経営事項審査の点数・ランクの目安は?何点でどのランクになるか

監修情報

水嶋 拓

フロンティアマーケティング株式会社代表取締役。2009年から公共工事コンサルタントとして活動し、450社以上の中小建設会社の経営を支援。2017年に同社を設立し、現在は公共工事研究会も主宰している。著書に『日本一ハードルの低い公共工事の始め方』。

経営事項審査を受けると点数が通知されますが、その点数が何点であればどのランクになるのかは、通知書を見ただけでは分かりません。「Aランクを目指したい」と考えても、目標にすべき点数がはっきりしないという声は少なくありません。同業他社の評判や口コミから目安を探しても、確認できる情報は限られています。

この記事では、経営事項審査の点数とランクがどうつながっているのか、総合評定値がどの範囲に収まるのか、そしてランクの基準が発注機関ごとに違う理由を整理します。等級を決める仕組みを理解すれば、何点を目標にすればよいかが見えてきます。公共工事への参入を検討する際の基礎知識として役立ててください。

公共工事入札について、一般的な情報だけでは見えない視点があります。この動画で実務的なポイントを先に理解することで、記事の内容がより腹落ちしやすくなります。動画を見てから記事を読み進めることをおすすめします。

この記事で分かること
  • 経営事項審査が出すのは点数であり、ランク(等級)を決めるのは各発注機関であるという役割分担
  • 総合評定値Pの計算式と、制度上の最高点2,159点・最低点163点という範囲
  • 同じ点数でも発注機関によってランクが変わる理由と、確認しておくべき資料
  • 目標点を決めるときに、点数から考えるのではなく発注機関から逆算する考え方
目次

経営事項審査の点数とランクはどのような関係にあるのか?

点数とランクは同じものではありません。まず、どこまでが経営事項審査の役割で、どこからが発注機関の判断なのかを整理します。

経営事項審査が出すのは点数であり、ランクは決めていない

経営事項審査は、建設業者の経営状況や経営規模等を数値で評価し、点数として通知する制度です。通知される点数には総合評定値Pのほか、経営規模・経営状況・技術力・その他の審査項目といった区分ごとの評点が含まれます。

この点数の中に「Aランク」「Bランク」といった等級は含まれていません。等級は、経営事項審査の結果を受け取った各発注機関が、自らの基準に基づいて決めるものです。

客観点数と主観点数を合計して等級が決まる

国土交通省は、公共工事の発注機関が競争入札参加者の資格審査を行い、客観的事項と主観的事項の審査結果を点数化して順位付け・格付けを行うと説明しています。このうち客観的事項の審査にあたるのが経営事項審査です。

つまり、経営事項審査の点数は等級を決める材料の一部であり、それだけで等級が確定するわけではありません。工事成績や地域貢献の実績など、発注機関が独自に定める主観的な評価が加わったうえで、最終的な順位付けが行われます。

  • 経営事項審査は点数を出すところまでを担う
  • 発注機関は経営事項審査の結果を客観的事項として受け取る
  • 発注機関が独自の主観的事項を加えて点数化する
  • その合計に基づいて順位付け・格付け(等級)が行われる

経営事項審査の点数は何点から何点までの範囲になるのか?

目標を立てるには、そもそも点数がどの範囲に収まるものなのかを知っておく必要があります。ここでは総合評定値Pの構成と上限・下限を確認します。

総合評定値Pは5つの評点を重み付けして合計する

総合評定値Pは、経営規模を表すX1とX2、経営状況を表すY、技術力を表すZ、その他の審査項目(社会性等)を表すWという5つの評点を、それぞれ定められた割合で合計して算出されます。計算式は次のとおりです。

P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W

完成工事高を評価するX1と、技術力を評価するZの割合がそれぞれ0.25で最も大きく、自己資本額と利益を評価するX2、その他の審査項目のWが0.15で最も小さい構成です。

X1は業種別の年間平均完成工事高、X2は自己資本額と利払前税引前償却前利益を評価します。Yは財務諸表から算出される経営状況、Zは技術職員数と元請完成工事高、Wは社会性等に関する取り組みを評価する区分です。

