建設業許可を行政書士に依頼するメリット!自社申請との徹底比較


建設業許可の申請を行政書士に依頼するか、自社で進めるか。この判断で迷う経営者は少なくありません。どちらを選んでも許可自体は取得できますが、依頼した場合と自社で対応した場合とでは、かかる手間や社内に残るものが異なります。
本記事では、依頼と自社申請それぞれで何が起きるのかを公平に整理したうえで、許可取得後に控える経営事項審査(経審)まで見据えた判断軸を解説します。執筆時点の情報である点にご留意ください。
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- 行政書士に依頼すると書類作成から提出手続きまでを代理してもらえる
- 自社で申請すると許可取得の実務知見が社内に蓄積される
- 行政庁の審査期間は依頼・自社いずれを選んでも変わらない
- 経営事項審査は建設業許可より更新頻度が高く、自社体制の早期構築が判断材料になる
建設業許可を行政書士に依頼すると何が得られるのか?
建設業許可の申請を行政書士に依頼する場合、まず押さえておきたいのは、行政書士が担える業務の範囲です。行政書士法により、書類作成だけでなく行政庁への提出手続きまで代理できることが定められています。
行政書士に依頼すると、書類の作成だけでなく、委任状に基づいて行政庁への提出手続きまで代理してもらえます。経営者本人が窓口に出向く回数を減らせる点は、依頼する場合に得られることのひとつです。
ただし、代理申請であっても手続きがすべて不要になるわけではありません。委任状(原本)を申請書の正本に添付する必要があり、委任範囲の記載や行政書士の登録番号の記載も求められます。
建設業許可の要件には、経営業務の管理責任者に関する経験年数の証明や、専任技術者の資格・実務経験の証明など、確認すべき論点が複数あります。これらの要件をどの資料で証明するかは会社ごとの状況によって異なるため、専門家に相談しながら整理できる点も、依頼する場合に得られることのひとつです。
なお、「専任技術者」は令和6年12月13日施行の改正建設業法で「営業所技術者等」(一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者)に名称が変わりました。この記事では、広く使われている「専任技術者」の呼称で説明します。
依頼した場合に得られることを整理すると、次のとおりです。
- 書類作成から行政庁への提出手続きまでを代理してもらえる
- 専門家が関与することで、書類作成にかかる実務負担は軽減されると考えられる
- 経営者本人が申請窓口に出向く回数を減らせる
- 要件証明の方法について相談しながら整理できる
専門家が関与すれば書類の不備が減るという説明は行政書士事務所のサイト等でよく見られますが、不備率の違いを公的機関が統計で示した一次資料は確認できていません。実務負担が軽くなる点は事実として言えますが、成果を数値で保証するものではない点には留意が必要です。
また、依頼する場合は建設業許可の要件確認も含めて相談できる点も見落とせません。専任技術者の資格要件や経営業務の管理責任者に関する要件など、確認すべき事項は多岐にわたります。これらの確認作業を専門家に相談しながら進められることは、初めて許可申請に取り組む会社にとって負担軽減につながります。
建設業許可を自社で申請すると何が得られるのか?
一方、自社で申請を進める場合に得られるのは、手続きの実務知見が社内に残ることです。建設業許可は取得して終わりではなく、取得後も継続的な届出義務が発生します。
建設業法第11条第2項により、許可を受けた事業者は毎事業年度終了後4か月以内に、工事経歴書等を含む決算変更届を許可行政庁へ提出しなければなりません。
自社で新規申請を経験しておくと、必要書類の種類や許可行政庁とのやり取りの流れ、決算変更届の作成要領といった実務知識が、この先の毎年の届出にもつながっていきます。担当者が交代する場合にも、社内に手順が残っていれば引き継ぎがしやすくなります。
また、行政庁から書類内容について問い合わせが入った場合も、申請の経緯を把握している自社の担当者であれば、その場で状況を説明しやすくなります。外部に依頼している場合は、いったん行政書士に確認したうえで回答するという工程が挟まることもあります。
自社申請で得られることを整理すると、次のようになります。
- 許可申請に必要な書類の種類・整え方についての実務知見が社内に残る
- 許可行政庁とのやり取りの流れを経営者・担当者自身が把握できる
- 毎事業年度の決算変更届など、継続する届出への対応力につながる
- 専任技術者や経営業務の管理責任者の要件確認を通じて、社内の人員体制を見直す機会になる
この実務知見の蓄積は数値で示せる性質のものではありませんが、許可取得後に続く手続きとの構造的なつながりとして捉えておくと、その後の判断がしやすくなります。
加えて、自社で申請を進めることで、専任技術者の要件をどの資格・実務経験で証明するか、経営業務の管理責任者の要件をどう満たすかといった判断を、経営者自身が主体的に確認する機会にもなります。これらは許可取得時だけでなく、業種を追加する際や、担当者が変わった際にも再び必要になる知識です。
申請方法によってリスクはどう変わるのか?
