部として位置づけておく必要があります。
- 監理技術者の設置義務は施行令第2条の下請代金の総額基準で判断する
- 専任義務は施行令第27条の請負代金の基準で判断する
- 基準額に該当する工事を想定するなら資格者証・講習受講済みの技術者の確保を検討する
- 体制整備の検討は入札に参加する段階よりも前から始めておく
公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、監理技術者の専任要件は制度として金額・工事内容の基準が明確に定められており、要件を満たす体制を整えれば、会社の規模にかかわらず対応できる仕組みになっています。制度上の要件を一つずつ確認しながら準備を進めることが、公共工事参入の土台になります。
よくある質問
- 下請契約を結ばず自社施工のみで工事を行う場合も、監理技術者を置く必要がありますか?
-
監理技術者の設置義務は、発注者から直接請け負った特定建設業者が下請契約を締結し、その請負代金の総額が施行令第2条の基準額以上になる場合に生じます。下請契約を締結せず自社施工のみで完結する工事であれば、この基準に該当しないため、主任技術者を置く形で足ります。
- 監理技術者の設置基準と専任基準は同じ金額ですか?
-
別の条文・別の金額です。設置義務は施行令第2条にもとづく下請代金の総額基準(5,000万円以上、建築一式8,000万円以上)、専任義務は施行令第27条にもとづく請負代金基準(4,500万円以上、建築一式9,000万円以上)であり、混同しないよう区別して確認する必要があります。
- 個人住宅の工事でも監理技術者の専任義務の対象になりますか?
-
施行令第27条第1項に列挙された対象施設に、個人住宅(戸建て)単体は明示的には含まれていません。ただし条文上「対象外」と明記された文言までは確認できていないため、個別の工事内容については発注者や専門家への確認を踏まえて判断することが望まれます。
- 監理技術者が専任でなくてもよい場合はありますか?
-
請負代金が政令で定める金額未満で情報通信技術を用いた体制が整っている場合や、監理技術者を補佐する者を専任で配置した場合には、専任でなくてよい取り扱いが認められています。ただしこの特例が適用できる工事現場の数には上限があり、施行令第30条により同一の技術者を置ける工事現場数の上限は2と定められています。
まとめ
監理技術者は、下請代金の総額が施行令第2条の基準額(5,000万円以上、建築一式8,000万円以上)になる元請工事で、主任技術者に代えて置く技術者です。専任が必要になるかどうかは、施行令第27条の請負代金基準(4,500万円以上、建築一式9,000万円以上)によって別途判断される、条文の異なるルールです。
専任配置には資格者証の交付・講習受講という要件があり、一定の条件を満たせば兼任を認める特例も存在します。それぞれの基準額は改正によって段階的に変わってきた経緯があるため、参照する情報がどの時点のものかを確認しながら把握しておくことが大切です。
設置義務と専任義務という2つの基準を正しく区別して理解しておくことは、公共工事の元請としてどのような体制を整えるべきかを見通すうえでの土台になります。基準に該当する工事を見据える段階から、技術者の資格状況を確認しておくことが実務上の備えとなります。
- 監理技術者は元請かつ下請代金の総額が施行令第2条の基準額以上の場合に主任技術者に代えて置く技術者である
- 設置義務の基準額(施行令第2条)と専任義務の基準額(施行令第27条)は別条文であり混同しないよう注意する
- 専任配置には資格者証の交付・講習受講という要件があり、条件を満たせば兼任を認める特例もある
- 基準額は改正で段階的に変わってきたため、参照する情報の時点を確認しながら理解する必要がある
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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