個人事業主が建設業許可を取るには?必要な取得条件と費用を解説


建設業許可は法人でなければ取得できない、と考えている方もいるかもしれません。しかし建設業法上、許可の対象は法人・個人事業主を問わず、一定の条件を満たせば個人事業主のままでも建設業許可を取得できます。
この記事では、個人事業主が建設業許可を取得するために満たすべき条件、申請にかかる費用と必要書類、個人事業主のまま経営を続ける場合の留意点までを整理します。あわせて、個人事業主が公共工事参入を目指す際にどう考えればよいかについても解説します。
公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。
- 個人事業主でも建設業許可を取得できる仕組みと法人との違い
- 個人事業主が満たすべき経営業務の管理責任者・専任技術者などの取得条件
- 個人事業主が許可を取得する際の申請費用と必要書類
- 個人事業主のまま経営する場合の留意点と、公共工事参入への考え方
個人事業主でも建設業許可を取得できる?法人との違いは
建設業許可の取得を検討する際、まず気になるのが「個人事業主のままで取得できるのか」という点です。ここでは制度上の位置づけと、法人との違いを整理します。
建設業許可制度は個人事業主も対象になっている
建設業法第3条第1項に基づく建設業許可は、法人・個人事業主を区別せず対象としています。国土交通省が公表している許可要件のページでも、経営業務の管理責任者の要件について「個人である場合には本人または支配人のうちの1人が」次のいずれかに該当する必要がある、という形で個人事業主の許可取得を制度上の前提として扱っています。法人化していないことを理由に、建設業許可そのものが取得できなくなるわけではありません。
経営業務の管理責任者の要件は法人と個人事業主で表現が分かれる
経営業務の管理責任者・専任技術者・財産的基礎・誠実性・欠格要件といった許可要件の枠組み自体は、法人・個人事業主で大きく変わりません。ただし、経営業務の管理責任者に該当する人物の呼び方は、法人では「役員」、個人事業主では「本人または支配人」というように表現が分かれます。個人事業主の場合は、事業主本人がこの要件を満たしているかどうかが直接問われる点が特徴です。
なお、「専任技術者」は令和6年12月13日施行の改正建設業法で「営業所技術者等」(一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者)に名称が変わりました。この記事では、広く使われている「専任技術者」の呼称で説明します。
| 項目 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 建設業許可の対象 | 対象になる | 対象になる |
| 経営業務の管理責任者に該当する人の呼び方 | 役員 | 本人または支配人 |
| 許可要件の枠組み | 経営業務の管理責任者・専任技術者・財産的基礎・誠実性・欠格要件 | 枠組みは同じで、事業主本人が満たしているかが直接問われる |
個人事業主が満たすべき建設業許可の取得条件とは?
建設業許可の取得条件は、経営業務の管理責任者・専任技術者・財産的基礎・誠実性・欠格要件の5つに整理できます。個人事業主の場合にそれぞれどう考えればよいか、順に確認します。
経営業務の管理責任者の要件は3つのパターンで満たせる
個人事業主の場合、経営業務の管理責任者の要件は「本人または支配人のうちの1人」が次のいずれかに該当することで満たせます。
- 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有すること
- 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)にあること
- 建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有すること
なお、令和2年の制度見直しにより、経営業務の管理責任者本人の経験だけでなく、複数人の体制でも要件を満たせる仕組みが設けられている、とされています。個人事業主の場合は事業主本人が要件を満たすケースが中心になりますが、体制のつくり方によって選択肢が広がる場合もあるため、申請時点の制度内容を確認しておくことが望まれます。
専任技術者は個人事業主本人でも兼務できる
専任技術者は営業所ごとに常勤で配置する必要があり、一般建設業の場合は、指定学科修了後に高卒で5年以上・大卒で3年以上の実務経験を有する者、許可を受けようとする建設業に係る工事について10年以上の実務経験を有する者、国家資格を保有する者のいずれかで要件を満たします。
個人事業主の場合、事業主本人がこの専任技術者の要件を満たしていれば、本人が兼務することも可能です。経営業務の管理責任者と専任技術者を同一人物が兼ねることも、双方の要件と常勤性を満たす限りは可能とされています。
ただし、他社で常勤の代表取締役や経営業務の管理責任者、専任技術者などを兼ねている場合は、常勤性の要件を満たせないため、自社での兼務は認められません。個人事業主として許可を取得する場合は、本人がどの立場で常勤しているかをあらかじめ整理しておく必要があります。
財産的基礎など残りの要件も満たす必要がある
一般建設業の財産的基礎は、自己資本が500万円以上であること、500万円以上の資金調達能力を有すること、許可申請の直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績があることのいずれかで満たします。個人事業主の場合、自己資本の考え方は法人の資本金・純資産とは異なり、期首資本金に事業主借勘定などを加味した計算方法が用いられます。
