特定建設業許可とは?一般建設業許可との違いや取得要件を徹底解説

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

元請として下請に出す工事の金額が大きくなると、一般建設業許可だけでは対応できない場合があります。特定建設業許可という言葉は知っていても、一般建設業許可との違いや、どのようなときに必要になるのかを整理できていない経営者は少なくありません。

この記事では、特定建設業許可と一般建設業許可の違い、特定建設業許可が必要になる具体的なケース、財産的基礎要件や専任技術者要件、取得までのスケジュールを解説します。特定建設業許可への理解を、公共工事への参入・受注拡大の検討に役立ててください。

なお、「専任技術者」は令和6年12月13日施行の改正建設業法で「営業所技術者等」(一般建設業は営業所技術者、特定建設業は特定営業所技術者)に名称が変わりました。この記事では、広く使われている「専任技術者」の呼称で説明します。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 特定建設業許可と一般建設業許可は下請契約金額の基準で区分される
  • 元請として下請に出す金額が5,000万円以上になると特定建設業許可が必要になる
  • 特定建設業許可には自己資本4,000万円以上など3つの財産的基礎要件がある
  • 特定建設業許可には専任技術者要件があり取得までのスケジュールを踏まえた準備が必要になる
目次

特定建設業許可とは?一般建設業許可とどう違うのか

特定建設業許可の要否を分ける下請契約金額の基準

建設業許可は「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に区分されます。この区分の分岐点は、発注者から直接(元請として)請け負った工事について、一定金額以上の下請契約を締結するかどうかにあります。

特定建設業許可が必要になるのは、下請契約の金額が5,000万円以上(建築工事業の場合は8,000万円以上)となる場合です。この金額に満たない場合や、そもそも下請契約を締結しない場合は、一般建設業許可で足ります。

なお、この基準額は令和7年2月1日の建設業法施行令改正で現行の額に引き上げられたものであり、それ以前は4,500万円(建築一式は7,000万円)でした。過去の情報を参照する際は基準額の時点に注意してください。

特定建設業許可を受けた元請に課される下請保護の義務

特定建設業許可を受けた元請業者には、下請保護のための義務が課されます。具体的には、発注者から請負代金の支払いを受けた後、1か月以内かつできる限り短い期間内に下請代金を支払う義務、施工体制台帳の作成義務などです。

あわせて、一定額以上の工事では監理技術者の専任配置が必要になりますが、この基準額は4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上、建設業法施行令第27条)であり、特定建設業許可そのものの要否を決める下請契約金額基準(5,000万円以上)とは別の条文・別の基準です。両者を混同しないよう整理しておく必要があります。

  • 発注者から請負代金の支払いを受けた後、1か月以内かつできる限り短い期間内に下請代金を支払う義務
  • 施工体制台帳の作成義務
  • 一定額以上の工事における監理技術者の専任配置(4,500万円以上、建築一式工事は9,000万円以上)

特定建設業許可は下請への支払いを滞りなく行わせるための制度であり、元請として大きな金額の工事をまとめる立場になるほど、下請保護に関する義務も比例して重くなる仕組みだといえます。自社がどの義務の対象になるかは、業種ごとの下請契約額を洗い出したうえで確認しておく必要があります。

特定建設業許可が必要になるのはどんなケース?

元請として下請に出す金額が5,000万円以上になる場合

発注者から直接請け負った1件の建設工事について、元請負人がその工事の全部または一部を下請契約により施工させる場合、下請契約の請負代金額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)となるときに、その工種について特定建設業許可が必要になります。根拠となるのは建設業法施行令第2条です。

二次下請以降には特定建設業許可は不要な理由

特定建設業許可が必要なのは、発注者から直接請け負った元請業者のみです。元請から一次下請へ出す金額が基準に該当する場合に特定建設業許可が必要になりますが、一次下請業者がさらに二次下請業者へ工事を出す場合は、契約金額にかかわらず特定建設業許可は不要で、一般建設業許可のままで施工できます。

立場下請へ出す金額必要な許可
発注者から直接請け負った元請5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)特定建設業許可
発注者から直接請け負った元請基準額未満一般建設業許可
一次下請から二次下請へ出す場合契約金額にかかわらず一般建設業許可

複数の下請契約がある場合の合計額による判定基準

下請契約を複数締結する場合は、1件あたりの金額ではなく、同一工事内の下請契約の合計額で基準額との比較を行います。正当な理由なく契約を分割して基準額を下回るよう調整する行為は認められておらず、分割契約は合計額で判断される点に注意が必要です。