依頼と自社申請を比較する際に誤解しやすいのが、行政庁側の審査にかかる期間です。この期間は申請者が依頼するか自社で申請するかによって変わるものではありません。
たとえば東京都知事許可の新規申請では、標準処理期間はオンライン申請で22日、書面等による申請で25日(いずれも閉庁日を除く)と、東京都の公式要綱で定められています。これは行政庁が申請書を受理した後の審査期間であり、依頼か自社かの選択によって短縮されるものではありません。
依頼のメリットが発揮されるのは、主に申請前の書類準備や要件確認の段階です。書類に不備があれば、依頼した場合でも自社で申請した場合でも、行政庁から補正を求められ、補正が整うまで審査が止まる点は共通しています。
依頼と自社申請のどちらを選ぶかは、会社の規模や担当者の稼働状況によっても変わります。日々の現場管理に追われて申請準備の時間を確保しにくい会社では、依頼によって経営者・担当者の時間を他の業務に充てられる点が判断材料になります。反対に、社内に手続きへ充てられる担当者がいる会社では、自社対応によって費用を抑えつつ知見を残せる点が判断材料になります。
依頼と自社申請、それぞれで起きることを比較すると、次のように整理できます。
| 観点 | 行政書士に依頼 | 自社で申請 |
|---|---|---|
| 行政庁の審査期間 | 変わらない | 変わらない |
| 申請前の実務負担 | 専門家の関与で軽減されやすい | 担当者の学習コストが発生する |
| 社内に残る知見 | 蓄積されにくい | 次回以降の手続きに活かせる |
手戻りが生じるリスクは、依頼・自社のどちらか一方だけに偏るものではなく、書類の記載内容次第で双方に起こり得る点を踏まえておくと、公平な比較になります。
依頼する場合は、行政書士が過去の申請経験をもとに書類を整えるため、初めて申請する会社にとっては不備を未然に防ぎやすい面があります。一方で自社申請の場合は、初回こそ確認作業に時間がかかりやすいものの、一度経験すれば同じ担当者が次回以降も対応しやすくなるという違いがあります。
どちらの方式でも、スケジュールに余裕を持たせて準備を進めることが、行政庁とのやり取りを円滑にするうえで共通して重要になります。
経営事項審査を見据えるとどちらを選ぶべきか?