誠実性の要件としては、請負契約の締結やその履行に際して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかである場合、建設業を営むことができないとされています。欠格要件には、破産者で復権を得ていない者や、拘禁刑以上の刑に処せられその執行が終わってから5年を経過しない者などが含まれ、これらは法人・個人事業主で内容の違いはありません。個人事業主の場合は事業主本人が、法人の場合は役員などが対象になります。
個人事業主が建設業許可を取得する際の費用はいくらか
建設業許可の申請には、法定の手数料と一定の書類が必要になります。ここでは個人事業主が把握しておきたい費用と書類の概要を整理します。
新規申請にかかる法定費用の金額
建設業許可の新規申請にかかる法定費用は、大臣許可の場合は登録免許税15万円、知事許可の場合は許可手数料9万円です。更新や同一区分の追加の場合は、大臣許可・知事許可ともに許可手数料5万円になります。この金額は法人・個人事業主で区別されておらず、共通の金額体系が適用されます。
| 区分 | 新規申請 | 更新・同一区分追加 |
|---|---|---|
| 大臣許可 | 登録免許税15万円 | 許可手数料5万円 |
| 知事許可 | 許可手数料9万円 | 許可手数料5万円 |
納入方法は都道府県ごとに収入証紙・現金など指定が異なるため、申請先の窓口で確認しておくと手続きがスムーズです。なお、この記事で示す費用は登録免許税・許可手数料といった法定の費用にとどめており、申請書類の作成を依頼する場合の費用については触れていません。制度・数値は執筆時点の情報であり、申請時には最新の情報をあわせて確認することをおすすめします。
個人事業主が用意する必要書類
個人事業主が提出する財務諸表は、貸借対照表(様式第18号)・損益計算書(様式第19号)の2種類で、法人用とは別に個人事業主用の様式が定められています。建設業法所定の様式に沿って作成する必要があります。
また、経営業務の管理責任者としての経験を証明する場合は、過去の確定申告書や工事契約書・注文書・請求書などの提出が求められます。常勤性の確認には健康保険被保険者証の写しなどが使われることもあります。必要な年数や細目は都道府県ごとに運用の違いがある可能性があるため、申請先の基準を事前に確認しておくことが望まれます。
個人事業主のまま経営を続ける場合に留意すべき点は?
建設業許可は個人事業主のままでも取得できますが、経営を続けていくうえでいくつか押さえておきたい留意点があります。
社会保険への加入状況が審査の対象になる
令和2年10月1日施行の建設業法改正により、健康保険・厚生年金・雇用保険について、適用除外となる事由がない限り、適切な社会保険への加入が許可の要件として求められるようになったとされています。個人事業主の場合は、事業主本人および従業員の社会保険加入状況が審査の対象になる点に留意しておく必要があります。この点も執筆時点の情報であり、最新の運用は申請先で確認することをおすすめします。
法人成りを検討する場合は事前の認可手続きが必要
個人事業主のまま事業を続けるか、途中で法人成りするかは経営判断として分かれるところです。判断にあたっては、事業の規模や取引先からの見え方も材料の一つになります。

個人事業主という時点で、ビジネスとしての信用が低いというシグナルを発しているようなものです。そういう相手に金を貸す銀行がいるでしょうか。
金融機関からの評価のされ方は、個人事業主か法人かによって変わり得るという指摘です。もっとも、建設業許可の取得自体は個人事業主でも法人でも可能であり、この指摘は許可の可否ではなく、事業を続けていくうえでの資金調達や取引面での見え方に関する論点として捉えるのが適切です。
なお、個人事業主から法人成りする際に許可を引き継ぐ場合は、事前に承継の認可を受ける必要があるとされています。認可を受けずに法人化すると、許可番号や経営事項審査の結果を含めて引き継げず、許可の空白期間が生じ得る点に注意が必要です。法人化を検討する段階では、この事前手続きの有無を早めに確認しておくことが望まれます。
- 健康保険・厚生年金・雇用保険について、適用除外となる事由がない限り適切な社会保険への加入が許可の要件として求められる
- 個人事業主の場合は、事業主本人および従業員の社会保険加入状況が審査の対象になる
- 法人成りする際に許可を引き継ぐ場合は、事前に承継の認可を受ける必要がある
- 認可を受けずに法人化すると、許可番号や経営事項審査の結果を引き継げず、許可の空白期間が生じ得る
個人事業主が公共工事参入を目指す際にどう考えればよいか
建設業許可を取得した後、公共工事への参入を目指す場合は、経営事項審査(経審)や入札参加資格といった、許可とは別の手続きも視野に入れる必要があります。
経営事項審査(経審)は建設業許可を受けた事業者が対象になる
経営事項審査は、建設業法第3条第1項の許可を受けた者のうち、国・地方公共団体などが発注する公共性のある施設・工作物に関する建設工事を、発注者から直接請け負おうとする建設業者が対象です。請負代金額が1件500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)の工事を直接請け負う場合は、経審を原則として受けておく必要があるとされています。
制度上、経審は建設業許可を受けた事業者を対象とする仕組みであり、個人事業主であっても許可を受けていれば、この対象に含まれるものとして整理されています。
建設工事の入札には全省庁統一資格とは別の資格審査が必要