例えば、1件の工事について異なる工種の下請業者2社にそれぞれ3,000万円の契約を結ぶ場合、合計額は6,000万円となり、5,000万円以上の基準に該当します。個々の契約額だけを見て判断すると、必要な許可を見落とすおそれがあるため、工事全体の下請契約額を通しで確認する視点が欠かせません。

特定建設業許可の取得要件は?財産的基礎をどう満たすか

自己資本4,000万円以上など3つの財産的基礎要件

特定建設業許可では、許可申請直前の決算期における財務諸表において、次の3つの要件をすべて満たすことが求められます。倒産することが明白な場合を除き、これらを満たせば財産的基礎要件はクリアと判断されます。

  • 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ自己資本の額が4,000万円以上であること

一般建設業の財産的基礎要件は、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、過去5年間の継続営業実績のいずれかを満たせばよいのに対し、特定建設業ではこの3要件を「すべて」満たす必要がある点が大きな違いです。

4000万円が特定建設業のハードルです。特定を取得すると、大きな金額の下請契約を結べるようになります。

財産的基礎要件の判断時点となる決算期の財務諸表

財産的基礎要件は、既存企業の場合は原則として申請直前の決算期の財務諸表により、新規設立企業の場合は創業時の財務諸表により判断されます。資本金額の基準を財務諸表上満たしていない場合でも、申請日までに増資を行い基準を満たせば、資本金額の基準を満たしているものとして扱われます。

一方で、欠損比率や流動比率については増資による事後的な調整に関する明記はなく、原則として決算期時点の数値で判断される点に留意しておく必要があります。

特定建設業許可の専任技術者になれるのは誰か

1級相当の国家資格者か指導監督的実務経験者

特定建設業の専任技術者になれるのは、次のいずれかに該当する者です。許可を受けようとする建設業の種類に応じた1級相当の国家資格者等(技術士第二次試験合格者等を含む)、または、一般建設業の専任技術者要件を満たす者のうち、当該建設業に係る建設工事について2年以上の「指導監督的な実務経験」を有する者、あるいは国土交通大臣が同等以上と認定した者です。

  • 許可を受けようとする建設業の種類に応じた1級相当の国家資格者等(技術士第二次試験合格者等を含む)
  • 一般建設業の専任技術者要件を満たし、当該建設業に係る建設工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
  • 国土交通大臣が同等以上と認定した者

ここでいう指導監督的な実務経験とは、発注者から直接請け負い、請負代金の額が4,500万円以上(建設業法施行令第5条の3)である工事で、工事現場主任者や工事現場監督者のような立場で技術面を総合的に指導監督した経験を指します。

この4,500万円という基準は、特定建設業許可の要否を判断する下請契約金額基準(5,000万円以上)とは別条文・別の基準であり、記事内でも区別して扱っています。

指定建設業7業種における専任技術者要件は国家資格者限定

土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・ほ装工事業・造園工事業の7業種は「指定建設業」とされ、これらの業種の特定建設業の専任技術者は、原則として1級相当の国家資格者等でなければなりません。指導監督的な実務経験のルートのみでは、専任技術者要件を満たせない点に注意が必要です。

指定建設業以外の業種であれば、国家資格に加えて、前述の指導監督的な実務経験2年以上でも専任技術者要件を満たせます。自社が指定建設業に該当するかどうかは、事前に確認しておくとよいでしょう。

特定建設業許可の取得までにかかる期間はどれくらいか

国土交通大臣許可の標準処理期間はおおむね120日

建設業許可には、2以上の都道府県に営業所を設ける場合の「国土交通大臣許可」と、1つの都道府県内にのみ営業所を設ける場合の「都道府県知事許可」があり、一般・特定のいずれも同様の区分が適用されます。

国土交通大臣許可の標準処理期間は、申請書類が都道府県の窓口に到達してから地方整備局等が処分するまで、おおむね120日程度が目安とされています(都道府県受理から地方整備局等到達までおおむね30日程度、到達から処分までおおむね90日程度)。この期間は適正な申請を前提とした目安であり、書類の補正に要する期間などは含まれません。

区分標準処理期間の目安
国土交通大臣許可(都道府県受理から地方整備局等到達まで)おおむね30日程度
国土交通大臣許可(到達から処分まで)おおむね90日程度
国土交通大臣許可(合計)おおむね120日程度
都道府県知事許可自治体ごとに定められ、大臣許可より短い場合もある