ここで押さえておきたいのは、X1とZが業種ごとに評価されるという点です。総合評定値Pも業種ごとに算出されるため、1社に1つの点数がつくわけではありません。

各評点の最高点・最低点と総合評定値の範囲

国土交通省が公表している資料では、各評点の最高点と最低点、そしてウェイトが次のように整理されています。令和8年7月1日以降の申請に適用される内容です。

区分最高点最低点ウェイト
経営規模 X1(完成工事高)2,309点397点0.25
経営規模 X2(自己資本額・利益)2,280点454点0.15
経営状況 Y1,595点0点0.20
技術力 Z2,441点456点0.25
その他の審査項目 W(社会性等)2,073点▲788点0.15
総合評定値 P2,159点163点—

総合評定値Pは制度上163点から2,159点までの範囲に収まります。なお、令和8年7月1日施行の改正により、その他の審査項目Wと総合評定値Pの最低点が変更されている点にも留意してください。

平均は700点前後といった目安が紹介されることもありますが、これは公的な統計として確認できるものではありません。自社の位置を測る際は、目安の数字よりも参加を検討している発注機関の基準を確認するほうが確実です。

ランクの区分と目安は発注機関ごとにどう違うのか?

ここが「何点でどのランクか」を一律に答えられない理由です。発注機関ごとに何が違うのかを具体的に見ていきます。

等級の区分数も名称も発注機関ごとに異なる

等級はA・B・C・Dのように区分されることが多いものの、区分の数や名称、区分の境目となる点数は発注機関が独自に定めています。国の機関、都道府県、市町村、公共法人のそれぞれが別々の基準を持っていると考えておくのが実態に近い状態です。

また、等級は工事の種類ごとに設定されるのが一般的です。同じ会社でも、土木工事ではBランク、建築工事ではCランクというように、業種によって等級が分かれることがあります。

等級の見直しが行われる時期も機関ごとに異なります。多くの発注機関は入札参加資格の有効期間を定めており、その更新のタイミングで新しい経営事項審査の結果が反映される運用です。決算日から等級が変わるまでには、審査と資格更新という2段階の時間差があると考えておく必要があります。

同じ点数でも発注機関によってランクが変わる

経営事項審査の点数は全国共通の基準で算出されるため、どこに提出しても同じ点数です。一方で、その点数をどの等級に当てはめるかは発注機関ごとに違います。

さらに、主観点数の配点も発注機関によって異なります。工事成績評定や地域への貢献をどの程度加点するかが機関ごとに設計されているため、同じ経営事項審査の点数でも最終的な順位は変わります。

  • 等級の区分数と境目の点数は発注機関ごとに定められている
  • 等級は工事の種類ごとに設定され、業種によって等級が分かれることがある
  • 主観点数の配点も発注機関ごとに異なる
  • 等級ごとに発注される工事の金額帯の目安が示されることが多い

等級が上がると、参加できる工事の金額帯が変わります。この変化が売上に与える影響は小さくありません。

ざっくりとした感覚ですが、経審ランクが上がることで2倍から3倍になると考えています。売上が2倍3倍になるとそちらの方が急速に成長できるということに気づきました

等級を1つ上げることは、単に評価が良くなるという話にとどまらず、受注できる工事の単価そのものを変える取り組みだといえます。だからこそ、どの発注機関のどの等級を狙うのかを先に決める必要があります。

ランクを上げるには何点を目標にすればよいのか?

目標点を決める順序を間違えると、努力の方向がずれてしまいます。ここでは目標設定の考え方と、動かしやすい区分の違いを整理します。

点数からではなく発注機関から逆算して目標を決める

「何点あればよいか」を先に考えると、基準が発注機関ごとに違うため答えが出ません。順序を逆にして、参加したい発注機関と狙いたい等級を先に決め、その等級に必要な点数を確認するほうが目標が定まります。

各発注機関は入札参加資格審査の要領や等級区分の基準を公表していることが多く、そこに等級ごとの点数の範囲や発注標準が示されています。まずは狙う発注機関の資料を入手するところから始めるのが現実的です。

目標を立てる単位も業種ごとに考える必要があります。総合評定値が業種ごとに算出される以上、伸ばしたい業種を絞らずに全体の点数を上げようとすると、施策が分散してしまいます。