公共の入札制度としては「全省庁統一資格」という仕組みもありますが、これは法人・個人事業主のどちらでも申請できる一方、対象は「物品の製造」「物品の販売」「役務の提供」などの区分であり、建設工事の入札には利用できません。建設工事の入札に参加するには、経審を含む、建設工事向けの入札参加資格審査を別途受ける必要があります。
この2つの制度を混同しないよう整理しておくことが、参入準備を進めるうえでの前提になります。
| 制度 | 対象と位置づけ |
|---|---|
| 経営事項審査(経審) | 建設業許可を受けた者のうち、国・地方公共団体などが発注する公共性のある施設・工作物に関する建設工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者 |
| 経審が必要になる工事の規模 | 請負代金額が1件500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)の工事を直接請け負う場合 |
| 全省庁統一資格 | 物品の製造・物品の販売・役務の提供などが対象の区分で、建設工事の入札には利用できない |
| 建設工事向けの入札参加資格審査 | 建設工事の入札に参加するために、経審を含めて別途受ける必要がある |



個人事業主で公共工事に参入することは可能ですが、売上ベースでは1億円程度まで稼げる一方で、重要なのは利益です。利益率は約50%程度になると考えています。
これは水嶋の経験に基づく見立てであり、個人事業主か法人かにかかわらず適用される公的な基準ではありません。売上や利益率は工事の種類・規模・地域によって変わり得るため、あくまで一つの目安として捉えたうえで、自社の状況にあてはめて検討することが望まれます。
ここまで見てきたように、個人事業主のままでも建設業許可の取得条件そのものは満たすことができ、経審を含む公共工事参入の手続きも、許可を受けた事業者であることを前提に進められる仕組みになっています。事業形態をどうするかは、取得条件の可否そのものよりも、資金調達のしやすさや取引先からの見え方、将来の法人化の見通しといった経営判断として検討する論点といえます。
公共工事は、大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模や個人事業主・法人という形態にかかわらず参加できる仕組みです。取得条件や必要書類を一つずつ整理していくことが、その要件を満たすための土台になります。
よくある質問
- 個人事業主のままでも建設業許可は取得できますか?
-
取得できます。建設業許可は建設業法第3条第1項に基づき、法人・個人事業主を問わず対象としている制度です。経営業務の管理責任者などの要件について、個人事業主の場合は「本人または支配人」が該当するかどうかが問われますが、要件の枠組み自体は法人と大きく変わりません。
- 経営業務の管理責任者は、個人事業主本人以外がなることもできますか?
-
なることができます。建設業許可の要件では、個人事業主の場合「本人または支配人のうちの1人」が経営業務の管理責任者の要件に該当していればよいとされています。支配人とは、商業登記法上の手続きを経て選任され、事業主に代わって事業に関する権限を持つ人物を指します。
事業主本人がこの経験年数を満たさない場合でも、要件を満たす支配人を選任するという選択肢が制度上用意されています。
- 建設業許可の申請費用は法人より個人事業主のほうが安くなりますか?
-
安くなりません。登録免許税・許可手数料といった法定費用は、法人・個人事業主で区別されておらず、共通の金額体系が適用されます。大臣許可の新規申請は登録免許税15万円、知事許可の新規申請は許可手数料9万円が目安です。
この金額は執筆時点の情報であり、申請時には最新の情報をあわせて確認することをおすすめします。
- 個人事業主のまま公共工事に参入することは可能ですか?
-
可能です。経営事項審査は建設業許可を受けた事業者を対象とする仕組みであり、個人事業主であっても許可を受けていれば対象に含まれるものとして整理されています。ただし、全省庁統一資格のように建設工事の入札には利用できない制度もあるため、どの資格審査が必要かを事前に整理しておくことが重要です。
まとめ
建設業許可は法人・個人事業主を区別しない制度であり、経営業務の管理責任者・専任技術者・財産的基礎・誠実性・欠格要件という取得条件も、個人事業主のままで満たすことができます。個人事業主の場合は、事業主本人がこれらの要件に直接該当するかどうかが、法人との実務上の違いです。
申請費用は登録免許税・許可手数料ともに法人・個人事業主で共通であり、財務諸表など一部の様式は個人事業主用のものを使います。社会保険への加入状況や、法人成りする際の事前認可手続きも、経営を続けるうえで押さえておく必要があります。
建設業許可を取得した後の公共工事参入についても、経審は許可を受けた事業者を対象とする仕組みであり、個人事業主であることが参入そのものを妨げるものではありません。取得条件と必要な手続きを整理していくことが、公共工事への参入・受注を検討する土台になります。
- 建設業許可は法人・個人事業主を区別せず、個人事業主のままでも取得できる
- 経営業務の管理責任者・専任技術者などの取得条件は、事業主本人が該当するかどうかが問われる
- 申請費用(登録免許税・許可手数料)は法人・個人事業主で共通の金額体系が適用される
- 経審は許可を受けた事業者が対象であり、個人事業主のままでも公共工事参入を検討できる
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