都道府県知事許可の標準処理期間は自治体ごとに定められており、大臣許可より短い場合もあります。

一般から特定への切り替えは「般・特新規」の手続き

一般建設業の許可のみを受けている事業者が新たに特定建設業許可を申請する場合、または特定建設業許可のみを受けている事業者が新たに一般建設業許可を申請する場合の手続きは「般・特新規」と呼ばれます。許可を受けている業種の一部を特定から一般に切り替える場合は、当該業種の特定建設業を廃業した上で般・特新規として申請する流れになります。

般・特新規のほか、許可行政庁が変わる「許可換え新規」や業種追加など、申請区分によって提出書類が異なります。どの区分に当たるかは早めに確認しておくとスケジュールが立てやすくなります。

財産的基礎要件を満たす決算期を迎えるタイミングと、専任技術者を確保できるタイミングがそろわなければ申請には進めません。受注予定の工事に間に合わせたい場合は、標準処理期間の目安から逆算し、決算対策や技術者の配置計画を先行して進めておく必要があります。

特定建設業許可の取得を公共工事参入にどうつなげるか

特定建設業許可は、元請としてどれだけの規模の下請契約を扱えるかを決める制度です。財産的基礎要件や専任技術者要件を満たせるかどうかは、元請として工事全体を管理していく体制が整っているかどうかを測る一つの目安にもなります。

公共工事では元請としての体制が問われる場面が増えるため、特定建設業許可の要件を確認する作業は、公共工事参入の準備を具体的に進める機会にもなります。

  • 特定建設業許可は、元請としてどれだけの規模の下請契約を扱えるかを決める制度である
  • 財産的基礎要件や専任技術者要件は、元請として工事全体を管理する体制が整っているかを測る目安になる
  • 公共工事では元請としての体制が問われる場面が増えるため、要件の確認が参入準備を進める機会になる

公共工事は大手や実績のある会社のもの、と受け止められることがあります。ただ、入札参加の要件は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。特定建設業許可の要件整理を、自社の体制を見直すきっかけとして活用してください。

よくある質問

特定建設業許可はすべての業種で必要になりますか?

特定建設業許可は、建設業の業種ごとに取得するものです。元請として下請に出す金額が基準額以上になる業種についてのみ必要になり、それ以外の業種は一般建設業許可のままで施工できます。業種ごとに下請契約の実態を確認しておくことが大切です。

特定建設業許可を取得すると、一般建設業許可は不要になりますか?

特定建設業許可を取得した業種については、その業種の一般建設業許可は別途不要です。ただし、特定建設業許可を取得していない他の業種については、一般建設業許可のままとなります。業種単位で許可の状態を管理する点を押さえておいてください。

特定建設業許可の財産的基礎要件は、取得後も継続して確認されますか?

財産的基礎要件は許可の更新(5年ごと)や業種追加の申請時に確認されます。決算内容によって要件を下回る年度が生じる可能性もあるため、更新時期を見据えて財務状況を確認しておくと安心です。

特定建設業許可がなくても公共工事の入札に参加できますか?

発注者から直接請け負う場合でも、下請に出す金額が基準額未満であれば一般建設業許可で対応できます。入札に参加できるかどうかは、経営事項審査の結果や入札参加資格など別の要件にもよるため、特定建設業許可の有無だけで一律に決まるものではありません。

まとめ

特定建設業許可と一般建設業許可の分岐点は、元請として下請に出す契約金額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になるかどうかにあります。特定建設業許可を取得するには、自己資本4,000万円以上を含む3つの財産的基礎要件と、1級相当の国家資格や指導監督的な実務経験といった専任技術者要件を満たす必要があります。

取得までのスケジュールは、標準処理期間の目安を踏まえて逆算しておくと計画が立てやすくなります。一般から特定への切り替えは「般・特新規」の手続きとなるため、業種ごとの許可状況を整理したうえで準備を進めてください。

この記事のまとめ
  • 特定建設業許可が必要になるのは、下請契約が5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)となる場合
  • 財産的基礎要件は自己資本4,000万円以上など3要件をすべて満たす必要がある
  • 専任技術者は1級相当の国家資格者か指導監督的な実務経験者(指定建設業7業種は国家資格者等が必要)
  • 取得までの標準処理期間の目安を踏まえてスケジュールを逆算し、業種ごとの許可状況を整理する

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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