短期間で動かせる区分と時間がかかる区分がある

総合評定値を構成する5つの評点は、変化のさせやすさが同じではありません。実績の積み上げが必要な区分と、書類の準備や決算の内容で動く区分に分かれます。

区分評価される内容動かしやすさの傾向
X1業種別の年間平均完成工事高売上実績の積み上げが必要で時間がかかる
X2自己資本額と平均利益額決算の積み重ねが前提となり時間がかかる
Y財務諸表から算出される8つの指標決算内容の見直しで比較的動かしやすい
Z技術職員数と元請完成工事高資格取得や採用の計画次第で動く
W社会性等に関する8項目制度加入や証明書の取得で動かしやすい

いつまでにどの等級へ上がりたいのかが決まれば、どの区分から着手するかも決まります。逆に目標が曖昧なままだと、加点しやすい項目だけを拾う場当たり的な対応になりがちです。

点数とランクの理解を公共工事の受注にどうつなげるか

ここまで見てきたように、経営事項審査は点数を出すところまでを担い、その点数をどの等級に当てはめるかは発注機関が決めています。目標点は、狙う発注機関と等級が決まって初めて具体的になります。

点数が思ったより低かったとしても、それが公共工事に参入できないことを意味するわけではありません。等級ごとに発注される工事の金額帯があり、まずは自社の等級で参加できる工事から実績を積むという進め方があります。

  • 経営事項審査の点数は全国共通の基準で算出される
  • 等級は発注機関ごとの基準によって決まる
  • 等級が変われば参加できる工事の金額帯も変わる
  • 狙う発注機関を決めることが、目標点を定める出発点になる

公共工事は実績のある大手企業のもの、と受け止められることがあります。ただ、経営事項審査を受けて入札参加資格審査に進むという手順は制度として明確に定められており、要件を満たせば会社の規模にかかわらず参加できる仕組みです。

経審は、まずそこまで点数を気にせず取得してしまうものです。取ること自体は結構ですし、むしろ早く取ったほうがよいと考えています。経審の点数がそもそも良いのか悪いのかを考える必要はない、という感覚です。

よくある質問

経営事項審査の結果通知書にランクは書かれていますか?

結果通知書に記載されるのは総合評定値Pと各区分の評点であり、A・Bといった等級は記載されません。等級は、経営事項審査の結果を受け取った発注機関が入札参加資格審査を行ったうえで決定し、資格者名簿への登録とあわせて通知されます。

複数の発注機関に申請すると、それぞれ違うランクになりますか?

等級の基準は発注機関ごとに定められているため、同じ経営事項審査の点数であっても機関によって等級が異なることがあります。主観点数の配点も機関ごとに違うため、参加を検討している発注機関それぞれの資格審査の基準を確認しておく必要があります。

経営事項審査の点数はいつまで有効ですか?

経営事項審査の有効期間は、審査基準日から1年7か月間とされています。審査基準日は原則として申請日の直前の事業年度終了日、つまり直前の決算日です。結果通知書を受け取った日からではない点に注意し、決算後は速やかに申請することが目安とされています。

点数が下がってしまった場合はどうなりますか?

点数が下がると、次回の入札参加資格審査で等級が下がる可能性があります。ただし等級は毎回の資格審査で見直されるため、翌年以降の申請で点数を戻せば等級も見直されます。どの区分が下がったのかを結果通知書で確認し、原因を特定するところから始めるのが実務的です。

まとめ

経営事項審査が出すのは点数であり、A・Bといった等級を決めるのは各発注機関です。発注機関は経営事項審査の結果を客観的事項として受け取り、独自の主観的事項を加えて順位付け・格付けを行います。

総合評定値Pは、5つの評点を重み付けして合計したもので、制度上は163点から2,159点までの範囲に収まります。ただし、その点数が何ランクに当たるかは発注機関ごとに異なるため、一律の目安は存在しません。

目標点を決めるときは、点数から考えるのではなく、参加したい発注機関と狙いたい等級を先に決めて逆算する順序が有効です。狙いが定まれば、どの区分から着手すべきかも見えてきます。

この記事のまとめ
  • 経営事項審査は点数を出す制度であり、等級を決めるのは発注機関である
  • 総合評定値Pは5つの評点を重み付けして合計し、163点から2,159点の範囲に収まる
  • 等級の区分数・境目の点数・主観点数の配点は発注機関ごとに異なる
  • 狙う発注機関と等級を先に決め、必要な点数を逆算して目標を立てる

より理解を深めていただくために、こちらの解説動画も併せてご確認ください。

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