依頼と自社申請の比較を踏まえたうえで、もうひとつ考えておきたいのが、建設業許可の先に控える経営事項審査(経審)との関係です。経審は公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が原則として受けなければならない審査で、建設業許可とは更新の頻度が大きく異なります。
建設業許可の有効期間は5年です。これに対し、経審の結果である総合評定値通知書の有効期間は審査基準日から1年7か月と短く、公共工事の入札参加資格を継続するには、決算期ごとに経営状況分析・経営規模等評価の申請を繰り返す必要があります。
つまり経審は、許可の更新(5年に一度)よりもはるかに高い頻度で対応が発生する手続きです。この頻度の違いが、建設業許可と経審を同じ判断軸で扱うべきではない理由になります。
- 建設業許可は5年に一度の更新で済む
- 経審は有効期間1年7か月で、決算期ごとに繰り返し対応が必要になる
- 更新頻度が高い手続きほど、社内に実務知見が残っているかどうかが対応のしやすさを左右する
「自社の規模では公共工事は難しいのではないか」と考える経営者は少なくありません。しかし制度上は、要件を満たせば規模にかかわらず参加できる仕組みになっています。
建設業許可の申請自体は、外部への依頼と自社対応のどちらを選んでも進められる手続きです。一方で経審は、この後も繰り返し向き合っていく手続きであるという性質を踏まえて、体制を考えておく価値があります。

建設業許可は行政書士に委託してもよいと思いますが、経審については、自社で早期に対応していくことが必要ではないかと考えます。
建設業許可の申請をどちらに委ねるかは、時間や実務負担を踏まえて会社ごとに判断する論点です。それとは切り分けて、経審については早い段階から自社で対応する体制を作っておくことが、その後の公共工事参入を進めやすくする材料になります。
公共工事への参入は、許可を取得した時点がゴールではなく、経審を経て入札参加資格を維持し続ける段階まで含めて考える必要があります。
経審は経営状況分析(Y点)と経営規模等評価(X・Z・W点)を組み合わせて総合評定値(P点)を算出する仕組みで、決算内容や技術者数、社会性等の審査項目を毎回整理する作業が伴います。この作業に社内の担当者が慣れているかどうかは、決算期ごとの対応スピードに直結します。
建設業許可の取得段階では依頼と自社対応のどちらでも大きな支障はありませんが、経審は決算期ごとに繰り返す性質上、早い段階から自社で仕組みを理解しておくことが、その後の負担を軽くする材料になります。
よくある質問
- 建設業許可の申請途中で、依頼から自社対応に切り替えることはできますか?
-
申請の途中で対応方法を切り替えること自体は制度上禁止されていません。ただし委任状の取り扱いや書類の引き継ぎが必要になるため、切り替える場合は事前に行政書士・行政庁の双方に確認しておくと手戻りを避けやすくなります。
- 経営事項審査は行政書士に依頼できないのですか?
-
経営事項審査に関連する経営状況分析申請・経営規模等評価申請についても、行政書士に依頼すること自体は可能です。本記事で触れている自社対応の重要性は、依頼を否定するものではなく、更新頻度の高さを踏まえて社内に実務知見を残しておく価値を示すものです。決算内容を把握している経理担当者が関与できる体制を整えておくと、決算期ごとの対応をスムーズに進めやすくなります。
- 自社で建設業許可を申請する場合、誰が担当するのが現実的ですか?
-
経営者自身のほか、総務・経理担当者が窓口となって進めるケースが一般的です。決算変更届など許可取得後も継続する届出があるため、単発の担当ではなく、社内で引き継げる体制を意識しておくと、その後の対応がしやすくなります。担当者が変わる可能性も見据えて、申請時の資料や手順を記録に残しておく工夫も有効です。
- 大臣許可の場合も審査期間は依頼・自社で変わりませんか?
-
大臣許可は知事許可とは異なる行政庁が審査を行うため標準処理期間の日数も別に定められていますが、行政庁側の審査期間が申請者の対応方法(依頼か自社か)で変わらないという構造自体は、知事許可と同様です。営業所を複数の都道府県に設ける予定がある場合は、この点を踏まえてスケジュールを組んでおくと安心です。
まとめ
建設業許可を行政書士に依頼すると、書類作成から提出手続きまでを代理してもらえ、経営者本人の窓口対応の手間を減らせます。自社で申請すると、許可取得後も続く届出に活かせる実務知見が社内に残ります。行政庁の審査期間はどちらを選んでも変わらず、書類の不備による手戻りも双方に起こり得ます。
建設業許可の申請自体は、依頼と自社対応のどちらでも進められる手続きです。一方で、その先に控える経営事項審査は更新頻度が高く、自社で早期に体制を作っておくことが、その後の公共工事参入を進めやすくする判断材料になります。どちらの手続きも、時間をかけて検討したうえで、自社に合った進め方を選ぶことが大切です。
- 行政書士への依頼は書類作成から提出手続きまでの代理を受けられる点が特徴である
- 自社申請は実務知見が社内に残り、以後の届出にもつながる
- 行政庁の審査期間は依頼・自社どちらを選んでも変わらないことを踏まえて判断する
- 経営事項審査は更新頻度が高いため、自社で早期に対応する体制を検討する
より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。
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